「チョコなら……こっちが嬉しいな」


その言葉の意味を、その直後……私は知ることとなった──────…











Chocolate and a lip











「きょ────うやっ!」


「……少しは静かに出来ないのか?」


大きな声を上げながら、ベッドの上で読書をする鏡夜の元へはダイブした。

ギシ…

音を立てて大きなベッドが軋んだ。
そうして鏡夜は静かな眼差しをに向けた。


「静かに?だって、鏡夜が相手してくれないのがいけないんじゃん!
 今日が何の日か分かって──────」


突如口を塞がれた。
いきなりの出来事に、は思考がついていけず目をパチクリとさせた。


「ん、むむむむっ!」


そこで漸く、鏡夜にキスをされていると気付いた。
間近にある整った顔と眼鏡。
そして、何かを企みそうな瞳がの瞳を見つめていた。


「〜〜〜〜〜〜〜〜ぷあ」


「キスの間くらい目を閉じたらどうだ?」


漸く自由になった口で、命一杯空気を吸い込んだ。
そして、鏡夜の言葉に頬を染めながら、その頬を膨らませた。


「目を閉じたら、鏡夜…したい事するくせに」


「当然だろう 俺達は恋人同士……だろう?」


「それはそうだけどー…」


鏡夜の行動くらいには分かっていた。
そして、それを指摘すれば当り前な顔をする鏡夜。

開き直っているのだから、何を言っても無駄なのだ。


「で、渡したいものでもあるのか?」


その言葉に、の表情が見る見るうちに明るくなった。
その変わりように鏡夜は笑ってしまう。


「はい、バレンタインのプレゼント!
 たまには甘いもの食べないと疲れちゃうよ?」


差し出された箱を見つめてから、鏡夜はそれを受け取った。
そしてすぐに包装紙を取ってしまう。


「ええ!?もう開けるの!?」


「俺が貰ったものだ 俺がどうしようと勝手だろう?」


「むぅ…そりゃーそうだけどぉ……」


自分の選んだセンスを指摘されるんじゃないかと、ヒヤヒヤする。
徐々に明らかになっていくバレンタインのチョコ。

鏡夜はそれを見つめ、フッと笑みを浮かべた。


にしてはいいセンスだな」


そう言うと、箱の中からチョコを一つとりだした。
丸い形のチョコレート。


「私にしてはってどういう意味────…んぐ」


喋ってる途中で口の中に押し込められたのは、プレゼントしたはずのチョコレート。
美味しい甘い味に、はつい味わって食べてしまった。


「あー…美味しかっ……じゃなくて!
 私が鏡夜にプレゼントしたのに、私が食べてどうするの!?」


そう指摘すると、また近づく顔。



またキスするつもり!?



そう感じ取ったは、顔の前に両手を突き出しそれを阻止した。


「チョ、チョコで意識を逸らそうとしても無駄だよ!
 ほら、早くチョコ食べてみてよ!せっかく開けたんだからさ!」


ぐいぐいとチョコを食べる、という方へ話を持っていこうとする
けれど、結局それは努力の無駄だという事が分かっていなかった。


「チョコなら……こっちが嬉しいな」


「へ?」


その言葉に、素っ頓狂な声が上がってしまった。
そして、感じたのは唇に当たる柔らかな感触。



またやられた!



そう思ったのもつかの間、口の中に鏡夜の舌が入ってきた。


「んんっ!?むむっ、んっ!」


絡まる舌に、の意識はボーっとし始めた。


「ああ…確かに、このチョコは美味しいな」


そういい、鏡夜はニヤリと黒い笑みを浮かべた。
そこで初めて、さっきの鏡夜の言葉の意味が分かった。


チョコなら……こっちが嬉しいな


それは、の食べたチョコを……口内に広がるチョコの味の事を示していた。
チョコ味のするキス、それを体験するために行った行為だった。


「きょっ、鏡夜ぁ───────!」


大きな声を上げ、鏡夜を引き離す。
真っ赤な顔と、肩で息をし潤んだ瞳を向けるは鏡夜を暴走させる要因にしかなりえない。


「………では、すべて…頂くとするかな」


「へっ!?…………っ」


そうして、また長い長い夜に向けて攻防戦が始まるのだった。








............................end




バレンタインのフリー夢です!
鏡夜さんは、きっとこういう風な雰囲気に持ち込むような気がします!
全ては計算です!抜かりはないのです!(ぁ)

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