「なぁ、あれは何なのだ!?」


そう声を上げるあの人は、なんだか本当に幼子の様に見えた……











Chocolate to choose with you











!これから庶民スーパーへ行くのだが……」


その言葉に、は苦笑を浮かべた。
その表情はまるで、環の言いたい事が分かったかのようなものだった。


「私について来て欲しいのですか?」


今日はバレンタインデー、という事では朝から髪型に力を入れて来ていた。
ふわりとウェーブのかかった柔らかい髪を揺らしながら、は首を傾げた。


「何故分かったのだ!?」


「分かりますわ 環様はすぐにお顔に表情が出ますもの」


驚く環にはクスクスと笑みをこぼす。
それでも、その笑みは嫌な気分にさせるようなものではなく、その場に居る者を笑顔にさせる笑みだった。


「そ、そうか……で、では…」


「ええ、参りましょうか 環様」


のその言葉に環は嬉しそうに頷くと、スッと手を差し伸べた。
まるで、王子様の様に。











「ここが世にいう庶民スーパーか!」


「環様、お声が大きいですわっ」


大きな声で言い切る環に、慌てる
いくら自分たちが金持ちで、こういう場所に通う者を庶民と呼んでいても、言っていい時と言ってはいけない時がある。

今は、言ってはいけない時だった。


「おお、バレンタインデーだからか!チョコが沢山あるぞ!」


「ですから、環様っ」


そう声をかける間もなく、環はバレンタインコーナーへと駆け出していた。
その様子を見て、は大きく溜め息を吐く。



環様……なんだか、凄い子供みたい……



その様子が可愛くて、苦笑が漏れる。
男性に、しかも学校では美男子と騒がれる環を『可愛い』などと思うのはおかしいのかもしれないが。


「…… …………」


ある一か所を見つめ、環の動きがピタリと止まった。
さっきまで騒がしかった発言も、ピタリとなくなりは首を傾げた。


「どうかされましたか?」


「あ、ああ おいしそうだと思ってな」


釘付けになっていた商品から視線を離し、環はを見つめた。
その瞳に宿るのは子供の様なワクワク感を感じさせる色だった。


「…ブタのチョコレート?」


環が見つめていたチョコレートに視線を落とした。
そこには可愛らしい、白いブタと茶色のブタの形をしたチョコレートがあった。
箱の中身が見えるようにディスプレイされたそれを、子供の様な瞳で見つめる環。


「環様」


「どうした、


「私からのバレンタインプレゼント、ですわ これを買って差し上げます」


その言葉に環は喜びの表情を浮かべた。
可愛いと、美味しそうだと思ったチョコが、まさか愛しい者から貰えるとは思っていなかったから。


「……いいのか!?」


「ええ 環様がお喜びになられるのでしたら…私は嬉しいですもの」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ありがとう、!俺は嬉しいぞ!」


盛大に両手を広げ、公衆の面前で環はに抱き付いた。
その行為には顔を真っ赤にさせ、行き場を無くした両手がワタワタと動く。


「たっ、環様!公衆の面前です、おやめ下さいっ!」


「嫌なのか?」


「嫌という問題ではありませんっ はっ、恥ずかしいのですわっ!」


真っ赤な顔をして、さえも大きな声で話してしまう。
そんな自分自身にもは恥ずかしさを覚え、茹でダコのようになってしまう。


「そ、そうなのか すまないっ」


慌てて身体を離す環。
離れた温もりに、少しだけ寂しさを感じるものの、ホッとする自分も確かにいた。


「それでは……ちょっと待っていて下さいね」


「うむ」











本当は、高級チョコレートをプレゼントしたかった
だけど、環様は庶民スーパーのチョコレートに恋をしたようでした



「まぁ……いいですわ
 私は、環様がお喜びになるものをプレゼントしたいだけですから……」


そう独り言を呟きながら、はブタのチョコレートの箱をレジへと持っていった。
そして、レジでなかなか会計が終わらないという事件が起きたのは……また別の話。







.....................end




バレンタインフリー夢です!
環はきっと、高級チョコでは見かけた事のないチョコに恋をするんじゃないかなと思います!
珍しいもの好きそうなイメージが……あははははは;

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