ごめんね……?
この日のためだったの……ずっと、禁止にしていたのは──────









cake removal of a ban !









「ハ、ハニー先輩……?」


そう声を掛けたのは、二月十八日の夕方だった。
部活終了後、教室で落ち合うのが埴之塚光邦ことハニー先輩と、許婚のの日課だった。

少しだけ不機嫌な表情を浮かべる光邦に、は心配そうに首を傾げ顔を覗き込んだ。


「なぁに?」


可愛く問い掛けているつもりの光邦。
しかし表情は暗く黒く、ドスの効いた声をしていた。


「……凄い、不機嫌ではありませんか?」


「そんな事ないよぉ?」


明らかに、そんな事ある表情に口調に声色なのだ。
は引き攣った笑みを浮かべ光邦を見つめるが、それ以外に何も言えなかった。



言えるはずがないわ……
ハニー先輩が不機嫌になる原因……知ってるというか、その原因を私が作ってしまってるんだから……



そんな事は口が裂けても言えないと、は思った。


「あ、あまり……無理は…しないで下さいね?」


「勿論だよぉ」


そう言うも、無理をさせてしまうのは分かっていた。
は何としても光邦に甘いものを、お菓子を食べさせたくなかったから。



ごめんなさい、ハニー先輩っ
あと……あと少しの辛抱なんですっ



イライラの募る光邦を見つめつつ、は申し訳なさでいっぱいになっていっていた。











「むー…僕、まだお菓子食べられないのぉー?」


「すみません、ハニー先輩」


部活終了後、光邦は鏡夜へブーイングを向けに行った。
いくらなんでも、もう食べさせてくれてもいいじゃないか、と。

せめて誕生日くらいは、美味しいケーキを満腹まで食べたいと思ってしまうのだ。


「ハニー先輩っ!」


「……なぁにぃ?」


バァァンッ!

勢いよく開けられた部室の扉。
すでに部活動を終えたそこには、部員の姿しかなく。
振り返った光邦はすでに般若のような顔になっていた。


「ようやく来て下さいましたか、さん」


「すみません、鏡夜さん ご迷惑お掛けしました」


溜め息交じりの鏡夜にペコリと頭を下げる
その意味が分からなくて、光邦は首を傾げていた。


「ハニー先輩の、お菓子ストップは私が掛けたんです
 本当にすみませんでした……」


あんなにもイライラさせてしまったことが、本当に申し訳なかったと思った
そして、誕生日の今日まで待たせてしまったことに眉尻が下がる。


「………ちゃんが犯人だったのぉ?」


「──────はい」


問い返す光邦にはコクリと頷き返す。


「どぉして、こんな事したのぉ?」


その声が、には怖く感じた。
別に、を憎んでいる訳じゃなかった光邦。
けれど、罪悪感を感じるには憎しみを感じてしまった。


「ご、ごめんなさい…ハニー先輩 私っ私……」


ビクビクと肩を揺らし、どうしてもは光邦を見つめる事が出来なかった。


「ハニー先輩 少し落ち着いて下さい これじゃぁ、先輩が何も話せませんよ」


「あ、そうだねぇ ごめんね、ちゃん」


ハルヒの指摘で漸く、黒いオーラを発していた事に気付いた。
ハルヒの言葉にホッと胸を撫で下ろしながら、はゆっくりとピンク色のリボンで縛り上げた白い巾着を光邦に差し出した。


「ふぇ?」


「ハッ、ハニー先輩……お、お誕生日…おめでとうございます……」


ドキドキ

キョトンとした表情の光邦が可愛く見え、そんな中やはり受けとってもらえるのかと胸を高鳴らせた。
しかし、そんな心配もよそにのプレゼントを光邦は両手で優しく受け取った。


「あ………」


小さく声を漏らし顔を上げると、そこには満面の嬉しそうな笑みを浮かべた光邦の姿があった。


「ありがとぉ、ちゃん それならそぉと言ってくれれば僕も我慢したのにぃ」


「驚かせたかったんです だから…言えなくて
 でも、喜んでもらえたようで安心しました」


苦笑を浮かべる光邦にも苦笑を浮かべた。
なんとも不器用な遠回りをしてしまったような気もしたけれど、無事プレゼントを渡せてホッと安堵していた。


「でも来年は…ちゃんと教えてねぇ?僕、イライラしたくないから……」


イライラしてを心配させたくないから、と満面の笑み。
その笑みが眩しくて、やっぱり黒い光邦もいいけど光邦は白い方がいいと思った瞬間だった。


「────────はいっ」










.........................end




二月二十九日は埴之塚光邦(通称ハニー先輩)のお誕生日という事で、誕生日フリー夢小説です。
誕生日に向けて、ヒロインにハニー先輩のお菓子断食をさせてみました。(笑)
絶対ハニー先輩はイライラしてストレスを溜めるでしょうねっ!!!(ぁー)

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