貴方が生まれてくれた事へ、私はとても感謝しているわ

貴方の誕生は、私の────…









congratulation









「あ、鳳くん」


「ああ…さん どうかしましたか?」


掛けた声に振りかえる鏡夜。
黒い髪が目に焼き付いた。


「ええ、本日…鳳くんにお渡ししたいものがありますの」


それを渡して何と思われるか分からなかった。
それでも、今日は一年に一度しかない。

鏡夜に声を掛けた、ウェーブの掛かった少女。
は鏡夜の瞳を真っすぐに見つめて呟いた。


「渡したいもの、ですか?」


「ええ」


コクリと頷きながら、は身体の後ろに隠していた何かを手渡そうとした。


「これ…なんです」


「…?」


スッ…

小さめの箱に淡い紫色ラッピング。
それを鏡夜に差し出した。


「お誕生日…おめでとうございます」


「──────え?」


伏せ目がちに言いながら、受け取ってもらえるのを待つ
差し出した手がフルフルと震えていた。



一生懸命…初めて編んだんです…



言いたかった言葉。
けれど、それは言葉にはなってくれなかった。


「…ありがとうございます」


その言葉を聞き、嬉しそうに視線を上げると。

ガサガサガサ…

そんな音とともに視界に入ってきたのは、プレゼントの包装紙を外す鏡夜の姿。



えっ!?
こ、ここで開けっ!?!?!?



その現実についていけず、ただただ驚いていると。
包装紙の中から出てきた四角い箱。
それを開けると、中には。


「…マフラーですか」


「ええ…お気に召しませんでした?」


鏡夜の反応に、ドキドキしっぱなし。
瞬きを幾度も繰り返しながら、鏡夜を見つめた。


「いえ…とても素敵なものですね 気に入りましたよ」


「鳳くん…本当に喜んでます?」


ホスト部のメンバーと関わっている時との違い。
それは一目瞭然で、それがチクチクと胸を刺激する。


「何故ですか?」


「だって…鳳くん、本当はそういう性格ではないでしょう?」


のその問い掛けに、鏡夜の片方の眉がピクリと跳ねた。
けれどそれに気付かずに、少しだけ視線を逸らした。


「私…今の鳳くんも好きですが…」


「本当の俺を見たいと?」


遮って聞こえた鏡夜の声は、先ほどの様な柔らかな優しい声ではなかった。
視線を向けると、の目に映ったのは黒鏡夜。


「……鳳、くん?」


「全く…人が必死に取り繕っていたというのに」


「…え?」


その変わりように、着いていけずにキョトンとしている
鏡夜はそんなを見つめ、大きく溜め息を吐いた。



鳳くんが黒いっ…!
というか…取り繕っていたって…どういう…?



「君は、こういう俺は嫌いかと思っていたんだけどな」


「そんな事はっ…!!」


意地悪そうな顔。
ニヤリと笑う口元。

全てが見た事のないもので、不思議にもドキンと胸が高鳴ってしまう。


「そうじゃないのなら…隠し通すのはやめだな」


「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」


そう鏡夜が言葉を口にした瞬間、生暖かい感触を唇の端に感じた。
それがすぐに、鏡夜の舌だと気付くのに時間は要さなかった。


「なっ、舐めっ!?!?」


「今、言う」


「へ?」


舐められた事で心臓はバクバクと脈打ち、今にも口から飛び出そうだった。
けれど続けられた鏡夜の言葉に、真っ赤な顔でキョトンとした。


「俺はお前が好きだ」


「…!
 わ、私も───────…んんっ!?」


鏡夜の告白に、真っ赤に照れながらも嬉しそうに微笑み同じだという事を口にした。
そうすれば、告白した鏡夜自身も嬉しさを堪えきれず。

触れた唇。



あ…鳳くんの唇って…柔らか…
じゃなくてっ!!!



あまりにも突然の出来事に、思考があらぬ方向へと向かう。
その邪念を振り払い、目の前の出来事に意識を戻した。


「んっ…!あ、…っ!んふぅ────────…」


息が苦しくなり、口を開けようとした瞬間。
ぬるっとした他の物体の柔らかな感触が口の中に広がった。
恥ずかしさは膨張し、息も上がる。

そろそろ限界、と思った瞬間解放された唇。


「…お、鳳くん…たとえ人通りのない廊下だからといって…」


「別にいいだろう 人が居ないのをきちんと確認した」


「そういう問題じゃっ!!」


いけしゃあしゃあと言い放つ鏡夜に、身の危険を感じた。
本当の姿を見たいと思ったのに、なんだかいらないものまで覚醒させてしまったようで。


「…これ以上ない、誕生日だったよ」


「〜〜〜〜〜〜〜〜っ お誕、生日…だから…よっ
 もう…こんな事はっ…」


「……さぁ?」


照れながらも言葉を続けるをよそに、楽しげな表情を浮かべ鏡夜はしらばっくれた。
赤い顔はこれ以上ないんじゃないかと思う程、茹蛸状態になった。









お誕生日、おめでとう…

貴方が生まれてきてくれたことに…感謝

私の喜びは…ただ、それだけ…







.....................end





十一月二十二日は鏡夜先輩の誕生日でした!!!
おめでとうございます、鏡夜先輩!!(><)
ということで、フリー夢小説をお届けしました!

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