甘い甘いチョコレートに包まれた、美味しい美味しいお菓子達

ほんとはあたしが食べたかったけど……
今日は特別、貴方のために──────…











Does it take time a little more?











「ガーウリイ!」


「ん?おお、か どーしたんだー?」


泊まっている宿屋の、ガウリイがいる部屋。
は自分の部屋からそこへ軽い足取りで向かい、ノックもせずにドアを開けた。

そこにはベッドの上にゴロンと横になるガウリイの姿があった。


「どーしたんだー?じゃないわよ!今日が何の日か分かってんの!?」


「……?…… ……… …………?」


の言葉に、ガウリイは首を傾げた。
眉間にシワを寄せ、必死に今日が何の日かという回答を探す。


「すまん 俺には分らん」


ハッキリと言い切るガウリイに、はムッとした表情を浮かべた。


「前に何度も話したでしょぉおおおぉぉがぁぁぁああぁぁぁ!!」


「〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?」


の怒りの鉄槌がガウリイの腹部にめり込んだ。
その衝撃に、ガウリイは腹を抱え前屈みになった。


「す、すまん 本当に変わらないんだ」


ガウリイの背後に、クエスチョンマークが羅列されたような幻影が見えた。
ガシガシとは後頭部を掻くと、盛大に溜め息をついた。



こいつのスライム並の頭に期待したあたしが馬鹿だったっ!



そう思うと、持っていた赤と黒のチェックの包装紙で包まれた平らな四角い箱をガウリイに投げつけた。


「それの中身見て、さっさと思い出せ!この馬鹿!」


バタン!

怒りの声と同時に、ドアの閉まる音が響いた。
そして、ドスドスと立ち去るの足音が恐竜の様に聞こえつつガウリイは箱に視線を落としたのだった。










「何よ 何よ 何よ!ガウリイの馬鹿!」


宿の外へと出たは、ムッとした表情でだいぶ天高く登った太陽を見つめた。
もうすぐお昼の時刻。


「どうかされたんですか?さん」


「…その声は、ゼロス」


「ご名答」


掛けられた声に、げんなりとした表情を浮かべた
視線を向ければ『ご名答』と答えた通り、そこにはゼロスが佇んでいた。



全く…どうして今日に限ってこいつが……



ゼロスの顔を見るなり、の口から大きな溜め息が長く吐き出された。
その溜め息にゼロスはショックを受けた表情を見せる。


「そんな顔しないで下さいよぉ、さん」


「こんな顔しない方が無理 いったい何の用よ?」


腕を組み、ゼロスを真っすぐ見つめた。
ハッキリとした口調で、答えを求めるの言葉にゼロスは苦笑。


「何って…さん、まさか今日が何の日か知らないって事はありませんよね?」


「…………チョコ目当て?」


「おや、やっぱり今日が何の日か分かっているじゃないですか 当然その通りです」


の問いかけにクスクスと笑みを零すゼロス。
けれど、が用意していたのはガウリイに上げたチョコ一つだけだった。


「残念だけど、もうないわよ」


その言葉にゼロスは盛大なショックを受けた様子。
いつものニコニコ顔が、すぅっと消え失せた。
閉じていた瞳も見開き、丸くし、白黒させている。


「だ、誰かにあげたんですか!?」


「別に誰でもいいでしょ?」


誰に上げたのかを聞いているわけではないゼロス。
けれど、そんなの答えで誰かにあげたのは証明された。

また、ションボリしてしまうゼロス。



そんなにショック受けるなら、聞かなきゃいいのに……



魔族のくせに馬鹿だなぁ〜とか思いつつ、クルリと踵を返す
そんなを慌ててゼロスは呼びとめた。


「何よ?」


「僕には頂けないんですか!?あんなに奉仕したというのに……!!」


「あたしが奉仕させたと!?人聞きの悪い言い方しないでよ!」


ゼロスの言葉に、は反論をした。
確かに、フィブリゾとの戦いの時はゼロスにはいろいろと助けられた部分はあった。
けれど、それも全てはゼロスの作戦上の事。

実際には、ゼロスの手の上で踊らされていたのは達の方だった。


「あれは奉仕じゃないでしょ?あたし達を上手く利用してた…そうじゃない!全く」


腰に手を当て、頬を膨らませる
全くもうと言わんばかりに肩を竦めると、「もういいでしょ?」と一言残し宿の中へと姿を消した。


さぁぁぁぁん…」


情けない声が宿の前で発せられていた事を、は知る由もなかった。










「ガウリイ?」


「入っていいぞー」


コンコンと、今度はノックをした
ガウリイのあっけらかんとした声が響いた。

ガチャ…


「ガウリイ…今日が何の日か分かった?」


「ん?ああ……悪かったな、


の問いかけに、言葉を濁すガウリイ。
ポリポリと頬を掻きながら、ちょっと照れた様子を見ると分かったようだ。


「ええと……ありがとな」


ポフポフ…

大きな手がの頭を優しく撫でた。
それはとても安心感に満ちる瞬間だった。


「……いいの 分かってくれれば」


「だが、バレンタインデーってのはチョコをくれる日なのか?
 なんだかいい日だな、!」


その様子を見て、はバレンタインデーの根本的な事をガウリイは理解していないという事を知ったのだった。



まぁ…それでも喜んでくれたんだし……
よしとしようかな……











............................end




バレンタインデーのフリー夢小説です。
久々のガウリイを書いたのですが、口調が掴めなくなっていました。(汗)
後で小説なり漫画なりを見直さなくてはっ(慌)

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