「い……や…………やっやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
一人の少女、実験室の中央に繋がれ叫んでいた。
最後の叫びと共に少女を中心に黒い光が広がり、少女の叫びと生き物の叫び声が響いた。
「クククク……俺の実験に付き合ってくれてありがとな……ヒヒヒヒ。」
繋がれたままガックリと力なく少女は重心に逆らうことなく倒れていた。
その少女には、光に包まれる前になかったものが存在していた。
それは─────…………。














Reality of sorrow 第1話












「っ!!!」
ハッとした表情を浮かべ、起き上がった。
頭部についている茶色の猫耳とミニスカートのしたから出てきている茶色の尻尾が動いた。
「はぁはぁ……嫌な夢、ですね。……何でいまさら……あのときのことなんて……」
額にかいた汗をぬぐいながら呟き、空を見上げた。
少女の名は
後ろでひとつに縛られた青いロングヘア、そして頭部には茶色の猫耳が生えている。
金色の瞳は鋭く輝き、切れ長だ。
キュッと閉じた口から鋭い八重歯がはみ出ていて。
白くてモコモコした生地のへその出るほど短い服を着ていて、赤いデニム生地のミニスカートに白いロングソックスにこげ茶のロングブーツを履いている。
そんな赤いデニム生地のミニスカートの下からは茶色の…猫耳と同じ色の尻尾が生えていた。
彼女は猫と人との合成獣なのだ。
「折角の昼寝が台無しですね…」
そう言いながらはゆっくりと立ち上がった。
尻尾を揺らしながら、は目的の場所などなく気ままに歩いていた。
ただ“やらねばらない”という目的はあるのだが。
の目的とは“元の姿に戻ること”と“こんな姿にしたという男、フーアを探し出すこと”だった。
「とりあえず……この近くのミスティアに入ってみましょうか。」
そういうと、傍らに置いてあった杖をカチカチと音を立てて短くたたみ腰に差した。
そして金銭やらなにやら入っている白い袋を腰にくくりつけ歩き出した。
目的地は────ミスティア。











「ここが…ミスティア、ですか。」
ふぅっとため息をつき───の耳と尻尾にきている視線に気づき、キョロキョロとする。
「あれって……猫の尻尾、ですよね。」
「そうとしか思えないわね……」
「付け尻尾かー?」
「違うわよ、馬鹿!多分……」
「合成獣、だな。俺と同じで……」
聞こえてきた声に耳を澄ました。
猫耳の所為で人よりも耳がよく、コソコソと話す会話も聞こえてきてしまうのだ。
「あ、あの……?」
どうもコソコソ自分の事を指摘されるのは嫌でヒソヒソ話をしていた栗色の少女に声をかけた。
その栗色の少女の後ろに金髪の青年が居て、栗色の少女の横に青っぽい髪の少女が居た。
金髪の青年の横には緑色っぽくてツンツンした髪の少年が居た。
「え!?」
やはり、驚いたのか、栗色の少女は瞳を見開き他三人の顔を見た。
まるで助けを求めるような…。
「アンタ……合成獣、だろ。」
緑色でツンツンした髪の少年がの気持ちを考えずに呟いた。
その言葉にはドクンと胸を高鳴らせた。
猫耳だけはわからない様にバンダナで隠してはいたが、のスカートの下からは尻尾が生えていた。
つけ物だと思うものも居るだろうが、こうやってわかるものもいる。
だが、尻尾を隠すにも隠せないため、はどうしようもなかったのだ。
「それが……何か悪いんですか?」
にらめつけるように、すでに鋭い瞳を細くした。
「嫌、悪いなんて思っちゃいないさ。俺もアンタと同類だからな。」
そう呟く緑髪の少年は目を細めた。
まるで悲しい過去を思い出すように。
「…え?」
「さて、俺たちは行こうぜ。」
緑髪の少年の言葉に驚き、間の抜けた声を漏らした。
しかし、それを気にすることなく歩き出す。
そのとき、は思った。
この人たちならあいつを知っているかもしれない、と。
急いで駆け寄り、緑髪の少年の腕をガシッと掴んだ。
「っ!まだ何かあるのか?」
うざったそうに呟き、白いフードをかぶった。
それは異様な姿を隠すように。
「あなたたちは……フーア=ギルベリアルを知っていますか!?」
フーア=ギルベリアル。
それは、を合成獣へと変化させた者の名前だった。
何故三流魔道士が合成など出来たのか、いまだ疑問に思っているだったが。
それでも、フーアを見つければ元の身体に戻れるとわかっていた。
なぜなら、フーアは唯一合成獣にした者を元の身体に戻れる術を持つものだったから。
「フーア=ギルベリアル??」
その名前に反応したのは栗色の少女だった。
しかし、誰かが反応してくれればはそれで十分だった。
「知ってるのか?」
栗色の少女の言葉に反応し、金髪の青年が問いかけた。
「聞いたことはあるわ……なんでも人と動物、魔獣などを合成させ合成獣を作り出す研究をしてる人だって。」
栗色の少女の言葉を聞き、はうれしそうな表情を浮かべた。
「その人がどうかしたのですか?」
今度は変わって青い髪の少女が問いかけた。
「……知らない、のですか…」
「ええ。悪いけど、知らないわね。何か事情でもあるの?」
しかし、青髪の少女の問いには答えず、小さくポツリとつぶやいた。
その言葉に頷き答える栗色の少女。
しかし、事情があるのかと問いかけられ悩む
そのとき、先ほど緑髪の少年が言っていた言葉を思い出し、口を開いた。
「…その人なら、合成獣にされた人間を元に戻せる方法を知っているから……」
「「「「!!」」」」
そのの言葉に一気に四人の視線を浴びたのは言うまでもないだろう。
緑髪の少年は何年も元の身体に戻る方法を探していて、他の三人もそれを知っていた。
だからこそ、の言葉に視線を向けざる得なかったのだ。
「そっそれは本当かっ!?」
そういい、の肩を掴み前後に揺らす緑髪の少年。
「ほっ…うっ……けほっ……まっ……うぇっ……」
しかし、その激しい揺れに耐えられなかったは目を回し、言葉が途切れ途切れ。
しまいには、嘔吐しそうになった。
「ゼル、たんま。そんなことしたら聞けないわよ。」
栗色の少女の言葉にゼルと呼ばれた緑髪の少年はピタリと揺らすのをとめた。
「あ…悪かった。」
そう短く告げ、から離れた。
「…私が今言ったことは全て本当です。その人物の元で実験材料として扱われていた私ならわかります。実際見たこともありますから。」
静かな口調でそう呟いた。
しかし、元に戻す実験をする際、必ず誰かフーアの近くに居たのだが。
その人物まではわからなかった。
だからはこの会話でもう一人の人物のことを出さなかった。
「…ゼル。」
栗色の少女はそう主語を呟いただけでゼルを見つめた。
その瞳に返事を返すようにゼルも栗色の少女の瞳を見つめ、小さく頷いた。
「あたし達でよければ手伝うわ。」
「──………本当ですか?」
栗色の少女の申し出に驚きを隠せない
戸惑いながらも、少し感情を抑えて問いかけた。
まるで再度確認するかのように。
「ええ。本当よ。といっても…ゼルの身体を元に戻したいという理由もついてくるけど……」
「それでも構いません……。一人で探すより……心強いですから。」
栗色の少女は苦笑をしながら、ゼルを視線で指し示し。
その言葉に返事を返す
胸の辺りに右腕を持ってきて、拳を作り、胸に当てる。
そして笑顔を栗色の少女に向けた。
「「「「……。」」」」
しかし、その笑顔を見た瞬間、四人全員がピタリと動きが止まった。
「あ…あの?」
「ちょっ!!ガウリイ!!何見とれてんのよ!」
「ゼルガディスさんもですよ!」
の問いかけに全く気づいていないのか、栗色の少女と青髪の少女が叫んだ。
ガウリイと呼ばれた金髪の青年はあわててパタパタと両手を振った。
まるで栗色の少女を恐れるように。
「ちょっリナ、落ち着け!!というか、お前も見とれてただろう!!」
ガウリイはあわててそう叫んだ。
リナと呼ばれた栗色の少女を落ち着かせるために。
そして、同じく見とれていたことを指し示すように。
「アメリアだって見とれていただろう。人にとやかく言う事できないぞ?」
ゼルガディスと呼ばれた緑髪の少年ことゼルもふぅっとため息をつきながらアメリアに言い放った。
「「うぅ……」」
ガウリイとゼルガディスの言い分にリナもアメリアもただそう声を漏らすしか出来なかった。
「ぷっ……あはっ……あははっははは。」
そんな四人の様子を見ていたは面白くなり、笑い出した。
その声に反応し、四人は視線をに向ける。
「ごめんなさい。あまりにも…やり取りが面白かったもので……ふふっ……あははははっ。」
そう言いながらも、笑いは止まることなく。
瞳に溜まった笑いのための涙を右手の人差し指で拭うと、再度笑みを浮かべ。
「私、です。よろしくお願いします。」
そういい右手を差し出した。
「あたしはリナ。リナ=インバースよ。よろしくね。」
そう言い、軽くの右手を握り返し、離した。
「リナさんって……あのリナ=インバースですか?」
「…たぶん、そのリナ=インバースよ。それから、“さん”はいらないわ。」
の問いかけに苦笑しながらリナは答えた。
そしては再度笑みを浮かべ“わかりました”と答えた。
「私はアメリアです!アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンです!よろしくお願いしますね、さん!」
そういい、リナと同じくの右手を握り返した。
「……セイルーン?もっもしかして……あのセイルーン王国の……?」
「あ、はい。一応第二王女です。」
アメリアのファミリーネームを聞き、目を点にしながら問いかける。
そして、臆することなく笑顔で返すアメリアに一瞬驚きながらも、また笑顔を浮かべた。
「俺はガウリイ=ガブリエフだ。よろしくな、。」
「ええ。よろしくね、ガウリイさん。」
「俺も“さん”はいらねーぜー。」
右手を握り返すガウリイに笑顔を向け、名前を復唱する。
すると、ガウリイは笑いながら、リナと同じく指摘する。
「私も、ですよ、さん。」
ガウリイに便乗するように答えるのはアメリア。
「だったらアメリアさ……アメリアも“さん”はいりませんよ?」
「あはは〜〜私は癖なんですよ。」
アメリアの言葉に敬語のまま返事を返す。
そしてアメリアにも“さん”付けは要らないと指摘するが、癖だと言う事で。
「俺はゼルガディス=グレイワーズだ。」
ぶっきらぼうに言いながらも、右手を握り返してくれたゼルガディス。
「ええ。よろしくお願いします、ゼルガディスさん。」
「俺も“さん”はいらない。」
名前を復唱し、またもや“さん”は要らないと指摘。
同じく一瞬きょとんとした表情を浮かべるだが、すぐに笑顔を向けた。
その笑顔をに全員がポーっとしていたのは言うまでもない。
は気づいていないのだ。
街やら村やらを歩けば待ち行く人、老若男女が振り返っていることに。
見慣れればそういう事はないのだが、そういう美人という部類に入る人を滅多に見ることのない人は振り返ってしまうのだ。
「…大丈夫ですか?ボーっとしてますけど。」
そのの指摘に四人全員がハッとした顔をし。
「何でもないわ。それより、は泊まる宿は見つけたの?」
リナは苦笑しながらそう呟き。
ふと空を見上げると、太陽が沈み始める時刻だった。
「いいえ。まだ宿は見つけてません。」
首を左右に振りながらは答えた。
このとき、“さん”付けに関しては指摘されたものの、敬語に関しては指摘はされなかった。
どうやら、“癖”だと理解してくれたようで。
は微かにうれしそうに笑みを浮かべていた。
「なら私たちが泊まっている宿に行きませんか?」
泊まっていないと言う事を確認すると、アメリアがを誘った。
しばし考え、コクリと頷く
フーアを共に探す、と言う事は共に旅をすると言う事で。
なんだか楽しい旅になりそうだとは思っていた。
だが、フーアの後ろで糸を引いているものが居るとは、今の段階で誰も思いもしなかった。
ただ、にはフーアの実験の際、必ずそばに他の人物が居たことが気にかかっていただけだった。
そのことはの心の内にしまいこまれ、リナたちが知るはずもなかった。











To be continued..........................










と言う事で、Reality of sorrow 第1話をお送りします!
いやー……短いですが…楽しんでいただけたでしょうか?(ドキドキ
久々のスレイヤーズシリーズの小説、じゃなくてドリー夢は楽しいですねv
何と言うか……やっぱりスレイヤーズは大好きですv
ハガレンに嵌ってから、ハガレン一色で来ちゃってたんで、スレイヤーズ好きーって思いが薄れて感じてたんですが。
やっぱりこうやって携わってみると好きですね。
犬夜叉を書いていたときとは全く違います。
何と言うか…胸の弾みというか…胸の鼓動というか…何かが…というか、全てが?(笑
さて、今回の話は猫と人間との合成獣の話です。
ゼルガディスと重なる部分がありますね。
やっぱり合成獣だからでしょうか。
うーむ……ですが、過去はゼルガディスとは違うでしょうね。
まぁ、無理やり合成獣にされたのは同じですが。
ゼルガディスは力を求めてでしたっけ。あ、あれはアニメでしたね。
の過去も話の中で盛り込んでいこうとは思っています。
まだ謎はたくさん残ってますが…楽しんでいただけると光栄ですね。
さて……フーアという名前が出てきましたね。
フーア・ギルベリアル。
こいつはこの作品に大きくかかわってる野郎です。
最後の最後まで登場…するかと思われます(笑
もう一体大きく関わってるヤツが居るんですが…
フーアとそいつだったら、そいつの方が大きく関わってますね。
でも、まだ名前は出てきませんが(笑
でも、多分お気づきではないだろうかと思います。
最後の数文を読めば……(笑
は大きく関わってるヤツを知っています。
知ってるけど、名前も顔も見たことはありません。
影というか…黒いシルエットという形で見たことがある、というだけですね。
一体どんなヤツなのか…どんな風に話に携わってくるのか。
一体話の裏に何が隠されているのか…
謎に包まれたままですが、その謎を解こうと頑張ってみるのも面白いのではないかと(笑
わざとあとがきでは指摘しないでおきますw
いつもはネタばれーって感じでやってましたが(笑
さて……ここで、最後にこれだけは言っておきます。
これは………スレイヤーズのゼル夢です!!(言い切った
途中で……変わらないよう頑張ります。
最終話のゼルに……後ご期待♪♪
ゼル……壊れるかもしれませんが、お許しを。
では、今回のあとがきは以上と言う事で。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
次回をお楽しみに……と言う事で以上!!






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