め………奴が逃げた所為で…ディノス様の機嫌がっ…チッ。」
「フーア。は未だ見つからないの?」
水晶に視線を向けたまま、フーアと呼ばれた男は眉間にシワを寄せた。
そんなフーアの後ろから現れたのは一人の女。
見た感じ普通の女に見えるのだが、その実態は魔族である。
「もっ申し訳ありません!今しばらく…お待ちくださいっ」
「早く連れ戻すのよ。」
フーアの言葉を聞きながら、態度は変わらず。
踵返しをしながらディノスは呟いた。



全テ ハ ディノス ノ 目的 ノ 為ニ

フーア ノ 実験記録 ヲ 手ニ入レル 為ニ

二人 ノ 目的 ノ 為ニ  ハ 付ケ狙ワレル 事ニ












Reality of sorrow 第2話













「君は杖を使っての戦闘をするのか。」
「っ!?誰です!?」
パチパチと拍手、そして聞こえた言葉に一瞬驚きを向ける
「いや、驚かせて悪かったね。俺の名前はフーア=ギルベリアルだ。君は?」
「………。一体何の用ですか?」
ははは、と笑いながらもに近寄ってくる男の名はフーア。
名前を名乗られ、名前を聞かれ。
少し戸惑いながらもは名乗った。
それが最悪な結末へ向かう第一歩とも知らずに。
と言うのか。いい名前だね。」
「…ありがとうございます。」
名前を褒められれば、当たり前のように頭を下げお礼を述べ。
「君のその杖…魔力増幅の機能がついているようだね?」
「…良くお分かりで。」
「俺も魔法をかじっているからね。」
「…。」
呟くフーアの言葉を聞きながらも、必要以上には言葉を紡がない
そんなの態度を見て、フーアは何かを考え付いたらしい。
「…是非君には俺の魔法の実験を手伝って欲しいのだが。」
「…え?」
「イヤね。俺は実際は魔法の実験の助手をしているんだが……」
フーアの発言に、一瞬眉を潜め問い返す。
そんなの行動に心内で笑みを浮かべると、言葉を続けた。
「俺一人じゃ実験が進まなくてね。是非、君に手伝って欲しいんだ。」
「……そんなに大変な実験なんですか?」
フーアの言葉には問いかける。
それは、その実験に興味があるから。
自分の持つ杖が魔力増幅機能があることに気付いた者が実験の助手。
つまりは、それ以上に実力者が居るという事だ。
「……分かりました。実験のお手伝い、させていただきます。」
ニッコリ微笑みながら、フーアの申し出に乗ることにした
それが悪魔の実験とも知らずに。
それからまもなくして、はフーアとまだ姿も見たこともない魔族であるディノスによって猫との合成獣にされてしまう。

フーアはもともと、杖での戦闘をするに目をつけていた。
そして、魔力増幅をして扱う魔法に。
そして、その実力に。
ならば、素晴らしい合成獣にすることが出来るだろうと。
だが、ディノスはそれ以上の目的を持っていた。
フーアは、そこらに居る動物である猫とを合成獣にしたが。
ディノスはそれ以上の……実験を試みようとする──
それは……













「っ!!!」
昔の夢を最近良く見る
汗だくになりながら、勢い良く起き上がる。
はぁはぁ、と荒い息をしながら窓の外を見つめる。
まだ月が空に浮かんでいる時間帯。
静かに夜風が流れ、月が夜道を照らしている。
「何で……フラッシュバックみたいに………」
額からしたたる汗を手の甲で拭いながら呟く。
「……?」
「あ。起こしちゃいました?」
ふと聞こえた声に一瞬肩を揺らし───
視線を向ける。
起きていたのは、栗色の髪の少女、リナ=インバース。
「あ、違う違う。ただ眠れなくて起きてただけよ。」
パタパタと手を振りながら、の言葉を否定する。
決しての所為で起きたのではないと。
「…。何処に行くの?」
立ち上がり、部屋のドアへと向かうに、リナは問いかけた。
ニッコリ微笑み、は紡ぐ。
「ちょっと……落ち着こうと思って…外に。」
「…そう。あたしは部屋で寝てるわよ?」
「ええ、構わないですよ。」
リナの質問には簡単に答え。
リナは布団を再度上に引っぱりながら、自分は寝るという事を伝える。
はコクリと頷きながら、部屋のドアを開け────
「それじゃ……リナ、おやすみなさい。」
「おやすみ、。」
パタンと閉めながら言葉を紡ぎ、その言葉に返事を返すようにリナも紡ぐ。
その言葉がに届かないのを分かっていながら。









「……はぁ〜…やっぱり夜風は気持ちいいですねぇ〜」
そう言いながら、うーんと身体を上に伸ばす。
「女一人で何処行くつもりだ?」
「え!?」
そんなに声を掛けてきたのは、男の声。
いきなりの声に驚き、は声を上げる。
気配はなかった。
「……ゼルガディス。」
「ったく。」
振り向き、宿の入り口から少し離れた場所にあるベンチに腰掛けているゼルガディスに気付き、名前を呟く。
そんなを見て、息を吐き捨てながら。
は少し笑いながら、ゼルガディスの座るベンチへと移動し、隣に腰掛けた。
「あんた……フーアとかいう奴を探してるって言ってたよな?何でまた……実験を見てたって事は、居場所知ってるんじゃないのか?」
ゼルガディスにしては今日は良くしゃべる。
そんなことを知らないは違和感なく、問われた言葉に答えるだけ。
「私は……あの実験場所から逃げ出したのですよ。」
静かに、地面を見つめながら答えた。
「あんな場所に居たら……それ以上のどんな…酷いことをされるかも分からない。だから……」
「でも、良く考えたら自分を元に戻せる方法を知るのは奴しか居ないと気付いたって訳か?」
の言葉を耳にしながら、が紡ごうとした言葉をゼルガディスが続けた。
はその言葉にコクリと頷くだけ。
「まぁ……俺としては、アンタが逃げ出してくれたおかげで、元に戻せる方法が分かるかもしれないし…」
「良かった、って事?」
「ああ。」
夜空を見上げながら呟くゼルガディスの言葉を耳にし、ピクリと反応する。
それは、の気持ちをやわらげようとしたのか。
「とにかく……フーアを見つければ……フーアと……いつも傍に居た者の本当の目的も…分かるかもしれないですね。」
「…本当の目的?」
の言葉に、疑問が浮かび。
ゼルガディスは復唱しながら問いかけた。
その問いに、はコクリと頷き。
「私を猫との合成獣にするのも目的の一つだったみたいですけど……他に、いくつか目的があったみたいです。といっても……フーアではない…もう一人の方の目的のみみたいですけどね。」
苦笑しながらも、呟く言葉は、今後何かが起きることを予言しているようで。
「何があっても…俺は元に戻る。だから……アンタと共にフーアを見つける。」
「…………、ありがとう……。」
ゼルガディスの言葉を聞き、一瞬キョトンとした表情を浮かべた。
そして、クシャッと表情を緩めると、小さくポツリと呟く。
「見つけたぞ、!」
「「!?」」
その時、イキナリ聞こえた声にゼルガディスとは顔を見合わせ、視線を回りに配った。
すると、宿の屋根の上に人のシルエットが一つ。
「…その、声は……っ!」
、知り合いか?」
の言葉に真剣な口調で問いかける。
コクリと頷き、視線を向けたまま───
「フーア=ギルベリアル!!」
「ハハハフクククク!!!良く覚えていたなぁ!!」
「なっ!?」
の呟いたそのものの名前に、フーアは大きな笑い声を上げた。
そんな二人のやり取りを聞いていたゼルガディスが驚いた声を上げた。
フーアを探していたのはじゃないのか?
そんな思いを胸に抱くが、その疑問はすぐに解決された。
「何故っ…貴方が!?」
「何故とは愚問だな。我々の実験途中で逃げ出したのはであろう。探すのは当たり前だ。」
その言葉を聞き、ゼルガディスはハッとした。
は、フーアを探し元に戻る方法を聞きだす。
フーアは、を探し残りの実験を続ける。
そういう事だった。
「探す手間が省けましたね……私を……私を元の姿に戻してください!!」
ギリッと奥歯をかみ締めながら、フーアを睨みつけた。
すべてはフーアを見つけ出し、元の姿に戻るため。
その願いが今叶うかもしれないのだ。
「はっ!俺の芸術的な作品である合成獣を元に戻すわけがないだろ!!」
「何故です!?貴方は、もう一人の誰かと合成獣と人を分離させていたじゃないですか!!」
フーアの発言にキッと睨みを聞かせ、声を張り上げた。
合成獣と人を分離させることが出来るのはフーアのみ。
実際、その実験を目の当たりにしたことがあったにとって、疑問だらけとなる。
「確かに、俺は合成獣と人を分離させることは出来る。」
「ならっ!!俺も……俺も元の姿にっ…」
「残念だが……俺は元の姿に戻すつもりはない。もっと…他の目的があるのだからな。」
の発言に、フッと鼻で笑うと。
フーアは、腰に手を当てハッキリした口調で自分なら分離させることが出来ると肯定した。
その言葉にいち早く反応したのは、ではなく────ゼルガディスだった。
ゼルガディスの発言を耳にし、はピクッと反応し、視線を向ける。
そうでしたね……ゼルガディスも…元の姿に戻る事を望んでいたんですよね。
そう心内で呟くと、口には出さず飲み込み。
紡がれたフーアの意外な言葉にもゼルガディスもハッとした。
実験の途中と言っていたことを思い出した。
つまり、今言っていた目的と実験途中のそれは同一のものという事。
「他の目的とは何なんですかっ!?何故っ……何故私は合成獣にされなければならないのです!?」
そう叫ぶの言葉は悲痛に包まれていた。
が俺達の実験を手伝うと言ったんじゃないか。ただ…俺達は実験を手伝ってもらっただけだ。」
の発言を耳にし、笑いながら答えた。
「それは……本当か?」
ゼルガディスの静かな問いかけに、は静かに頷いた。
全てを肯定するために。
「私は……フーアに誘われたんです。杖を使っての戦闘に興味を持ったフーアが、私に実験の手伝いをして欲しい…と。」
「その通りだ。俺はただ実験に参加してもらうために誘った。」
「だけど…私は、その実験の手伝いの意味を知らなかったんです。」
の言葉を聞き、フーアが言葉を紡ぐ。
そして、コクリと頷きながら実験の手伝いの本当の意味を知らなかったことをゼルガディスに伝える。
実験の手伝いの本当の意味。
それは、実験体として実験に参加するという事だった。
「俺は、以前からに目をつけていたんだ。杖で戦闘するなんて…珍しいしな。それに……何より強かった。」
全ての答えがフーアから紡がれた。
すべてはかなり前から計画されていた実験だったのだ、と。
「それは……お前一人の計画なのか?」
そう問いかけてきたのはゼルガディスで。
その口調は怒っているようにも聞こえた。
リナもアメリアもガウリイも起きて来ない今、を守れるのはゼルガディスのみだから。
「カッカッカッ!俺一人でこんな大掛かりな計画を実行するものかっ!全ては、あの方のため!」
そう呟くフーアは大きく腹から笑い声を上げた。
「…あの、方?」
は、フーアの呟いた“あの方”という発言に眉を潜めた。
あの方とは、いつも実験の際には傍に居た人だろうか……と。
「そう、あの方!俺に合成獣の実験の際に力を貸してくれる……」
「…この計画、この実験の首謀者……という事ですね?」
フーアの発言を、は脳内でまとめて呟いた。
それは、実験に手を貸すときに言われた言葉を思い出したから言えたという事もあるのだが。
「その通り!!」
「なら…その首謀者の名前を教えてもらいましょうか?」
「!?」
フーアの自信満々な発言を聞いた瞬間。
ヒタッとフーアの首筋に鈍い銀色が輝いた。
それは、リナがいつも愛用するショートソードと同じだった。
「……リナ!」
フーアの背後に居たのは、リナだった。
気配を消し、足音を忍ばせてフーアの後ろに歩み寄っていたのだ。
「何故!?貴様の気配はしなかったぞ!!」
「……ゼルとに気を取られすぎだったようだな。」
「背後に忍び寄るのは、容易かったですよ?」
リナのいきなりの出現に驚きの声を上げるフーア。
静かに暗闇の中から、月明かりの当たる場所へと足を伸ばし、呟きながら現れたのは、ガウリイとアメリアだった。
「貴様ら!寝ていたんじゃないのか!?」
「ここまで騒がれたら気付くに決まってるでしょ?アンタ馬鹿?」
フーアは微動だにせず、後ろに居るリナへと驚きの声を掛ける。
すると、リナは呆れた口調で呟いた。
「さ、答えてもらいましょうか?首謀者の名前を………」
「……。」
リナの言葉に、フーアは答えず無言のまま。
すると、リナは再度太い声でこう呟いた。
「このまま答えずに、パジャマのガウリイに襲われるのと……きちんと答えるのどちらがいい?」
「…え゛?」
リナの発言にフーアはカチンと表情を凍らせた。
「おい、リナ……また、そういう脅しかよ。」
そう呟くガウリイはげんなりした表情。
以前にも似たようなことがあったのだ。
「わわわわっ分かった!!」
「そうこなくちゃっ!」
慌てて声を上げるフーアに、リナはウインクを飛ばす。
「首謀者の名前は……ディノスというんだ。」
「ディノス?……一体、何者なんでしょう?」
フーアの紡がれた、首謀者の名前ディノス。
その名前に反応し、アメリアはリナに視線を向けて問いかけた。
「魔族だよ。」
「「「「「!!!」」」」」
フーアの発言に、その場に居る全ての民───
リナ、アメリア、ガウリイ、ゼルガディス……そしてが驚きの表情を浮かべた。
「一体………何を企む?」
「ディノス様は、猫との合成獣にしたを…再度、高位魔族と合成させ…」
「そんなことをしたらっ……の人格はっ!!!」
ゼルガディスが低い声で呟くと、フーアが静かに言葉を発し始めた。
その言葉は意外な言葉で。
まさか、猫との合成獣にしたをこれ以上の屈辱をまとうとは───
4人はそう思った。
「そうだ。高位魔族との合成獣にすれば、の人格は失われ……俺達の思うがままには行動するだろう。」
「思うが侭に……どうするつもりなんですか!?」
フーアの発言に、カッとフーアを睨みつける。
ここまで怒ったを見るのは、フーアもリナたちも初めてだった。
「人を殺させ………」
「まさか!!」
途中な発言を聞き、リナはハッとした表情を浮かべる。
フーアの言葉をさえぎり、リナは声を張り上げた。
その言葉にリナ以外の全ての者の視線がリナに集まり……
「降魔戦争再来……させるつもり?」
「「「「!!」」」」
リナの紡いだ6つの音に、アメリア、ガウリイ、ゼルガディスは息を呑んだ。
フーアは、その言葉を紡ごうとしていたために、驚きはしなかったが。
何故分かったのだ、という表情を浮かべていた。
「良く…分かったな。その通りだ。そのために……が俺達には必要なんだよ。」
「馬鹿な事…言わないでください。私は………私は高位魔族との合成獣になんてなりませんし…降魔戦争再来なんて…させません!」
「そんなの当たり前よ……。全力で…止めてみせる!」
フーアを睨み付けたまま、先ほどのように怒らずには言葉をぶつける。
拳をギュッと握り締め、奥歯をかみ締める。
リナも他の三人もと同じ思いだったのか、リナの発言を聞きコクリと力強く頷いた。
降魔戦争再来なんてさせちゃいけない。
は心内でそう呟き、音には発さず飲み込んだ。
「止める…か。だが…こちらもそう簡単に止められちゃ困るんだよ。」
そういうと、フーアはスッと瞳を細めた。
その様子に気付いたゼルガディスは腰に差してある剣の柄へと手を伸ばす。
「今日は戦いに来たんじゃないさ。せいぜい……足掻くんだな、。最後には……俺達が勝つ。」
そういうと、フーアの姿は闇夜に消えていった。
残るはパジャマ姿なリナたちの姿。
「…………。」
。」
無言のまま、フーアの消えた空間を見つめるにリナは声を掛けた。
静かに近寄り、ポンッと肩に手を乗せて。
……大丈夫?」
「ええ、何とか大丈夫です。」
リナの心配気な言葉に、安心させようと無理に笑みを浮かべる。
しかし、そんな笑みはリナの心配を余計にあおる事に。
「大丈夫そうな顔には見えないけど?」
「っ!」
静かな口調での顔をまじまじと見つめる。
その発言に、は息を呑む。
「ったく。あんな事実聞かされて……平気で居られるほど馬鹿じゃないだろ。」
ハァッと息を吐き捨てながら、ゼルガディスが呟く。
を高位魔族との合成獣にする。
人格を奪い、人を殺させ降魔戦争再来を求める。
この二つの事実を聞き、平気で居られるのであればどんなに楽なことか。
他人事であれば、少しは楽なのだろうが、実際は自身に関係していることで。
「これから、きっとフーア達はさんを追ってくるでしょうね。」
「そうねー…ま、あたし達が居るんだし、平気でしょ。」
アメリアのため息交じりの発言に、リナは頷き肩をすくめた。
「……何だか…本来なら、やっともとの姿に戻れるはずだったのに……面倒なことに巻き込んでしまってごめんなさい……。」
シュン、としたように肩を丸め、地面を見つめる
その発言を聞き、リナはツカツカとに近づき───
「なーにしけた事言ってるのよ!あたし達が勝手に首を突っ込んだんだから!」
「アンタは気にすることないぜ。」
リナはあははーと笑いながら、の背中を軽くバシバシっと叩く。
そして、ゼルガディスはそんなリナに呆れた顔を向ける。
「つまり……俺達はどーすればいいんだー?」
「ガウリイ!!アンタ、今の今まで何を見てきたの!?」
そんな中、ボケーッとした口調で呟いた。
バコッと音のするようなツッコミをガウリイにしながら叫ぶリナ。
「ですから、ガウリイさん。私達は、フーアとディノスを探し出すのが目的です。居場所を簡単には白状しないでしょうから…大変でしょうが。」
「まぁ、その辺は色々な町で聞けば何とかなると思いますけど……。」
「で、奴らはを手に入れる為に、俺達に攻撃を仕掛けてくるだろう。」
ガクッと肩を落とすリナの代わりに、ピッと指を立てて説明するアメリア。
その言葉を繋ぐように、が呟き。
最終的な敵の目的をゼルガディスが述べた。
「ふーん…。つまりー俺達は今の敵の居場所を探してー奴らは俺達に攻撃してくるわけだなー。」
「だから、そーだって言ってるでしょうが!!」
ガウリイが間抜けにまとめるような言葉に、リナがバシッと再度突っ込み。
「でも……そう簡単に、フーア達の居場所が……見つかるとも思えませんね。」
「…だな。」
は右手をあごに当て、眉間にシワを寄せながら考え込む。
その考えにゼルガディスも賛成のようで。
「なぁ、。」
いきなりに問いかけてきたガウリイに、は首をかしげ視線を向ける。
「奴らの所から逃げ出したときの居場所を覚えていないのか?」
「「「!」」」
ガウリイにしては鋭い問いかけに、アメリアとリナとゼルガディスが顔を見合わせに視線を向けた。
うーん、と唸りながらその状況を思い出そうとする
「結構前の事ですし……」
そう言いながらも、記憶は徐々に昔へさかのぼっていく。
「あ!」
「何か思い出した!?」
声を上げたに即座に反応し、問いかけるリナ。
コクリと頷き、息を呑む
「確か……近くに“ニービド城”と書かれた看板がありました。」
「ニービド城、ですか?」
「はい。」
記憶を逆上ると、思い出す看板の文字。
その城の名前を口にすると、アメリアが復唱した。
コクリと頷き、眉にシワを寄せ。
「どの街だか村だかは分かりませんが……近くにニービド城があったはずです。その近くの森の地下に……本拠地があったはずです。」
「ちっ地下ぁ!?」
思い出しながらも、その本拠地のあった土地名は思い出せず。
しかし、地下に本拠地があったことを思い出し、付け足す。
その言葉に驚きを浮かべたのは、全ての者。
「とにかく、だ。の言っていた“ニービド城”を探すことを先決しよう。」
「そうね……。それ以外の目印とかもないみたいだし…。」
「すみません……」
話が横にずれている、という事でゼルガディスが内容をまとめた。
その言葉にコクッと頷きながらリナも呟き。
自分の記憶力のなさに、は嫌気がさした。
もっと、ちゃんと覚えていればリナ達にも迷惑かけなかったのに──と。
しかし、そんなの言葉にリナは苦笑を浮かべ“気にしないの”と言ってくれた。
「それに、フーア達が私達に攻撃を仕掛けて来て下されば、色々聞き出せるかもしれませんしね。」
「そうですね……。」
「でも、手下を送り込んでくるかもしれないぞー?」
アメリアの発言に、は賛成の言葉を浮かべる。
確かに、分からなくともその本拠地に居るフーアと接触すれば何らかの情報を手に入れられるかもしれない。
しかし、ガウリイの発言でその場の雰囲気が変わる、が。
「手下でも情報を聞き出せるわよ。」
ハァッとため息を付きながらリナは答え。
は意を決して口を開いた。
「もしも…何の情報も手に入れられず、本拠地が割り出せなかったら……その時は私……奴らにわざと捕まります。」
そう呟くの表情は決意に満ちていた。
わざと捕まり、本拠地へ案内させ。
その後ろを気配を消してリナたちが追いかけて貰おうとは考えていた。
後々、外で落ち合えば何とかなるだろうし……という事。
しかし、それと同時に本拠地に乗り込めば自然と魔族であるディノスと接触することとなる。
つまり、戦闘は免れないという事だ。
向こうはの身体が必要で、こちらはフーアの持つ知識を欲する。
つまりは、力づく……という事となる。
「それは……最終手段にしておくか。なるべくは使いたくはないが。」
ゼルガディスは、否定するわけでも肯定するわけでもない発言をした。
それは、にとって一番救いのある言葉。
否定されれば、どうすることも出来ず。
肯定されれば、自分が痛い目を見るかもしれない。
言ったは良いが、やはりこの方法は使わずに済めばその方がいいから。
「まずは、明日このミスティアで話を聞きまわりましょう。」
“ニービド城の”という言葉を抜きながら、それでも話は繋がる。
リナはフゥッと息を吐き、全員にそう指示をした。
その言葉に、リナを除いた4人がコクリと頷く。
「じゃ、今日はこれで終了!おやすみー。」
パンッと両手を合わせ、終わりを主張。
大きなあくびをしながら、宿の中へと足を向けるリナ。
そんなリナの後を追うように、それぞれ取った部屋へと向かう。














「ディノス様。只今帰りました。」
「どうだった?」
本拠地に到着し、一礼するフーア。
そんなフーアに視線も向けず現状を問いかけるディノス。
「はっ。一行は見つかりました。」
「…一行?」
「はい。リナ=インバース達と合流し、協力し合ってるようです。」
ディノスの問いかけに、素直に現状報告。
すると、一行という言葉に反応し、ディノスはフーアに問いかけた。
視線もフーアに向けて。
すると、フーアはペラペラっと素早く理由を述べる。
「なるほど。まぁ……そんなことはどうでもいいわ。」
そういうとディノスはこう継げた。
「私はフーアの実験実録が必要なの。そして……たくさんの人格を失った合成獣を作りだし──降魔戦争を再来させる。」
「そのために、俺はディノス様に尽くします。」
ディノスの発言を耳にしながら、フーアは瞳をハートに変化させながら自分の意思を主張。
フーアは私に惚れている。だからこそ……動かしやすいのよ。
そう内心呟きながら、ディノスは笑みを浮かべた。
フーアに分からないほどの微かな笑みを。
「あ、ディノス様!」
「何かまだあるの?」
「奴らにディノス様が降魔戦争再来をさせようとしていると…バレたかもしれません。」
全てをきちんと報告しないのはディノスが怖いから。
ディノスに嫌われるのが怖いからであろう。
バレたかもしれない、という程度にとどめたのはそいういう部分があるから。
「まぁ…構わない。結局のところ、私達はが必要で攻撃を仕掛ける。が、達はフーアの合成獣を人に戻す知識を求めているから…自然と接触できるわね。」
そう呟くディノスの口調は面白いことになりそうだ、と物語っていた。














全てのピースが今揃う

待ち受けているのは 最悪なる運命か 最高な運命か

その全ては 達次第である

今後訪れる 運命を まだ 誰も知ってはいなかった────















To be continued............................















ふーわー……
2話目終了でーす!!
結構間が空いちゃってて、話が自分の中でこんがらがってます。
なので、あとがきでは今後こんな風になるかもーな発言は控えます(ぁ
というか、控えたほうが楽しみですよね、読んでる方もvv
てことで、次回のあとがきでまたお会いしましょう!






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