いつ出てくるかも、いつ居なくなるかも分からない神出鬼没なあいつ

けど……今度出てきたら絶対に渡してやるんだからっ

それが……あたしの愛情表現………












You always go the front












「ほんっとうに神出鬼没よねー…」


最後に姿を現したのはいつだっただろうか。
そんな事を考えながら、は今朝取った宿の部屋で寛いでいた。
ベッドに横になり、ブラブラと足をばたつかせる。


「それが僕の特権ですから」


「ゼロス!?」


聞こえた声に慌てて声を上げた
置きあがり、視線を巡らすとゼロスは部屋の窓辺に腰掛けていた。



本当に神出鬼没なんだから……ビックリしたわ…



苦笑を浮かべながら、ベッドの上に座りなおす。


「そんなとこに座ってないで、こっちに来たらどう?」


「誘っているんですか?さん」


「ばっ!何言ってんのよ、ゼロス!」


ポフポフとは自分の座る横を叩き、ここに座れと指し示す。
が、ゼロスの言葉には顔を真っ赤に染め上げた。


「いやいや、初々しい反応ですねぇ〜」


「人の反応見て楽しむな!」


「いいじゃないですか、僕の一つの楽しみなんですから それを奪う権利はさんにだってありませんよ?」


「魔族が権利とか主張すんな!」


どうやらゼロスのペースにはまってしまった
真っ赤な顔のまま、必死に声を上げるを見てゼロスはやはりクスクスと笑っている。

トス…


「………へ?」


いきなり視界が転回した。
突然の出来事に、は反応しきれずにいた。


「何を間抜けな声を出しているんですか?」


「な、なななななな、何してっ!」


視線の先に、ゼロスの顔が見えた。
そして、その顔の後ろには宿の見慣れた天井が。

そこで漸く、自分がゼロスに押し倒されたことを悟った。


「誘ったのはさんですよ?」


「誘ってない!今日は、面と向かって渡したいものがあったから、こっちに来てって言っただけ!」


ゼロスの言葉を必死に否定。
そして、本当の理由を口にするとゼロスは眉間にシワを寄せ疑問そうな表情を見せた。


「渡したいものがあるって言ってるでしょ!?さっさと退いて!」


とにかく、今の現状を何とかしたかった。
だから、は強いもの言いでそう言った。


「そう、強く言わなくても退きますよ さんはせっかちですね」


クスクスと笑いながらも起き上がると、は慌てて立ち上がった。
ちょっとばかりゼロスと距離を置く。


「そこに座って動かない!絶対!待つ!いい!?」


「そこまで命令しなくても……」


ちょっとだけショボンとしてしまう。
そんな事もお構いなしに、は紫と赤のチェックの包装紙に包まれた箱を取り出した。


「これが、ゼロスに渡したかったもの」


そう言い、はゆっくりとゼロスに差し出した。
軽いけれど大切なもの。
その扱いを見て、ゼロスも大切なものだと悟る。


「これはなんですか?」


「今日が何の日か分かってて言ってる?それともガウリイ並の馬鹿?」


「おや、失礼ですねぇ〜さんってば」


の冷たい一言に、苦笑しながら軽い口調でゼロスは言った。
その口調は、今日が何の日かを知っているような感じ。


「分かっていますよ 今日はバレンタインデーでしたよね」


「分かってるなら聞かないでよ」


「いいじゃないですか、さん」


むぅ、と頬を膨らませるを見て苦笑する。
そして、それを持ちゆっくりと立ち上がるとに近づいた。


「ありがとうございます、さん じっくり味合わせて頂きますね」


の右手に静かにゼロスは唇を落とした。










............................end




ゼロスを書いてると、どうも遙かの弁慶とかぶってしまう…(汗)
どっちも敬語で、私の描くゼロスが紳士的なのがいけないんだ!(ぁ)

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