darkness of holy 第四話
「リナ?」
「ん?あ・・・もう朝?」
「そうだよ・・・まさか、ずっと起きていたの?」
ボーっと無表情で頬杖をつき、外を見つめるリナに後ろから小さい声で話しかけた。
その声に気づいたリナはパッと顔に笑顔を作り、の方に顔を向けた。
「・・・何か考えていたの?」
「え?」
「だって・・・ほら、眉間のしわ。」
ぽかんとした顔をしたリナの眉間を指差して答える。
リナはしばしを見つめ、後にプッと噴出し笑い出した。
「え?え?何で笑うの?」
「な、何でもないわよ。あのね・・・ずっと貴方の・・・の事を考えていたのよ。」
いきなり笑い出したリナにおろおろする。
そんなに向かって、まだ苦笑しながらも言葉を続けるリナ。
「あたしの事を・・・・考えていた?」
「そう。貴方の正体とか、何故フームという魔族に狙われるのか。ゼロスとその上司ゼラスとの関係。これをずっと考えていたのよ。」
「ゼラス?」
「それは、僕の上司、獣王様のことですよ。」
の呟きに後ろからいきなり現われたゼロスが答えた。
「ゼロスっ!?」
「ゼロス・・・隠れていたのね?」
驚き振り向くと対照的なリナ。
ゆっくりと振り向きながら、「勘付いていた。」といわんばかりの顔でゼロスを見つめた。
「はい。ずっと居ました・・・と言っても、最初の方は気配を断ち切っていたので気づいていなかったらしいですが・・・・獣王様の名前が出たので・・・・」
リナをジッと見つめたままゼロスは言葉を続けた。
「ゼロス。あたしにも教えて欲しいの。なぜがフームという魔族に狙われ、なおかつ魔族であるゼロス、そして獣王ゼラスがを守っているのか。仲間であるあたしには、知る権利があるんじゃないかしら?」
リナはとゼロスを交互に見つめながら言葉を続けた。
「ダメっ!!」
そのリナの言葉に返事を返したのはゼロスではなくだった。
「何故?何故ダメなの?」
「そ・・・それは・・・・」
リナの質問に顔を強張らせて、言葉を詰まらせる。
「一緒にフームを倒すと言って、一緒に旅をしている。もう、話してくれても良いんじゃない?」
そんなリナの言葉に、はしばし目線をそらした。
「聞かなければ・・・まだ後戻りが出来るから。あたしの事を知ってしまったら・・・もう後戻り出来ないわ。」
「そうですね。リナさんが、さんの正体を知らなければまだ後戻りが出来きますからね。」
の言葉にゼロスも賛成していた。
「リナ。命を無駄にするような事はしないで。あたしは、出来ればここでリナたちと別れ一人でフームを打ちにだって行くわ。というか、出来ればそうして欲しかった。でも、リナはそんなこと許してくれるわけないし・・・」
「ま、当たり前よね。」
の長ったらしい言葉にふぅっと息をはき、答えるリナ。
「というか、いまさら身を引くなんて無理だと思うわよ、あたしは。」
「え?」
「だって・・・ここまでと絡んじゃってれば、あたしたちはどうであれフーム達はの仲間だって思うわよ。もう、今更って感じよね。」
はははと苦笑しながら言葉を続けるリナ。
確かに、フームの刺客をと一緒に倒し続けるリナ。
そのことがフームにばれていないと嘘になる。
「まぁ・・そうですねぇ。ここまで関わってしまうと・・・無事に抜けられるというのは無理に近いかも知れませんね・・・」
リナの言葉に賛成、とまでは行かないが同じような事を考えるゼロス。
「・・・・分かった。次の満月の日にリナ達も一緒に話に参加して良いわ。」
ポリポリと頬をかく。
「ゼロスは・・・・それでも良い?」
「僕はかまいませんよ。」
「それじゃ・・・次の満月の日に、あたしのこと全てをリナたちに教えるわ。」
グッと握りこぶしを作って宣言する。
「でも・・・」
「でも?」
「聞いてしまったら完璧に後戻りは・・・出来ないからね。」
「分かってるわよ。それを覚悟で言っているのよ。それに、魔族が関わっているとなると、目覚めも悪いしね。」
そう言うと、リナはニッコリ微笑んでの頭をポンポンと叩いた。
「長い戦いになるかもしれない・・・わね。」
そう小さく呟くと、リナはスッと立ち上がった。
「さてと・・・一階の食堂行くわよ、。」
「あ、うん。ゼロスはどうするの?」
「僕もご一緒させていただきますよ。」
そういうとリナ、ゼロス、の三人は一階の食堂へ向かい始めた。
「あ、リナさん。さん。遅いじゃないですかぁ〜待ちくたびれちゃいました。あ、ゼロスさんもいたんですか。」
手をパタパタと振って居場所を教えるアメリア。
言葉の最後に何かトゲ着きのような言葉をゼロスに向ける。
「アメリアさん、ちょっと今の一言は酷いですよぉ〜」
情けないという顔をしての横のイスに座るゼロス。
「ちょっとお取り込み中良いかしら?」
そんなアメリアとゼロスの間に割り言ったリナはくるりと周りを見渡した。
「何ですか?」
「大切な話よ。ゼルもガウリイもテーブルの中央に顔持ってきて。」
グイッとボケっとするガウリイの顔を引っ張るリナ。
「いてててて・・・・痛いよリナ。」
「で、話とは何だ?くだらん事だったら俺は遠慮するぞ。」
「次の満月の日に全員の部屋に集合。話の内容はについて。そしてフームが何故を狙うかなどなど。OK?」
完結に話すリナは「OK?」と聞きながら全員の顔を見つめる。
「あぁ。そういうことなら。」
「私もOKですよ。」
「俺も良いぜ。」
とゼルガディス、アメリア、ガウリイの三人からも了解を得た。
「それじゃ、さっそく食べ始めましょうか。」
にっこり微笑むとテーブルの上においてあったチキンをバシッと勢い良く取った。
ぱくっ・・・
「ん〜おいひいわぁ〜」
とろぉんとした目をしてチキンをほおばるリナ。
「あんたがリナ=インバースか?」
チキンをほおばるリナに後ろから話しかける一人の男。
「そうだけど?あんた誰?」
チキンを口から離し、後ろに佇む男に話しかける。
「俺か?俺の名はインチェンディオだ。」
「長い名前ね・・・・インディオチェンだっけ?」
「インチェンディオだっ!!」
「あははは。分かってるわよ、インチェンディオさん。で、一体何のよう?あたしたち今食事中なんだけど・・・」
と後ろを見ずに話し続けるリナ。
ガウリイ達はそんなリナとインチェンディオの様子を静かに見守っていた。
「フーム様の命令でな。を殺しにきた。」
「そう。でも、を殺させはしないわよ。」
「人間が俺にかなうわけがないだろう?」
「そういう自信は命取りになるわよ。で、今食事中なの、後にしてくれない?」
リナはフッと鼻で笑うと、パッとテーブルの上に置かれた食べ物を見つめた。
「おい。俺を無視するな。」
「一体何なのよ。もう少し待てないの?」
「あぁ、待てないな。なんなら、ここで食堂の人間一人ずつ殺して行こうか?」
リナのあきれた声に少々米神をピクピクと震わせながら聞き返す。
インチェンディオはニヤリと口元に笑みを浮かべると、食堂を見渡しながら言葉を続けた。
「な゙っ!?」
インチェンディオの言葉にリナだけでなくガウリイ達もも声を上げた。
がたっ・・・
一番最初に立ち上がったのはだった。
「外に出て。ここで無駄な殺生はしたくないわ。」
そう言うと、は食堂の外を指差した。
の動きを見て、インチェンディオは笑みを浮かべた。
「初めから、そう動いていれば良いのだよ。くっくっく。」
そう言うと、はインチェンディオを先に食堂から追い出した。
「ガウリイっ!もう食事は終わりよっ!!」
ガウリイの耳をグッと引っ張るとリナは急いで食堂から出て、の後を追った。
インチェンディオはズンズンと森の中に足を踏み入れていった。
−何処まで・・・・行くのかしら。
インチェンディオを後ろから様子を伺いながら、は後をつけていた。
「さて・・・この辺で良いだろう。」
そういって立ち止まったのは、森の中にある大きな湖の前だった。
「え?ここ?」
が小さい声で呟いた瞬間、インチェンディオはフワリと宙に浮き、湖の中心に立った。
「さぁ、ショータイムの始まりさ。」
ばちばちばちばちっ!!!
「っ!?けっ結界!?」
インチェンディオが何をしたのか、一番最初に分かったのはリナだった。
「その通り。結界だよ。そこに隠れているのは誰だ!?」
インチェンディオはくっくっくっと笑いながらふと目に映った姿に向かって声を投げかけた。
「僕のことですか?」
にっこりと笑みを浮かべた人の良さそうな青年、ゼロスが木の陰から現われた。
「ゼッゼロス。お前、何でここにっ!?」
「あれ?気づいていなかったのですか?食堂ではずっとさんの隣に座っていたのですよ?」
くすくすと笑いながら驚き問いかけてきたインチェンディオに答えた。
「ぐっ・・・・」
しまったといわんばかりの顔でゼロスを睨みつけるインチェンディオ。
そんな2人を見つめたまま、動けずに居る達。
「さて・・・早くインチェンディオさんを倒しましょうか。」
と、語尾にハートマークのつく様な口調で言った。
スッと滅多に開かない瞳を開き、ゼロスはインチェンディオを見つめた。
「ふっ・・・お、お前らごときがフーム様に力を分け与えて貰った俺にかなうわけがないっ!!」
虚空から現われた緑色のムチを掴むと、達を睨みつけて叫んだ。
「フームに力を分け与えてもらった?」
はインチェンディオの言葉に疑問を持った。
「フームの手下達には額に星のマークがありますよね?それがその印です。普通の魔族や魔獣よりかは強いですよ。」
杖をギュッと掴み、ゼロスは疑問を持ったに答えた。
「そういう事だ。」
「ですが、僕達はそうは甘くありませんよ?」
インチェンディオは余裕の笑みを浮かべたまま、言い放った。
しかし、ゼロスはニッコリと笑みを浮かべインチェンディオに言った。
「ふん。あのガーヴやフィブリゾ、一欠けらのシャブラニグドゥ様やダークスターを倒した事のあるヤツならば油断ならぬが、お前らごとき、簡単に倒せる。」
そう言うと、インチェンディオは湖の中央から攻撃を仕掛けてきた。
「来ますよっ!!」
アメリアはインチェンディオの攻撃を見つめ、叫んだ。
「光よ!!」
「アストラル・ヴァイン!!」
ガウリイとゼルガディスは剣をスッと抜いた。
ヴンッと音を立てて柄しかない剣に光がともった。
一方ゼルガディスは剣を上に振りかざし、剣に魔力を込めた。
「はぁぁぁぁ!!」
ガウリイとゼルガディスはインチェンディオの攻撃を避けながらインチェンディオに近づいていった。
「ヴァス・グルード!!」
アメリアとリナは声を合わせて、自分たちの前に小さい盾くらいの大きさの魔法障壁を生み出した。
「ダーク・クロウ!!」
は巨大鎌で攻撃をなぎ払いながら、インチェンディオに向かって魔法を発動させ、黒い羽虫のような、輪郭のぼやけた魔力弾を打ち出した。
「無駄だぁぁぁぁぁ!!」
の攻撃を紙一重で避けながら、ムチを振るうインチェンディオ。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「!?」
ハッとした顔をしては声のするほうに振り向いた。
「リナっ!?」
インチェンディオのムチが鋭く変形し、そのムチがリナの太ももを貫通していた。
「リナっ!?」
「リナさんっ!?」
「ちっ・・・」
リナの声に反応し、振り返ったのはだけではなかった。
ガウリイ、アメリア、ゼルガディスも反応し、振り返っていた。
しかし、その隙を見逃すインチェンディオではなかった。
即座に鋭く変形したムチでガウリイ、アメリア、ゼルガディスのことも襲い掛かった。
三人は上手く避けたが、完璧に避けるのには反応が遅すぎてリナと同様に太ももを貫通してしまった。
その様子を見ていたはバッとインチェンディオの方に振り返った。
「よくも・・・・」
そこまで言うと、は巨大鎌を強く握り締め、湖の中に入っていった。
「!!ダメだ・・・・入っちゃ駄目だっ!!」
が湖の中に入っていっているのに気づいたガウリイは急いでに声を掛けた。
しかし、はガウリイの声を気にせずインチェンディオの方へ向かって歩き始めた。
「っ!!戻って来いっ!!!!」
ガウリイは懸命に声を張り上げた。
しかし、足の痛みで動くことが出来ず、その場に立ち尽くすしかなかった。
その頃、アメリアは魔法で傷を少しずつ治していった。
「さん。どうするつもりですか?」
フッとの横に姿を現したゼロスは無言のままインチェンディオに近づくに話しかけた。
「どうするも何も・・・倒すだけ。」
低い声でゼロスに返す。
そんなの顔を覗き込んだゼロスはを見て驚いた。
「!?」
の表情が魔族と同じような表情をしていて、目が鋭く切れ長になっていたからだ。
「ごめん・・・・ゼロス。手を、出さないでもらえる?」
そう小さく呟くと、巨大鎌を握り締め、インチェンディオに向かって歩き始めた。
「・・・さん。」
ゼロスはのただならぬ雰囲気に驚き、を止めることが出来なかった。
「くくく・・・・。お前からやってきてくれるとは嬉しいよ。」
ニヤニヤと笑いながら、インチェンディオはムチを握り締めた。
「そう?でも・・・インチェンディオ、あんたはここで死ぬのよ。」
そう低く冷静に言い放つとは顔を上げ、真っ向にインチェンディオを睨み付けた。
「!?そっ・・・その目は何だ、その目はっ!!狂ったか!?」
「あたしは狂ってなんか居ない。あたしは普通よっ!!」
インチェンディオの叫びに対し、冷静に言葉を返す。
インチェンディオを睨みつけたまま、は駆け出し距離を縮めた。
「水の中と上では、俺の方が有利だっ!、お前の負けだ!!」
インチェンディオがそう叫んだ瞬間、の巨大鎌が上に振り上げられた。
ヴンッ!!
その瞬間、の持つ巨大鎌が大きく震え上がった。
銀色の巨大鎌が瞬時に黒と金色の光に包まれた。
「あたしは、あんたを許さないっ!!」
の叫び声と同時に巨大鎌が振り下ろされた。
ごぉぉぉおぉおおおぉぉぉぉおおぉぉ!!!
大きな音と共に巨大鎌から黒と金色の光がインチェンディオに向かって突き進んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!きさ・・・・ま・・・・・」
インチェンディオは苦痛の声を上げ、無数の肉片へと変貌した。
「・・・・・?」
そんなの後姿を見ていたゼルガディスが小さく声を掛けた。
「え?あ・・・・何?」
はゼルガディスの声に気がつき、振り返った。
あの鋭い魔族のような切れ長の目のままで。
「!?」
ゼルガディスはそんなの顔を見て、驚いた。
「ゼルガディス?」
「あ・・・いや。何でもない。」
の声に気づき、ハッとしたゼルガディスは強張った顔のまま、何でもないとに言った。
そのゼルガディスの反応で、は何が起きたか理解をした。
「その顔で、何処が何でもないんですか、ゼルガディスさん?」
アメリアはひょこっとゼルガディスの後ろから現われて、顔を覗き込んだ。
「ア、アメリア・・・・驚かせるな。」
ゼルガディスはいきなり現われたアメリアに驚き声を上げた。
「ねぇ、そうじゃないですか、さん?」
に同意を求めようと、アメリアはゆっくりとの方に顔を向けようとした。
ビクッと体を震わせたに気がついたゼルガディスは、瞬時にアメリアの目を手で覆い隠した。
「あ、ゼルガディスさんっ!?何をするんですかぁ!!」
ゼルガディスの手で目を隠され、周りが全然見えないアメリアはバタバタと両手を動かした。
その間には自分の心を落ち着かせ、いつもの表情に戻った。
「ぷはぁぁぁ!!もう、ゼルガディスさん!」
アメリアはゼルガディスの手が目から離れた瞬間、頬を膨らませてゼルガディスを見た。
「あ、さん。大丈夫ですか?」
ハッと思い出したは急いでの方を見た。
「あ、うん。大丈夫よ。」
「リナさーん。さん大丈夫みたいです。そっちは大丈夫ですか?」
アメリアは陸の方でガウリイの傷を治しているリナに問いかけた。
「えぇ、こっちも何とか大丈夫よ。」
アメリアの問いかけに答えるリナ。
その声を聞いたアメリアはホッと息を吐き出し、陸の方に歩き始めた。
勿論、ゼルガディスの腕をがっちり掴んだまま。
「ゼロス。居るんでしょう?」
アメリアとゼルガディスが遠く離れた瞬間、は声を掛けた。
「はい。居ますよ。」
「さっきのあたしの顔・・・・見てた?」
ひょこっと現われたゼロスに視線を移さず問いかける。
「はい。しっかりと・・・・見てました。」
ゼロスは静かにの問いかけに答えた。
そんなゼロスに対しては「そう。」と静かに返した。
「ゼロスは、知っているのよね。あたしがフームに狙われる理由とか、いろいろと。」
ふぅっとため息交じりの言葉に、ゼロスは静かに頷いた。
「満月の日・・・リナたちが居るからって遠慮しないでね。ちゃんとありのままを話して頂戴。リナ達は・・・・もう決心したみたいだから。」
「え?」
のいきなりの言葉にゼロスは声をもらした。
「ゼルガディス・・・あたしの顔を見て驚いていたけど・・・何か決心したかのような顔をしていたわ・・・・だから・・・・」
陸に向かいながら、はゼルガディスのさっきの様子を話した。
「そう・・・ですか。分かりました。さんがそう言うのであれば大丈夫ですね。満月の日、きちんとお話いたします。」
「ありがとう。」
そろそろ陸に近づいたという頃、話に区切りをつけ、はゼロスにお礼を言った。
「いえいえ。」
いつものニコ目で答えるゼロスはの後ろを歩きながら湖の中から陸に上がった。
「あ、リナ、ガウリイ。大丈夫?」
陸に上がったは急いでリナ達の方に駆け寄った。
そのの後ろをゼロスは静かについていった。
「なんとか・・・ね。そんなに酷くはなかったから。」
「そぅ・・・よかったぁ・・・」
ヘタヘタと地面に膝を付けると気が抜けたように肩の力を抜いた。
「は大丈夫なのか?」
リナの横で座り込むガウリイがに声を掛けた。
「なんとか・・・・ね。」
そんなガウリイにウインクで返した。
「ごめんね・・・あたしなんかに関わったせいで・・・・やっぱりここで別れた方が・・・」
はしょんぼりした顔をして、リナにそう問いかけた。
「何言ってるのよ。あたし達からこのことに首を突っ込んだのよ。それに、の事も心配で気に掛かるし。ここで別れたら死ぬまで気がかりよ。」
苦笑しながらリナはポンポンとの肩を叩いて言った。
「リナ・・・本当に皆、良いの?」
「何度も確認しなくても良いんだぜ、。」
ゼルガディスはフゥと息を吐き、苦笑しながら答えた。
「ゼルガディスさんの言うとおりですよ!私達は自分たちから首を突っ込んだんです!さんに責任はありませんよ!!」
ギュッと拳を力強く握り締めたまま、アメリアはキラキラと瞳を輝かせて熱弁した。
「アメリア・・・・ゼルガディス・・・リナ・・・ガウリイ・・・ありがとう。」
それぞれの名前を呟きながら顔を見つめ、最後に笑みを浮かべお礼を言った。
「勿論、僕もさんの力になりますよ。」
と、の後ろから肩に手を掛けて小さく言った。
「ありがとう・・・本当に嬉しい。」
頬を少し赤らめて笑みを浮かべる。
「さて・・・いきなりですが、良いですか?」
の後ろに座っていたゼロスがいきなり立ち上がり声を掛けた。
「何?」
「明日、いよいよ満月です。明日の夜、ここに来てもらえますか?」
ゼロスはジッと達を見つめたまま、問いかけた。
「あぁ。それは別に良いが・・・」
「例の話ね?」
ガウリイが曖昧に答えた瞬間、リナが確信をつくように小さく呟いた。
「はい。例の話です。」
「・・・そういうことか。分かった。明日の夜だな?」
リナの言葉で気づいたガウリイ、アメリア、ゼルガディス。
小さく頷きながら明日の夜、湖に来ると誓った。
「じゃぁ、そろそろ宿屋に戻りましょうか。お腹も減ったし、腹ごしらえも兼ねて・・・ね。」
スクッと立ち上がり、パンパンと足についた土ぼこりを払ったリナは町の方を見つめた。
「そうですね・・・動いたせいでしょうか。お腹ぺこぺこです。」
苦笑しながらアメリアが答え、それに賛成したガウリイとゼルガディスもゆっくりと立ち上がった。
「ほら、。早くしないと置いていくわよ。」
先頭をきって歩くリナは後ろでまだ座り込んでいるにそう声を掛けた。
「あ、待って!あたしも行くってば!」
リナの声で気づいたは急いで立ち上がり、リナ達の後を走って追いかけた。
「ふ〜〜。もう満腹・・・・・」
と、イスの背もたれに寄りかかりながらお腹をポンポンと叩くリナ。
「それは・・・ちょっと食べすぎ・・・」
リナの食べ終わった皿の量を見て、はため息混じりに言った。
「そうかしら?これくらい普通よね、ガウリイ。」
「そうだな。でも、普通の人から見たらリナの量は多いんじゃないか?」
「って、ガウリイだって多いわよ。」
「俺は男だから。」
リナの皿の量を見ながら普通に答えるガウリイ。
そんなガウリイの食べ終わった皿の量を見てはガウリイにも突っ込んだ。
「いや、男でもそんなに食べないぜ。」
とテーブルの上においてある飲み物を飲みながらゼルガディスが言い放った。
「そうですよね・・・いつ見てもリナさんとガウリイさんは食べる量が多すぎますよね。」
はぁっと息を吐き捨てアメリアはリナとガウリイを見つめた。
「さてと・・・・おばちゃーん!!Aランチ二つ追加〜〜!」
「えぇぇぇ!?まだ食べるの!?」
ふぅっと息を吐き、リナは片手を上に挙げ店のおばちゃんに注文した。
そんなリナに対して、まだ慣れないは驚き声を張り上げていた。
「え・・・これくらいあたしには普通よ。」
え?って顔をしたリナは水をごくごくと飲みながら笑った。
「いや・・・・リナは普通でも傍から見たら普通じゃないって・・・」
リナに聞こえないくらいの小さな声で突っ込む。
ゼロスはの横に座りながら無言のまま水を飲み続けた。
「・・・あたし先に部屋に言ってても良い?」
リナの食べっぷりを苦笑気味で見つめるアメリアに問いかけた。
「あ、良いですよ。リナさんが食べ終われば私達も部屋に行きますから。」
にっこりと微笑むアメリアを見て、は部屋へ向かうため立ち上がった。
「じゃ、先に行ってるわね。」
そう一言残し、二階へと階段を上り始めた。
がちゃ・・・・
アメリアに渡された部屋の鍵でドアを開け、窓の近くのベッドに体をうずめる。
「はぁ・・・リナは何であんなに食べれるのかしら・・・・」
部屋の天井を見つめたまま、は食堂でのリナの食欲を思い出していた。
「ちょっと・・・普通じゃないわよね。というか、ガウリイも普通じゃないけど・・・」
思い出しながらくすくすと笑う。
「あんな仲の良い仲間って・・・良いわよね。あたし、場違いかな。あんな仲の良い仲間の中に割り込んじゃって・・・・」
くるっと体を回し、うつぶせになって横になる。
『そうだ・・・お前は邪魔なのだ・・・・』
「────誰!?」
姿も気配も感じないのに聞こえた声に反応し、ベッドから飛び降り声を張り上げた。
『私の事か?』
「そうよっ!他に誰が居るというの!?」
声は静かに聞き返した。
は相手の気配を探ろうとするが、全く気配を探ることが出来なかった。
『私はアーリアよ。』
「何をしに来たの?」
気配を探るため、意識を集中させたまま部屋のどこかにいるアーリアに問いかけた。
『、お前を殺すためだ。』
アーリアは静かに気配を消したまま答えた。
アーリアの吐息も何も聞こえてこない。
すっ・・・・
焦る気持ちでアーリアを探していた瞬間、首元に冷ややかな何かを感じだ。
「!?」
ハッと気づいたときには遅かった。
の首元には鋭い刃物が突きつけられていた。
「悪いわね。貴方には死んでもらわなきゃならないのよ。でも、その前に・・・」
アーリアの鋭い爪がの首元にクッと押し当てられた。
ニヤリと笑みを浮かべると、アーリアはをドンと押した。
「あっ・・・・」
その瞬間、の周りの空気の流れが止まった。
−い・・・息が・・・できな・・・・
「ごほっ・・・・うく・・・・」
すぅぅぅ
の目に映っていたアーリアの姿は空気に溶け込むかの様に消えていった。
『どう?息が出来なくて苦しいでしょう?』
くすくすと笑いながら話しかけるアーリア。
そんなアーリアの声を聞きながらはもがき苦しんだ。
『もがき苦しんで死ぬが良いのよ、あなたは。』
「ゼ・・・・ロス・・・・ゼロスゥゥゥ!!!助けっ・・・」
息が苦しいなか、懸命にゼロスの名を呼ぶ。
−なんで・・・・ゼロスなの?でも・・・・助け・・・・て・・・・
『くくく・・・無理だよ。ここには結界が張ってある。名前を呼んだ所で、ここには入って来れない。』
くすくすと笑いながらの苦しむ姿を見つめ呟くアーリア。
どんどんっ!!
「さんっ!?さん、ここに居るんですか!?」
の声に気づいたゼロスが部屋の前まで来てドアをノックした。
「ゼロ・・・ス・・・ここ・・・・居る。」
胸を押さえては懸命に声を絞り出した。
がちゃがちゃっ!!
ドアを開けようとゼロスがノブを回していた。
しかし、ドアは開けられることはなかった。
「空間移動も・・・できませんか・・・・」
ドアの向こうでなすすべのないゼロスは声をもらしていた。
−たすけ・・・・て・・・・ゼロ・・・・ス・・・・
心の中でゼロスに懸命に助けを求める。
もう、の息は限界に来ていた。
To be continued......................
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