darkness of holy 第五話
の息が限界に達した瞬間、ドアの向こうで爆発が起こった。
それと同時に他の魔法が発動し、の居る部屋の周りに出来た結界が解かれた。
「さん!!」
ドアをバンと開け放ち、ゼロスが部屋の中へ駆け込んできた。
その顔は真剣で、必死な顔だった。
「ゼロ・・・・ス・・・・助け・・・・て・・・・」
は目の前に現れたゼロスに手をゆっくりと伸ばし、助けを求めた。
「さんを離してください!!」
『ふふふ・・・私がそう簡単に離すと思う?』
ゼロスの叫び声にアーリアは静かに笑いながら答えた。
「ゼロス!?どうかしたの!?」
「────っ!?!?」
さっきの爆発の騒ぎの中、リナ達は急いで部屋の方に駆け寄ってきた。
部屋の中に入り、ゼロスに話掛けた瞬間、ある光景がリナ達の目に映った。
それはの苦しむ姿とそんなを見つめたまま滅多に開かない瞳を開いたゼロスの姿だった。
『お仲間・・・か。早く私を倒さないと、は窒息死してしまうよ。』
くすくすと不気味な笑みを浮かべ、アーリアは部屋の何処からか話しかけてきた。
リナ達はその声の出何処を見破ろうと気配を探った。
しかし、アーリアの気配は全く掴むことが出来なかった。
「くそっ!!気配もつかめないと言うのにどうするんだ!!」
ガンと部屋の壁を殴るガウリイ。
その思いはガウリイだけではなく、他の皆とて同じ事だった。
−どうして・・・・どうしてこんな目に・・・・・
目に溜めた涙をボロボロと零しながら、は空気が失われた空間で叫んでいた。
どくん・・・・どくん・・・・
限界に達していくたびにの胸が大きく震える感じがした。
「おい、。」
ゼルガディスの声に気づいたは苦しそうな顔でゼルガディスを見つめた。
「何とかヤツを見つけて倒す。それまで持ちこたえられるか?」
ゼルガディスはリナ達より少し前に出てに問いかけた。
「なん・・・とか、頑張る。」
は息の出来ない空間でゼルガディスに頑張ると伝えた。
胸を押さえて、空気を欲する。
早くしないとの命はない。
それは誰が見ても分かることだった。
「ゼルガディスさん、危ないです!!」
の言葉に少し安心した顔をしたゼルガディスに、アメリアがいきなり声を張り上げた。
その声に気づいたゼルガディスは急いでその場から後ろに飛びのいた。
しゅぱぱぱぱぱんっ!!
風を切る鋭い音と共にさっきまでゼルガディスが居た場所にアーリアの鋭い爪が突き刺さっていた。
良くそこを見ると、爪の突き刺さっている所からじわじわと溶け始めていた。
「全く・・・厄介な敵ね・・・」
「そうみたいですね・・・気配を跡形もなく断ち切っていますから・・・さすがの僕でも気配を見つけることは困難ですね・・・」
リナの横に立ちながら、アーリアの気配を探ろうと試みるゼロス。
ため息混じりに言うゼロスの様子から、かなり手ごわい敵だということが分かった。
「そんなこと話している暇はなさそうだぜ。」
スッと剣を抜いたガウリイが部屋のドアの方を指差して呟いた。
「え?のわぁぁぁ!?」
ガウリイに言われドアの方を見た瞬間、リナは驚き声を上げた。
ドアの向こうからぞろぞろと洗脳された街の人たちが入ってきたのだ。
手には刃物を握ったまま・・・
『外の気配に気づかないとは。』
リナ達の様子を見ていたアーリアが小さくそう呟いた。
それと同時だった。
「っ!?」
リナ達に向かって洗脳された街の人たちが攻撃をしかけてきたのは。
リナはそれにいち早く気づき、紙一重で避けることが出来た。
ガウリイ達もそれは同じことだった。
『よそ見している暇はないよ。ただ洗脳されている人たちだ、傷つけることはできないであろう?』
くすくすと笑いながら、リナ達の取ろうとする行動を一つ一つ取っていくアーリア。
「くっ・・・」
街の人たちの攻撃を次々に避けるリナ達。
『どうした?私を倒さないのか?』
無理だと分かっているリナにくすくすと笑いながら聞くアーリア。
「リナさん・・・この人達どうしますか?」
ゼロスはグッと杖で街の人たちからの攻撃を受け止めながら、リナに問いかける。
「どうするって・・・あ。」
ゼロスの問いかけに答えるリナは、途中でハッとした顔をした。
「何か良い案ありましたか?」
「相手を眠らせれば・・・・でも、この人数を全員眠らせるのは・・・大変かも知れないわ。」
リナはゼロスに街の人たちを全員中央に集めるように指示を出した。
「リナさん。何をするんですか?」
「アメリア。手伝って!」
リナの声に反応し、アメリアは急いでリナの方に駆け寄った。
「ちゃんと話すから、ちょっと待って!」
そう言うと、リナはくるっと体の向きを変えた。
「ガウリイ、ゼル!!街の人たちを中央に集められる!?」
リナは部屋の奥の辺りで街の人たちの攻撃を受けているガウリイとゼルガディスに声をかけた。
攻撃を受け止めながらガウリイとゼルガディスはリナの声に耳を傾けた。
「あぁ!何とかやってみる!」
「何か案があるんだろう!?」
ガウリイとゼルガディスはリナに何か案があると考え、声を張り上げた。
2人の言葉にリナは無言で小さく頷いた。
それを確認したガウリイとゼルガディスは急いで左右に回り込み、街の人たちを中央に集め始めた。
「リナさん!早く!早くしないとさんが!!」
アメリアの声に気づいて視線をに移すリナ。
「リ・・・ナ・・・・何、か案がある・・・・なら、やって!!は・・・早く!!」
死に刻一刻と近づくは、何かを決めたリナを見つめて声を張り上げた。
その瞬間、フッと意識を失ったはバタンと大きな音を立ててその場に倒れた。
「!?」
リナは急いでの元へ駆け寄ろうとした。
「リナさん!!早く、早くしないとさんがっ!!」
部屋の中央でガウリイとゼルガディスと合流し、街の人たちを中央に押しとどめていたゼロスがリナに声を掛けた。
その声に気づいて、リナはキュッとに向かう足を止めた。
「アメリア!スリーピングの呪文を用意して!一気に中央に居る街の人たちに掛けるわ!!」
リナはそう叫ぶと、即座に呪文の詠唱を始めた。
アメリアも小さく頷くとリナをちらっと見て、即座に呪文の詠唱を始めた。
リナとアメリアが呪文の詠唱が終了したのは、ほぼ同時だった。
「スリーピング!!」
リナとアメリアの声が重なった。
白い光が放たれた瞬間、ガウリイ、ゼルガディス、ゼロスはバッと後ろに飛びのいた。
それと同時に中央に集められた人たちはバタバタと倒れ始めた。
良く見ると、どの人物も寝息を立てていた。
「これで・・・大丈夫ですね。さてと・・・」
アメリアがパンパンと手を叩くと、視線を街の人からアーリアに移された。
『ふん。並大抵の魔道士、剣士じゃないようね。』
アーリアはリナ達の活躍を見て、少々額に汗をかきながら、呟いた。
「リナ!そろそろ、限界かもしれん!」
そう最初に声を上げたのはガウリイだった。
一番の近くに居たガウリイがチラッとの方を見た瞬間、異変に気づいた。
が力なくグッタリとして横たわっていたのだ。
「しまっ!!」
『くくく・・・・遅かったようだな。』
ガウリイの言葉を聞いたアーリアは勝ち誇ったかのように呟いた。
ずばぁぁぁぁぁぁん!!
アーリアが小さく呟いたのと同時に、の横たわっていた場所で風が唸り始めた。
それに気づき全員の視線がそこに集中した。
風が全くなかった空間に大量の空気が流れ出した。
「っ・・・風が強くて近づけないわっ!!」
「一体中で何が・・・・」
リナとアメリアは風の様子をジッと見つめたまま立ち尽くしていた。
風の強さは思っていた以上に強く、動くことさえ出来なかった。
いや、気を抜いたら後ろに飛ばされてしまうかも知れないほどの強さだった。
「くそっ・・・この風さえなければっ・・・」
ガウリイがそう叫んだ瞬間だった。
多少、風の強さが緩んだような気がしたのは。
「おい、ガウリイ。今、少し風の力が緩んだぞ。」
ゼルガディスがそのことにいち早く気づいていた。
「そ、それは本当ですか!?ゼルガディスさん!!」
「ゼルっ!それは本当!?」
アメリアとリナの声が重なった。
アメリアは急いでゼルガディスの方に駆け寄るかのように急いで駆け出していた。
その後をリナが急いで追いかける。
ゼルガディスの横にはガウリイ、ゼロスと立ち尽くしていた。
「あぁ。確かに風の威力が緩んだのが分かった。」
「これなら・・・勝ち目はあるかもしれないわ。」
ゼルガディスの言葉を聞き、リナはフッと笑みを浮かべた。
その笑みはまるで勝ち誇ったかのようなものだった。
『がっ・・・ぐ・・・・な・・・に?』
シンと静まった部屋の中でいきなりアーリアの声が響いた。
そのアーリアの声は、とても苦しそうな声だった。
アーリアの声が聞こえなくなった後、ゆっくりと風力が緩み始めた。
「さん!?さん・・・!?」
そんな中、ゼロスはただ一人懸命に名前を読んでいた。
「ゼロス。そんなに名前を必死に呼ばなくても、風の中心に居るはずだろう。」
ゼルガディスはゼロスに冷たく一言いった。
「そ・・・そうですが。僕にはさんを守るという使命が・・・」
「それ関係なく大切、なんでしょ?」
使命という言葉で片そうとした感情に気づいたリナはゼロスに静かに問いかけた。
「そ、そんなことありませんよ。」
「そんなこと言っても顔は真っ赤よ。」
くすくすとゼロスをからかうリナ。
−僕が・・・さんの事を・・・・?そうなの・・・でしょうか。
リナの言葉に戸惑うゼロス。
の様子を見つめたまま、頭の中ではそんなことをずっと考えていた。
「リナ!ゼロス!そんな話をしている場合じゃないだろ!」
くすくすと笑いながらからかうリナ。
そんな言葉に戸惑うゼロス。
その2人にガウリイは叱咤した。
「そ、そうね。ごめん。」
ガウリイの真剣な声にビクッと体を震えさせた。
ひゅぅぅ〜〜〜
そんな中小さな音を立てて、風が収まった。
「!?」
風がおさまった中に居たのは無傷のだった。
そんなの傍らに、傷を負って倒れている誰かの姿があった。
どうやら、その人物がアーリアのようだ。
「リナ・・・・あたし・・・・」
ガタガタと体を震わせながら自分の両手を見つめる。
良く見ると、の瞳が鋭く切れ長になっていた。
しかし、気持ちを落ち着かせると、少しずつ目の大きさが元に戻り始めた。
「あたし・・・あたし・・・」
カタカタと体を震わせながら呟くの体をいきなりギュッと抱きしめたゼロス。
「ゼロ・・・ス?」
「あ・・・すみません・・・・」
どうやらゼロスは何も考えずに行動をしていたらしい。
「なんだか・・・抱きしめたくなってしまって・・・・あの・・・」
口ごもりながら、何かを言おうとしているゼロス。
なんなゼロスに気づいたはフッと口元に笑みを浮かべた。
「このまま・・・このまま・・・ずっと抱いてて・・・あたしの気持ちが落ち着くまで。」
静かに、ゼロスにだけしか聞こえないように呟く。
その要望に答えるように、ゼロスはギュッとの事を抱きしめた。
「さん・・・・何があったんですか?」
ゼロスの後ろに佇むリナ達。
その中でアメリアが最初に口を開いた。
小さく、低く、ゆっくりと声を発し、事について問いかけた。
「アメリア。今は・・・」
と、リナは首を横に軽く振った。
その様子を見ていたガウリイとゼルガディスも罰の悪そうな顔をして下を向いていた。
ゼルガディスは前回のインチェンディオとの戦いの時になんとなく気づいていた。
ガウリイも本能的な勘で気づいていた。
そのため、罰の悪そうな顔をしていたのだ。
「あ・・・そうですよね。」
「リナさん・・・一応、今日はこの宿を引き払った方が良いと思いますね。」
アメリアの言葉の直後にゼロスがリナに話しかけた。
をお姫様抱っこしたまま。
「あ、ゼロス。そうね・・・この宿には居ないほうが得策かも知れないわ。敵に居場所がばれているわけだし・・・」
リナはハッとした顔をして考え込んだ。
「でも・・・どうしてでしょう?」
「え?何が?」
いきなり言ったアメリアの言葉に問い返すリナ。
「あ、なるほど。」
ポンと手を打って珍しく何か分かったかのように呟くガウリイ。
「はぁ・・・ガウリイ。一応聞いてあげるわ。何がなるほどなの?」
馬鹿にするように聞くリナ。
「アメリアは、何で俺たちの居場所がバレているんだろうか。と疑問に思っているんだよ。」
ガウリイはスラスラと自分の考えを答える。
その言葉にリナはハッとした。
「確かに・・・なんでかしら。一応けしかけてきた敵は倒してきたし・・・たとえ倒し損ねても、場所は移動しているわ。」
「それに、例えドラゴンの住んでいる山で洞窟のある場所に向かっていて、そこからフームが刺客を送ってくるといっても、居場所がばれるのが早すぎる。」
「確かに・・・ね。あ、それより、の様子はどうなの?」
顎に手を当てながら、何故居場所が分かるのか悩んでいたリナ。
ハッとあることを思い出し、リナはゼロスの方に視線を移した。
リナの視線の先にはすやすやと眠るの姿と、をお姫様抱っこしているゼロスの姿だった。
「眠っていますよ。」
ゼロスは静かにリナの質問に答える。
それと同時だった。
「寝てない。おきているわ。」
静かに呟くの声が響き渡った。
「ごめん。声もかけずに皆の会話聞いてた・・・」
「・・・もう大丈夫なの?」
ゼロスの腕から逃れると、は地面に自分の足で立ち、リナに謝罪した。
そんなに対して、体は大丈夫なのか?と気を配ってきた。
小さくは頷き返した。
「それより、居場所がバレているのはあたしのせいよ。」
「え?」
の言葉に一同は声を揃えた。
「どういうことだ?」
ガウリイは一番初めに口を開き、に事の真相を聞こうとした。
「あたしの体にはフームが作ったあるモノが埋め込まれているの。」
「ある・・・もの?」
の言葉を鸚鵡返しするアメリア。
「えぇ。まぁ・・・魔法で作られた爆弾・・・みたいなものね。」
「!?」
の言葉に一同は息を呑んだ。
「最悪な事に、魔法の存在する場所でしかあたしは生きられないの。何かの争いでこの世界に掛かっていた結界が解かれ、外の世界と行き来することが可能になったでしょ?」
の言葉を聞き、リナ達は顔を引きつった。
そのことに気づいた。
しかし、気にせずには言葉を続けた。
「外の世界はここより魔法は発達していないの。だから・・・魔法の発達が遅れている外の世界へ出ると、魔法で爆発を抑えている魔法が解除され、あたしの体に埋め込まれた爆弾は一気に爆発。ということよ。」
「・・・・」
の言葉を聞き終わったリナはギュッとを抱きしめた。
「まぁ・・・あたしはフームからは逃げられないって事よ。」
静かに目を細めて呟く。
そんなを静かに見守るしか出来なかった。
「この爆弾の解除をするには・・・フームを倒すしかない・・・と思う。」
「え?」
「完璧な解除方法はあたしも知らないのよ。」
聞き返すアメリアにくすっと笑いながら答える。
ぎゅっ・・・
「リッリナ!?」
「我慢しないで良いのよ・・・辛いはずでしょ、本当なら。ずっと・・・ずっと我慢していたんでしょ?」
をギュッと抱きしめたまま優しく声をかけるリナ。
「う・・・うぅ・・・・怖かっ・・・た・・・・ずっと・・・ずっと怖かった・・・」
ボロボロと涙腺が緩んだかのように涙があふれ出てきた。
そんなをギュッと抱きしめて、震えるを支えていた。
「ん?起きたのか。」
の横で座っていたのはゼルガディスだった。
どうやら順番に見張りをしていたようだった。
「ゼルガディス・・・・起きてたの?」
「まぁ・・・順番に見張りをしていたからな。」
思ったとおりの言葉を返してくるゼルガディス。
「それより。」
視線をに向け、声をかけるゼルガディス。
はゼルガディスが何かを聞こうとしていると判断し、体を起こした。
「何?」
「体に爆弾が埋め込まれているというのは・・・本当なのか?」
ゼルガディスの静かな問いかけが響いた。
その問いかけには静かに頷いた。
「それと同時にそれのせいであたしの居場所がフームにばれている。ということよ。これからゼルガディスたちに迷惑を掛けると思う・・・それが嫌なら、あたしは皆が眠っている今のうちにここを離れるわ。」
ジッと真剣な視線でゼルガディスを見つめる。
冗談を言っているのだろうと思ったゼルガディス。
しかし、の目を見てそれが冗談ではないという事を知った。
「それでリナが納得すると思うか?あいつは思った以上に厄介ごとに首を突っ込むのが好きらしい。だからここを離れる必要なんてないと思うが・・・?」
の真剣な質問と瞳に答えるように、真剣な顔をしてに答えるゼルガディス。
「あ〜ら、ゼルちゃん。優しいのねぇ・・・」
「!?」
いきなり背後から掛かった声にゼルガディスは体を硬直させた。
「リ・・・リナ。おきてたんだ。」
「ま・あ・ね。」
ゼルガディスよりかは驚かなかった。
静かに振り返りながら声の主の名前を呼ぶ。
その言葉に答えるように声の主、リナは相槌を打った。
「まぁ、ゼルの言った通りよ。あたしは厄介事に首を突っ込むのが好き。それに、もうこれ以上をほうっておく気にはならないわ。だって一大事じゃない。爆弾なんて・・・」
真剣な顔をしての肩に手を乗せるリナ。
はどうして良いか分からずに戸惑いながらリナを見つめる。
「とにかく、今はフームを倒すことだけを考えましょ。」
リナの言葉にゼルガディスとはコクンとうなずいた。
「あれ?リナさん。リナさん。」
一番最初に目を覚ましたアメリアが周りを見渡してハッとした。
そして、真横に眠るリナを起こしに掛かった。
しかし、リナは目覚めが悪かった。
なかなか起きないリナ。
でも懸命に起こし続けた。
「ん〜何よ、アメリア・・・」
「リナさん!!さんとガウリイさんとゼルガディスさんがいません!!」
その言葉を聞いたリナは驚き急いで起き上がった。
「なっ何ですって!?」
リナは声を張り上げて起き上がった。
急いで寝巻きから私服に着替え、ガウリイ達を探す準備を進めた。
「でも、何でいきなり三人が居なくなったのでしょうか。」
準備が終わり、足跡を追って歩くリナとアメリア。
アメリアは横を静かに歩くリナに問いかけた。
「さぁ・・・何でかしら。」
予想もつかない達の行動。
リナも頭を抱えていた。
「そういえば・・・ゼロスさんも居なくなってますよね。」
「あ・・・そういえば。」
アメリアの言葉でやっとゼロスの存在もないことを思い出すリナ。
「ゼロスのことだし・・・の事を追っているかもしれないわ。」
「あ、そうですね!」
「急ぐわよ!」
リナの声に合わせてリナとアメリアは足跡を追って駆け出した。
「!おい!」
は一人黙々と森の奥へと歩み始めた。
後ろからはゼルガディスとガウリイが負っていた。
グイッとの手を掴んでガウリイが声を掛けた。
「何一人で先に森の中に向かっているんだ?」
ゼルガディスは静かにガウリイの後ろから近づき、聞いた。
「なんでもない。あたしの事は放って置いて!リナ達置いてきちゃって良かったの?」
はガウリイの手をバッと払いながら先へと足を進める。
そんなの後ろを追いかけながら、ガウリイとゼルガディスはを説得し続けた。
「ゼルガディス。」
ガウリイは後ろを歩くゼルガディスに声を掛けた。
勿論から視線を話さないようにして。
「何だガウリイ。」
「後ろに戻ってリナ達の元に行ってくれ。」
ガウリイはゼルガディスに短く一言呟いた。
「なっ!?ガウリイの旦那はどうするつもりなんだ!?」
ガウリイのいきなりの言葉にゼルガディスは声をあげ、前を歩くガウリイに声を上げた。
「俺はを説得する!リナ達が少し心配だ。一応はリナはいるんだが。」
ガウリイはグッと拳を握り締めた。
その後姿を見た感じ、行きたいがも連れて行かなければ。という気持ちがあって行けない。という感じがした。
ゼルガディスはクッと声を漏らすと、
「分かった。リナ達連れて来る。あまり気を抜くなよ。裏に何かある気がするから・・・」
ゼルガディスはガウリイにそう伝えると、くるっときびす返しをしてリナ達の居るほうへと駆け出した。
「ガウリイ。貴方もリナ達の下へ急いだほうが良いんじゃない?」
はガウリイに背を向けたまま言った。
「いい加減こっちを向け。」
ガウリイはに向かって怒った口調で呟いた。
その声は静かで、淡々と言葉を喋っていた。
その声に反応するかのようには静かに振り返った。
その顔は魔族のような表情で、鋭く切れ長の目をしていた。
ガウリイはその顔を見て一瞬驚いたが、すぐにもとの表情に戻った。
「良いから・・・あたしを放って置いて。」
静かに、感情も何もないかのように、無表情のままは答えた。
その視線にガウリイは悪寒を覚えた。
「邪魔をするなら・・・容赦はしない。」
キッとガウリイを睨みつける。
「ということは・・・俺と一戦交えるつもりか?」
静かにガウリイがに聞き返す。
「そういうこと。」
「ガウリイ!!」
がガウリイにそう呟いた瞬間だった。
とガウリイの右手の方からリナの声が響いた。
その声がした瞬間、は口元に笑みを浮かべた。
それに気づいたのは近くに姿を消していたゼロスだけだった。
ぐいっ!!
いきなりはガウリイの腕を掴み、引っ張った。
「なっ!?」
いきなりの事でバランス感覚をなくしたガウリイはそのままの方へと倒れるように移動する。
「っ!?」
リナはその瞬間を見てしまっていた。
がガウリイの腕を引っ張り、ガウリイにキスをする。というシーンだった。
「なっ!何をしているの!?」
リナは達から少し離れた所に立ち、とガウリイを見つめたまま声を荒げた。
ガウリイはいきなりの事で驚き放心状態。
しかし、この状況はの願っていた状況だった。
「何って・・・キス?」
くすくすと笑いながら簡単に答える。
「リナとガウリイって両思いだったんでしょう?」
の言葉に言葉を詰まらせるリナ。
「図星・・・でしょ。どう?自分の好きな彼が他の女とキスしているところを見た感想は。」
「ばっ馬鹿な事を言わないで!!」
くすくすと笑いながら言葉を続けるに怒った口調で声を上げるリナ。
「憎いんでしょ?あたしが。自分の好きな人とられたんだしね・・・」
「!!」
「大丈夫よ。目の前から消えてあげるから。」
にこにこと笑いながら話すの最後の言葉で怒ったリナ。
その叱咤を聞いては悲しそうな瞳をして口元に無理やり笑みを浮かべた。
「ゼロス。」
小さく名前を呼んだ瞬間、の真横にゼロスの気配が現れた。
「あたしを連れて行って。ここから遠くに。でもフームを倒せる場所に。結界の中に。」
下を向いたまま言うをマントで包み、空間移動をするゼロス。
その瞬間、から流れた涙をゼルガディスは見逃さなかった。
「・・・なんであんなことをっ!!」
グッと握り締めた拳を近くの木に叩きつけるリナ。
そのとき、ずっと黙っていたガウリイが口を開いた。
「リナ・・・・」
「なによ!!」
「違う・・・」
「何が!!」
「違うんだ・・・」
「今更嘘だと良いわけでもするつもり!?」
リナに静かに言葉を掛けるガウリイ。
そんなガウリイに怒りの叱咤が飛ぶ。
「違う!話を聞け!!」
「何よ!!何を言うつもり!?真実を述べるというの!?」
「そうだ!!真実を今話すんだ!だからっ!!」
「真実!?真実なら、今あたしが見たわ!ゼルもアメリアも!!」
ガウリイの言葉に耳をなかなか傾けないリナ。
耳を両手で覆い隠し顔を左右に激しく振る。
リナの言葉にアメリアも静かに頷いていた。
「それは違うぞリナ。」
と、いきなり声をかけてきたのはガウリイではなくゼルガディスだった。
「ゼルも一体何よ!ガウリイの肩を持つと言うの!?」
リナの怒りはガウリイだけにはとどまらず、ゼルガディスにまでとんだ。」
「リナさん!ゼルガディスさんに怒りをぶつけるのは間違っています!!それに話を全部聞かないで否定するのはよくないと思います!」
アメリアもゼルガディスの横で拳を胸の前で作り声を上げるアメリア。
「アメリア!!貴方は黙ってて!!」
「何でですか!?私たち仲間ですよね!?だったら・・・・だったら気持ちをはっきりと話してください!話も聞いてください!何も言ってくれなかったら、私たち何も分かりません!!」
黙っててと声を張り上げるリナに対して、初めて声を荒げるアメリア。
「だって・・・今の状況を見て、何を信じろって言うのよ!誰の言い分も聞きたくない!一人にしてよ!!」
ガンッ!!と木を殴りつけるリナ。
そう言うと、一人森の奥の崖へと足を向けようとした。
「ならっ!なら・・・なんではゼロスと消えるときに涙を流したんだ?」
「え?」
ゼルガディスの言葉に驚きリナは振り向いた。
「どういう・・・事ですか?」
ゼルガディスの言葉に問い返したのはアメリアだった。
「多分・・・俺たちに迷惑掛かるのが分かったから・・・ここから離れるためにああやったんだろう。」
「たぶん・・・な。」
ゼルガディスの言葉にガウリイは静かに呟き肯定した。
「それに・・・リナが思っていたキスなんてしてないぜ。位置的にそう見えただろうけど、唇はギリギリ頬をそれて向こう側。全く触れてなんて居なかったんだぜ。」
ガウリイの真実の言葉にリナは顔を真っ赤にさせた。
「う・・・そ・・・」
「本当だ。嘘を言ってどうする、嘘を言って。」
リナの驚いた顔を見たまま答えるガウリイ。
「ま、そういうことだ。が今何処にいるか分からないが・・・早く追いかけないと、な。俺たちはアイツと一緒にフームを倒すと決めたからな。」
ゼルガディスはフッと笑みを浮かべると、リナとガウリイとアメリアを見つめて呟いた。
その言葉にリナ達は小さく頷いた。
「フームのいるドラゴンの住む山、洞窟のある場所は目的地として変わっていないだろうから・・・そこの近辺の街などをしらみつぶしに調べていくしかないだろう。」
ガウリイはポリポリと頬をかいた。
「それは違うわね。多分街中には行かないと思うわ。」
「どうしてですか?ほら、目的地に向かう最初の街を思い出して。あたしたちが向かうと分かっていた街は滅ぼされていたでしょ?」
リナの言葉にハッとするアメリア。
「そういうこと。だから街には行かない。目的地の場所の近くの森とか洞窟とかを探すと良いと思うわ。」
リナは落ち着いた声でスラスラと推理をする。
その推理にコクコクと頷くガウリイ達。
−・・・・・ガウリイ君。君は起きているのかね?
そう思ったリナはこそこそとガウリイに近づいた。
「ガウリイ?」
「すやすや・・・」
案の定リナの思ったとおりガウリイは眠っていた。
「インバース・クラーーーーッシュ!!!」
リナの必殺インバース・クラッシュがガウリイを直撃した。
「った・・・・何するんだリナ!」
「眠っているあんたが悪い!」
「んな事言っても訳分からない話をしているリナが悪い!」
リナに反論して無意味な事を言うガウリイ。
「理解しているかと思ったあたしが馬鹿だった・・・・」
「馬鹿だった、馬鹿だった。」
「じゃ、ボケと突っ込みはこの辺にして・・・そろそろ急いでの後を追うぞ。」
リナとガウリイの頭をポコッと頭を叩くと、ゼルガディスとアメリアは2人を抜いて先に歩き始めた。
To be continued......................
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