darkness of holy 第六話





さん?街はここですよ?」
「うん。分かってるわ。」
ゼロスはドラゴンの住む山、洞窟のある場所へ向かって歩き始めた
そんな達が立ち止まったのは、近くに森のある街、アスラフシティ。
しかし、はアスラフシティに入らず、近くの森へと足を進めた。
「街に居たら、この街の人たちに迷惑掛かるかも知れないからね。だから森の中で野宿、って事。」
にっこりと微笑みかけて答える
その言葉を聞いたゼロスは「なるほど。」とポンと手を打った。
「それでは、森の中で野宿するとして、まずは街の人たちにドラゴンの住む山、洞窟のある場所を聞いてみましょ。結構この近くですからね地図上では。」
カサカサと地図を取り出したゼロスは、赤いペンで丸く囲まれた場所をペシッと指で叩いた。
「そう・・・ね。じゃぁ・・・街の方に先に行こうか。」
ゼロスの言葉に納得したは、進行方向を森の中からアスラフシティへと変えた。
「ですが・・・リナさんたちは良かったのですか?置いてきちゃって。」
「あれでよかったのよ。あたしが一緒じゃない方が幸せよ。」
ゼロスの言葉にふぅと息を吐きながら答える
一緒に居たら命さえ落とすかもしれない。そう考えたは、リナ達から離れることを誓った。
リナ達を助けるために。
「いらっしゃ〜い。」
ゼロスとリナ達の事を話しているうちに、目的の店へとついた。
油の差されていないような音を出すドアを開け、店の中へ足を向ける
「あの。ちょっとお聞きしたいのですが。」
ドアから店のカウンターの方へ足を向ける。
カウンターの向こう側で食器を洗っている店の人に声を掛けた。
食器を洗っていた手を止め、声を掛けられた人は顔を上げた。
その顔がやけに赤くなっていたのに気づいた
しかし、そのことを気にせず話を進めようとする。
「なんだい?」
「この辺りにドラゴンの住む山、洞窟のある場所を知りませんか?」
「あぁ・・・もしかしてタルバ山の事か?」
の言葉にピンと思い浮かんだ場所があるのか、タルバ山と名前を出す。
「タルバ山?」
「あぁ。君が言うようにドラゴンが住んでいる山で、近くに洞窟があるんだよ。」
問い返すに優しく説明する店の人。
「あ、ありがとうございます。」
「もしかして・・・あそこに行くつもりなのか?」
お礼を言って店から出ようとする
そんなの後姿に声を掛ける店の人。
「え?そうですけど・・・」
声を掛けられ、きょとんとした顔をして振り返る
そんなの顔をジッと見つめたまま店の人は言った。
「よした方が良いぜ。あそこには魔族も居るという話だ。無事に帰ってくることは出来ないと思うが・・・」
「・・・それなら大丈夫ですよ。」
店の人の言葉を聞いて尚にっこりと微笑んでいるとゼロス。
まぁ、ゼロスがいつもニコニコしているという真実は置いといて・・・
そのまま達は呆然と達を見詰める店の人に背を向けて店から姿を消した。
「どうやらタルバ山というのは、この山のことみたいですね。」
と、何処からか取り出した新しい地図。
その中の一箇所の山を指差すゼロス。
その地図を覗き込み、アスラフシティから見える山を指差した
「どうやら、あの山の事みたいだね。そのタルバ山。」
「えぇ。そうみたいですね。」
が指差す先を見つめたまま、呟くゼロス。
はゼロスから地図を受け取ると、その地図と元々持っていた地図を見比べた。
「どっちの地図もマントの中に入れておくね。」
そう言うと、は二枚の地図をマントの中に入れた。
そして、急いでアスラフシティから出るように近くの森へと足を進めた。
さん。今夜ですよ、お話するのは。」
「あ、そうだったね。」
ゼロスの言葉で思い出す内容。
今夜、ゼロスから出生からクセートル小母さんの元に連れて行かれたことについて話してもらう約束だった。
リナ達は居ないが、ゼロスは話を進めるようだ。
「ちょっと。勝手に話を進めてもらっちゃ困るんだけど。」
いきなり掛かった聞き覚えのある声。
恐る恐る後ろに振り返るとゼロス。
そこには別れたはずのリナ達の姿があった。
「リッリナ!?」
「リナさん・・・良くここだと分かりましたね。」
「ドラゴンの住んでいる山、洞窟のある場所を近くの町で聞いたら、アスラフシティの近くのタルバ山が出たから・・・ここに来れば会えると思ってね。」
「そしたら会えた・・・ということです!」
リナはフッと笑みを浮かべゼロスの質問に答えた。
アメリアもニコニコと笑いながらガッツポーズをする。
「な、何で追いかけて・・・・」
はリナ達を見つめたまま、驚いた顔をして呟く。
「何でって・・・当たり前でしょう?」
「え?」
驚いた顔をして呟くに向かってニィと笑うリナ。
リナはピッと親指を立てた。
は、リナの顔をジッと見つめたまま、首を軽く傾げた。
「俺たちは仲間・・・なんだろ?」
少し照れながら、頬をかき、呟くゼルガディス。
そんなゼルガディスの横でガウリイはコクコクと頷いていた。
「そうですよ、さん!!私達は仲間じゃないですかっ!!」
「だからこうして追いかけて来たんだぜ。」
胸の前でグッと拳を握り締めるアメリアは、身を前に乗り出してに近づいていった。
ボリボリと頭をかいたガウリイも、ニィと笑みを浮かべて言った。
「仲・・・間・・・・?あたしが・・・リナ達の?」
そんな事を言うリナ達に確認を取るかのように小さく呟く
ゼロスは何を考えているのか分からない顔をしたまま、にこやかに人の良い笑顔を浮かべていた。
「そうよ。あれ?言わなかったっけ、前に?」
くすくすと笑いながらの顔を覗き込む。
照れながら、嬉しそうな笑みを浮かべていることにはたしては気づいたのだろうか。
「さて、もう少しだぜ、敵のアジトまで。」
ポンポン
の後ろから背中を軽く叩くガウリイ。
「ですね。その前に、皆さんに話しておかないといけませんね。」
の顔を見つめ、真剣な顔をしてゼロスは呟いた。
「僕の話を聞いて、戦いのときに判断を鈍らせないよう約束してください、ね。」
「判断が鈍るようなら・・・あたしは皆と一緒に戦えないから。」
ゼロスの言葉を否定せず、真剣な顔をして言葉を紡ぐ
ゼロスとはその後全く言葉を発さず、リナ達の言葉を待っていた。
静かに・・・静かに・・・張り裂けそうな胸を押さえて。
「そんなの・・・当たり前じゃない。約束するわよ。あたしたちは仲間よ。何があっても・・・ね。」
ウインクしながら答えるリナ。
「全くその通りですよ!私たちの友情の絆は、話一つで引き裂かれたりなんかしません!!」
グッと力強く力説するアメリア。
「まぁ、そうだな。話一つで判断なんて鈍らせはしないさ。」
「同感だな。俺たちは一緒にフームを倒すと誓ったわけだし、な。」
ガウリイとゼルガディスも一歩前に踏み出して呟く。
「ありがとう。」
にっこり微笑んで照れるは、一言小さくお礼を言った。
「では。今日の夜に・・・お話しましょう。」
「えぇ。お願いします。」
ゼロスの言葉に言葉を返すアメリア。

「ねぇ、ゼロス。」
時は変わって夕方。
森の奥にある古びた洞窟からは一人抜け出し、崖に来ていた。
その崖にはそのとき、先客がいた。
ゼロスだ。
「どうして、こんなに一生懸命にあたしを助けてくれるの?」
ゼロスの後ろからは、ずっと疑問に思っていたことを問いかけた。
自分の中にある、変なもやもやを拭い取ろうとは思っていた。
いつからかココロの中に広がっていたもやもや。
ゼロスの事を考えると胸が押しつぶされそうな感覚に陥ってしまう。
それを解決しようと、はゼロスに問いかけた。
ゼロスも、と同じ事をずっと考えていたのだ。
自分のココロの中に住み込んでしまったの事を・・・
「どうしてでしょう・・・僕にも分かりません。はじめは・・・初めは、獣王様の命令で・・・動いていました。ですが、僕はいつの間にか・・・貴方の事を大切に感じるようになったんです。」
説明のつかない思いを伝えようと、言葉を紡ぐゼロス。
「僕は・・・・僕は・・・・」
そこまで言うと、ゼロスは何度考えても同じ結論に結びついた。
それはも同じだった。
「僕は・・・貴方の事が・・・さんの事が・・・好きなようです。」
いきなりの不意打ちで言われたゼロスの思い。
はボンッと音を立てるかのように顔を真っ赤にさせた。
「好き・・・?あたしの事が・・・・?」
信じられない。といわんばかりの顔で見つめる
「そうです。僕はさんの事が好きです。」
真面目な顔をしてゼロスはに気持ちを伝える。
「僕は、さんのためになら命を捨ててもフームを倒します。」
ゼロスがそう呟いた瞬間だった。
「駄目!!」
の力強い声が響いた。
「そんなの絶対駄目!!あたしのために死なないで!!」
涙を流しながら叫ぶ
グッとゼロスの腕を掴み、泣き叫ぶ。
−あぁ・・・あたしはゼロスの事がすきなんだ・・・きっと。
そんな中、は自分の心の中にある気持ちに気づいた。
ゼロスと同じで、相手を好きになっていたという気持ちに。
「あたしもっ・・・あたしもゼロスの事がすきっ!だから・・・だから死んじゃヤダ!!」
掠れるほど大きな声で、悲鳴に近い声で叫ぶ
から出てきた言葉にゼロスも顔を赤くする。
「どんなことがあっても・・・死なないでよね、ゼロス。」
瞳に涙を浮かべ、ニッコリと微笑む
「分かっていますよ。僕は・・・死にません。」
「うん。」
ゼロスは滅多に開かない瞳を開き、を見つめる。
「さて・・・そろそろ日が暮れますね。時間です・・・行きましょう。」
「うん。リナ達が待ってるよね。」
ぎこちなく手をつなぎ、リナ達が待つ古びた洞窟へと足を向ける。
ニッコリと顔を見合わせ笑みを浮かべ、ゆっくりと確実に、リナ達の下へ向かった。

「あ、ゼロス。。やっと来たのね。」
リナは洞窟の入り口から現れた二人の姿を見て、駆け寄った。
「遅くなって・・・ごめんね。」
「あれ?もしかして・・・・」
謝るの顔を見てアメリアはあることに気づいた。
「2人ともやっと自分の気持ちに気づいたのですか?」
くすくすと笑いながらとゼロスの顔を見る。
その言葉を聞いた瞬間、とゼロスは顔を真っ赤に染めた。
「あら、めでたい。」
アメリアの言葉を聞いてニィッと笑うリナ。
ガウリイは全く分かっていないようだが、ゼルガディスは「なるほど。」と小さく呟いていた。
「そっそんなことはどうでも良いじゃない!それより・・・話のほうを。」
焦ったは手をパタパタと胸の前で振って話題をそらす。
「ま、確かにそうだな。」
ガウリイもの言葉に賛成だった。
カチンと音を立てて、床において置いた剣を鞘ごと持ち、腰に差す。
「それでは・・・話をさせていただきますね。」
そう言うと、ゼロスはゆっくりとその場に座った。
それを見た達もゆっくりと床に座った。
「さて・・・何処から話しましょうか・・・」
そう小さく呟くゼロス。
しかし、この言葉は自問自答ではなく、リナ達に向けられたものであった。
つんつん。
ゼロスのマントを引っ張る
それに気づいたゼロスは視線をに移した。
「どうしました?」
にっこり微笑んで声をかけるゼロスに、は何か言いたげな顔をしたまま硬直する。
そんなの顔をジッと見つめたままゼロスは、の言いたい事がわかった。
「大丈夫ですよ。」
にっこりと笑みを浮かべたまま、に安堵の言葉をかける。
そう言うと、スッと瞳を開け、リナ達の方へ視線を移した。
ゆっくりとゼロスは口を開けると、一言、また一言、と言葉を発し始めた。
さんは・・・魔族、そして神の融合体。そんなさんをフームが作り出したのが今回の事件の発端です。」

「くくく・・・これで俺の実験が成功する。」
そう呟いたのは一人の男。
黒い服を身にまとった黒髪の男。
一見人間のように見えるが、れっきとした魔族。
男の名はフーム。
フームに声を掛けようと近づく影が一つ。
「一体何の実験ですか?」
「融合実験だ。もうすぐ生まれるぞ。」
そう言い、横に座る男に目の前に置かれたつぼを見せた。
その中では黒と白の渦が徐々に人の形に変わっていった。
「一体何と何を融合させたのです?」
その言葉にフッと笑みを浮かべると、フームははっきりと言った。
「神と魔族だ。言ってしまえば、魔族と神、スィーフィードだ。」
其の言葉に男は声を失った。
「なっ!?」
「さぁ、さっさと去れ!」
其の超えに驚き、男は何も言わずに急いで立ち去った。
この後、大変なことになるとも知らずに・・・
どくんっ!!
大きな脈を打ってつぼは大きく震えた。
その瞬間、ツボが横に倒れ中から人の形をした赤ん坊が流れ出た。
「融合は成功・・・か。」
ニヤリと笑うと、フームはその赤ん坊に近づいた。
「な・・・んだと?」
その赤ん坊を見つめ、フームは声を上げた。
目の前で赤ん坊が急激な成長を遂げていたのだから。
そして赤ん坊は見る見るうちに人で言えば5歳くらいの子供の姿へと変わっていた。
「貴方が・・・あたしの生みの親?」
生まれた子供は静かに前に佇むフームに声を掛けた。
「そ・・・そうだ。お前は魔族と神、スィーフィードとの融合体。最強の魔族だ。」
フームの言葉を聞き、子供はゆっくりと立ち上がった。
いつの間にか、子供は布を見につけていた。
いや、もしかしたら魔族の特質を知っているのかも知れない。
だとしたら布は子供自身なのかもしれない。
「最強の魔族・・・?」
そう言うと、子供は高位魔族である上級魔族と同じくらいの殺気を放っていた。
「何か不服か?」
くっくっくと笑いながら、目の前に立ち尽くす子供に問いかけた。
「不服・・・か。最強の魔族でなくて最凶の魔族・・・・ではないのか?」
殺気を抑えることをせずに子供はギッと睨みつけたままフームに問いかけた。
その殺気にフームは少しずつ後ろへ後ろへ後ずさりをしていた。
しかし、フームはそのことに気づいては居なかった。
そして、新たな新事実に・・・・
「ふ・・・ふははは・・・・どちらでも良いのだよ。お前は俺のオモチャとして作られたのだから。」
大きな笑い声を上げて、フームは子供に向かってけりを入れた。
殺気に怯えぬように。
子供に負けぬように・・・と。
「オモチャ・・・?ふざけないで!!」
そう叫んだ瞬間、子供のいた場所を中心に大きな爆発が起こった。
その爆発の中、フームは平気で立ち尽くしていた。
「俺の結界石を壊さない限りは傷つけることなど出来ない。分かったか?融合体01。」
「融合体01?」
「お前のことだ。」
フームは目の前に立ち、不思議そうな顔をしながら睨みつける子供───融合体01───に言い放った。
何故フームを傷つけられないのか。
そして、子供を融合体01と呼ぶ。ということを。
「どうやらお前はまだ魔族の部分しか現れていないようだな・・・」
つまらなそうな顔をしてフームは融合体01を蹴り飛ばした。
「誰が・・・出すものか・・・・神の・・・一部など。」
「強がっていてもスィーフィードの力だ。押さえ込めるわけがない。」
フームがそう言った瞬間、融合体01の身体が大きく震え上がった。
「ほら・・・な。」
フームの言葉を遮って、融合体01は声を上げた。
そして、完全なる融合体となった融合体01がそこに立っていた。
融合体01はさっきまで放っていた殺気を放つことなく、鋭く切れ長の瞳ではなく、ぱっちりとした大きな瞳をしていた。
魔族の力とスィーフィードの力が押し合い、その中間の最も人間らしい性格が現れた。
しかし、それは性格だけのこと。
使う力は強く、感情が爆発すればその力も強く現れる。
しかし、フームはそのことに気づいていなかった。

「・・・という事で、さんはこの世に生を受けました。それが魔と神との融合体という形で・・・」
ゼロスはの出生について、長々とリナに話した。
「そして、これから話すことはさんもフームも知らない新事実です。このことは・・・僕と・・・獣王様しか知りませんでした。」
そう言うと、リナ達をじっと見つめた後、へとゼロスは視線を移した。
さんは、スィーフィードとロード・オブ・ナイトメア様の力の融合体なんです。」
「!?」
の反応は当たり前だった。
自分がこの世界の神と、世界を生み出せし、魔王の中の魔王、金色の魔王、ロード・オブ・ナイトメアの融合体だったのだから。
「このことで・・・フームはさんがいつ暴走するかわからないと考え、殺そうとしているのです。」

どぉぉぉぉぉん!!
「どっどうしたっ!?」
いきなりの爆発に驚いたフームは、急いで爆発源へと足を向けた。
そこには傷だらけで倒れる魔族と無傷で佇む融合体01の姿があった。
「あたしを・・・怒らせたから・・・傷つけたから・・・その報いよ。」
融合体01はジッとフームを見つめたまま、殺気を放っていった。
二つの存在の力が強まり、魔族としての力が膨張する融合体01。
しかし、全ての力を出すまいと押さえ込むスィーフィードの力が邪魔をし、二つの力を合わせ持つ力を出していた。
この事で、フームは融合体01がいつ暴走してもおかしくはない。と考えた。
その日から、融合体01が死んでもおかしくない程の暴力を続けてきた。
しかし、そんなフームの手から融合体01を救い出したのは紛れもなくゼロスの上司である獣王ゼラス=メタリオムだった。
獣王ゼラスはフームが思うようには考えていなかった。
その力を持っても大丈夫である器に育てれば、暴走することはない・・・と。
強い精神を持つように育てれば・・・と。
そのため、獣王ゼラスはフームの元から融合体01をすき出だした。
そして、人間界の人間一人に融合体01を預けようと考えた。
「だっ誰?」
「落ち着け。今から人間界へと向かう。」
短くそう告げると、獣王ゼラスはフームから距離を取りながら人間界へと向かった。
「何故、あたしを助ける?」
そのとき、既に融合体01は急成長を遂げ、人間の年齢で言うと12歳くらいに成長していた。
「魔と神の力を合わせ持つ、お前に興味がわいたから・・・と言えば良いか?まぁ・・・そうやすやすフームに殺させはしない。と言うことだ。安心しなさい。」
さっきとは打って変わって違った優しい口調で告げる獣王ゼラス。
融合体01は安心したらしく、怒りの気持ちが落ち着いていった。
そして、魔族である性格が薄れ、元の融合体01へと戻った。
「貴方は・・・一体誰なの?」
静かに大きな瞳で獣王ゼラスを見つめる融合体01。
「気にすることはない。お前は名はなんと言う?」
獣王ゼラスの言葉にビクッと身体を振るわせた融合体01。
多少迷い・・・獣王ゼラスの顔を見つめる。
そして、融合体01はゆっくりと口を開き、はっきりした口調で言った。
「名は・・・融合体01。」
「融合体01?」
融合体01の言葉に疑問視を突きつける獣王ゼラス。
「それが・・・名なのか?」
「たぶん・・・」
静かに、寂しそうな顔をする融合体01を、優しい眼差しで見つめる獣王ゼラス。
「なら・・・という名を与えてやろう。」
くすくすと笑いながら笑う獣王ゼラス。
?」
「そうだ。それがお前の名だよ。」
獣王ゼラスの言葉を聞き、融合体01もといは嬉しそうな顔をした。
「そんなに名を貰えるのが嬉しいのか?」
不思議だ。といわんばかりの顔でを見つめる獣王ゼラス。
「うん。すっごく嬉しいわ。」
にっこり上機嫌の笑みを浮かべる
「そうか・・・・」
そう小さく呟くと、獣王ゼラスもも黙ってしまった。
その後、どれくらい経ったのか分からないが、アストラルサイド(精神世界面)を通り獣王ゼラスは人間の元へと急いでいた。
「そろそろ着く。」
短くに告げると、獣王ゼラスとはスゥッとアストラルサイド(精神世界面)から人間界へと姿を現した。
「なっ何者!?」
その様子を見ていた一人の女が声を上げた。
年のころならもう30半ばくらいの小母さん。
「お前・・・・もしかしてクセートル=か?」
いきなり現れた獣王ゼラスとを警戒しながら、じっと見つめる小母さん。
獣王ゼラスの言葉にハッとした顔をすると、小母さんはコクリと頷いた。
「確かに私がクセートル=だけど・・・・もしかしてゼラス?」
クセートルは前に立つ獣王ゼラスの名を呼んだ。
「ようやく思い出したか。」
「しかし・・・あれは夢だったはずじゃ?」
一昔前、まだクセートルが子供の頃、一度獣王ゼラスと顔を合わせたことがあった。
あの時は、クセートルも若く、何故か獣王ゼラスと力をあわせ、襲い掛かる敵を倒してきたことがあった。
そして、約束したのだった。
───我が困ったときには、一度力を貸してくれ───と。
「夢ではない。現に覚えているだろう?あのときの事を。」
獣王ゼラスの言葉を聞き、忘れかけていた昔の出来事を思い出していた。
そして、昔交わしたあの約束も。
「そう・・・だったね。思い出したよ。それで・・・?一体何のようなんだい?」
どっこらせと声を上げて地面に腰を降ろしながら問いかけるクセートル。
「この娘を・・・・強い精神を持つ子供に育ててくれ。」
獣王ゼラスはクセートルをジッと見つめたまま、頼んだ。
「どういうことだ?」
「この娘は神と魔の融合体なんだ。精神的に強く成長しなければいつ暴走するか分からない。だから我はクセートルに話を持ってきた。あの約束を果たしてもらおうと・・・」
クセートルの質問に、短く完結に話をまとめた。
そのことを聞いたクセートルは、少し考えた後、コクリと小さく頷いた。
「すまない。」
そう言うと、トンッとの背中を押した。
「その者がこれからのの育ての親となる。」
そう言われ、は少し戸惑いながらクセートルの方へと足を向けた。
「いらっしゃい。本当の娘のように育てるわ。」
きちんと約束は果たす。という意味を含ませながら獣王ゼラスにクセートルは宣言した。
「たのむ。の命を狙うものも居る・・・気をつけろ。」
そう言うと、獣王ゼラスはアストラルサイド(精神世界面)へ姿を消した。

「と言うことです。こうやってさんはクセートル小母さんの元へと届けられました。」
ゼロスはの横に座ったまま、も詳しくは知らなかった事を教えられた。
「その後、さんはクセートル小母さんに魔法などを教わったわけですね。」
「えぇ。クセートル小母さんは凄く優しかった。一生懸命、魔法を教えてくれたし、一生懸命魔族からあたしを守ってくれた。でも・・・・」
「クセートル小母さんは魔族のやつらに狙われるようになった。ですね?」
途中まで発した言葉を止める
そのに変わってゼロスが続く言葉を言った。
その言葉を肯定するかのようには小さく頷いた。
「あたしはクセートル小母さんのおかげで感情をコントロールできるようになった。それでも、やっぱり感情は完全にはコントロールは出来なかった。」
「それだけ、スィーフィードとロード・オブ・ナイトメア様の力が強いと言うことですね。」
「うん。それで・・・やっぱり感情が爆発するときは魔族である性格が現れてしまうの。」
そこまで言うと、は一度口を閉じた。
そして、少しした後はっきりした口調で言った。
「スィーフィードの力が普段はロード・オブ・ナイトメアの力を押さえつけてくれているけど・・・感情が爆発したときは、ロード・オブ・ナイトメアの力が強く出てしまう。押さえつけられていた分強く現れてしまう。だからフームはあたしの命を狙うの。」
瞳を伏せ、少し寂しそうな眼差しで答える
リナ達は何も言わず、否何も言えずにを見つめていた。
「なるほど・・・・そういう訳だったの。」
リナはこのままでは話は先に進まないと思い、小さく短く言葉を発した。
「だから────だからはあたしたちと一緒に旅をすることをためらっていたのね?」
リナは確信に触れるかのようにに問いかけた。
そのリナの言葉には小さく頷いた。
「うん。関係のないリナ達がこの事に首を突っ込むことで命を削ることになると思ったから・・・」
静かに、リナの顔を見ないで答える
そんなの肩に手を置くリナ。
「あたしたちは大丈夫よ。一体どれだけの事件を乗り越えてきたと思っているの?って・・・話してないから分からないかも知れないけど。それでも、一緒に戦えるくらいの山場は乗り越えてきたわよ。」
リナはを安心させようと、にっこりと笑みを浮かべたままに言う。
「ありがと・・・今まで一緒に旅をしてきて分かったよ。どれだけリナ達が強いのか。」
は肩に置かれたリナの手を握り返し、今までのリナ達を思い返して言った。
「それは分かったが・・・なんでゼロスたちがそんなにしてまでを守るんだ?」
いきなり間の抜けた声でガウリイが問いかけた。
「確かに、な。精神的に強く育てるためにクセートルという小母さんにを預けた。それは分かる。だが、何でそこまでしてゼロスと獣王はを守る?」
その言葉を聞いたゼロスはピクッと身体を動かした。
「それは・・・ですね。」
ゼロスの言葉にいっせいにを除く四人の視線が集まった。
「僕も知らされていないのですよ。」
と、いけしゃあしゃあと言うゼロス。
その言葉を信じる者が何処に居るのだろうか。
「何馬鹿なことを言っているのですか!?知らないなんて事あるわけないじゃないですか!!もしかしてゼロスさんたちはさんを何かに利用しようとしているのですか!?」
アメリアはゼロスの胸倉を掴み、そう言った。
前後にブンブン揺さぶりながら、ズバズバと言いたい事を言い放つアメリア。
「アメ・・・リアさ・・・・ん。そんなに・・・・らした・・・・・話せませぇぇぇん・・・・・」
目をくるくると回しながら、アメリアに声をかけるゼロス。
そのことにハッとしたアメリアは急いでゼロスの胸倉を離す。
ごいぃぃぃいいいぃぃぃいうおぉぉおおおぉぉおおんっ!!!
アメリアに離されたゼロスはそのまま勢いで後ろにある岩の壁に頭を打った。
景気の良い音が洞窟の中で鳴り響いた。
「本当に聞かされていないんですよぉ〜」
器用に自分の頭に拳一個分くらいの大きさのこぶを作り、言うゼロス。
「嘘を言わないで下さい!!」
アメリアの声が洞窟に響き渡った。
そのとき、ゼロスの後ろの空間が歪んだ。
「!?」
そのことにいち早く気づいたのは、ゼロスの前に座っていたアメリアだった。
そのアメリアの様子に気づき、リナ・ガウリイ・ゼルガディス・もゼロスの後ろへと視線を移す。
一方、後ろに現れるであろう存在を知っていたゼロスは驚くそぶりも見せず、その場に座っていた。
「あまり我の部下をいじめんでくれんか?」
「じゅっじゅっじゅっ獣王ゼラス=メタリオムゥ〜〜〜!?」
いきなり現れた獣王ゼラスに驚いた五人はゼロスの後ろに現れた獣王ゼラスを見つめて叫んだ。
「獣王様。いきなりのお出まし驚きましたよ。はっはっは。」
驚きもしていなかったゼロスは獣王ゼラスの方に向き直ると、にこにこと人の良い笑みを浮かべたまま言った。
「そんなことはどうでも良い。それより、我が何故を守るようゼロスに命令しているか・・・だったな。」
スッとゼロスの横に座ると、獣王ゼラスはリナに視線を移し、言った。
「え・・・えぇ、そうです。」
緊張した面持ちで、獣王ゼラスの質問に答えるリナ。
アメリアもゼルガディスももカチコチに固まったまま獣王ゼラスを見つめていた。
しかし、ガウリイのみ状況が把握できていないようでぼけぇ〜っと獣王ゼラスと見つめていた。
「それにはきちんとした理由がある。」
獣王ゼラスの言葉にピクッと耳の動くリナ。
それに気づいていた獣王ゼラスはフッと口元に笑みを浮かべると、口を開いた。
「気まぐれ、だ。」
獣王ゼラスの言葉にガタッと倒れるようなリアクションを取るリナ。
「他にも、理由はある。どうやら、をフームから助け出したときに情がわいてしまった様だ。魔族としてはありえないことなのだが・・・な。」
フッと笑いながら言葉を紡ぐ獣王ゼラス。
獣王ゼラスの言葉に目が点になるリナ達。
「情が」
「・・わいたから」
「・・・・・・・ですか?」
リナ、ゼルガディス、アメリアは目を点にしながら言葉を繰り返した。
「そうだ。魔族ながら不思議な事だ。良く我も言われるさ。感情が人間のようだ、とな。」
口元に一瞬笑みを浮かべたゼラス。
「それは僕も似たようなものですけどね。」
と、ゼラスの横から付け加えのように言うゼロス。
その言葉を聞いたゼラスはハハハッと笑い、ゼロスを見た。
「確かにそうだな。まぁ・・・ゼロスにを守るよう命令したのは、こういう事が理由だ。」
「そう・・・ですか。分かりました。」
ゼラスの言葉に多少戸惑いを覚えながらも、理由をしったリナ。
「さて・・・我はそろそろ戻るとしよう。」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「ゼロス。引き続き任務を実行しろ。」
そう言うと、ゼラスはすっと虚空へと姿を消した。
「はい。分かりました。」
既にゼラスの姿、気配共になかったが、一応は返事をするゼロス。
「・・・・ふわぁぁぁっぁ・・・・」
一気に緊張の糸が外れたリナ達はガクッと肩の重荷が降りた。
「一体今の誰だったんだ?」
「は?」
いきなりの声の主はガウリイだった。
ガウリイは首をかしげながら、リナに問いかけていた。
そのガウリイの問いかけに驚き、間の抜けた声を出すリナ。
「今の誰って・・・今のは赤眼の魔王の腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムだろ。」
ゼルガディスはハァと溜息を吐きながら、ガウリイに説明した。
しかし、ガウリイは全く理解していなかったようだ。
「ゼロスの上司よっ!!今のは。」
声を張り上げて説明するリナは、ガウリイの顔にグッと顔を近づけて説明した。
「分かった?」
「お、おう。」
リナの大迫力な声にちょっぴし驚きながら、返事をするガウリイ。
「まぁ・・・このままこのメンバーでフームのところへ向かえば良いって事よね。」
リナはフゥと一息吐くと、ゼロスを見つめた。
「まぁ、そういうことですね。」
ゼロスはリナの視線に気づき、視線を移しそう言った。
「よしっ!行きますよ、皆さん!!」
右腕を上に突き上げながら叫ぶアメリア。
アメリアの瞳には正義の炎がともっていた。
「そこまで張り切らなくても良いけど・・・・行こうか。」
にっこり笑みを浮かべて立ち上がる
それに続いてゼロス達もゆっくりと立ち上がった。

***つづく***





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