darkness of holy 第七話






「くくく・・・やっと来たか。ここで、息の根を止めてやる。」
暗闇に浮かぶ一つの顔。
その顔の主はどうやら、ここに達が来ていることを知っているようだ。
暗闇に浮かぶ一つの顔が一体誰なのかは・・・・まだ誰も知らない。

どくんどくん・・・・・
「どうやらここが最上階みたいですね。」
アメリアはゴクンと息を飲み込むと、目の前に佇む大きなドアを見つめていた。
「そうみたいね。」
と、短くアメリアに声を掛けたのはアメリアの後ろを歩いていただった。
「確かに、ここからしか中には入れないようだな。」
コンコンコンと周りの岸壁を叩くゼルガディスは、フゥと息を吐き捨てアメリアの方へと戻ってきた。
「となると・・・・もうすぐ最終決戦って事みたいね。」
眉間にしわを寄せたまま呟くのはリナ。
そのリナの横でヘコヘコと頭を上下させるガウリイ。
どうやら話についてきていないようだった。
−あたしがスィーフィードとロード・オブ・ナイトメアの融合体・・・きっと・・・フームは全力で戦いを挑んでくるはず。リナ達に迷惑の掛からないように・・・しないと。
グッと心の中でそう呟きながら拳を握り締める。
「皆さん、良いですか?」
目の前に佇む大きなドアのノブに手を当て、リナ達に意見を聞くゼロス。
は誰よりも早く、決心したようにゆっくりと頷いた。
・・・あたしたちが居るから大丈夫よ。」
微かに震えるの肩に気づいたリナは、ポンッと肩に手を置いてニッコリ微笑んだ。
「うん。ありがとう。」
−はたして・・・あたしはフームとの戦いの最中、力をセーブできるのだろうか・・
リナにニッコリ微笑みながら、でも心の中では不安だらけでは言った。
「大丈夫・・・相打ちに成ってでも・・・絶対に倒すから。」
はグッと奥歯をかみ締めて、小さい声で呟いた。
ばしっ!!
そんな事を言ったを後ろからどついたのはリナではなくガウリイだった。
「そんなこと言うな。俺たちだって居るんだから。な?」
ガウリイはニィッと笑みを浮かべて親指を立てた。
「・・・ガウリイ。そう・・・よね。ありがと。」
ガウリイの顔を見て、少し安心したのかはニッコリ微笑むと胸にあった不安、肩に圧し掛かっていた重荷が取り除かれた気がした。
−あたし・・・ガウリイの言ってくれたこと・・・言ってほしかったのかも。
そんなことを考えながらも、自分の力の事を考えると震えが止まらなくなる
そんなの肩をゼロスは、ずっと支えていてくれた。
「大丈夫ですよ、さん。僕も居ますから。」
はゼロスの顔を見上げると、肩に置かれた手をギュッと掴んだ。
「うん・・・分かってる。でも・・・このぬぐえない思いはなに?」
ゼロスの顔を見つめたまま、呟く
そして、ゆっくりとゼロスからドアに視線を移動させた。
「ゼロス。良いよ、ドアを開いて。」
そう言われ、ゼロスはコクリと頷くとドアをゆっくりと開けた。
勿論の肩に手は置いたまま。
ぞくっ・・・・
ドアが開かれた瞬間、達は全員背筋になんともいえぬ悪寒が走った。
「ここ・・・・気持ち悪い・・・です。」
アメリアはドアの中に入った瞬間、そう訴えその場に座り込んだ。
それは誰もが同じだった。
魔族であるゼロスでさえも。
まるで、身体の奥底にある力を引き出されるような・・・・
「ここは・・・・」
はヨタヨタとした足取りでドアの中に入り、奥へと足を向ける。
ゼロスに支えながら、先へと進む。
『良くここまでたどり着いたな。』
声は上から聞こえた。
急いで顔を上に向け、気配を探るリナ達。
しかし、人の居る気配は全くなかった。
『そりゃ見つからないぜ。だって、俺が居るのはここよりもっと遥か上だよ。』
声はくすくすと笑いながら達に声をかけてきた。
「誰だ!?」
ゼルガディスは声を荒げて問いかけた。
そのゼルガディスの問いかけにくすくす笑いながら答える。
『俺か?俺の名はフームだ。さぁ、早く最上階へ来い。』
フームはくすくすと大きな声を上げて笑い始めた。
そして、そのまま、フームの声は聞こえなくなった。
「どうやら・・・まだまだ長い道のりになりそうですね。」
ゼロスはフゥと溜息を吐き、前を見つめた。
がくっ
そのとき、ゼロスの斜め前に立っていたがいきなり倒れそうになった。
ゼロスはすぐさま気づき、倒れる前にを支えることが出来た。
・・・さん?」
ゼロスは腕の中で意識を失ったに気づいた。
まだの後ろの方、ドアの近くに居たリナ達は何事もなかったが、先へ進んでいたの身に、異変が起きた。
どうやら、気絶をしてしまったようだ。
「気を・・・しっかり持つ。そうすれば・・・進むことが出来る。ここは・・・精神力の強さが必要。どれだけ弱い精神力の持ち主でも、気をしっかり持てば、先へ進める。」
気を失っていたはずのがフッと目を開けると、静かにそう呟き始めた。
瞳の色が濃い紫色から、光り輝く金色の瞳の色に変わっていた。
「え?」
「聞いていなかったのか?気をしっかりと持てば、先へ進める。と言ったのだ。」
は静かに問いかけるゼロスに、もう一度言葉を紡いだ。
「貴方は誰ですか?」
ゼロスはの肩に手を置いたまま、問いかけた。
ゼロスは気づいていたのだ。
今話をしている人物はではないということに。
「一体何を言っているんだ?そこに居るのはだろう?」
と、呟きながらゼロス立ち寄り多少後ろに居たガウリイがゼロスに近づこうとした。
それに気づいたゼロスは急いで後ろに振り返り声を張り上げた。
「それ以上前に出ないで下さい!」
いきなりの叫び声に驚いたガウリイはピタッと足を止めた。
それを聞いていたリナ達も急いで前に出るのをやめた。
「一体・・・どういう事?前に出るなとか、じゃないとか。」
リナはゼロスを見つめたまま、事の成り行きを見つめていた。
そして、疑問に思った事を話した。
「それは、きちんと話します。」
ゼロスははっきりとした口調でそう言うと、に視線を移した。
「そろそろ離しては貰えないか?」
はゼロスを押しのけて、立ち上がろうとした。
さっきまでふらついていたの様子が嘘のように、今のはしっかりとした足取りをしていた。
「後ろにいる者たち。しっかりとした気を持ってこちらへ歩み寄って来い。」
の様子が少しおかしいと思い始めたリナ達は、小さく頷き、の言うとおり、しっかりと気を持っての方へと歩き始めた。
その様子をゼロスは息を呑み見つめていた。
「なんとも・・・・ないみたいだな。」
ガウリイは自分の手を見つめて、小さく呟いた。
「だから、言ったであろう?しっかりとした気を持ってこちらへ歩み寄って来いと。」
は軽く腕を組んだまま、リナ達を見据えた。
「一体・・・・誰、なんですか?」
アメリアは掠れた声でを見つめながら問いかけた。
「まずは、我が誰かの前に話しておかなければならないことがある。」
はジッとアメリアを見据えたまま、しっかりした口調で呟いた。
「ここは、精神力が関係している場所だ。しっかりした気を持って進めば大丈夫だ。ただし、気を緩めた瞬間、お前たちの魂は身体を離れることになる。」
の言葉を聞いた瞬間、リナ達は言葉を失うほど驚いた。
「精神力が弱い者であっても、気をしっかりと持てば魂が身体を離れることはない。」
は、続けて呟いた。
「なら、意志を気をしっかり持って進めって事ね?」
「そうだ。」
リナの問いかけに、は頷きながら答えた。
「分かったわ。それで?貴方は一体・・・」
「我は、ロード・オブ・ナイトメアの一部だ。スィーフィードと融合させられた金色の魔王の一部だ。」
はスッと目を細めて、自分の名を話した。
「ここに来た事で、という主人格が意識を手放し、代わりに我が現れた。」
「なら。スィーフィードが現れることはあるの?」
リナの問いかけには静かに首を横に振った。
「スィーフィードは、我の力の半分を押さえ込むために、力を費やしている。表面上に出られるのは、主人格であると、融合された金色の魔王の一部である我だけだ。」
どういう状態にあるか素早く話す
その瞬間、フッとの意識が取り戻された。
「う・・・く・・・・」
声を上げて、目をゆっくりと開く
っ!?」
「うん・・・大丈夫。なんとか大丈夫。しっかりとした気を持ったから・・・」
まるで話を聞いていたかのように、いつの間にかわかっている
「そう・・・なら良いんだが・・・」
と、短く呟くゼルガディス。
そんなゼルガディスにニッコリ微笑み返す
「早く・・・・最上階へ向かいましょう。」
リナはの無事を確認すると、ホッと心の中で息を吐いた。
そして、スッと目を細めて、今いる道の奥を見据えた。
一体何が待ち受けているのかも全く分からない、暗闇の中へ続く道。
リナは誰よりも先に、その暗闇の中へ足を一歩踏み入れようとした。
すっ・・・
「ガウリイ?」
そんなリナの前にいきなり現れたのは、"自称保護者"のガウリイだった。
「何があるか分からないからな・・・俺の後ろにいろ。」
静かにトーンの低い声で呟くガウリイ。
リナは一瞬そんなガウリイに見とれたが、首を横にブンブン振ってコクリと小さく頷いた。
ガウリイ・リナ・・ゼロス・アメリア・ゼルガディスという順番で並び、ゆっくりと確実に闇の奥へと足を踏み入れ始めた。
「この戦い・・・一体どういう風になるのかな・・・・」
いきなり口を開いたのは、だった。
その声に気付いたリナ達は、に意識を集中させていた。
勿論ゼロスも。
「どうしたんですか、さん。いきなり?」
「うん。フームって・・・かなり強い魔族だと思うの。だから・・・本当に倒せるのかなって・・・倒したらあたしはどうなるのかなって思って・・・・」
アメリアの静かな質問に、はきちんと、はっきりとした口調で答えた。
は自分で答えながらも、頭の中ではあれやこれやと思考をめぐらせていた。
「確かに・・・その辺は気になりますね。」
「え?」
ゼロスのいきなりの発言にリナ達は反応した。
は、静かにゼロスを見つめるだけだった。
さん、前を見て歩いてくださいね。」
「あ、うん。」
そう言われ、急いで前を向き、意識だけを後ろに集中させる。
勿論、自分の周りの足元などにも気をつけながら。
「一体どういうこと?ゼロス・・・・」
リナは緊張した感じの口調で、ゼロスに問いかけた。
その問いかけにゼロスは一瞬口ごもるが、意を決して口を開いた。
さんを作り出したのはフームですよ。自分が倒されたときの事を考えて、何か細工をしているのではないかと思いまして・・・」
ゼロスのその言葉に、ゼロス以外皆が息を呑んだ。
確かに、フームが何もしていないとは考えにくい。
むしろ、何か細工している方が可能性があった。
ゼロスはその事をリナ達に伝えた。
はピクンと身体を振るわせるが、考えてはいた。という顔をして歩いていた。
「確かに・・・その辺は考えられるな。」
ゼルガディスはアメリアの後ろでペースを落とさず、後ろの気配も感じながら言った。
「ですがっ!!もし、何か細工していたとしたら・・・さんはっ!?」
アメリアは、認めたくないという気持ちイッパイで叫んだ。
それは誰でも同じだった。
アメリアは何か言いたげな顔でゼロスを後ろから見つめていた。
「これは一応予想です。そんなにカッカッしないで下さい、アメリアさん。」
ゼロスはそれでも冷静で静かな口調でそう呟いた。
アメリアも、グッと堪えてそれ以上講義(?)することをやめた。
「でも、ゼロス。」
おもむろに口を開いたのはだった。
「なんですか?」
「ゼロスの力ならフームに抵抗させたりせずに、何もしないうちに葬り去ることが出来るんじゃない?」
の言葉にゼロスと以外の皆が息を呑んだ。
確かに、そうなのだ。
だが、それは・・・・
「それは無理ですよ。」
「何で?」
ゼロスの思いもしない言葉には問い返していた。
リナ達も静かにとゼロスの言葉に耳を傾けていた。
「フーム・・・いえ、フーム殿は、僕と同等くらいの力を持っています。」
「え!?」
ゼロスの言葉にも含めた五人が声を上げた。
「そんなに驚くことじゃありませんよ。フームは、かなりの高位魔族ですから・・・それでスィーフィードとあの方を融合させることが出来たのですよ。」
ゼロスはスッと瞳を伏せて呟いた。
その言葉にリナ達はただ息を呑むことしか出来なかった。
「長ったらしい話はここまでのようだ。」
そう言ったのは、一番先頭を歩いていたガウリイだった。
何だ?と思い前に意識を向けると、前には誰か一人たっていた。
「・・・・!?」
一瞬光が差した瞬間、ガウリイの動きが止まった。
「ガウリイ?どうしたの?」
リナは後ろから、前に立ち尽くす影を警戒しながらガウリイに聞く。
「・・・・ヴァラ。」
しかし、ガウリイはリナの質問に答えずに、相手の名前を呼んだ。
「へぇ・・・覚えててくれて嬉しいぜ、ガウリイ。」
ガウリイの声に反応し、ヴァラと呼ばれた影は声を漏らした。
凄く低く渋い声。
声を聞くだけでは男だろう。
「まぁ、自己紹介しておくぜ。俺の名はヴァラ=デフィル。昔ガウリイと共に傭兵をやっていた。」
声を張り上げて、ヴァラは言った。
「しかし・・・何故お前がここにいる?」
「いちゃいけねぇのか?あ゙?」
チャッと腰に差さっていた剣を抜き放ち、ヴァラは構えた。
ガウリイもそれに反応し、剣を抜き放った。
「そういうことを言っているんじゃないでしょ?」
声のトーンを下げて、リナはヴァラを睨みつけたまま言った。
勿論、腰に差していたショートソードを抜き放って。
「ほぅ。じゃぁ・・・・本当のことを話してやろうか?」
くっくっくと低い声で笑うと、スッと目を細めてヴァラは言い放った。
「俺は数年前に死んでいる。その俺をフームが蘇らせたのだよ。まぁ、俺はただの霊魂さ。」
ニヤッと口元に笑みを浮かべると、ヴァラは一歩、また一歩と前に進み始めた。
「リナ。」
ヴァラから視線を離さず、一歩、また一歩とヴァラが踏み出す歩数と同じ歩数リナは後ろに下がった。
そんな時、前に立ち尽くすガウリイが静かに名前を呼んだ。
「何?」
ヴァラから視線は離さず、ガウリイに意識を向ける。
「ヴァラは俺に倒させてくれ・・・・」
静かに、たんたんと語るガウリイ。
「・・・分かったわ。ただし・・・援護はするわよ。」
ガウリイからヴァラに意識を移し、リナははっきりとした口調で言った。
ガウリイは小さく頷くと、同じくヴァラに意識を向ける。
その瞬間、リナとガウリイが離し終わるまで待っていたかのようにヴァラは地を蹴った。
リナはショート・ソードを構え、呪文の詠唱を始めた。
ガウリイは、バッとリナの前に飛び出すと、ヴァラとリナの間に立ちはだかり、ヴァラの方に斬りかかった。
「きゃっ!?」
リナの後ろに立ち、呪文の詠唱を始めたアメリアが、いきなり声を上げた。
「何!?」
「アメリアっ!!」
の叫び声に気付いたリナは急いで振り返った。
いつの間にか現われた一匹の魔獣から伸びた一本のツルがアメリアの身体を巻き取っていた。
「ちっ・・・・ブラム・ファング!!」
ゼルガディスは、ヴァラに放つために唱えていた魔法をその魔獣から伸びる一本のツルに向かって解き放った。
ざくっ!!
鈍い音を立てて、ツルは断ち切られ、その先に捕らえられていたアメリアは地面に叩きつけられた。
「二つに分かれましょっ!!」
はその一瞬の判断でそう叫んでいた。
「そうね。それが得策ね。」
リナは小さくそう呟くと、チラッと後ろを振り向き、ガウリイ達の様子を見た。
「リナとガウリイとゼロスでヴァラの方をお願い!あたしとアメリアとゼルガディスでこっちの魔獣を撃つわ!それに・・・一匹じゃないみたいだしね・・・」
はリナの小さい呟きを聞き、即座にそう指示を出した。
リナはの最後の言葉、『一匹じゃないみたい』という言葉に耳を動かした。
が、の意見に反対はする様子はない。
「で、ですが、さん!」
ゼロスだけが反対の意見を出そうと、声を張り上げた。
「あたしは大丈夫だから。向こうの方が強いわ。ゼロス。お願いね。」
トンッと、ゼロスの背中を押すと、リナとガウリイの方に押した。
ニッコリと笑みを浮かべて・・・
「そうですね!」
「行くぞ!」
アメリアの声の後に、ゼルガディスが叫び、そのままゼルガディスは魔獣の方に駆け出していた。
敵はツルを扱う魔獣一匹と、レッサー・デーモン50匹くらい。
その大量のレッサー・デーモンの中の一匹だけ、お腹の部分に口があった。
達は、そのことに気付いたが、気にする様子もなく、近くのレッサー・デーモンから撃ちはじめた。
『エルメキア・ランス!!』
三人の声が丁度重なり、それぞれ一匹ずつレッサー・デーモンを消滅させる。
「ったく・・・一体何匹いるんだ!?」
ゼルガディスはアストラル・ヴァインを掛けた魔法剣でレッサー・デーモンを切り倒しながら、呪文の詠唱をする。
アメリアもレッサー・デーモンの攻撃を避けながら、呪文の詠唱を始める。
ぎゃおぉぉおぉおぉっぉお!!
レッサー・デーモンの叫び声と共に、数体のレッサー・デーモンがの方に駆け出した。
!?避けろ!!」
他のレッサー・デーモン達を切り倒し、または魔法で倒していたゼルガディス。
襲い掛かるレッサー・デーモンを全く避けようともしないに気付いたゼルガディスは急いで呪文の詠唱を初め、の方に駆け寄ろうとする。
「ゼルガディスさん!!」
アメリアの声に気付いたゼルガディス。
さんなら大丈夫です。さんの強さ・・・知っているでしょう!?」
「・・・そうだな。」
アメリアの言葉に小さく返すと、急に足をとめ、近くに居たレッサー・デーモンに魔法を放つ。
「エルメキア・ランス!」
その瞬間、狙われたレッサー・デーモンが消滅した。
バッとの様子を見ようと振り返るゼルガディス。
ゼルガディスが振り返った瞬間、の手に何処からか現れた巨大な鎌を付けた杖が現れた。
ざしゅっ!!
ぶわしゅっ!
それは一瞬のことだった。
の杖がレッサー・デーモン数体を切り倒していたのは。
「あたしは大丈夫!そっちに集中してっ!」
の言葉に気付いたゼルガディスは、もう大丈夫だろう。と心の中で呟き視線を戻した。
その先に、襲い掛かるレッサー・デーモンの姿があった。
「ちっ!」
ざしゅっ・・・
しかし、そのレッサー・デーモンはゼルガディスの魔法剣によって切り倒されていた。
ばしゅばしゅばしゅ・・・・
「!?」
アメリアは魔法でレッサー・デーモンを確実に倒しながら当たりに視線をめぐらす。
「今の・・・音は?」
いくら三人で倒しているとは言え、一向に減る様子を見せないレッサー・デーモン。
それと同時に、アメリアは何か奇妙な音を耳にしていた。
「!!」
そして、アメリアの視線はあるレッサー・デーモンを捕らえていた。
常に、止めることなくレッサー・デーモンをポコポコ生み出しているデーモンを。
先ほど達が気付いた口を持ったレッサー・デーモンだった。
さん!ゼルガディスさん!!」
その事を伝えようと、アメリアは2人の方に視線を移し声を張り上げる。
その間にも口付レッサー・デーモンは、ポコポコレッサー・デーモンを生み出していた。
「どうした、アメリア!」
「何!?アメリア!?」
その声に気付いたゼルガディスとは視線をレッサー・デーモンからアメリアに移した。
「!さん、後ろ!!」
そう言われ、急いで振り返る
目の前には腕を振り上げたレッサー・デーモンが二匹。
ざしゅっ!!
一匹は即座に杖で倒すことが出来た。
しかし、もう一匹。
すぐに身体を回転させ、攻撃をしようとした
しかし、間に合わない!そう思った瞬間、いきなり虚空から現れた黒い錐によってレッサー・デーモンは消滅していた。
「ゼロスか・・・」
その一部始終を見ていたゼルガディスがボソリと呟いていた。
その事はアメリアにもにも聞こえていた。
が、気にしている余裕はなかった。
「どうしたの!?」
は急いでアメリアの方に駆け寄ると、声を掛けた。
「あそこにいる口を持ったレッサー・デーモン。」
コクンと喉を鳴らしながら、レッサー・デーモンの攻撃を避け、攻撃を仕掛けながら言葉を続けるアメリア。
「何?」
「アイツがこのレッサー・デーモンをポコポコ生み出しているみたいです。あいつを先に倒さないと、レッサー・デーモンの数は減るどころか増えてしまいます!」
アメリアは近くに居たレッサー・デーモンの攻撃を避けながら答えた。
即座にゼルガディスが魔法剣でそのレッサー・デーモンを切り倒す。
「分かった!二人は援護をお願い!」
そう叫ぶと、は2人の有無を聞く前に駆け出していた。
「ちっ・・・」
舌を鳴らすと、ゼルガディスは呪文の詠唱を初め、の後を追って駆け出した。
その後をハッとした顔をして追いかけるアメリア。
勿論、アメリアも呪文の詠唱を始めていた。
ざしゅっ・・・どしゅっ!!
通り過ぎ様、近くにいるレッサー・デーモンを切り倒しながら口有レッサー・デーモンに近づく
ゼルガディスもの切り残しを切り倒しながら先へ進んだ。
"光よ 我が手に集いて閃光となり 深淵の闇を打ち払え"
は呪文の詠唱に集中し、周りのレッサー・デーモンはアメリアたちに任せた。
そして、魔法が完成した。
キッとレッサー・デーモンを睨みつけると、
「エルメキア・ランス!」
力強くは口有レッサー・デーモンに向かって魔法を解き放った。
ぐおぉっぉぉおぉおおおぉぉぉおぉ!!!
光の槍を直に受けた口有レッサー・デーモンは雄たけびを上げた。
その瞬間、口有レッサー・デーモンの前に数十本のフレア・アローが出現した。
「効いてない!?」
は驚愕の声を上げると、そのレッサー・デーモンの攻撃を紙一重で避けた。
しかし、避け損ねた数本のフレア・アローがの右腕を掠めた。
「うくっ・・・・」
小さく、誰にも聞こえないくらいの声をあげ、はその場にしゃがみこんだ。
しかし、しゃがみこんだせいでレッサー・デーモンはの姿を見失った。
キョロキョロと辺りを見渡す。
それと同時にレッサー・デーモンの視線がピタリとアメリアたちのところで止まる。
それと同時だった。
「アストラル・ブレイク!!」
ドンと衝撃があったかのようにレッサー・デーモンの身体がブルッと震えた。
どさっ・・・・
後は鈍い音を立てて、その場に倒れるだけだった。
「これでレッサー・デーモンの数は増えることはないですねっ!」
そう言うと、アメリアはニッと笑みを浮かべた。
しかし、笑みを浮かべたのも一瞬の事。
すぐに後ろに振り向き、近寄ってきたレッサー・デーモンを避け、魔法を発動させるアメリア。
「もう少しだっ!一気に片付けるぞ!」
ゼルガディスの声と共に、とアメリアは揃えて声を上げた。

「光よっ!!」
ガウリイの声と同時に、刃がなかった剣に光の刃が現れた。
伝説の剣、光の剣。もしくはゴルンノヴァ。
ガウリイがダッとヴァラに駆け寄ったのを見て、リナもショートソードを抜き放つ。
ゼロスといえば、ただいつもと変わらぬニコ目のまま杖を持つだけだった。
「ゼロス!ボーっとしてないで行くわよ!!」
リナの声に気付きを見つめていたゼロスはスッとヴァラの方に視線を移動した。
「分かってますよ。」
そう言うと、スッとゼロスは虚空を渡って移動していた。
一瞬何が起きたんだ?と心の中でリナは呟いたが、すぐに何が起きたか理解し、急いでガウリイの方に駆け寄った。
勿論、呪文の詠唱をしながら。
ぎぃぃぃんっ!!
ガウリイが光の剣で切りかかった瞬間、ヴァラは一瞬で剣を抜きガウリイの剣を抑えた。
「ガウリイ・・・・お前の腕はその程度か?」
そう言いながらヴァラは思いっきりガウリイの剣を払いのけた。
払われた剣は後ろに勢い良く向かい、ガウリイの体勢を崩すのには十分だった。
バッとヴァラは体勢を低くし、ガウリイの足を薙ぐ。
しかし、それに気付いたリナは急いで唱えておいた魔法を発動させる。
「ライティング!!」
光量最大の維持力のないライティングをリナは発動させた。
たとえ霊魂であるヴァラであっても光はまぶしい。
ヴァラは急いで目を腕で覆い隠した。
その間にガウリイは体勢を整える。
その瞬間だった。
ばんっ!!
ゼロスの杖がヴァラの腹を叩いていたのは。
その反動でヴァラは後ろに吹っ飛ぶ。
「ゼロス!?」
「気付いていませんでした?僕が出ていなければガウリイさんは腹を切られていましたよ?」
ゼロスはジッとヴァラを見つめたまま呟いた。
「ヴァラさん・・・・いや。」
そこまで言うと、ゼロスは滅多に開かない瞳をスッと開いた。
そしてヴァラを見つめた。
「ヴァラ=フームさん。そろそろ正体を現したら如何ですか?」
『!?』
ゼロスの言葉にヴァラ、リナ、ガウリイの三人が驚いた。
「どういう・・・・事なんだ?ゼロス。」
「説明しなさいよっ!!」
ガウリイはスッと立ち上がりヴァラから視線を話さずに問いかける。
リナはゼロスの胸倉をグッと掴み、詰め寄る。
一方、ヴァラは信じられないという顔をして立ち尽くしていた。
「ヴァラさんは確かにガウリイさんの知り合いかもしれません。ですが・・・霊魂だと言うのは嘘ですよ。彼は・・・一度死んで魔族となったのです。フームの下で働く魔族と・・・」
ゼロスの言葉にガウリイは何もいえなかった。
「くくっ・・・・ははは・・・・」
いきなり笑い出したヴァラ。
即座に反応したのは、誰でもなくガウリイだった。
「ヴァラっ!?」
「そうさ・・・俺は一度死んでフームの下で働く魔族となった。」
そう言うと、生前の姿をしていたヴァラは一瞬にして、肉が裂け、額からねじれた形をした二本の角が現れた。
両手は顔より大きくなり、鋭い爪がグッと伸びた。
「それが、俺。ヴァラ=フームだ。」
顔を手で覆いながら声を殺して笑うヴァラ。
「そう・・・か・・・・ヴァラ。お前・・・・魔族なんかに・・・・」
そう小さく呟くとガウリイはギッとヴァラをにらみつけた。
「お前は・・・ヴァラ・・・・だけど、俺の知っているヴァラじゃない!!」
そう叫ぶと、ガウリイはヴァラに向かって駆け出した。
先ほどのガウリイとは違った。
剣の切れも鋭くなり、ヴァラを押していた。
「ゼラス・ブリッド!!」
リナは急いで呪文の詠唱を初め、魔法を発動させた。
獣王ゼラス=メタリオムの力を借りた魔法。
リナは生まれた光の帯を自在に操り、ヴァラに向かって攻撃を仕掛けた。
自由自在に操れる魔法なら、ガウリイを避けながら攻撃を当てられるからだ。
「がふっ・・・・ぐはっ!!」
ヴァラはリナの魔法に気付いていなかったらしく、リナの攻撃をまともに受けてしまった。
がぎぃぃぃんっ!!
ガウリイが思いっきり剣を振り払った瞬間、ヴァラは上手く間合いを取って後ろに飛びのいた。
「くく・・・くくく・・・・よくもやってくれたな・・・・」
そう言うとヴァラはスッと虚空に姿を消した。
「!?」
姿の消えたヴァラに驚き、ガウリイは辺りを見渡した。
「ゼロス!ヴァラは!?」
リナは既に虚空に姿を消したゼロスに向かって声を掛けた。
急いでガウリイの近くに駆け寄って。
「見当たりません!!」
ゼロスは声を張り上げて叫ぶと、スッと姿を現した。
「どういうこと!?」
リナは姿をあらわしたゼロスに向かって声を張り上げた。
即座にガウリイと背中合わせにして。
「ぐっ!!」
その瞬間、リナのわき腹に激痛が走った。
ヴァラがリナの真横に現れ、リナのわき腹に蹴りを与えたらしい。
眉間にシワを寄せ、リナは真横に吹っ飛んだ。
「リナ!?」
「大・・・丈夫・・・よ、ガウリイ。」
わき腹を押さえたまま、ゆっくりと身体を起こすリナ。
「よくもこの俺をコケにしてくれたな。さっきの攻撃はさすがに効いたぞ・・・」
眉間にシワを寄せ、目を見開いて声を荒げてヴァラはリナを見下ろした。
「次は・・・てめぇだっ!!」
そう叫ぶと、ヴァラはガウリイに向かって駆け出した。
「!?早い!!」
ガウリイはそう叫ぶと声を上げて剣を構えた。
しかし、ヴァラの方が早かった。
ざくっ!!
「ぐあっ!!」
わき腹をヴァラの剣で切りつけられた。
「次はてめぇだ!!」
ヴァラはギッとゼロスを睨みつけ、虚空に消えた。
その瞬間、ゼロスも急いで虚空に姿を消した。
「ちっ・・・・くそ!何処だっ!?」
見つける事が出来ず、ヴァラは姿を現す。
その瞬間、ヴァラの身体を黒い錐が貫いた。
ゼロスの精神面世界(アストラル・サイド)からの攻撃だ。
「ぐああぁぁっぁぁぅぅっぃ!!!」
ヴァラは声をあげ、その場にのけぞった。
その隙を見逃さず、ガウリイは立ち上がると、ヴァラの方に駆け出した。
光の剣を振り上げ、ヴァラに向かって振り下ろした。
「っ・・・!」
しかし、ガウリイはヴァラの喉に突き刺さる直前に剣を止めていた。
「・・・・ガウリイ!?」
「くそっ・・・・どうして・・・・どうしてこうなっちまったんだ!!」
そう言うと、ガウリイはもう一度剣を振り上げ、ヴァラに向かって振り下ろした。
「ぎゃぁぁああぁぅぅぅいいぃ!!」
喉に剣が突き刺さったままヴァラは声を上げた。
そして、そのまま黒い霧と化して消えていった。
「ガウリイ・・・・」
リナはすぐにリカバリィでガウリイのわき腹の傷を回復させた。
「すまん・・・・」
そう言うと、傷が回復したことを確認するとスッと立ち上がり、達の方を見つめた。
ガウリイが振り向くと、最後の一匹のレッサー・デーモンを倒した瞬間だった。
「リナ!何とかこっちは倒せたわ。そっちは?」
は小走りでリナに駆け寄ると、そう問いかけた。
「なんとか・・・倒せたわ。ゼロスの協力あってだけどね。」
ウインクをしながらリナはゼロスをチラッと見つめ、に答えた。
「そう・・・・」
「それより・・・早く先へ進まないか?」
ゼルガディスは視線を前へ、闇の中へ移動させ、小さく呟いた。
「そうね・・・早く行かないと。」
「そうですねっ!そして、悪の根源のフームを倒しましょう!!」
アメリアはグッと拳を握り締め、リナとの手を握り前へ進み始めた。
「リナさん!さん!急いでください!早く行きますよ。」
ニコニコと笑みを浮かべたままアメリアは先を急ぐ。
そんなアメリアの姿を見て、リナとは笑みを浮かべ、その後を追う。
ガウリイとゼルガディスも仕方ないか。という顔をして後を追う。
「あ、待ってください。」
間の抜けた声を上げてゼロスはの後を追う。
そして、を守るように後ろに立つと、そのまま先へと足を向けた。
「暗いから足元に気をつけてね。」
リナは前を歩きながら、後ろに控える達にそう伝えた。
「さ・・・・これからどんな試練が待ってるか知らないけど、バシバシ進むわよ!」
リナは一瞬後ろを向き、ニッコリ微笑むと腕を上に振り上げて駆け出した。
「あ、待ってよ。リナ〜〜!」





To be continued......................





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