darkness of holy 第八話
ドクンドクン・・・・
ドクンドクン・・・・
何かの音が通路に響き渡っていた。
「どうやら、また敵のようね。」
リナは静かに前を見つめながら、呟いた。
「えぇ。ですが・・・私にとって戦いたい方は一人だけ。」
前に現れた一人の女は、ジッとリナ達を見つめて呟いた。
それが何を意味するのか・・・リナ達には分かっていなかった。
「どういう・・・事?」
はザッと相手の気迫に押され、後ろへと一歩下がっていた。
「私が戦いたいのは、貴方だよ。」
と良い、女はビシッとを指差した。
「え!?」
「驚くこともないだろう?貴方を倒せば私はロード・オブ・ナイトメアとスィーフィードの力を持ったものを倒したということになる。そうすれば、あたしの強さは立証される。それに、フーム様が殺されずにすむ。一石二兆ではないか。」
女は一人でべらべらと話し始めた。
しかし、達にはこの女が強いことが分かっていた。
そう、気迫で。
だから下手な行動には出られないのだ。
「貴方も・・・フームの手下なのね?」
は小さな声で、前に立ち尽くす女に問いかけた。
「ここにいるんだ。それしかないだろう?」
光が当たり、相手がニッと笑ったのが達に見えた。
かなりの強敵。
余裕があるのが目に見えていた。
「だけど・・・あんながと戦いたがっても俺たちが許すと思っているのか?」
ズイっと気迫に負けないように強い気持ちを持ち、前に一歩出るゼルガディス。
「そうだな。俺はリナの保護者だが・・・の仲間でもある。」
と、今度はガウリイ。
剣の柄に手を掛けながらゼルガディスの横に立つ。
「仲間のピンチを見逃して、正義は出来ません!」
アメリアもグッと拳を握り締め、前に一歩出た。
「そういう事。どうするの?」
リナもフッと口元に笑みを浮かべると、アメリアの横に一歩出た。
「勿論・・・僕も放ってはおきませんよ。」
と、ゼロスはの肩に手を置いたまま、相手をニコ目で見つめる。
ゼロスは全く気押されすることなく余裕な笑みを浮かべて女を見つめていた。
「貴方がどれほどの力をお持ちか知りませんが・・・僕は貴方に負けるつもりはありませんからね。勿論、リナさんもアメリアさんも、ガウリイさんもゼルガディスさんも。そして、さんも。」
ゼロスはジッと女を見つめて、話し始めた。
しかし、一切隙を見せる様子はなかった。
「なっ・・・お前は・・・獣王ゼラスの部下・・・ゼロスっ・・・」
ゼロスの姿を見た瞬間、一瞬の隙が女に生まれた。
ざしゅっ・・・・
その隙をゼロスは見逃さなかった。
即座にアストラルサイドから女に攻撃を仕掛けていた。
虚空からいきなり現れた黒い錐が女の右肩を仕留めていた。
即座に左へと避けていたのだ。
「くっ・・・さすがゼロスだね。私はあんたにはかなわないだろう・・・でも、フーム様を倒せるのかな?」
口元に笑みを浮かべると、女はパチンと指を鳴らした。
「私はフラーム=アンヴロペ。あんたたちの相手は・・・こいつらがするよっ!」
フラームと名乗った女がパチンと指を鳴らした瞬間、フラームの前に五人の者が現れた。
「私の部下だ。」
リナ、ガウリイ、アメリア、ゼルガディス、ゼロスの前に一人ずつ立っていた。
「そいつらがあんたたちの相手をしてくれるさ。その間に・・・私はを・・・ね。」
クスッと鼻でフラームは笑った。
「なっ!!卑怯ですよ!!」
ゼロスは急いでに近づこうと駆け出した。
「こうでもしないと、を殺すことが出来ないんでね・・・」
ゼロスの言葉にフラームはくすくすと笑いながら、ゼロスを見ていた。
「!!」
「くそっ・・・こいつらさえ居なければ!!」
ガウリイとゼルガディスは前に立つ者から視線を外さずに、声を上げた。
「!!こいつらを倒したら行くわ!!」
「それまで、頑張って下さい!!」
リナとアメリアが交互にに言葉を掛けた。
は、そんなリナ達の言葉に耳を傾けていた。
「大丈夫・・・あたしは足手まといになんてならないから!!あたしだって仲間!!あたしだって・・・戦える!!皆が居るから・・戦える!!」
は虚空からいきなり現れた杖を手にして、叫んだ。
「・・・・・・分かったわ!でも、こっちが片付いたら手を貸すわ!それまで・・・一人で頑張って!」
リナはニッコリ微笑みながら、に言った。
「話は終わりかい?」
達の会話が終了した頃を見計らって、フラームは声を上げた。
静かに、不気味な声を・・・
「終わったようなら・・・戦場に移動してもらうよ。自分の相手を倒せばここに戻ってくる。ただし・・・死ねばそこで終わりだ。さぁ・・・イッツ・ショータイム!!」
パチンッ!!
ヴンッ・・・・・
フラームの指を鳴らす音とともに、リナ達はそれぞれの戦場へと移動させられた。
とフラームだけは、元の場所で戦うことになった。
「ふふふ・・・あんたの死は、確実だね。」
フラームは余裕な笑みを浮かべ、を見つめた。
「そんなの・・・やってみないと分からない!!」
そう叫ぶと、は杖をグッと持ちフラームへ向かって地を蹴った。
「ここ・・・・は?」
そう小さく呟いたのはリナだった。
「ここは、俺達の戦場だ。」
「!?」
いきなり後ろから掛かった声に驚き、リナはショートソードに手を掛けて、振り返った。
「そこまで驚かなくても良いだろ?」
大声で豪快に笑い始める、一人の男。
ツンツンとした黒髪で、鋭い目をした男。
動きやすい白い服を着て、腰に一本の剣を差していた。
見た感じ、20代前半くらいの年齢だろう。
「リナ=インバース。お前の命・・・俺が貰い受ける。」
「はっ・・・冗談言わないでよ?名前も知らない、何処の馬の骨かも知らないやつなんかに殺されてたまるもんかっ!それに・・・あたしは鼻ッからやられるつもりはないわっ!!」
リナは相手をビシッと指差して叫んだ。
「そんなことを言って・・・俺に勝てると思っているのか?」
「ふんっ・・・あたしは負けるつもりはないって言ったでしょ?それより・・・名乗ったらどうなの?自分の名前・・・」
鼻で男の言葉を笑い飛ばしたリナ。
ジト目で男を見ながら、名を名乗れば?と小さく呟く。
「俺の名は、チョガリ。」
リナに言われ、男は短く名を名乗った。
「ふーん・・・チョガリ、ね。分かったわ。で・・・?始めないの?早くを助けに行きたいんだけど・・・」
リナは男の名、チョガリという名を聞き、コクリと頷いた。
そして、目を細めて、早く始めようと切り出した。
「死に急がなくても良かろう?」
「聞こえなかった?『早くを助けに行きたいんだけど』って言ったんだけど?」
チョガリの言葉を聞かず、リナは殺気を膨らます。
「ふんっ・・・良いだろう。だが・・・簡単にこの俺がやられると思うな。」
そう言うと、チョガリはスッと剣を抜き、構えた。
リナはチョガリが構える前に呪文の詠唱に入っていた。
「エルメキア・ランス!!」
リナの声と同時に光の槍が出現し、チョガリへと突き進んでいった。
キィィィンッ!!
鋭い音を出し、チョガリは自分の持つ剣でリナの魔法を打ち消した。
「こんなものくらい・・・防げるっ!!」
そう叫ぶと、チョガリはダッと地を蹴りリナへと剣を振りかざした。
シュッ・・・ギンッ・・・・
リナは即座にショートソードを抜き、チョガリの剣を受け止めた。
「くっ・・・・」
「くくく・・・剣も使うのか・・・だが・・・・」
ガギンッ!!
「俺のほうが上手だな・・・」
チョガリの声と共に、リナの手からショートソードが抜け落ちた。
「そう見たいね・・・」
そう言うと、リナは呪文の詠唱を始めた。
「させるかっ!!」
リナに呪文の詠唱をさせないと剣を振り上げ、リナを切りかかろうとした。
チョガリの攻撃を何とか紙一重で避けるリナ。
一時呪文の詠唱がストップしてしまったが、気を取り直して呪文の詠唱を続ける。
「ディス・ファング!」
リナの声に答えるかの様に、リナの影が徐々に竜の形へと変貌していった。
その竜の影はグッと伸び、チョガリの影へと向かっていった。
「はっ・・・こんなもので俺をっ・・・がっ・・・ぐっ!!何・・・だ・・・これは・・・」
チョガリは余裕な笑みを浮かべていたが、リナの影の竜によって、自分の影をかまれた。
その部分と同じ部分をチョガリは怪我をした。
「甘く見ていた証拠ね・・・」
ニッと口元に笑みを浮かべながら、リナはチョガリを見下した。
その間にもリナの影の竜はチョガリの影を噛み砕いていた。
「おの・・・れ・・・・貴様!!」
「戻れ!」
リナの声にあわせて、影の竜はスッと元の普通の影に戻った。
そして、リナはバッと地面に落ちたショートソードに手を伸ばし、呪文の詠唱を始めた。
ガギンッ・・・
間一髪間に合い、リナはショートソードでチョガリの剣を受け止めていた。
力いっぱいチョガリの剣を払いのけ、リナはチョガリに剣をつき立てた。
「ぐっ・・・しかし・・・これ・・・で俺は・・・殺せん・・・・」
「どうかしらね?」
そう言うと、リナは剣の柄を力いっぱい握った。
「ドラグ・スレイブ!!」
その瞬間、チョガリの体の中に入り込んでいた剣先から、リナの魔法が発動した。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
物凄い声を上げて、チョガリはその場に倒れた。
「はぁはぁ・・・・あたしを、甘く見るからよ・・・」
バサッと髪をなびかせながら、地面に倒れるチョガリを見つめた。
そしてその瞬間、リナの居る空間が歪み、元の場所へと空間がつながった。
「ラッ!?」
リナはの名前を叫ぶと、呪文の詠唱を始め、フラームの方に駆け出した。
「リナ!?」
「ちっ・・・もう来たのか。」
フラームは舌をうち、リナを見つめた。
「リナ・・・コイツは炎を扱うわ。気をつけて!」
はそう言うと、杖を強く握り締めて駆け出した。
「それが分かったところで、どうしようもないだろう!?」
そんなを余裕な瞳で見つめるフラーム。
「エルメキア・ランス!」
「おっと!?」
との間合いを詰めるフラームにリナの一撃が襲った。
紙一重で避けたフラームはキッとリナをにらみつけた。
「邪魔するんじゃないよ!!これは私との戦いなんだ!!」
フラームはそう言うと、リナに向かって何かを投げつけた。
「効かないわ!!」
そう言うと、リナは持っていたショートソードでその何かを打ち払った。
そのとき、はフラームがニヤリと口元に笑みを浮かべたことに気付いた。
「!!」
何かに気付いたは急いでリナの方に向き直った。
「リナ!!そのショートソードを捨てて!!」
「え?どっどうして?」
そうリナが聞き返したときだった。
ごご・・・・・・
リナの持つショートソードから炎が上がった。
「なっ!?はっ離れない!!」
リナは驚き、急いでショートソードを投げ捨てようとした。
しかし、ショートソードはリナの手から離れなかった。
「まさかっ!!」
そう叫ぶと、は急いで魔法を唱え始めた。
「アストラル・ブレイク!!」
の声と同時に、リナの手に巻きついていた炎のツルがボッと一気に大きく炎を上げ、消滅した。
炎のツルの正体が魔族ではないかと思ったはアストラル・サイドから相手を攻撃する魔法をその炎のツルに仕掛けてみた。
「ラ・・・、ありがと。」
ガクッと床に膝を付けて、に顔を向けるリナ。
「そんな話をしている場合か?」
そう言うと、フラームはダッとリナに向かって駆け出した。
「させない!」
そう叫ぶと、は杖を握り締め、リナとフラームの間に飛び出た。
ぶんっ!!
思いっきりは持っていた杖を振るった。
「ちっ・・・」
フラームは舌打ちし、急いで後ろに飛び退いた。
の杖は宙を凪いだだけだった。
「ファイアー・ボール!!」
リナの声にあわせて、炎の球がフラームに向かって飛んでいった。
「そんなので魔族である私を倒せると思うのか!?」
フラームがそう叫んだ瞬間、リナは口元に笑みを浮かべた。
「ブレイク!」
リナの声にあわせて、放った炎の球はフラームの横を通り過ぎる瞬間、爆発した。
「っ!?」
フラームは両手で顔を多い、短く低い声を漏らした。
ざんっ!!
それと同時にフラームの肩をの杖が切り裂いた。
「がっ・・・・貴様・・・ら・・・」
肩を抑えてフラームは煙の中から姿を現した。
「許さん・・・・絶対に殺す・・・」
そう言うと、フラームは虚空に姿を消した。
『なっ!?』
とリナの声が重なった。
フラームの気配を探ろうとリナは神経を集中させた。
しかし、フラームの気配は全く感じなかった。
完璧に隠れたということなのだ。
「リナ!!」
がそう叫び、リナの腕を引っ張った。
その瞬間、リナの居た場所に軌道が走った。
そして、その場所からフラームがゆっくりと姿を現した。
そして、すぐにまた虚空へと姿を消した。
「・・・どうやってフラームの出てくる場所が分かったの?」
リナはと背を合わせ、フラームの気配を集中して読もうとしながら問いかけた。
「気配よ、気配。」
「でも・・・奴は完全に気配を・・・」
「ううん。かすかに気配をもらしているわ。フラームも気付いていないみたいだけど・・・」
そう言いながら、何とかフラームの気配を読む。
怒りに飲み込まれたフラームは気配を消すことを忘れ、完全に居場所が分かっていた。
勿論、リナもそれが分かり、紙一重でフラームの攻撃を避けていた。
「!!後ろ!」
リナの声で気付き、後ろを振り向こうとした。
しかし、振り向く直前にの体に風穴が開いた。
フラームの攻撃がの背中から直撃したのだ。
「あくっ・・・・」
声をあげ、は杖で体を支え、その場に膝を着いた。
「!?」
「リナ!フラームの気配を読んで!あたしは・・・・大丈夫だから!!」
の方に近寄ってきたリナ。
そんなリナには声を上げて指示をした。
「でっでも・・・その傷・・・・」
リナは一応、フラームの気配を探りながら、に声を掛けた。
「大丈夫・・・よ。あたしは一応魔族よ。これくらい・・・どうって事ないわ。」
ハァハァと荒い息で言葉を紡ぐ。
確かに、魔族だから大丈夫、と言えるがその生命体を削られたのと同じ状態なのだ。
これで大丈夫だという方がおかしい。
「リナさん!!さん!!」
そのとき、聞こえた声は、2人の知っている声。
アメリアの物だった・・・
「ちょっ!?何なんですかぁぁぁぁぁ!!こぉぉぉこぉぉぉはぁぁぁぁ!!」
グッと両手を胸の前に持ってきて、グッと拳を握り締め、力いっぱい叫んでいるのはアメリアだった。
「うるさい・・・」
アメリアの発言に、軽く冷たくあしらったのは、一人の男だった。
「誰ですか!?」
アメリアは急いで声のした方へ体を向けた。
そこには、赤い長髪の男が立っていた。
見た感じ20代半ばくらいの年齢。
ゆったりとした赤い服を着ていた。
「ガラン」
ガランと名乗った男は、静かに視線をアメリアに移し、低い声で答えた。
「ガラン?」
アメリアの鸚鵡返しの言葉に小さく頷き、アメリアをジッと見つめた。
「アメリア・・・と言ったな、確か。」
「そうですが?」
「ここでお前には死んでもらう。という女に手を貸したことを悔やむが良い。」
口元に笑みを作り、ガランはアメリアを見つめ、腰に付けていたムチを取り出した。
「さて・・・そろそろ始めさせてもらおうか。」
そう言うと、ビシッと一発地面にムチをたたきつけた。
しかし、アメリアは油断する様子もなく、ガランを見つめていた。
「俺はあまり話すのは好きじゃないからな・・・・」
そう付け足すと、ガランは地を蹴り、アメリアに襲い掛かった。
ビュンッ!!
鋭い音を立てて、ガランはアメリアに向かってムチを振り下ろした。
「はっ!」
これくらい!と想い、アメリアは両腕を前に突き出し、ムチを受けようとした。
しかし、アメリアは気付いていなかった。
そのムチの切れ味に。威力に。
ザシュッ!!
アメリアの腕に軽く傷がついた。
ツルが腕に当たった瞬間、感触が違ったことにいち早く気付き、腕を引き、後ろに飛びのいたのだ。
「避けたか・・・・」
ガランは小さくボソリと答えると、またツルを振るってきた。
「なっ何なんですか、それはぁぁぁ!!」
紙一重でツルを避けながら叫ぶアメリア。
しかし、完璧に避けられては居なく、体のあちこちに軽いかすり傷が出来ていた。
軽いかすり傷でも、それを何度も受ければ大きな傷へと変わっていく。
「何でも良いだろう。死ぬ者に話すことはない。」
そう言うと、何も言わずにガランはアメリアにムチを振るった。
「ライブリム!」
アメリアは唱えておいた魔法をガランに向かって発動させた。
アメリアのかざす手から冷気の波動を放ち、ガランは氷の中に閉ざされた。
「ハァハァ・・・やりましたか・・・?」
確認するかのようにゆっくりと近づいていくアメリア。
パキ・・・・バキ・・・・カキィィィィン!!
鋭い音と共に、アメリアの前で凍っていたガランが氷を砕き割った。
「なっ!?」
その瞬間、ガランはアメリアの方に駆け寄り、間近からムチを振るった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
ガランの振るったムチはアメリアの体に巻きつき、ミシミシと鋭いムチがアメリアの体に食い込んでいった。
「終わりだな・・・・最後に言いたい事は?」
ガランの言葉に、口元に密かにアメリアは笑みを浮かべていた。
そして、ボソボソとアメリアは話し始めた。
「あ?はっきり言え。」
後悔することになるとも知らずに、ガランはアメリアにそう言った。
そして、アメリアは笑みを浮かべたままゆっくりと口を広げた。
To be continued.........................
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