darkness of holy 第九話
勝負はすぐについた。
「何故・・・あんなことを・・・?」
ガランは黒い霧と化して消えながら、小さく問いかけた。
「ハァハァ・・・・それしか、方法が・・・ないと思っ・・・たから・・・・ですよ。」
肩で息を吸いながらアメリアはゆっくりと答えた。
あの時、アメリアはガランの言葉どおり、最後の言葉を発していた。
アメリアが発した言葉は『ラ・ティルト』だった。
精霊魔法最強の魔法。
ドラグ・スレイブにも勝るといわれている魔法だった。
その魔法をアメリアは自分の体に巻きつくツルと一緒に自分にも魔法を掛けたのだ。
勿論、どうなってしまうかも分かっていたが・・・それしか方法がなかったのだ。
その結果・・・アメリアはかなりの痛手を受けた。
一応、ツルとアメリアを羽交い絞めにしていたガランを標的に魔法を発動させていたため、その魔法の余波をアメリアは受けただけだった。
そのため、この程度の痛手で済んだのだ。
「運悪ければ・・・お前も死んでいた。」
ガランの言葉にアメリアは静かに頷き、その場に倒れた。
立っている気力さえもなくなったのだ。
「それくらい・・・分かってま・・した・・よ。」
苦笑しながらアメリアはガランに向かって声を掛けた。
「なら・・・何故・・・?」
「掛けてみたかったのですよ・・・・運命・・・というものに・・・・」
「そう・・・か・・・」
そんなアメリアの声を聞いたガランは口元に軽く笑みを浮かべて、黒い霧と化して消えていった。
「何とか・・・倒せましたね・・・」
フゥと息を吐き捨て、アメリアは呪文の詠唱を始めた。
「リザレクション・・・」
アメリアの声に反応し、周りから白い光が集まり、アメリアの傷を癒し始めた。
「ハァハァ・・・・何とか大丈夫みたいですね。それより・・・!」
そう言った瞬間、周りの風景が徐々に変わり始めていることにアメリアは気付いた。
「!!」
そしてアメリアの目の前にある光景が現れた。
「リナさん!!さん!!」
アメリアはそう声を上げると、バッと立ち上がってリナ達の方へ駆け寄って行った。
「なっ!?」
そのとき、の異変にアメリアは気付いた。
「その・・・・傷は・・・?」
ガクッと膝を地面に付け、急いで呪文の詠唱を始めるアメリア。
「え・・・?」
いきなり唱え始めたアメリアに一瞬戸惑う。
そして、状況を理解したは、顔だけをリナに向けた。
「リナ・・・あたしは平気だから・・・・フラームをお願い・・・」
眉間にシワを寄せ、笑顔を作る。
そんなを一瞬見つめ、コクリとリナは頷いた。
そして、達に背を向けてリナはフラームの気配を探り、駆け出し始めた。
「リザレクション!」
アメリアの声と同時に白い光が集まり、の体を包んだ。
見る見るうちにの傷は癒えていった。
「アメリア・・・ありがと・・・・もう、大丈夫・・・だよ。」
はパッと右手を掲げて、平気とアメリアに伝えた。
「で・・・ですが・・・完全には・・・・」
「ここまで回復すれば大丈夫よ・・・あたしはこれでも一応魔族よ。」
苦笑しながらはアメリアに答えた。
「そう・・・でしたね。」
そう言うと、ニッコリ微笑み立ち上がった。
「行きましょう!リナさんの元へ!!」
アメリアはグッと拳を握り締めると、叫び、一人先にリナの元へと向かった。
「アッアメリア!!」
そう叫び、アメリアを呼び止めようとした。
が、止まらないと分かっていたため、顔に笑みを浮かべて立ち上がろうとした。
「うくっ・・・・やっぱり・・・傷はふさがっても・・・力が・・・」
ギュッと握り締めていた手をゆっくりと開き、手の平を見つめた。
「この戦いが終わったら・・・あたしは・・・・」
そう言うと、は虚空から杖を取り出しアメリアたちの後を追った。
「ここで・・・・やられたりは・・・出来ない・・・」
そう呟くと、は目を閉じた。
胸の鼓動が聞こえる。
三つの別々の鼓動。
その中に自分の物、そして金色の魔王の物、そしてスィーフィードの物・・・
は目を閉じ、思考を止めた。
何も考えずに、立っていた。
それが何を意味するのか、は知っているはずだった。
−私と入れ替われ・・・−
そう声が頭に響いた瞬間、は意識を手放した。
カッ!!!
の体が黄金に輝き始めた。
「!?」
その瞬間、他の異空間に閉じ込められていたゼロス・ガウリイ・ゼルガディスが元の世界へと戻ってきた。
そして、それと同時にゼロス・ガウリイ・ゼルガディスの相手をしていた敵は消滅していった。
「・・・さん?」
ゼロスは黄金に輝くを見て、小さく呟きながら声を掛けた。
しかし、はゼロスの声に反応せず、キッとフラームをにらみつけた。
「どうやら・・・私と一戦交えるつもりになったようだね。」
ニヤッと口元に笑みを浮かべ、フラームは嬉しそうな顔をした。
「違う!!じゃないわっ!!」
リナはの様子を見て、そう叫んでいた。
だが、外見はなのだ。
フラームが信じるのだろうか。
リナ達はの中に二つの存在があるということを知っている・・・だから信じられる。
だが、何も知らないフラームはどうなんだろうか・・・
「そんな嘘、きくと思うか!?」
そう言うと、フラームは炎を手から出し、に向かって駆け出した。
そんなフラームを余裕な笑みで迎え撃つ。
ブンッと杖を振るい、フラームの体を半分に切断していた。
間合いに入るのにはまだまだ距離があった。
金色の魔王の力が杖の先にある鎌のように具現化し、伸びたのだ。
フラームは声を上げることなく滅びていった。
それを見届けた瞬間、はフラッとバランスを崩した。
「っと・・・」
そのをゼロスは急いで支えた。
そのとき、は意識を失っていた。
「リナさん・・・さんを少し休ませましょう?」
そう言うと、を中心に全員をゼロスは結界を張った。
『ここは・・・・?』
暗闇の中、の声が響き渡った。
『ここは、お前の心の中だ。』
聞き覚えのある、でも、聞き覚えのない、微妙な感じの声が聞こえた。
暗闇の中、金色に光り輝く光がポゥッと浮かび上がった。
は目を細め、その光をジッと見つめた。
『貴方・・・は?』
『私は金色の魔王。人間が言うロード・オブ・ナイトメアだ。』
『!?』
金色の魔王の言葉にはまとも驚いていた。
確かに、自分の体の中に金色の魔王が居ると知っていたが、面と向かって話すのは初めてなのだ。
驚かずに居ろという方が無理難題だろう。
『えっと・・・あたしの中に居るスィーフィード・・・は?』
一応金色の魔王に問いかけてみる。
『スィーフィードは私の力を抑えるため、表などには出て来れない。お前はスィーフィードに会うことは出来ない。』
の問いかけに、金色の魔王は低い声で、淡々と話し始めた。
は静かに金色の魔王の言葉を聞き、コクリコクリと頷いていた。
『そう・・・・それで・・・・何のようなの?』
『大切なことだ・・・良く聞け。』
真面目な顔をしている金色の魔王の言葉にはゴクリと息を呑み、小さく頷き金色の魔王を見つめた。
『聞く覚悟が出来たようだな・・・・』
そう言うと、金色の魔王は何処からか二つのイスを取り出し、宙に浮かした。
『それに座れ。』
金色の魔王はイスに腰掛け、あまっている方のイスを指差してに言った。
『あ、はい。』
緊張した面持ちで、はゆっくりとイスに腰掛けた。
宙に浮くイスに腰掛けると、一瞬下に沈んだが、そのままの重さに耐え、元の位置まで浮き上がった。
『・・・お前の体、命のことだ。』
そう言うと、ピッと金色の魔王はの傷口を指差した。
そこは、がフラーム達との戦いの最中に追った傷だった。
体の中央に風穴を開けられ、魔族としての精神力を奪われた。
何とかアメリアの呪文で傷を回復させ、精神力戻りつつあった。
だが、金色の魔王が言うにはそのことで何か良くないことがあるらしい。
は息を呑み、耳を済ませた。
それからどれくらい経ったのだろうか。
は金色の魔王から信じられない一言を浴びさせられた。
『どうして・・・?何で・・・・?あたしは・・・あたしは・・・・っ!!』
そこまで叫んだ瞬間、金色の魔王はグッとの口を抑えた。
『それが・・・お前の運命。受け止めて・・・』
哀れに思う表情で金色の魔王はを見つめた。
しかし、は信じることは出来なかった。
まさか───まさか───と思うばかりだった。
『い・・・・・いやぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁ!!!』
は両手で頭を抱え、目をギュッと瞑り声がかれるほどの大きさの声で泣き叫んだ。
徐々に下がる手は次第に頭から自分の体を抱くようになり、は自分の体をギュッと抱きしめたまま、声を押し殺して泣いていた。
『どうし・・・・て・・・・?どうして・・・・あたしが・・・・?』
は光を失った瞳で金色の魔王を見つめ、何度も何度も同じ事を繰り返し話していた。
『これは・・・もう決まったことだ。私にはどうすることも出来ない・・・この力を持ってしても・・・』
金色の魔王は寂しそうな顔をして、を見つめた。
ただ・・・力は二つに帰り 混沌へと帰るのみ 混沌へと落ちるのみ その傷 運命の傷なり
は意識を取り戻しながら、金色の魔王の小さな言葉を聞いていた。
「う・・・ん・・・・」
は小さくうめき、体を起こした。
そのとき、体に激痛が走った。
−・・・もう・・・始まってる・・・
「さん!?」
側にずっと付き添っていたゼロスがが目覚めたことに気付き、声を上げた。
「ゼロス・・・・」
目にたくさんの涙を溜めて、はゼロスを見つめた。
「どう・・・したんですか?」
「なんでも・・・ない。」
ゼロスの問いかけには静かに答えた。
なんでもない・・・知られたくない・・・
そう心の中で何度も何度も呟きながら。
「、目が覚めたのね。」
嬉しそうな顔をしてリナが近づいてきた。
その後ろからアメリア・ゼルガディス・ガウリイの三人も小走りで駆け寄ってきた。
「うん・・・なんとか、ね。」
苦笑しながら元気に答える。
気付かれてはいけないとおもう気持ちが先走り、無理をしているのだ。
だが、そうでもしないとリナ達にばれてしまうのだ。
「それより・・・早くフームのところへ行かないと!!」
はゆっくり立ち上がると、強くそう叫んだ。
「そう・・・だな。」
ゼルガディスも立ち上がりチラッとゼロスに視線を走らせて言った。
フゥと溜息をつくと、ゼロスは結界を解除した。
「・・・もう大丈夫なのか?」
近くにより問いかけるガウリイ。
そんなガウリイに笑みを浮かべては平気よ。と答える。
達はゆっくりと確実にフームの元へと近づいていた。
−早く・・・早くつかないと・・・せっかくここまで来た計画が・・・無駄に・・・
はグッと握りこぶしを作り、坂になっている道を力強く上っていく。
「ここまで来たら、誰も襲ってこなくなりましたね・・・」
アメリアはキョロキョロと周りを見つめていった。
その答えとなる言葉をは知っていた。
でも、知られたくない。だからは口にせず、ただ黙々と歩き続けた。
「もう少しで・・・フームの居場所だからじゃないか?」
ガウリイは一番後ろを一人のんきに歩きながら答える。
その横でハァと溜息をつくリナ。
「確かにそうかもしれないけど・・・だったら、この辺に近づくほど刺客が多くなるのが普通じゃない?」
「何か理由があるのかもしれねぇぜ。」
リナのごもっともな言葉にボケて返すガウリイ。
「だぁぁぁぁ!!何でそう考えるのかなぁ!?・・・・ん?何か・・・理由?」
ガウリイの言葉をぴんと思い出し、何か感づいたリナ。
ガウリイの言葉にどこか引っかかる物があったようだ。
「・・・体の傷は大丈夫?」
リナは前を歩くに声を掛けた。
それに気付いたは首だけを後ろに向け、ゼロスに手を引かれながらリナに目線を移した。
「え?体の傷?」
「そう。」
「大丈夫よ。そんなに酷くなかったし、ね。」
リナを心配させないように笑顔で答える。
だが、それが無理をしていることをゼロスは知っていた。
だから、心配そうな顔をしてをずっと見つめていた。
「本当?」
リナの再度確認の言葉に笑みを浮かべて、コクリと頷いた。
「それより・・・そろそろ気を引き締めて行きましょう。」
は前に向き直り、ゼロスと一緒に一番前を突き進む。
達が歩いている坂は先へ進むほど急な坂になっていった。
バランスを崩し落ちないように、しっかりと足を踏みしめて歩いていく。
そして、どれくらい歩いたのか、いつの間にか前方に真っ赤な大きな扉が現れていた。
扉の中央には黒く大きな☆のマークが描かれていた。
その☆のマークの上に重ねて描かれているのは、デスという文字だった。
「どうやら・・・ここがフームの本拠地のようだな・・・」
ゼルガディスはの肩に手を置き、前にスッと出た。
「危ないわ・・・」
前に出たゼルガディスを止めるかのように、は声を掛けた。
「お前さんが狙われているんだ。一番前に居るのは得策じゃないだろ?」
ゼルガディスは扉を見つめたまま、小さく答えた。
「そうね・・・は中央にいたほうが良いわ。」
「で・・・でも。」
「リナさんの言うとおりですよ。」
リナの言葉に戸惑い、声をかけるだが、ゼロスの言葉を聞き、何も言えなくなってしまった。
「前はゼルガディスとアメリア。後ろはあたしとガウリイ。そして中央にとゼロス。これで良い?」
リナは即座に指示を出し、肯定の言葉を皆に求めた。
リナの指示に反対する者はいなく、全員が同時に視線を交わらせ、頷いた。
「なら・・・突入よ!!」
リナの声にあわせて、ゼルガディスとアメリアは唱えていた魔法を発動させた。
『ダム・ブラス!!』
無色の光の槍を扉に向かって打ち出し、扉を破壊した。
ずどぉぉぉおおおぉぉんっ!!!
大きな音を立てて破壊された扉の破片が地面へと落ちた。
そして、その中から一人の声が聞こえてきた。
「どうやら・・・ここまでたどり着いたようだな。」
そこには見知らぬ人物が一人。
だが、想像はつくだろう・・・相手の正体がフームだと言うことに。
「貴方が・・・フーム?」
はゼルガディスとアメリアの後ろから前の部屋の中の玉座に座る一人の男に声を掛けた。
「その通り。俺がお前の生みの親だ。」
フームは隠すことなどせずにの質問に答えた。
「どうして・・・どうしてあたしは死ななきゃいけないの!?」
は前に座るフームに声を張り上げて問いかけた。
「お前の存在がウザイんだよ。そして、危険だから。」
フームはニヤリと口元に笑みを浮かべ、いけしゃぁしゃぁと言葉を紡いだ。
「あたしが・・・あたしが狂うかも知れないから今のうちに殺しておけって事でしょ!?」
は感情的になり、フームに怒鳴りつけた。
「はっはっはっは。良く分かってるじゃないか。その通りだよ。お前は生きている価値のない、ゴミだ。狂う化け物だ。」
フームはに向かって腹のそこから笑い、非情な言葉を発した。
「なっなんということを言うんですか、貴方は!!」
その言葉を聞いていたアメリアが黙っているはずもなく、フームの言葉に激怒し怒鳴った。
「アメリア・・・落ち着きなさい。怒っているのは貴方だけじゃないわ。ここで起こっても何も始まらないわ。」
リナはアメリアに後ろから声を掛けた。
その言葉に耳を傾け、アメリアはハァハァと肩で息をしてフームを睨みつけた。
「さて・・・どうせ俺を殺すためにここに来たのだろう?」
フームはスッと立ち上がると、スッと目を細め達に問いかけた。
「勿論、そうよ。」
リナはキッとフームを睨みつけて声を張り上げた。
「なら、さっさと始めないか?」
フームはザッザッと前にゆっくりと歩み始めた。
「・・・そうね。始めましょうか。」
そう言うと、フームから視線を離さずに、それぞれの戦闘態勢に入った。
『ブラム・ブレイザー!!』
リナとアメリアの声が重なり、同時に魔法が発動された。
青い光の衝撃波はリナとアメリアを中心に直線状に居るフームに向かって突き進んだ。
バジュオンッ!!
奇妙な音と共に、リナとアメリアの発動させた魔法は打ち消された。
良く見ると、フームの額にある亀裂が開き、そこから闇の瘴気を放ち攻撃を食らっていたようだ。
「闇の瘴気・・・それが貴方の本当の正体なんですね?」
ゼロスは見切っていたのか、フームを見据えたまま問いかけた。
「魔族だけあって、見切ったか。そうだ、お前の言うとおり俺の本性は闇の瘴気だ。それが分かっただけでどうする?」
フームは本性がばれたことをなんとも思わずゼロスに問いかけた。
「いえ、ただやっかいだな〜と思っただけですよ。」
にっこり微笑むと、ゼロスはシュンッと虚空に姿を消した。
そして、ゼロスの気配が読めなくなった直後、フームの体を黒い錐が貫いた。
「それでも、貴方は僕よりは力は弱い。」
フームの真後ろに姿を現し、黒い錐で貫かれたフームに言葉を掛けた。
「確かに・・・獣王ゼラスは神官であるお前一人のみを作った・・・腹心に次ぐ力を持つお前には勝てるわけはないだろう・・・だが、勝負は最後まで分からない。」
フームはゼロスの言葉に笑みを浮かべたまま答える。
ザワッ・・・
フームが答え終わった瞬間、額の部分の亀裂が開き、闇の瘴気がにじみ出てきた。
ゼロスはそれに気付き、急いで後ろに飛びのいた。
「くくく・・・イッツショータイムだ。」
そう言うと、フームは達に向かって駆け出した。
「ラザ・クロウヴァ!!」
アメリアは唱えた魔法をフームに向かって発動させた。
小さな無数の光の球がブリザッドのようにフームに向かって吹き付けた。
バシュッ!!
アメリアの放った魔法をフームの額から飛び出た闇の瘴気が食い尽くした。
しかし、闇の瘴気が魔法を食い尽くしたからといって、魔法そのものが消えたわけではない。
フームの本体である闇の瘴気が魔法を食らったのだ。
フームに全くダメージがないということはなかった。
「くっ・・・・」
フームは小さく声をあげ、額から闇の瘴気を飛び出させ、アメリアを襲った。
「っ!」
アメリアはその闇の瘴気をギリギリ紙一重で避け、後ろに飛びのいた。
「皆!!時間を稼いで!!」
リナはフームと一戦を交えている皆に声を掛けた。
何か策があるらしい。
「分かった!」
リナの言葉にガウリイは答えた。
他の皆も小さく頷き、魔法の詠唱に入った。
「ブラスト・アッシュ!!」
の放った魔法はフームに向かって突き進み、黒い何かがフームを包み込んだ。
ドバシュッ!!
しかし、予想していた結果がに待っていた。
やはりの放った魔法も闇の瘴気によって食い尽くされたのだ。
「そっそれはっ!!」
そのとき、フームは声を掠らせて叫んだ。
視線の先にはリナが居た。
しかし、気付いたときには遅かった。
リナは既に魔法を完成させていた。
「ギガ・スレイブ!」
リナが唱えていたのは不完成バージョンのギガ・スレイブだった。
リナの手の平に生まれた闇をゆっくりとフームに向かってかざすリナ。
その様子を見ていたはどうすることも出来なく立ち尽くしていた。
「うわぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!」
フームは声をあげ、虚空へと姿を消した。
そのときだった。
ドクンッ!!
ドクッドクッドクッドク・・・・・
ドクンドクンドクン!!
の心臓が激しく脈を打ち始めたのだ。
は耐えられなく、その場に膝をついた。
「ハァ・・・ハァ・・・・な・・・に?」
はゆっくりと自分の手を見つめた。
そして、その瞬間、フラームによって傷を負わされた傷口が急に鋭い痛みが襲った。
「うああぁぁぁぁぁああぁぁ!!」
「!?」
の様子に気付き、リナ以外の皆がの元に近寄った。
ドシュッ!!
フームはその一瞬の隙を見て、リナの意識がそれたことを知りリナに一撃を浴びせた。
「うくっ・・・」
リナは一瞬倒れそうになったがバランスを取り直し、闇を勢い良くフームに向かって投げようとした。
しかし、リナの放った闇はフームに向かわず、共鳴し始めていたに向かって突っ込んだ。
「!?」
リナは急いでその闇の後を追った。
フームは何が起きたのか理解できず、ただ見ていることしか出来なかった。
ドッ!!
リナは一歩闇に追いつかず、の体の中に闇は沈んでいった。
その瞬間、の体が大きく震えた。
ドシュッ・・・・ブシュッ!
の体のあちこちが切れ血が噴出した。
「ハァ・・・・うくっ・・・・一体・・・どういう・・・・あくっ・・・・」
は荒い息をしながら言葉を紡ぐ。
「!」
アメリアはあることに気付いた。
急いでガウリイとゼルガディスとゼロスに後ろを向くように指示を出しの服を脱がせた。
見ると、闇はの体にあけた大きな風穴の傷に収まり、穴を広げていた。
「なっ!!」
とリナは驚愕の声を上げていた。
「どうしたっ!?」
その声に気付いたガウリイとゼルガディスとゼロスは急いで振り返り、の体の状態を目の当たりにした。
「こ・・・これは・・・・」
「フラームとの戦いで負った傷です・・・」
の傷を見つめたまま、小さく呟くアメリア。
「さん!!」
ゼロスは声を荒げて前に横たわるに声を掛けた。
しかし既にの意識は失われていた。
ばしゅっ!
大きな音と同時にの体は闇に完全に飲み込まれた。
「ゥゥゥゥゥゥゥ!!」
「さぁぁぁぁぁん!!」
全員の声が重なり、こだました。
「くく・・・ふふふ・・・・俺の目的は・・・達成された。」
そう言うと、フームは高笑いを始めた。
そんなフームを睨む気力もなく、リナ達はたださっきまで居たの場所を見つめていた。
ドシュッ!!
そのとき、フームの体を金色の光の槍が貫いた。
そして、フームの目の前にある姿が現れた。
「!?」
そう、さっき闇に飲み込まれたはずのだった。
「そうだ・・・今フームに制裁を与えよう。」
低く、淡々とした声で話す。
リナ達はそんなを静かに見ていることしか出来なかった。
既にはではなくなっている感じがしたからだ。
は手の平をフームに向け、目を閉じた。
その瞬間、の手の平から金色の光の槍が現れ、フームを貫き、肉片と化した。
「さん・・・貴方本当にさんですか?」
ゼロスの問いかけには静かに視線を移し、口を開いた。
「私はだ。だが、同時にそうではない。私は・スィーフィード・金色の魔王の完全なる融合体。」
はゼロスをジッと見つめたままそう呟いた。
「完全なる・・・融合体・・・?」
ガウリイの言葉には小さく頷いた。
「だから、お前たちの知るではないのだ。そして、私は混沌へと落ちる。」
のその言葉を聞き、リナ達は目を丸くした。
「どうして!?」
「何で戻らなきゃならねぇんだ!?」
「貴方は混沌に落ちる必要はありません!!」
それぞれの悲痛の声がこだました。
「決まったことだ・・・・許せ。」
はそう言うと、宙に浮いた。
「何でですか!?貴方は僕の事が好きだったんじゃないんですか!?」
ゼロスはダッと前に出て宙に浮くに問いかけた。
「それはお前の知っていたときのの感情だ。今の私にはそのような感情はない。いや・・・感情という物そのものがない。と言った方が良いか。」
は静かにゼロスに言葉を返した。
そのの言葉を聞いたゼロスは黙っては居なかった。
「そんなのおかしい!!貴方は・・・さんは、一体何のために生を受けたのですか!?」
「・・・フームの持つ金色の魔王の断片的な力を混沌の中へと返すため。」
「そっそんなっ!!」
「魔族であるお前が・・・人間のような事を言うとは・・・」
はフッと笑みを浮かべた。
そして、ゼロスをまっすぐ見つめて、
「なら・・・お前たちに託そう。私はもう一度もとのへと戻る。この力、暴走させることなく一生を遂げてみよ。」
そう言うと、の体を包み込んでいた光は消え、の体に開いた傷は綺麗に消えた。
そして、ゆっくりとの体は地面へと落ちていった。
「さん・・・お帰りなさい。」
の体を抱き上げ、額にゼロスはキスをした。
そんな様子をリナ達は幸せそうな顔をして見つめていた。
...................The end
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