「トリックオアトリート!」
そんな声を上げて、はゼルガディスの背中に勢いよく抱きついた。
「!?」
驚き息を呑んだゼルガディスに、はくすくすと笑みを零した。
「か……いったい何のようだ?」
「さっき言ったじゃん!『トリックオアトリート!』って」
問いかけるゼルガディスにむくれっ面の。
ゼルガディスの耳の後ろに唇を近づけて、また笑みを零す。
「で、ゼルはくれるの?くれないの?」
くすくすと、どこか楽しそうな声色。
はギュッと、ゼルガディスにまわした腕に力を込めた。
悪戯交々
「悪いが、そういう事に付き合うつもりはない」
「ゼルってばつれない!!」
冷たく言い放つゼルガディスには文句を口にした。
ぷぅっと頬を膨らませ、ゼルガディスの首に回した腕を緩めた。
ストンと軽い音を立てて、は軽やかにゼルガディスの背中から飛び降りるように離れた。
「じゃあ、今の返事は『くれない』って意味に取るからね?いいよね?」
口元に人差し指を宛がい、にっと笑みを浮かべた。
細めるゼルガディスの瞳にも視線を真っ直ぐ向ける。
「勝手にしろ」
「じゃ、勝手にするー♪」
ゼルガディス直々の許可に、は満足そうに笑みを浮かべた。
すると、ゼルガディスの目の前に回りこむようには姿を現した。
ニッと笑みを浮かべると、ゼルガディスに近づくように一歩を踏み出した。
「……?」
何をするつもりかと一瞬眉を潜めたゼルガディスだったが、即座に感じた唇への感触と間近に見えるの長い睫毛にドキリとした。
かちこちに固まったように微動だにせず、が離れても瞬きしかしなかった。
「──……ゼル?」
「なっ……」
「『な』?」
首を傾げるを見つめるゼルガディスから紡がれたのは短い声。
何を言いたいのかそれから理解することは難しく、今度は逆へとは首をかしげた。
「何をしてる!!」
「何って……女の子に言わせるつもり?」
顔を真っ赤に染め上げて叫ぶゼルガディスに、は悪ぶった笑みを浮かべた。
けれど、したことを後悔するつもりも謝るつもりもないはゼルガディスにとっては慌ててしまう材料にすぎない。
「〜〜〜っ!!」
カッと真っ赤な顔をより真っ赤に染め上げた。
ふいっと慌てて視線を逸らし、その赤い顔をになるべく見えないようにする。
けれど、今更無意味な行動には笑ってしまう。
「ゼルが照れてる〜!かっわいいんだぁ〜♪」
クールでちょっとお茶目なゼルガディスが、ここまで振り回されるのは珍しいかもしれない。
けれど、それはだからこそ出来る芸当でもあった。
「トリックオアトリート♪お菓子をくれなきゃ悪戯するって宣言したでしょ?
何もくれないゼルがいけないんだからね?」
「…………」
「ゼル?」
ウインクをして言い切るにゼルガディスは無言だった。
何を考えているのか分からないは、ゼルガディスの顔を覗き込むように身体を屈めた。
「トリックオアトリート」
「へ?」
「は何もくれないのか?」
その問い掛けに、は唖然とした。
そして。
や、やられた……
そう思った。
まさか、そう返されるとは考えていなかった。
は、ゼルガディスはこういった事に興味がないと思っていたから。
「──……何も、あげるもの……持ってない」
ぽつりと小さく呟いた。
その言葉に、ゼルガディスは満足そうな笑みを浮かべた。
「ゼ、ゼル?」
その笑みはめったに見られないゼルガディスの笑み。
なんだか嬉しいような、とんでもないことが待っているような、そんな事を感じさせた。
「なら……」
「んっ」
小さく呟いたゼルガディス。
瞬間、の唇はふさがれていた。
「んん!?んんっ!んんっんんっ!」
どんどんとゼルガディスの胸を叩く。
けれど、そんな事はお構いなしにゼルガディスは濃厚なキスを繰り返した。
徐々に息の上がるの肩は上下に荒く揺れ、瞳はとろんとし頬は紅潮し始めていた。
「ん……」
の腰に手を回し、ゼルガディスはを抱き寄せた。
強く抱きしめ、濃厚なキスは互いを絡ませるものへと発展する。
「ぷぁ……ゼ、ゼル……」
ようやく開放された口で、大きく息を吸い込む。
足りなかった酸素が補充されるようで、全身が落ち着く感覚を堪能した。
「どうした?」
「〜〜〜〜っ」
やってやったといった笑みを浮かべるゼルガディスに、は顔を真っ赤に染め上げ何も言えず俯いた。
そしてそのまま、ゼルガディスに再度抱きついたのだった。
ほんと……ゼルには適わないよ……
.................end
互いにトリックオアトリートしてるw
ハロウィンだったので頑張ったけど、ゼルってほんと、こういう事には無頓着な気がするんだけど。
言われて初めて「そうなんだ」って気づくような?(ぉぃ)
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