鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第一話「物語の始まり」








 バン!
銃声が司令部の裏で響いた。偶然近くを通りかかったロイ・マスタング大佐(以後、ロイ)波ゆっくりとした足取りで、そちらへ徒歩を進めた。ロイが顔をのぞかせると、再び、今度は軽く乾いた銃声が響いた。
パンッ!
銃口はロイの頭に向けられていた。とたん、笑い声がした。
「あはははははははは!見事に引っかかったねー、おとーさん!」
明るく元気なメゾソプラノの声がロイを父と呼んだ。声を発したのは、15歳になったばかりの(以後、)であった。元々、みなし子だった彼女を拾ったのが軍の人間で、その頃、まだやや階級が低かったロイに押し付けたのだ。血のつながった家族はいないものの、ロイとその部下たちに囲まれ、明るく育っていた。
「人に向けてはいけないとあれほど言っただろう。それと、仕事中は大佐と呼びなさいとも言っただろう。」
ロイはたしなめるように言った。は素直だった。
「はぁーい。ごめんなさい。でも、おと・・・じゃない。大佐さん。顔、拭いたら?」
ロイの顔は半分マーブル模様になっていた。さっきの軽い銃声は、ペイント銃だったらしい。のそばにいたリザ・ホークアイ中尉(以後、リザ)がロイにウエットティッシュ差し出した。今はリザによる、の銃の講義中だったようだ。しかし、講義は最初から実弾で、ペイントは街の文房具屋でもらった在庫品であった。
「あっ。もうすぐお昼だ。大佐さん。午後は錬金術教えてねっ。エドワードさんの事も!」
は二人に背を向けて走り出す。その後姿を見送りつつ、ロイは口を開いた。
「やれやれ。すっかり強かに育ったな。厄介ごとを押し付けられたものだな。」
「大佐。本当は可愛くて仕方がないのでしょう。一応、娘ですから。」
リザの言葉にロイは苦笑した。
「鋼の話にも、えらく夢中になってしまったがな。」
「でも、大佐の話に、エドワード君の登場が、増えつつありますよ。」
「そ、そうか?」
「はい。」
その日はとても平和そうに見えた。

                             続く






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