鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第十話「アームストロング家に代々伝わる・・・」







 はアイスティーを飲みつつ、エドに視線を送った。
「何の本読んでるのー?・・って、錬金術関連に決まってるか。」
「あー・・・まぁ、な。」
エドは苦笑する。は不意に真顔になって言った。
「ねえ、エド。あたしも修行して、勉強すれば、国家錬金術師になれるかな?」
エドは本を閉じた。
「まぁ・・・修行すれば・・・なれる可能性はあると思うけど・・・並大抵の修行じゃ叶わないぜ?」
「別に、軍の狗になりたいわけじゃないよ。ただ、『錬金術師よ、大衆の為にあれ』っていうのを真実にしたいの。だって、今の時代はそんな感じじゃない。・・・たとえば、大佐さんはミニスカートが夢だし、ヒューズさんはエリシアちゃんと奥さんの事ばっかり。」
その後もは、司令部内部人間の事を事細かに暴露した。
「はぁ。唯一まともなのは中尉さんくらいよ。」
はテーブルに視線を落とした。エドはを見つめる。
「まぁ・・・・・・オレ達付近の人では・・・中尉が一番まともだな・・・。」
「あ、ごめん。読書の邪魔しちゃったね。」
はコクンコクンと再び飲んだ。
「ゴックン。ああ。美味しかった♪じゃ、行こっか。」
「ああ。」
エドが本をトランクへしまうと、二人は同時に立ち上がった。
 
 「しかし、アル見つからないなー・・・・・・。」
「そーだね〜。アル、見つからないね。どこ、行っちゃったんだろ。」
エドは大きくため息をついた。二人は肩を並べて歩き出した。
「そーだなぁ〜・・・・・・ったく。いつもはオレがどっか行っちまうのに・・・なんで今回に限って・・・。」
途中から声を小さくしたが、耳のすこぶる性能が良く出来てるにはしっかり聞こえていた。しかし、はあえてその事には触れず、思いついた事を口にした。
「ねえ、エド。猫がたくさん居る所ってどこかな?もしかしたら、アル、そこに居るかもよ?昨夜、夜中に少し雨降ってたみたいだし。もしかしたら、中に入れてたかも。」
「猫がたくさん居る所??あー・・・。」
エドはの言葉を復唱して、後頭部をガシガシかいた。
「うーん。そーだな・・・。やっぱり路地裏とかじゃないか?」
うなるエドの耳にの一言が飛び込んできた。
「あ。なんだろ、前。すごい人ごみだね。」
は通りの前方を指差した。
「ああ?あ、ホントだ。一体何なんだ・・・・・・?」
「でも、進むべき道はここだけだし・・・。入っていくしかないよね。ね、手、つなごうよ。人ごみではぐれたら大変だよ!」
は了解を得ようとエドを見た。
「ね?」
エドは、はぁっとため息をつくと、の手をガシッと掴んだ。
「よし!行くぞ!!」
エドはの手を引いて、人ごみの中へかけだした。
「あ・・・。エド、エドってば!手、痛いよ。こんなぎゅうぎゅうの人ごみの中で・・・・・・。」
思ったより、エドはの手を勢いよく引っ張っていたらしい。
「あ、わりぃ。」
と、突然人垣が割れ、はつんのめった。
「あっ・・うわっとっとっとっと。」
そのままバランスを崩し、はエドにつっこんだ。

「うぷぅっ!」
「・・・・・・・・・・っと、大丈夫か?」
エドは突っ込んできたを上手く支えた。
「もう、なぁに〜。いきなし人が・・。あ、パントマイムだ。こんな所でやる人もいるんだ。」
そこまで言ったはふと、自分がエドの胸に飛び込んだような状態になっている事に気付いた。の顔が耳まで真っ赤になった。よほど恥ずかしかったらしい。
「あ。ゴメン。わ、わ、わざとじゃないよっ。うん!これ本当!」
は両手をぶんぶん振った。
「顔、真っ赤にさせて言っても説得力ねーぞ?」
「さあ、人ごみも抜けたし、アル探そう。」
「ああ。さっさとアル探さねーとな。」
二人は再び歩き始めた。
「アルー。アールー。アルフォンスくーん。アルやーい。うーみゅ・・・。いないねぇ〜。そろそろはぐれたって辺りだけど・・。」
は声を上げ、辺りを見回す。
「アルフォンスー!アルー!?ああ・・・見当たらないな。オレの声に返事もないし・・・・・・。」
エドは肩を落とした。
「まぁ・・・アルも子供じゃないから、そこまで心配するほどの事じゃないけど・・・・・・。」
「どこ行ったんだろね。あの子は。お兄さんのそばを離れるとは。ちゃん許しませんよ。」
は腰に手を当て、おどけたように言った。
「プッ。」
エドはの発言に吹き出し、笑った。そして、空を見上げた。
「一番心配なのは・・・やっぱりアルが鎧って所だな。」
「ああ、もう!こんなにお日様が高くなちゃったじゃない。もうお昼近いのに、見つからないとなると、やっぱりさすがに心配ね。ねえエド?」
はエドを覗き込んだ。
「くそぉ〜・・・。こうなったら大佐んトコに何か情報来てないか聞きに行く方がいいかな。」
エドはガシガシ頭をかいた。
「アルもいざとなれば、俺が大佐んトコ行くの分かってるだろうし・・・。・・・はどうする?」
エドはを見た。
「大佐さんのところに?一緒に行くに決まってるでしょ?だって、エド、大佐さん苦手でしょ?」
「ああ。まぁ・・・苦手だな。頼りになるとは思ってはいるけど・・・。」
エドはコクリとうなずき、頭をかいた。これで何度目だろうか。
「・・・それとも、一人で行って、ねちねち何か言われて、平静でいられる?」
エドの背筋に悪寒が立った。そして、フルフルと頭を左右に振った。
「―・・・いや・・やっぱり来てもらう。」
「いくら大佐さんでも、娘的存在のあたしがいれば、あんましキツイ事も言えないでしょ。大佐さんは常にあたしの見本であるべきだし!」
は無意味にふんぞり返った。と、ふんぞり返りすぎて、後ろへと倒れこむ。
「・・・きゃ〜!とっとっとっとっとぉ!」
「・・・おい!」
よろけるを見て、エドは慌てた。
「なんのっ!」
はとっさに体を支える柱を練成した。エドは唖然とした。
「・・助かった。頭打って、これ以上おバカになったら困るもんね。」
エドが何か言いたげなのを見て、は体を起こして、口を開いた。
「えっ?!何で、こんなに練成陣描くの早いかって?そりゃあ、少佐さんのおかげでしょ。たしか、アームストロング家に代々伝わる・・・とか、言ってたっけなぁ?」
は思案顔で記憶の糸を手繰り寄せた。
「な・・・・・・なるほど。少佐直伝か・・・。」
エドは、ははは、と空笑いした。
「あはは。少佐さんて、結構多芸だもんね。機会があれば、また色々教えてくれるってゆってたよ。」
も笑った。
「一体いくつ芸を持ってるんだか・・・。芸術的疾走法とかも前に・・・・・・言ってたなぁ〜。」
エドはガクッと肩を落とし、呆れ気味につぶやいた。

                         第十一話に続く






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