鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第十一話「涙の後の笑顔」








 「さて・・・・・・列車、来そうだな。」
そうつぶやくエドの視線の先には、白い蒸気を発しながらホームに近づく列車の影があった。もそちらを見る。
「あ、本当だー。列車来たね。エドって目、いいんだ・・。視力いくつ?あたし、2、5だよ。」
エドは苦笑する。
「んー・・・目がいいっつーか・・・・・・。ただ、音とか蒸気とか上がってるから分かっただけだし・・・。」
と、は笑いだした。
「思い出すなぁ・・・。司令部の視力検査。大佐さんのあの小さい目でどこまで見えるのか、謎だよねぇ。あはははは。」
エドもつられて笑った。
「確かに、大佐は目ぇ小さいもんなー。」
二人はホームに止まった列車に乗り込み、デッキから車内へと入った。中はガラガラだった。
「あ結構席空いてるね。」
「ああ、ホントだな。さてと・・・この辺でいいかな。」
エドは空いてる席の上部にトランクを乗せて、席に着いた。が口を開いた。
「・・・と、あれはー・・。」
は指差した。
「うん!間違いない。以前ダブリスから来たって言う人に聞いた風貌そのもの!イズミさんだ!だんなさんと仲いいねー。」
はちょっとうっとりした。
「・・・・・・・・・・師匠!?」
エドは驚き、一旦口をふさぎ、そしてつぶやいた。
「とっとにかく・・・・・・今師匠に見つかるのは得策じゃないな・・・・・・。」
エドの脳裏に浮かんだのは、怖い修行の日々だった。
「・・・エド?・・・・・・あー、怖い人なんだっけ?よしよし。あたしの足元に隠れておいで。あたしは顔知られてないからね。」
「あ・・・ああ。わりぃな・・・。」
エドはコクリとうなずいて隠れた。そして、何駅か過ぎた頃――。
「エド。もう大丈夫だよ。イズミさん降りたよ。ほら。」
「・・・・・・・・・・、ほっ本当だなっ!?」
エドはの言葉を信じ、顔を出す。イズミの姿はない。エドは息を吐き捨てた。はクスクス笑った。
「でも、エドって苦手なもの結構あるんだね。大佐さんに、イズミさんに。少佐さんもかな?あ!あと牛乳!」
言ってしまってから、はハッとして、エドを見た。エドは牛乳の単語に反応し、キリキリと眉がつり上がっていった。
「・・・うんうん。頑張って大きくなろーね、うん。」
「牛乳飲めなくても、大きくなれるんだよ!!」
エドの表情に、の目にじんわりと涙がにじんできた。
「うぅ〜。うえっく・・・ふ、ふえっ。」
「なっ・・・なんで、が泣くんだよっ・・・。」
エドはハッとして、慌てて言った。の目にこんもりと涙がたまる。
「だって・・・だって・・・らって・・らってぇ・・・・・・。」
ついにが涙声になった。
「牛乳の単語出したらけで、エドが怖い顔するんらもん!うえっく・・・。あたしだって大きくなりたいもん!!あたしなんて、いくら牛乳飲んでも、ヨーグルト食べても、・・・ち、ちいさぃ・・・・・・から。だから、頑張ろうって言ってるのに、エドが怖い顔するんだもの。ふみぃ〜。」
とうとうは泣きだした。
「だぁぁ、泣くな!そりゃ、オレ牛乳嫌いだからな!怖い顔するのは当たり前だ!」
エドは自らのコートの袖でぐいっとの涙を少々、乱暴に拭ってやったが、涙は止まらず、後から後から溢れる。エドは困ったように後頭部をガシガシかく。
「ああああ!泣くな泣くな!オレも一緒に大きくなるよう頑張るからさ!」
エドはワタワタと慌てて言った。はしゃくりあげこそしないものの、まだ少し泣いているようだった。
「・・・そういえば、幼いとき、あたしが泣いてたら、大佐さんが膝の上に抱っこしてくれたっけ。懐かしいな。」
はそこでちらりとエドを見た。エドは口をへの字に曲げ、を見つめていた。
「まだ怖い顔してるぅ〜!もしかして、あたしのこと嫌いになった?・・や、やだっ!嫌いになっちゃ・・・。」
はまだぬれている瞳でエドを見つめ、彼の服をぎゅっと掴んだ。
「・・・お前なぁ・・・。」
エドはため息をついた。そして、指先での額をコツンとつついた。
「それくらいで、オレがを嫌いになると思うのか?」
エドは微かに笑みを浮かべた。するとはニパッと笑った。
「良かったぁ・・・。」
そのまま、こてっとエドの肩に頭を乗せ、静かな寝息をたて始めた。泣き疲れたらしい。突然の肩の重みにエドは少々驚いたが、の寝顔を見て、そっとしておく事にした。
「・・・着くまで、寝てな。オレがずっと肩貸してやっから。」
エドは優しくつぶやき、窓の外に目を向けた。

                        第十二話に続く






鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記に戻る