鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第十二話「嵐の来た司令室」







 イーストシティの駅近くで、は目を覚ました。
「あ。おはよー。エド。・・・重くなかった?」
「ああ、オハヨ。」
の言葉にエドは応えてから、首を横に振った。
「ごめんねー。すっかりよりかかっちゃって。」
二人そろって列車から降り、歩き出そうとしたとき、エドのポケットから何か白い紙が落ちた。は拾い上げる
「エド。何か落としたよ。何これ。手紙?大佐さんからだ。」
エドが振り向いたときには遅かった。は手紙を読んでいた。
「えーと、なになに?『これを読んだらすぐ司令部へ来るように。でないと私の出番がない。 ばーいロイ・マスタング』大佐さんらしー。でも、何の用だろ。」
「賢者の石の情報交換だよ。まぁ、オレは大佐の出番つくる気なんてサラサラねーけどなっ。」
エドのロイに対する気持ちがありありと見えている。
 
 二人は司令部の前にやって来た。
「なつかしー。おお!懐かしの我が家よ!ってカンジかなー。」
は目を細めて、建物を見上げた。二人は中へ入ると、正面入り口へ向かう。しかし、途中でが足を止めた。
「どうした?」
「ほら、見て。」
はある所を指差した。そこには見覚えのある巨体がある。
「少佐さんがあそこで待ち構えてる。このままじゃ、餌食になっちゃう。別ルートで行こ。」
「ま、オレは別にいーけど・・・・・・。」
はエドを建物の裏へと連れて行った。そこには何の脈絡もなく、、井戸があった。かなり、不気味だ。
「あの井戸の中に大佐さんのいる部屋まで直通の穴があるの。不気味だけど、貞子なんて出てこないから、大丈夫だよ。」
は笑顔でそういうと、ぴょいっと井戸の中へ飛び込んだ。エドも続く。中に人が立って通れるくらいの広さがあった。
「ふーん・・・。こんなのがあったのか。」
エドは中を見回した。
「あ、これねー。数年前にあたしが錬金術で創ったの。整備されてるし、掃除もしてたから大丈夫。」
エドは呆れ気味に口を開いた。
「ヒマ人だな・・・・・・は・・・。」
「だってー。あの時、大佐さんたち忙しいって相手してくれなかったんだもん。それで、悪戯とかして、逃げるときにこれ使って。」
それを聞いて、エドはまた苦笑した。
「もうすぐよ。」
二人が穴を通ってたどり着いたのは、司令室の扉のすぐ近くの壁だった。まるで、通気口の金網を開閉するように、慣れた手つきでは壁を元に戻す。
「こんな所に通じてたのか・・・。」
二人は扉の前に立つ。エドは声をかけた。
「あー・・。大佐。オレだけど。」
中からすぐに応えが返ってきた。
「鋼のか。入れ。」
エドがノブを回して入ると、も入る。そして―――。

「ただいまっ!おとーさん、中尉さん。」
中にはリザもいたのだ。ロイは不平をもらした。
「何故、ホークアイ中尉は中尉さんで、私はお父さんなのだ?」
「何故って・・・なんとなくー。」
はあっけらかんと答えた。
「それに、仕事中はお父さんはやめなさいとあれほど・・・。まぁ、いい。」
ロイはため息をついた。
「鋼の。手紙まで持たせたというのにつれないじゃないか・・・。」
更に何か言おうとしたロイの言葉をさえぎったのはだった。
「あんまりエドをいじめると、コレ、返してあげないよ、おとーさん。」
いつの間にかすめ盗ったのか、はロイ愛用の手袋を手にしていた。
「スペアもあるよん。」
「こら、。・・・。」
次にロイの言葉をさえぎったのはエドだ。
「なぁ、大佐。アルがいなくなっちまったんだけど、ここに来なかったか?」
「・・・何?弟とはぐれた?ここには来てないが。」
「そ・・・っか。賢者の石は―。・・・・・・今度でいいよな。」
「ああ。・・・。それを返しなさい。」
はなにやらゴソゴソやっていたが、くるっと振り返る。
「あー・・。コレ?こうして箱に詰めてー。あ、一枚もらっちゃお。リボンつけてー。」
白い小箱に手袋を詰め、ピンクのリボンで、はラッピングした。
「・・・一枚もらってくのか?」
エドは一応ツッコミを入れた。
「はい。中尉さん、あげる。」
「あら。ありがとう。」
「って、中尉に渡すのか?!」
エドは再びツッコミを入れずにはいられなかった。
「何か、あったら、中尉さんに返してもらってね。おとーさん!」
は無邪気な笑顔をロイに向けた。ロイは怒る気すら失せてしまう。
「ははっ。その歳で、大佐はのお父さんか。」
エドは笑った。
「大佐はたらしだもんなー。」
「それは聞き捨てならないな、鋼の。」
ロイの言葉に反応したのはだ。
「おとーさん!あんまりエドいじめないでってば!あたし怒るよ!」
はけっこう小悪魔なところがある。ロイは口をつぐんだ。
「じゃー、またねっ。おとーさん、おかーさんっ!」
「!マ・・・。」
リザが反論するより早く、はエドの左腕にしがみつき、壁の一部に体当たりした。そのまま壁はくるりと回り、とエドを脱出通路へと放り出した。
「ここ、逃げ道。支道がいっぱいあるから、他の人は迷子になるの。」
は・・大丈夫なのか?」
「うん。」
は迷わず進む。

 一方、司令室。
「一瞬の嵐のようだったな、ホークアイ中尉。」
「はい・・。」
ロイの小さなつぶやきに応えたりザの声も小さかった。

                          第十三話に続く






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