鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第五話「大好きな人・帰る場所」








 歩き出そうとして、エドは思い出すように言った。
「あ、そうそう。オレの事は『エドワードさん』じゃなくていいから。気軽に呼べる言い方でいいぜ。」
エドはうーんと体をのばした。
「危険に飛び込むって事は後戻りは出来ないからな、後悔しないようにオレについて来いよ。」
「はいっ。えーと、エド・・・って呼んでいいですか?」
「ああ。かまわないぜ。」
エドは苦笑した。
「ああ、でもよかったです。承知してくださって。大佐さんを説得したかいがありました。」
は笑顔のままだった。
「まぁ・・・あそこまで意志が強いんじゃな。オレにそれを止める権利はねぇし。」
しかし、エドの顔は、次のの言葉で青くなった。
「でも、きつかったんですよ。アームストロング少佐さんと会ったときは。エドは経験ある?」
だんだんタメ口になってきているが、今のエドには気に留めている余裕はナイ。
「少佐ってさ・・・・・・何かとすぐに服脱ぐし・・・・・・。何かとすぐに抱きついてくるからなぁ・・・。そういう経験ならあるぜ。」
エドはうなずきつつも、苦笑を浮かべる事しか出来なかった。
「うう・・。背骨が折れるかと思っちゃった。鍛えておいてよかったです。」
「女は鍛えなくてもいいと思うけど、オレは。まぁ・・・多少はついてた方が旅をするにはいいかもしれないけどな。」
「あ、エドはよく組み手するんだってね。」
エドは、ははははと笑っていたが、眉をひそめた。
「あぁ。よくアルと組み手してるな。でも、よく知って――。」
エドの言葉は途中でさえぎられた。
「えーと、ウィンリィさんだっけ?」
は・・・ウィンリィと知り合いなのか?」
「色々聞いたよ?昔の事とか。あんな事や、こんな事も。」
はクスクス笑った。
「昔の・・・・・・事?」
エドはピクリと肩を揺らした。あの時の事が脳裏に浮かぶ。
「それでね、ますますエドに会いたくなったの。ホントだよ。」
はニコニコニコッと無邪気に笑った。
「そ・・・っか。」
エドがそううなずくのを待って、は続けた。
「ヒューズさんの家で娘さんの事聞いてたら、ウィンリィさんが訪ねてきてね。」
「ヒューズ中佐・・・か。・・・なぁ、ヒューズ中佐は、元気だったか?」
エドはウィンリィがヒューズの世話になった事を思い出した。は大きくうなずく。
「色々話してくれたの。アルフォンス君よりも背が低いとか、ケンカは一度も勝ったことがないとか。牛乳は嫌いだけど、シチューは好きとか。錬金術の仮修行でキツネに噛まれたとか。ある単語は禁句とかー。他にも・・・・・・。」
は延々とウィンリィから聞いた、エドのエピソードを口にした。
「なっ!!んなことまで話しやがったのか、ウィンリィはっ!!」
驚くエド。はフフフッと笑った。
「でも、ヒューズさんも面白いね。」
「あ?ああ。ヒューズ中佐は確かにおもしれぇよな。」
エドはうなずきを返した。
「エリシアちゃんの事、とっても嬉しそうに話すんだもの。めちゃめちゃ可愛いんだからぁ、とか言って。」
クスクスと苦笑い交じりの笑いを続けつつは言った。エドも笑う。
「ははっ。ヒューズ中佐の親バカっぷりは治っちゃいねぇのか。まぁ・・・中佐の親バカっぷりは治らねぇだろうな、うん。」
そこでは思い出した。
「あっ。そういえばヒューズさんから伝言。グレイシアさんがまた遊びに来てくださいねって。」
「ん?伝言??あぁ、そっか。サンキューな。」
「その後、延々と数時間に渡ってエリシアちゃんの話聞かされて・・・。」
は苦笑する。
「まぁ・・・はまだマシだよ。大佐なんて軍の回線使って、娘自慢されるらしーし・・・。」
エドも苦笑する。は大佐でふと思い出した。
「そういえば、大佐さんが、書類に埋まってた事があってね。生き埋めみたく。掘り起こした方がよかったかな?でも、中尉さんが見てみぬふりしてたから・・。どう思う?エド。」
は思案顔をエドに向けた。エドはこめかみに人差し指を当てて思案する。
「うーん・・・。中尉が見て見ぬふりしてたなら、そのままで良かったんじゃねー?オレはどうあってもほうっておくけどな。」
はやおら笑顔になった。
「でも、なんだかんだ言っても、みんな大好き。大佐さんも、中尉さんも。」
「・・・そっか。」
エドはその言葉にフッと笑みを浮かべた。
「アームストロング少佐さんなんか、会ったその日に涙流しつつ『家族になろうぞ!』とか言ってたし。」
「家族・・・か。オレも、アルがたった一人の家族だな。」
「家族いないって言ったけど、軍の人が今の家族かもね。もちろん、エドもね♪」
は明るい笑顔のまま、エドを見つめた。
「〜〜〜オレも??・・・・・・サンキュー、。」
自分もと言われ、眉をひそめたが、嬉しかったので、エドは肩をすくめて、笑顔でお礼を言った。
「あたしの帰る場所は、エド達のいる所、かな?」
「そっか。帰る場所があるのはいい事だぜ。オレは・・・帰れないように自らの家を焼いてきたし・・・。オレの帰る場所はない。あえて言うなら、自分の所、だな。」
「今度、リゼンブールにも連れてってね。ウィンリィさんにも会いたいし・・・。」
「ん?あぁ。いいぜ。」
は改めてエドを見て口を開いた。
「・・さあ、今度はどこに行くの?エド!」

                            続く






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