鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第八話「アルは猫・は犬?」









 「サウスシティかぁ。じゃあ、そっちまで行ってみようか。」
「ああ。サウスシティだ。アルと一緒に南の方に視察に行ってたんだけどさ・・・・・・。そこで、アルとはぐれちまったんだよ。」
エドは苦笑し、大きく息を吐いた。
「エドとアルってホント、お互いになくてはならない存在だよね。お互い良き兄弟ってカンジで。・・いいな。きょうだいかぁ。」
「まぁ〜・・・唯一オレを理解して、支えてくれて・・それでオレが間違ったときは質してくれる唯一の家族だし、相棒だからな。」
エドは軽く笑みを浮かべ、目を細めると、手を見て、つぶやいたが、の表情を見て、問いかけた。
「・・・どうした?」
は淋しく、いとおしいものを見るような目をしていた。エドが顔を覗き込むと、はすぐに表情を元に戻した。
「話、戻るけど、アルって嘘つくの?」
「つくつく!!アルは嘘つく!」
はんーっと、少し考えるような仕草をしてから言った。
「でも、心配くらいさせて。旅の供として、エドの事、とても大事なんだもの。大好きなんだもの。やっと、出会えたのに、失いたくないの。」
「・・ああ。わかった。でも、心配するような事、ほとんどねーと思うぜ。」
はちょっと頬を赤らめつつも、まっすぐにエドを見つめ、両手を胸の前で組み合わせる。
「世界中が敵でも、あたしは君達兄弟の味方だからねっ。」
エドはキョトンとしたが、嬉しそうに笑った。
「世界中が敵でも・・・か。サンキュ。」
「じゃあ、サウスシティに向かおうか。」
「ああ、行くか。」
二人は肩を並べて歩き出した。
「ついでに言うとね、中尉さんはお母さんって言うか、お姉さんってカンジだったな。厳しいけど、普段はとても優しいの。大佐さんの他の部下の人達も良く遊んでくれたし。」
「中尉はお母さん・・・か。確かにそんな雰囲気かもし出してる所あるよな。まぁ・・・大佐のお守りしてるのも関係してるのかもしれねぇけど。」
エドはずっと苦笑を続けている。
「・・・でも、全て分かり合えるわけじゃないから。血をわけた兄弟のエドとアルが理想の兄弟だなって思うの。」
「全て分かり合えない・・・か。確かに、な。でも、オレ達兄弟でも、分かり合えない部分だってある。それぞれ個人だしな・・・・・・。」
エドは寂しそうに目を細めた。
「・・ウィンリィさんも心配してたみたいだから、今度会ったら『心配ないよ』って言ってあげてね。あたしみたいに、一緒にいるわけじゃないんだもの。」
エドはを見つめて口を開いた。
「ああ・・・・・・ウィンリィには、心配かけさせてばかりだったな――・・・。オレ達兄弟はウィンリィにそんな相談とかもしなかったし・・。それが原因で心配かけさせたこともあったっけな・・・。」
エドはウィンリィに『どうして何も言ってくれないの』と言われた事を思い出した。
「・・・言いたくない。心配かけさせたくないけど。なんとなく・・・言いたくない。」
はそんなエドを見ていたが、ボソリと言った。
「ウィンリィさんに心配かけたくないって言うより、なんとなく言いたくないって言うのが、本音に聞こえるんだけど?何かあったの?ま、何でもいいけど。」
「っ!!」
エドは図星をつかれ、一瞬詰まった。
「まぁ・・・言いたくないってのが本音かな。言ったら今以上に絶対心配かけちまうし、さ。」
エドはポリポリと頬をかいた。
「あ、あたしの実力知っておく?一緒に旅するには、知っておいた方がいいよね。」
の実力?まぁ・・実力を知っておけば、奇襲かけられた時とか、戦闘する時とかに色々と考えやすいけど・・・。まぁ、知ってるかと思うけど・・・・・・俺は錬金術と体術だな。」
は視線をエドから前に戻した。
「あたしの実力は錬金術。国家錬金術師ほどではないけど、並よりはずっと上。体術は少し。でも、形にはなってるし、スピードなら自信あるよ。純粋な力比べは弱いけど。」
「まぁ、並よりは上じゃないとそうそう旅に同行したい!なんて言えねぇよなぁ〜。」
エドは出会いの当初を思い出す。
「精神を鍛えるにはまず肉体を鍛えるべし。オレ達の師匠に言葉なんだ。だから、体術を少し使えるだけで十分だよ。」
エドの脳裏に師匠の姿がひらめく。エドはブルブルと身震いした。は続ける。
あとは、銃。そんなトコ。」
はエヘへと笑う。
「銃・・・か。やっぱり中尉に教わったのか?」
「うん!銃は中尉さんに習ったの。いきなり実弾でびっくりしたな。」
は明るく無邪気な笑顔をエドに向けた。
「・・・やっぱりそうか。」
エドは予想が的中した、自分に笑った。
「あっ!」
が突然声を上げた。
「ん?どうした?」
エドはに視線を向けた。
「エド〜。みてみて!」
「何だよ?」
「可愛い仔犬〜。」
は仔犬を抱いていた。
「そこの隅でプルプル震えてたの。首輪の跡があるし。捨てられたちゃったの?お前。ねえ、つれてっていい?」
はエドの顔色をうかがった。
「だ・め。オレ達には飼えないだろ?責任がないのに、連れてって、危ない目にあったり、怪我をさせたりするかもしれない。だったら、他の奴に飼われた方が犬だって幸せだぜ。」
エドは首を左右に振る。
「誰かに託すにしても、せめてミルクだけでもあげてから・・・。」
「ミルクを上げるのも駄目。情けをかけたら犬がついてくる。飼う責任がないんだから、ほうっておくしかない。」
エドはスタスタ歩き出す。はまじまじと仔犬を見た。
「そういえば、ブラックハヤテ号はどうしてるかな?今日は中尉さん非番だし、お散歩かな?」
「さぁ・・・・・・でも、東方司令部の誰かが面倒見てるんじゃねー?」
エドは腕を頭の後ろに回し、空を見上げた。
「にゃはははは。くすぐったいよぉ〜。」
その笑い声にエドが振り返ると、は仔犬にペロペロ顔をなめられていた。
「・・・とことん気に入られたな、。」
エドはのほうへ足を向けた。
「・・・やっぱし、ダメ・・かな?」
「駄目だな。元の場所に戻して来い。ったく・・・・・・アルに似てるな、は。」
エドは、アルが良く猫を広手来る事を思い出し、苦笑いした。は改めて犬の顔を見ていた。
「このコ、なんだか大佐さんに似てる・・・。ほら!目がそっくり。」
エドはムッとした表情を浮かべた。
「に・て・な・い!とっとと戻してくる!」
エドは隅の方をビシッと指差した。
「はぁ〜い・・。」
はしゅんとして、隅へ連れて行った。エドは戸惑った。
「そんな気落ちすんなよ。」
は犬の前にかがむと荷を降ろし、中からタオルを取り抱いた。
「ちょっと待ってね。泥んこだと女の子に嫌われちゃうよ。」
はごしごしと泥を拭ってやって、立ち上がった。
「じゃあね。いい人に拾ってもらうんだよ。」
名残惜しそうにしつつも、はエドの所へと戻った。
「これで・・・いいんだよね?きっといい御主人様に出会えるよね?・・そうだといいよね。」
「ああ・・・・・・オレ達が連れまわすより、その方がずっと幸せになれるさ。」
エドはに笑顔を向けた。
「さあ、日が暮れる前に行こうか。アルも探してるよ、きっと。急ごう。」
「ああっ!アル探ししなきゃな。つーか・・・・・・一体どこにいるんだか・・・アイツは。」
エドは空を見上げた。

                            続く






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