鋼の錬金術師パロディ劇場・アルフォンス捜索隊珍道日記 第九話「15歳にしては小さい2人」







 「・・ごめんね。仔犬にかまったせいで、時間かかっちゃったね。早速足手まといみたくなちゃって、ごめん!今度から気をつけるから。・・・ちゃんと連れてってね?」
エドは苦笑した。
「そこらに放っておいてかねーよ。」
「っていうか、どこまでもついていく所存です。憧れの、鋼の錬金術師。エドワード・エルリック様。」
は一転して、強かで明るい笑顔を見せた。エドはキョトンとしたが、吹き出した。
「ぶっ!!」
「さあ、早く!」
はエドの左手を取って歩き出した。エドは慌ててついて行った。
「これが、立場逆だろ。」
エドは自分が前に出るように歩き、の手を引いた。しばらく歩くと、日が沈み始めた。
「そろそろ夜になるかもしれねーな・・・・・・。今日はどっか宿にでも泊まるか。」
「うんっ。いいよ。」
はエドの手を引かれつつ、うなずく。
「でも、日がたつに連れて探しにくくなるよねー。ま、下手に動いて野宿するハメになるよりマシか。じゃあ、宿行こーか。」
二人は宿へ向かった。

 適当な所で宿を見つけ、二人は中に入った。
「えーと、部屋はどーする?」
「部屋?」
「一人づつ?同室でもいい?あたしはどっちでもかまわないけど。」
エドは焦った。
「んなっ!?別室にするに決まってるだろ!アホ・・・・・・。」
エドはカリカリ頭をかきつつ手続きをして鍵を二つもらった。
「エド・・・?何焦ってるの?ふーんだ。どーせ、アホですよー。」
はちょっとすねた顔になった。エドはの頬をつねった。
「あっ・・・焦ってなんかねーよ。」
エドは汗をかいていた。は口を開く。
「アル・・・。明日は見つかるといいね。」
「ああ・・・・・・。明日、は見つかるといいな。」
は何を思ったのか、こんな事を口にした。
「・・あ、あのねっ。大好きっていうのも、大切っていうのも、憧れて言うのも全部ホントだからね。大好きなんてウソじゃ言わないし。その。だから・・・。」
「わかってる。は嘘ついてるなんて思ってねーよ。」
エドは優しく笑う。
「ずっと、一緒にいられると、嬉しいな。今日も、手つないで、ドキドキしたけど、すごく幸せだったの・・・。ご、ご、ごめんねっ。こんなときにいきなり!ただ、ウソは絶対つかないから!って言うか、つくの嫌いだし、下手なの。」
は恥ずかしそうにうつむいた。
「ずっと一緒に・・・いられると?」
エドは驚いて一瞬を見たが、すぐに前を見据えた。
「ずっとは・・・・・・多分居られないと思う。ごめん。」
そこで、エドはに視線を戻した。
「だけど・・・・・・今は・・・・・・一緒に居て・・・良かったと、思う。楽しいし・・・・・・な。」
エドは本当に楽しかった。今、この時が。
「ずっとっていうのは、一生ってわけじゃないって。気がすむまでってことだよ!今は同じ港に居ても、いずれ別の船に乗る事になるって事だって!」
「だーから。たとえ、が満足するまで一緒の居たかったとしても・・・・・・。オレ達にだって色々と事情があるし・・オレ達の旅は危ないから・・・その中で命を落とすかもしれない。だから、ずっとは居られないかもって意味だよ。」
エドは苦笑する。
「安心して。お嫁さんにしてなんて言わないから。エドがそうしたいなら、別だけどね。」
こういう事を、あっけらかんと明るく言えてしまうのがの凄いところだ。あまり、深く考えず、のん気に、それでいて、さらりと物怖じせずに言うのだ。
「冗談。オレはまだお嫁さんをもらうつもりはサラサラねーよ。」
エドは笑いながら言う。
「言ったよね。社会勉強だって。世界を見て、ひとつの旅が終わって。それから、同じ船に乗るか、別の船に乗るか決めるの。それまではずっと一緒に居たいって事。」
はのん気モード全開で言った。
「明日、早く起きてアル探そうね。んじゃ、おやすみなさーい☆」
は何か楽しそうに笑いを漏らし、眠そうにあくびをして部屋に入った。エドはそれを見送る。
「ああ、おやすみ。」
エドも部屋に入り、ドアを閉める。そして、ドサッとベットに倒れ、そのまま夢の中へ―。

翌日の朝、階下の食堂から、上にいるエドを見つけたが、したっと手をあげてぶんぶん振った。
「あ、おはよう!」
「んー?あー・・・・・・おはよー・・・。」
エドはボーッとしたまま挨拶を返した。
「昨夜はよく眠れた?あたし、熟睡したー。」
「んー・・・。よく眠れたかな。部屋入った後の記憶が全然ねーよ。」
エドはの向かいに腰を下ろした。そして、メニューを開いた。
「さて!今日こそアル、見つけないとね。」
はふぬっと気合いを入れて、焦げかけのトーストをかじり、エドの視線に気付いた。
「どしたの?じぃーっとあたしの顔見て。何かついてる?」
「あ?それ美味そうだなって思って。オレもそれにしよ。」
エドは近くを通りかかったウエイトレスに注文した。
「・・・もしかして、昨日言った事気にしてる?だから、お嫁さんは冗談だって!第一おとーさんが何て言うと思う?あの大佐さんだよ?万が一、結婚なんてしたら、エドも中尉さんにしつけられるね。間違いなく!んもって、アルも巻き添えに・・・。少佐さんもきっと『めでたい!』とか言って、ぬ、脱ぐね・・。」
は自分で言って、想像してしまった。エドもその言葉に飲んでいた水をごふっと吹き出した。エドがこぼれた水を吹拭いていると、もそれを手伝った。
「も〜。エドってば汚いなぁ。」
「わりぃ。」
水を拭き終わると、は口を開いた。
「と、とにかく、まずはアルを見つけないとね。どーせ、行き当たりばったりだから、その時はその時考える。でないと、人生楽しくないしね。」
「ああ・・・・・・。アル探さねーとな・・・。」
は続けた。
「で!今考えた結果。しばらくは、エドのそばを離れない。もちろん、その他は無条件で、探し物に協力する。に、決定しましたー!」
は至ってのん気だ。
「ふーん。そっか。」
エドは生半な返事をした。
「大好きだよ、エド。・・・もちろん大佐さん達もね・・。」
はニッコリ笑った。エドは静かに水を飲む。そこへ、料理が運ばれてきた。エドは黙々と食べ始めた。はそんなエドを何か楽しげに見つめた。そして、ぱんっと手を合わせた。
「ごちそーさまっ。」
は口元をぬぐったナプキンをきちきちっと小さくたたみ、トレイの隅に置き、空になったお皿を重ねた。
「よしっ。立つ鳥その後にごさず。」
は江戸に視線を戻した。
「実はね、時々、大佐さん上機嫌で、中尉さんと出かけるの。私服で。ドコとなくオシャレして。デートか、極秘任務か。・・・何となく、気のなる所ではないですか?エドワードさん。」
エドは顔を上げた。
「オレもごちそうさま。」
イスの背もたれに体重をかけ、お腹辺りを軽く叩いた。
「上機嫌そうな?・・・ふーん。ま、大佐が上機嫌だろうが、なんだろうがオレには関係ねーけどな。」
エドは皿を端に寄せてから続ける。
「中尉が大佐とデート?ありえねぇありえねぇ。どうせ、極秘任務じゃねーの?」
はふと真顔になって言った。
「・・・・・・エド。余計な事かもしれないけど、口の周り、パンくずとプレインオムレツのケチャップまみれだよ。ほら、拭いて。」
「・・・え?まじ?」
が差し出した紙ナプキンを受け取って、口の周りを拭いた。
「っかしーな。さっき拭いたと思ったんだけど。」
は微笑んでいた。
「でも、なーんか安心した。エド、あたしと会ってから、ずっと苦笑とかばっかで、大人っぽい表情しかしないんだもん。そういうとこ見ると、やっぱりあたしと同じ15歳なんだなぁって思う。」
「・・・大人っぽい表情しかしてないつもりはなかったんだけどなー・・。まぁ・・・オレは子供じゃねーし。」
エドは怪訝そうに眉をひそめた。
「エド、気付いていてた?あたしより、エドの方が背、高いんだよ?2、3センチだけどね。15歳の少年少女相応の身長差。ね!」
は無邪気に笑った。
「あ?確かにそうかもな。」
エドは嬉しくなり、笑った。
「話、戻るけど、やっぱり任務かぁ・・・。でも、二人並ぶと絵になると思うよ?大佐さんと中尉さん。美男美女で。」
「てか、そーとしか考えられねぇだろ・・・。まぁ・・・・・・確かの絵になるけどなぁ。中尉が大佐を相手にするわけねーだろ。」
が何かに気付き、紙ナプキンを手にした。
「あ、ほら。鼻の頭にもついてるよ、ケチャップ。」
は身を乗りだして拭きとってあげた。エドの頬がバラ色に染まる。
「あ、わりぃ。つーか・・・・・・恥ずかしーな・・・・・・。」
は席に座りなおすと、また口を開く。
「・・・・・・そーいえばさぁ。ウィンリィさんに振られたんだって?幼いとき。『あたしより背の小さいのはイヤ』とかってー。」
エドは驚く。
「げっ!んなことも知ってんのかよ・・・・・・。」
「殿方の価値は背じゃないよねー。やっぱしハートが一番だよね。優しくて、あったかくて、強くて。」
「まあな!でも・・・・・・オレは大きくなりたい・・・。」
価値は背じゃないというのには同意するが、それでも大きくなりたいらしく、エドははぁっとため息をついた。は続けた。
「でも、みんな言うよね。『とりあえずは顔。次がスタイル。性格はその次。次が声。』って。そーかなぁ?あたしがウィンリィさんの立場だったら、『今はなんとも言えないけど、誰でも可能性がゼロってことはないわ。これからに期待してねっ!』って応えるよ。」
はニコッと笑って、更に続けた。
「牛乳飲まなくても、背は伸びるよ。男の子の可能性って一杯あるんだもん。ぐんと大きくなって、ウィンリィさんを後悔させてあげなくちゃあね。応援するよ。」
エドは期待するような輝く瞳をに向けた。
「だっだよなっ!!牛乳なんて飲まなくても身長は伸びるよな!身長さえ伸びれば、ウィンリィに嫌味言われなくてすむっ!」
エドはガッツポーズをした。
「あー、のどかわいちゃった。アイスティーでも飲んでから出発しようか?」
はのんびり言う。
「オレはもーいいや。じゃ、飲み終わったら言えよ?オレそれまで読書してっから。」
エドは読みかけの本を取り出し、黙々と読み始めた。

                         第十話に続く






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