不思議な人…だけど、だけど─────…
エクソシストになる人は…どうして、こう………辛い思いをした人ばかりなの…?
S.V 第十七話
「……… ……
なんかコムイさん、元気なかったですよね」
ふと思い出したかのように、アレンがそう口にした。
「……なんか兄さん…いろいろ心配してて働き詰めみたい」
「心配?」
「リナリーの?」
「コムイならしそうだな」
心配そうに呟くリナリーに、は眉を潜めて疑問の声を上げた。
アレンといえば、検討違いの予想を口にしながらスプーンを口に含んだ。
神田といえば、ハッと馬鹿にしたような笑い方をしながら呟き湯呑のお茶を飲んだ。
「伯爵の!」
そんな三人に呆れ声を上げた。
ポコ!
アレンの描いた似顔絵の紙で、アレンの頭を叩いた。
「最近、伯爵の動向が全く掴めなくなったらしいの 『なんだか嵐の前の静けさみたいで気持ち悪い』ってピリピリしてるのよ」
「伯爵が……」
リナリーの言葉を耳にし、ポンっと脳裏に浮かんだのは教団へ来る前に出会ってしまった伯爵の姿。
教団の者に会う前に天敵にあってしまった時の事を。
「……… …… ………………」
「アレン?」
「どうかしたの?」
銜えていたフォークを、口から外す事無くアレンは驚いた表情を浮かべた。
カチンと固まってしまったかのように一点を見つめる事に、とリナリーが首を傾げた。
「っ!っ!っ!」
ガチャ────ン!!!
銜えていた口がパッカリ開き、フォークが落ちて甲高い音が響いた。
「アレンくん、フォーク落ちたよ」
後ろに現れた人物の姿は、背中を向けているリナリーとには分らない。
神田に至っては眉を潜め似顔絵の姿を思い出していた。
「あああ!!!!!」
「は!」
「この人です!!!」
漸く分かった相手の姿に、アレンは指を差しながらリナリーとの背後を指差した。
指差された布に包った女は、ムンクの叫びのような表情を浮かべ声を上げると同時に。
ガッシャ───ン!!
窓からいきなり飛び出した。
「エクソ…シスト…?」
「はい…
てか、何で逃げるんですか しかも窓から……」
ゼ───… ハ───…
ゼ──… ハ─────…
荒い息をしながら、髪を振り乱しアレンに視線を向けた。
「ごめんなさい 何か条件反射で…」
そう言うも、荒い息は止まらない。
ジリリリリリリリリリ…
「もしもし ベルリーニの酒屋だが、明日十日までにロゼワイン十樽頼むよ」
コムイから聞いたあのフレーズが店の中で流れた。
そんな中、ようやく席に座った女が口を開いた。
「わ、私はミランダ・ロットー
嬉しいわ この街の異常に気付いた人に会えて…」
少しだけ広い席に移動して、リナリーとアレンと神田で片方の席に座り、もう片方にとミランダが座っていた。
少しだけ不気味な雰囲気を漂わせるミランダに、微妙な表情を向け話に耳を傾けるの姿があった。
「誰に話しても馬鹿にされるだけで…本当にもう自殺したいくらい辛かったの
ウフフフフフフフ
あ、でも…ウンコは避けられるようになったんだけどね フフフフフフフフフフ…」
口元に手を添え、不気味な笑い声を上げながら言葉を続けていた。
ミランダの周りには、何故か黒いオーラが見えてしまう。
「ウ、ウンコ?」
ミランダの言葉にアレンが頬を引きつらせながら首を傾げた。
こ、この人…だいぶキテるっぽい…
とリナリーとアレンと神田の四人は、ミランダを見つめそう思った。
というか、そう思わずにはいられなかった。
「ミス・ミランダ 貴方は街が異常になり始めてからの記憶があるの?」
「ええ 街の皆は昨日の十月九日は忘れてしまうみたいだけど」
リナリーの問い掛けにコクリとミランダは首を縦に動かした。
話の内容からして、覚えているのは確かだったのだけれど本人に確認を取るのも必要だった。
「私…だけなの………」
「え?」
隣でポツリと呟かれた小さなミランダの一言。
それを聞けたのはだけだった。
チラリと視線を向け、眉を潜めた。
「ねぇ、助けて 助けてよぉ!私このままじゃ、ノイローゼになっちゃうぅ〜!
貴方、昨日私を変なのから助けてくれたでしょぉ!?助けたならもっと助けてよぉ〜!!!」
「うわわわっ 怖いっ!!」
「落ち付いて!ミス・ミランダ!」
「そうそう!助けるから、皆で原因を探そう!?」
アレンに迫るミランダにビビるアレン。
遠巻きにミランダの暴走を止める様に言葉を投げるリナリー。
そして、少しだけミランダから距離を置き椅子に座りなおしながらが言葉を紡いだ。
が、の言葉が火に油を注いだのだった。
「原因ったって、気づいたらずっと十月九日になってたんだものぉ〜〜〜!!」
ワンワンと大きく鳴き声を上げながら、巻くし上げるように呟き続けた。
「ちょっと待って それなら、本当の十月九日に何かあったはずじゃん?」
「そうね ミス・ミランダ、その日に何か心当たりはない?」
の首を傾げる問い掛け。
リナリーもそれには同意だったらしく、ミランダに問い掛けた。
が、アレンが何か異変に気づいたらしく真剣な瞳を見せた。
「…アレン?」
ピィィィィン…
左目が赤くなり、伸びる呪いの印が姿を変える。
その変化にいち早く気付いたのは向かい席に座るだった。
「リナリー、神田」
「ミランダさんを連れて一瞬で店を出て
リナリーの黒い靴(ダークブーツ)ならアクマを撒いて、彼女の家まで行けますよね?」
「神田は、もしもの為に…リナリーの後を追ってアクマが追ってこないか気をつけてて」
立ち上がりながら、とアレンは同じ考えを指し示す指示をした。
それから二人は顔を見合わせ、コクリと一つ頷いた。
「どうやら彼らも、街の人とは違うミランダさんの様子に目をつけ始めたようです」
ガタガタ…
「何故ミランダさんが他の人達と違い、奇怪の影響を受けないのか…」
「それはきっと…ミランダが原因のイノセンスに接触している人物だから…!」
周りに座る者達が立ち上がると同時に、アレンはイノセンスを発動させた。
呟きながら推理を述べ、もその言葉を紡ぎ、スッと真空へと手を伸ばして構えた。
「え?」
二人の言葉にミランダが首を傾げた。
けれど、そんなのはお構いなしにリナリーと神田もイノセンスを発動させると。
ヴンッ…
人の姿からレベル2のアクマへと変化したアクマの前から立ち去るように、リナリーはミランダを抱きかかえ地面を踏んだ。
そのあとを追うように、神田も駆けだした。
少しだけ心配そうにの方へ視線を向けながら。
「イノセンス、発動!」
それと同時にの声が響き、真空の刃を覆う白い布が取り払われた。
ドン…!!!
バン…!!!
アクマとエクソシストの攻撃が、店を破壊する。
ミランダ ミランダ 不幸の女ミランダ♪
モテない 暗い 鈍くさい♪
今日も仕事探し?
どうせまたすぐクビさ〜♪
コチ…
コチ…
カチ…………
ゴ───────ン…
ゴ─────ン…
ゴ─────────ン…
To be continued......................
時計を強調させて終わらせてみました。(笑)
モテない、暗い、鈍くさい〜♪
何気に可愛そうですよね、こんな風に歌われちゃうミランダって…;
ということで、アレン&ヒロインでの第一戦目です。(ぉ)
S.Vに戻る