守られているだけ、何も出来ずに見ているだけなんてまっぴらごめん…

守られるだけ、待つだけなんてまっぴらごめん…

私は────────




──────アクマを破壊する、エクソシストなんだから











S.V 第二十一話











「売り上げ金をスリに盗られただと!?バカヤロウ!!」


すみませんと謝るミランダに厳しい言葉。
営業をしているものとしては、売り上げ金は大切なもの。


「お譲ちゃん、ちょっと待ってて」


飴をなめる少女を置いて、アレンは駈け出した。
その様子を見ていたリナリーとと神田もガタッと立ち上がった。


「ミランダさん」


「ごめんなさい、アレンくん 他のお客さんにチケット売ってるスキに…」


ヘタリとその場に座り込んだまま、涙をいっぱい溜めるミランダ。
ミランダに手を差し出しながら、アレンは問い掛けた。


「スリの姿は見ました?」


「茶色い上着の長髪の男 あっちへ逃げたわ……」


「リナリー!」


「上から行くわ」


ミランダの言葉を耳にし、アレンはリナリーの名前を呼んだ。
その声にリナリーは行くという事を伝え駆け出した。


「私はミランダについてる」


「分かりました」


の言葉を耳にし、アレンは少し安堵すると神田に一度視線を向け。
カボチャ頭を脱ぎながら、またミランダに視線を戻した。


「大丈夫 捕まえてきます」


そう言うと、駈け出した。


「アレンくん……」


涙を流しながら名前を呟くミランダの傍に佇む経営者。
冷たい視線が降り注ぐ。


「役立たず」


「なっ!?」


冷たく言い放ちその場を去る経営者。
はその言い草にムカッとし、睨みを効かす。



────…やっぱりね



ミランダは、涙を流しながら、何度も思ったであろう思いを再度確認した。
やっぱりそうなんだと、思いしらされた。



結局私は何をやっても駄目なのよ
なのに頑張っちゃって馬鹿みたい……もうイヤ



涙ばかりが溢れだしてくる。
そんなミランダを見ていると、胸が痛くなる。
どうして何も出来ないのだろうと。

傍に居ながらも、慰めの言葉さえ出てこない。


「何で私ばっかりこうなのよ… 何で私の時計がイノセンスなのよ……………っ!!

 何で私は……」


ペロリ…

ミランダの言葉を聞きながら、少女が赤い舌で飴を舐め上げた。
ミランダの目の前に、いつの間にか座っていた少女。


「あんたの時計がイノセンスなんだぁ」


ゾクリ

と神田は、ミランダの前にしゃがみ込む少女から異様な空気を感じ取った。
エクソシストに向けられた、嫌な気配。


「ミランダ、その子から離れて!!!」


慌ててミランダは立ち上がり、駈け出した。
そのあとを追うと神田。

少女はそれを楽しむように、ゆったりとした足取りで追い掛けて来ていた。



あの感覚は何……?



まだ逆立つ感覚を覚えている身体。
ゾクッとした感じは未だ取れず、は執拗に後ろを気にした。


「遅いよぉ?」


クスクスと笑いながら、現れた姿。
人通りの多い道から少し離れた場所で、達は少女に追いつかれた。


「神田!」


「分かってる!」


顔を見合わせ頷き合うと、互いに対アクマ武器を手にした。


「「イノセンス、発動!」」


同時に光が放たれ、発動した武器。
神田は六幻を、は真空を手にしながら少女に向ける。


「ろーとタマ、どうするレロ?」


「ローとタマ?」


傘の声に驚くも、それよりも口にされた言葉に眉が潜む。
名前だとしたら、目の前には少女が一人しかいない。
名前じゃないとしたら、いったい何なのか。


「違う違う〜 僕の名前はロードだよぉ」


傘の言葉に首を傾げるに、ロードはきちんとした名前を口にした。
その表情はクスクスと笑っていた。


「はぁっ!」


意識が少しだけ逸れている間にロードに間合いを責めていた神田は、六幻を振り下ろした。
しかしロードはするりとそれを交わしてしまう。

それを見計らっていたように、今度はが真空を振り下ろした。


「………甘いよぉ」


ガッ…

勢いよく振り下ろしたはずなのに、いつの間にかロードはの懐に入り込んでいた。
動かない手に視線をロードから手元に向けると、しっかりと掴まれていた。


「あんたの秘密…」


ニヤリと口元を緩めるロードの表情。
何か嫌な気配を感じさせる、そんな笑みだった。


「僕、知ってるよぉ?」


ドクン…

その微笑みに、その言葉に、は高く高く脈を打った。
早鐘の様に脈を打つ胸は、身体から飛び出しそうなほど。



何を─────…知っている…?



ゴクリと喉を鳴らして息を呑む。
ロードに向ける視線が逸らせずに居た。


「どうして苦しくなるんだろぉねぇ?何で円の形が変化するんだろぉねぇ?」


「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」


その事実は教団しか知りえない情報。
もし、知っているとなればがこうなった元凶である千年伯爵だけのはず。

だから、は言葉に詰まり口を開いたまま驚いてしまった。



何で…知ってる…?



そう思うも、喉が乾いて言葉が出てこなかった。
パクパクと口を開閉させているにも関わらず、一向に声は発されない。


!そいつの言葉を聞くな!!」


六幻を構えたまま、そこから動かずにに向けて声を上げた。
しかし、そんな言葉も今のには無意味だった。

聞こえているのに、何の反応も出来ずに居るのだから。


「煩いよぉ」


その言葉と同時に、ロードの周りに先の尖ったローソクが浮かび上がった。


「僕が用があるのは、この女だけなんだからぁ 邪魔、しないでよねぇ?」


クスクス…

微笑みながら、ペロリと唇をなめるロード。
そして、指先で合図を送るとと神田に襲い掛かるローソク達。

鋭い先が、と神田に傷をつけていく。


「「───────っ!!!」」


貫かれるような痛みに、皮膚を切り裂くような痛みに、神田もも声にならない悲鳴を上げた。
それでも決して武器を離しはしなかった。


「ほんとうに…しぶといなぁ…」


「こんな所で…やられ、られるわけには………いかな、い────…」


ムッとするロードに向かって、途切れ途切れの言葉を紡ぐ。
そんなにロードは徐々に近づいた。

それは神田の心を分かっていたから。


「…人間でありながら、誰よりもアクマに近い存在…」


「───っ!?」


ロードの言葉に揺れるの心。
目を見開き、瞳が揺ら揺らと揺れる姿は動揺している証拠。


「いずれ、アクマになる存在のクセに僕に逆らうのぉ?」


「や………め…」


ロードの言葉に、は開き切った目をスッと閉じた。
そしてそのまま、地面に倒れ伏したのだ。


「あーあ 気を失っちゃったかぁ」


「てめぇ…今の言葉はどういう意味だ?」


クスクスと楽しそうに気を失ったを見下ろすロードに、神田の怒りの声が飛んだ。
コソコソと話すつもりなどなかったロードは、その場に居る神田にも聞こえる声で話していたのだ。


「さぁねぇ?後で教えてあげるよ…だから、抵抗しないでねぇ?
 この女、傷つけられたくなかったらさぁ」


「くっ」


次の瞬間、神田の意識を奪う程の衝撃が襲った。
薄れた意識、最後に目にしたのは倒れたままのの姿だった。









人間でありながらアクマに近い存在……
いずれアクマに………なる存在…

それは……どういう、意…味………?









To be continued.........................






ロードが黒いよぉ!
神田が神田じゃないよぉ!
ヒロインが、ヒロインがぁぁああぁぁぁ!(汗)






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