知った真実は
思った以上に────…残酷だった……
聞いてしまった真実は
S.V 第二十四話
「あいつら 何がどうしてピンピンしてるレロ〜〜〜!?」
「…………ミランダって奴、適合者だったんじゃん?」
傘の言葉に面白そうに笑みを浮かべるロード。
傘の上に足を乗せ、飛んでいるような、そんな状態で。
「どうやったかは知んないけど、あの女はあいつ等を元気にしちゃったみたいィ」
ミランダのイノセンスの中から飛び出してきたアレンやリナリー、や神田に視線を向ける。
ミランダはイノセンスの中で、グッと堪えながら四人の様子を見ていた。
ツー…っと冷や汗が肌を流れ、カタカタと手は震える。
ドクッ
ドクッ
早鐘の様に、ミランダの心臓が脈を打つ。
『
ありがとう
』
アレンの前に口にした言葉が、ミランダの頭の中を反復した。
何度も何度も反響するように、響いた。
ギュウウウ…
何かを抑えるように、必死に胸を掴み耐えるミランダ。
「…アレンくん、あの子何?劇場で見かけた子よね?」
その言葉にアレンはハッとした。
今までの一部始終を知らないリナリーは、目の前に居るロードの正体がつかめずに居た。
「アクマ?」
そう問うのは、当然の流れだったのかもしれない。
けれど、アレンは少しだけ間を空けると三人を代表して口を開いた。
「…いえ 人間です」
「…そう」
アレンの言葉に、短く言葉を紡ぐ。
人間がアクマに与する事に、少しだけ驚いた。
「A L L E N アレン・ウォーカー」
スペルを綴りながら、ロードが声を上げた。
スラリスラリと細い指がスペルを宙に書く。
「アクマの魂が見える奴」
「!」
ロードの言葉に、本人のアレンはハッとした。
教団のもの以外に話していない話のはず。
「あんた、アクマの魂救うためにエクソシストやってんでしょぉ?
大好きな親に呪われちゃったから」
「………」
クスクスと笑いながら言葉を続けるロードに、アレンは何も言わなかった。
ギュッと口を閉じて、絶えるだけ。
「だから僕、ちょっかい出すならお前って決めてたんだぁ」
ドクン…
ふわりと浮かべるロードの微笑みに、アレンは頬から汗を流した。
とんでもない人に興味を持たれてしまった。
けれど、ロードの続けられた言葉にアレンの思いは散るのだった。
「でも、アレンとが一緒に居るとは思わなかったよぉ
だって、人間でありながら誰よりもアクマに近い存在で、いずれアクマになる奴がアクマが見える奴と一緒に居るなんて思わないじゃん?」
「「──────っ」」
「なんですってっ!?」
「どういう事ですかっ!?」
ロードの言葉に息を呑むと神田。
リナリーとアレンは、双方の反応に顔を見合わせてから声を上げた。
「アハハハッ やっぱりあんた達もとその男と同じ反応するんだねェ」
楽しげに笑い声を上げながら、思った事を口にするロード。
その反応は当然なのに、それがおかしいと言わんばかりに。
「いいよ、教えてあげるよぉ
何でアレンにアクマが見えるのか 何で苦しくなるのか なんで、僕にそんな風に言われるのかぁ」
クスクス
不気味なほどに楽し気な笑みを浮かべるロード。
知りたいと思っていた話なのに、いざ聞けるとなると怖くなってしまう。
「…大丈夫だ」
無意識に、いつの間にかは神田の袖を掴んでいた。
その事に気付いた神田は、宥めるようにそう告げる。
「は親をアクマにしちゃって、皮を被られそうになったんだよねぇ そこをエクソシストに助けられたんだぁ」
……師匠だ
ロードの言葉に、アレンは気付いた。
教団でも聞いた話だったから、アレン以外の誰もがクロス元帥を思い浮かべていた。
「アクマに傷つけられて呪われた時にさぁ…こいつの体内にぃダークマターの破片が入り込んじゃったんだよねぇ
だからぁ、はでもぉ…中身はアクマの魂との魂があるんだよねぇ」
その言葉は衝撃的なものだった。
けれど、それでアレンにアクマの魂が見えるのかが分かった。
は、アクマになり得る身体だったから。
アクマを体内に潜ませていたから。
「違うっ!!!私の中にアクマなんて居ない!!」
「どう足掻いたって、真実は変わらないよぉ?」
必死に否定しようとするに、ロードはクスクスと現実を突き付ける。
神田の袖を掴む手に、力が籠る。
「そんなのは、あんたの嘘!デタラメだ!!」
「じゃぁ、どうして技を使うと苦しくなるのかなぁ?」
「────っ」
錯乱させようと、混乱させようと嘘をついているのだと指摘するに、言葉を詰まらせる一言を突き付けた。
ロードは平然と、本当の事を思い出しながら呟いているようだった。
「……、ちゃん?」
脅威の的がうちに潜む。
警戒の眼差しを向けられないわけがなかった。
「…………違、う」
弱々しい言葉は、虚しく虚空に消え失せた。
「千年公が言ってたよぉ
アクマと同化してるから冥界を呼び起こせて…あんたが苦しくなるのは、イノセンスで技を使う度にあんたの魂が冥界に引き込まれてるからだってさぁ!
あんた達の武器でアクマを破壊してるわけじゃないから、アクマの魂は救われないわけ
つまり、あんたの魂ばかりが冥界に引き込まれてぇ…いずれアクマになっちゃうんだよぉ〜」
「違うううぅぅぅうううううぅぅぅぅ!!!」
ロードの言葉に、は悲鳴を上げた。
信じたくないっ
信じられないっ
そんなの─────…嘘っ
ガクンッ
膝を折り、その場に座り込んでしまう。
「違くないよぉ そんなに信じられないなら……試してみる?」
の前に佇み、コテンと首をかしげて問い掛ける。
その様子に、慌てて神田が六幻の切っ先を、アレンはエネルギー弾を放つ左手の銃口をロードに向けた。
「ちぇっ つまんないのぉ」
肩をすくめ、何の反応も示さないに溜め息を吐いた。
それからチラリと視線をアクマに向けた。
「おい、お前 自爆しろ」
呼び掛けたロードに返事をするアクマ。
けれど、続けられたロードの言葉は非道なものだった。
全員の表情が硬くなる。
「エ?」
「!?」
疑問符を向けるアクマに、ギョッと目を見開くアレン。
しかしロードの指示は止まらない。
「傘ぁ 十秒前カウントォ」
ペロリと唇を舐め、立つ足元に居る傘に指示。
「じゅ」と少しだけ戸惑うも、ツンッとロードの指先で突かれれば続きを言わざるを得ない。
「十レロ 九レロ 八レロ」
続くカウントは止まらない。
「ちょっ?ロード様、そんなぁ…
やっとここまで進化出来たのに………」
けれど全然ロードは反応を示さなかった。
完全無視を決め込んだ反応。
それでも、傘のカウントは止まらない。
「おい!?一体何をっ!?」
ギリッ
奥歯を噛みしめロードを睨み、重い口を開いた。
「イノセンスに破壊されずに壊されるアクマってさぁ…
たとえば自爆とか?そういう場合、アクマの魂ってダークマターごと消滅するって知ってたぁ?」
「──────!」
「そしたら、救済出来ないね────!」
ロードの言葉に驚愕するアレン。
楽し気なロードの笑い声が上がった。
「二レロ」
「やめろ!!!!」
あと少しのカウントに、慌てて声を上げるアレン。
「くそっ…」
ダッ
地面を踏みしめ、アレンは巨大化した左手を振り出し駆け出した。
目指すは自爆を命じられたアクマ。
「アレンくん駄目!!」
「間に合わねェ!!!」
必死に呼び留める声を上げるリナリーと神田。
しかしアレンはひたすら走り続ける。
爆発する前に破壊を…!
「一レロ」
必死に腕を伸ばすアレン。
けれど、距離的に間に合わないのは分かっていた。
「ウギャアアアアアアアアア」
カチ
「アレンくん!!!!!!!!!」
アクマの悲鳴と、アレンを呼ぶ声。
爆発するアクマを目の前に、誰かの手が伸びた。
ドオオォォォオオォォッォオオォオンッ
激しい爆発音の中、アレンを爆発から守る姿が一つあった。
「……… …………」
爆発の中で、伸ばされるアクマの魂の手。
煙で光で霞み逝く姿。
「
タスヶテ…
」
To be continued.....................
ヒロインの正体が明らかになりました。
二十四話にして…やっと………って長いですか?(汗)
でもでも、神田の胸の梵字の正体はまだ解けてないですしっ!!!(*ハ)
S.Vに戻る