時は満ちタ
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七千年の序章は終わり、ついに戯曲は流れ出ス
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開幕ベルを聞き逃すな 役者は貴様等だ、エクソシスト!!
S.V 第二十九話
「ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
勢いよく伸びる柄。
その先に捕まるやアレンは、ラビと違って慣れていない。
驚愕な、少しだけ今にも泣きだしそうな表情を浮かべ悲鳴があがる。
が、その隣で慣れているはずのラビも少しだけとんでもない表情を浮かべていた。
「スピード、スピード落として下さいッ!!!」
「む、む……無理さぁ〜〜〜〜〜〜」
「「ラビィィィィイイイイィィィィィ!!!」」
アレンの要求に『無理』と言い切るラビ。
どうしようと怯える表情を浮かべるも、すぐに怒りの声をあらわにした。
「「「うわあああああああああああ!!」」」
ドガシャ───ン
勢いよく窓ガラスを打ち破り、三人はリナリーの眠る部屋へと現れた。
そこには、少しだけ呆れ気味のコムイの姿もあった。
「またアレで飛んできたな、ラビ」
「アハハハ 悪い!」
呆れるコムイの目の前に、モクモクと立つ煙の中からラビが姿を現した。
「悪いじゃないよ 痛たたた…」
「も一緒だったのか 目が覚めて良かった」
「あはははは…ご心配お掛けしましたー」
腰を摩りながらゆっくりと立ち上がるに、コムイは安堵の声を上げた。
その様子に苦笑を浮かべ、軽い口調で呟くと。
「いやー…悪かったなぁ これ便利なんだけど、ブレーキの加減がちょい難しいんだなぁ
でも、気持ち良かっただろ?アレン、」
パタパタと団服についた埃を払いながらも、悪びれる様子もない。
しかし、返されるであろう返事の一つが来ない。
「…アレン?」
首を傾げ、アレンの姿を探すラビ。
しかし、アレンと一緒に発見したもう一つの姿にラビは色を失くすほど恐怖した。
「小僧ども……っ!」
「あ、アレ…!?」
「それじゃ…ちゃんには、これから神田くん達と合流してもらう」
コムイの言葉にはコクリと頷き返した。
差し出されたのは数枚の紙が同封されている茶封筒。
「任務について書かれている 向う最中に読んでくれれば構わない」
「了解」
茶封筒を受け取り、真空を背に担ぐとは早速立ち上がった。
「もう行くのか?」
「まぁ…待たせる訳にもいかないだろうしね」
立ち上がったを見上げるラビに、苦笑を浮かべる。
茶封筒をワキに抱え、軽く手を振ると背を向けた。
「降りる駅は神田くんとゴーレムで連絡を取ってくれるかな?」
「ん、了解 では、行ってまいりま───す」
ヒラヒラと手を振る姿が、まさか最後になるとは誰も思っていなかった。
この後に待つ惨劇を、この時は誰も予想すらしていなかったのだから。
カサ……
「ええっと、何何?」
列車の個室の席に座り、近くに真空を立て掛けた。
ドカッと椅子に座ると茶封筒の中からゴソゴソと紙を取り出し、目を通す。
先日、元帥の一人が殺されました。
殺されたのは、ケビン・イエーガー元帥。
五人の元帥の中で最も高齢ながら、常に第一線で戦っておられた人だった。
ベルギーで発見された彼は、教会の十字架に裏向きに吊るされ、背中に『神狩り』と彫られていた。
ちなみに、分かるとは思うが『神狩り』とは『イノセンス』の事を示しているだろう。
元帥は適合者探しを含めて、それぞれに複数のイノセンスを持っている。
イエーガー元帥は八個所持していた。
奪われたイノセンスは、元帥の対アクマ武器を含めて九個。
瀕死の重傷を負い、十字架に吊るされてもなお辛うじて生きていた元帥は、息を引き取るまでずっと歌を歌っていた。
「千年公は探してる 大事なハート探してる 私はハズレ次はダレ」
そこまで一気に読むと、は一つ息を吐いた。
ペラペラと捲る紙に書き綴られた内容に、頭が痛い。
とんでもない奴らと敵対していると、再確認。
「さてと……続き…っと」
そう呟くと、はまた残りの文章へと視線を落とした。
我々が探し求めている百九個のイノセンスの中に一つ、『心臓』と呼ぶべき核のイノセンスがある。
それがハートと言う。
それは全てのイノセンスの力の根源であり、全てのイノセンスを無に帰す存在。
それを手に入れて初めて我々は終焉を止める力を得る事が出来る。
伯爵が狙っているハートは、それの事だ。
だが、そのイノセンスの所在地は我々でも分からない。
どんなイノセンスで、何を目印に判別するのか石箱(キューブ)に書いてない。
その為、もしかしたら既に回収しているかもしれないし、誰かが適合者になっているかもしれない。
ただ、最初の犠牲者となったのは元帥だった。
もしかしたら伯爵は、イノセンス適合者の中で特に力の在るものに『ハート』の可能性を見たのかもしれない。
アクマに次ぎのあの一族が出現したのも、おそらくその為の戦力増強だろう。
「…コムイ室長が言ってた伝言
あれって、エクソシスト元帥が標的になったって意味かな……?
まぁ…そういう凄いイノセンスなら…私達みたいなエクソシストじゃなくて元帥みたいな強いエクソシストが持ってるはずだよね」
一人、文章を見つめながら納得した。
一つ溜め息をつきながら、再度視線を落とす。
なんだか大変な任務になりそうなことに、肩の荷が重くなっていく。
ノアの一族とアクマの両方に攻められては、さすがに元帥だけでは不利となるはずだ。
各地のエクソシストを集結させ四つに分ける。
今回の任務は『元帥の護衛』だ。
向かう元帥は『ティエドール元帥』だ。
「………うわぁ、長期任務じゃん」
肩を落とし、大きく溜め息。
普通の長期任務とは違い、なんだかとっても大変なことになりそうな任務の予感。
ガシガシ
は己の後頭部を掻いた。
「神田達……大丈夫かな って、連絡取らないとっ!!」
そう声を上げると、ゴーレムに視線を向けた。
「ここ……だったはずなんだけどなぁ…」
大体の場所を聞いたは、最寄駅へと着くと同時に列車を駆け降りた。
駅を飛び出し、神田達の居るはずの場所へと向かう。
『
そこからそう遠くはねェよ 待ってねぇから、さっさと追いつけ
』
神田らしいもの言いを思い出し、の口から笑みが零れる。
茶封筒はしっかり団服の中にしまい込み、神田の元へと駆ける。
「全く……少し位待っててくれる余裕を持っててもいいと思うんだけどなぁ」
肩を竦め、早足の歩みはピタリと止まる。
「こうやって……待ち伏せだってされたりするんだからさぁ」
「ギャハハハハハ 気付いてた、気付いてたァ!?」
背負っていた真空に手を伸ばし、抜くと同時にイノセンスを発動させた。
刃の周りを覆っていた布が外れ、妖しく光る刃が現れた。
それと同時に、一体のアクマが姿を現した。
「…レベル2か 一体で私を足止めにするつもり?」
チャキ…
真空を構え、アクマを真っすぐ見据えた。
早く神田の所に到着しなくちゃいけないってのに……
大きく溜め息をつき、アクマを睨む。
「グギギギギ 誰が一体だって言ったかァ?」
「何っ!?」
ドオオオオオオオオンッ
アクマの笑い声と同時に、背後から襲った衝撃には地面に手を着いた。
幸い攻撃を寸前で避けたものの、爆風により身体が押されたのだ。
「あーあ 二体に増えちゃってまぁ……面倒なこって」
「「ギャハハハハハ 倒せるかな、倒せるかなァ!?!?」」
同時に聞こえる声は、同一のもの。
同時に地面を踏み、駆け出し、同時に攻撃を仕掛ける。
ふーん……もしかして…この二体って、同じアクマ?
軽く首をかしげながら、アクマの攻撃を真空で受け止めた。
ギギッ
「防御だけじゃァ倒せない、倒せないィ!!!」
「んなことくらい、分かってる…………よっ!!」
ザンッ
アクマの言葉に溜め息交じりに言い、最後の一音と同時に力強く一体のアクマを真空で斬り裂いた。
「よし、一体は撃………破?」
グッ
拳を握りしめ、訪れるであろう爆発音に嬉しげな声を上げた。
しかし一向に爆発音は聞こえなかった。
「お前ごときに…」
「…………………倒せは……」
「………………………………しない、しなァい!!!」
上がったアクマの声は三つに増えていた。
同じ声、同じ口調。
さっきまで二体だったはずじゃっ!?!?
煙が消え、の目に留まったのは三体に増えていたアクマの姿。
チッと舌打ちをした。
「全く……厄介な能力を持っているようだね」
真空を持ち上げ、柄を肩に乗せる。
溜め息を大きく付きながらも、面白そうだといわんばかりの笑みを浮かべた。
To be continued....................
オリジナルに走ります!(笑)
神田とデイシャとマリの元に到着するまで……あとどれくらいかな?(笑)
でも、エンディング(?)は徐々に近づいてきていますヨv
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