コンコンコン
「はーい」
聞こえたノックはの部屋。
ガチャとドアを開けると、そこに居たのはリナリーだった。
「どうかした?」
「コムイ兄さんが司令室に来るようにって
たぶん、任務だと思うよ 初任務になるけど…気を付けてね」
その言葉にはすぐに「うん、わかった」と返事を返した。
その返事を聞き、リナリーはすぐに扉を閉めた。
「初任務、か うわー…なんかドキドキするなぁ〜」
そう言いながら、はイスに掛けていた団服を取ると袖を通した。
前は閉めず歩くの団服の隙間から、短パンを穿くスラリとした足が覗く。
S.V 第三話
「…という事で、ちゃんは神田くんと一緒に任務に行ってもらうよ」
「チッ」
コムイの言葉には静かに頷いた。
けれど聞こえた舌打ちには眉間にしわを寄せた。
そういえば、門前で斬りかかってきたのもこいつだったっけ…
そう思いながら神田の横顔を見ていると。
「何見てんだよ」
「見てない!」
ギロリと睨む神田に、はスパッと言い切った。
見ていた事は見ていたが、なんだか癪に障る。
「ちゃん 対アクマ武器の方は大丈夫?」
「あ、うん ちゃんと発動出来るようになったから大丈夫」
コクリと頷いた。
けれど、はまだ知らなかった。
の対アクマ武器の技が、にとって致命的なものだということが。
「足手まといにだけはなるなよな」
「んな!誰が!ふざけんな!」
立ち上がりながら、いざ出発しようとした神田から掛けられた言葉。
はムカッとした表情を浮かべ、声を荒げ言い返した。
「お前だよ ガキはガキらしく逃げ惑うんだな」
「ガキじゃない!つーか、私だって戦えるし!」
「実戦経験ゼロの奴が言う台詞じゃねぇな」
言い合う神田と。
けれど神田の図星を突く言葉にはは言い返す事は出来なかった。
実戦経験がゼロ。
それはどうしようもない事実だからだ。
「ほらほら喧嘩してないで、行った行った」
「チッ」
「ふんっ」
コムイの苦笑交じりの促す言葉に神田は舌打ちを、は鼻を鳴らした。
お互い顔を見ないように左右に視線を向け、司令室の出口へと向かった。
今回の任務は、廃村に群がるアクマの退治。
近くの村から依頼が来たそうだ。
「ここだな」
「うへー…気味悪っ」
「なら、ここで待ってるか?」
「冗談!戦えるってば」
到着した廃村は、不気味な程に荒れ果てていた。
到着したのが夜だったために、その不気味さは倍増しだ。
そんな中呟いたに、嫌味たらったらに呟くのは神田。
「あ、エクソシストの方ですね!」
そう声を掛けてきたのは白装束に身を包んだ探索部隊(ファインダー)だった。
その姿に神田は視線を向けると。
「報告を致します
現在、村の中央にある教会にアクマが密集しております
村の外に出られないよう、結界を張ってはおりますが…」
「分かった」
探索部隊(ファインダー)の言葉に神田は短くそう返した。
捜索部隊(ファインダー)の言葉が返ってくる前に、神田は歩き出していた。
「待って、神田!」
「うるせーな もたもたしてると置いてくぞ」
追いかけるに言い切る神田。
ムッとした表情を浮かべるも、それでも神田の後姿を追いかけた。
月明かりで照らされる足元は、剥がれ落ちた瓦礫で足場が悪かった。
それでもズンズン進む神田に合わせ、も必死に後を追う。
「────!」
そこで感じた気配に、神田もも足を止めた。
壊れた家々から現れたのはLv.1のアクマ達だった。
「はっ のこのこ現れたな」
「……」
アクマの姿を目にし、神田は背負った刀を抜いた。
も背負っていた薙刀を引き抜いた。
の対アクマ武器は、薙刀の形をした『真空』というものだった。
普段は白い頑丈な布で刃を覆い隠していた。
「「イノセンス 発動!」」
二人の声が重なり合った。
神田が六幻の刀身に立てた二本の指を当てると、感電したかのようにビリッと音がした。
当てた指の部分が発光し、そのまま一気に切っ先まで刀身を撫で上げると、六幻が一瞬カッと光を帯びた。
神田の対アクマ武器、日本刀である『六幻』を構えアクマを睨みつけた。
一方の方は真空を両手で掴み、イノセンスを発動させると覆い隠していた白い布が姿を消した。
代わりに現れたのは薙刀の鋭い刃。
スッ、とアクマに薙刀の切っ先を向け体勢を低くし睨みつけた。
「ふんっ 邪魔だけはするなよ 殺されそうになっても、任務遂行の邪魔だと判断すれば俺はお前を見捨てるぜ」
「神田の性格考えればそうだとは思ってたよ」
黒の教団に入団してから、幾日か経っていた。
その頃には教団のエクソシストとも、探索部隊(ファインダー)とも科学班とも知り合いにはなっていた。
勿論、肌の合わない人だって存在はしていたのだが。
神田は六幻を構えた。
「六幻 災厄招来!界蟲『一幻』!!」
神田は一気に六幻を横一線に薙ぎ払った。
その瞬間、六幻の刀身から龍の頭の様な奇妙な物が放たれた。
それは意思を持つかのようにアクマに向かい、破壊していった。
「月花吸冥(げっかきゅうみょう)!!」
神田に一歩遅れ、構えた真空でアクマを斬ると、アクマの身体に二日月の空洞が生まれた。
そのアクマを中心に、周りのアクマ達も一緒にその二日月の空洞へと吸い込まれ破壊された。
神田の六幻との真空でアクマは一気に減った。
「はっ、やるじゃねーか」
そう呟く神田は、また地面を蹴り残りのアクマの元へと駈け出した。
けれど一度技を発動させたは、そこから一向に動こうとしなかった。
ドクン、ドクン…
脈打つ何かに苦しそうには眉を顰めた。
ガッと真空を地面に突き刺しバランスを取り、前を見つめる。
な、に…?この…苦しさ…
何か…無くなってくような…
胸の辺り、五芒星(ペンタクル)のある辺りをギュッと掴み。
ハァッ、と息を一つ大きく吐いた。
「こんな事してる場合じゃないっ 早く、アクマを破壊しないと…」
ギリッと奥歯を噛みしめ、真空の柄をギュッと握ると何事もなかったかのように体勢を整えた。
それからグッと大地を踏みしめ駆け出した。
先に向かった神田の後を追うように。
「月花吸冥!」
は真空でアクマを斬った。
二日月の空洞がアクマの身体に生まれ、そのアクマを中心に周りに居るアクマもろとも空洞の中へと吸い込まれた。
そして、次の瞬間起こるは爆発。
「はっ!」
「たぁ!」
一気にアクマが減ったことを確認した神田は、今度はその六幻でアクマを切り裂いた。
それに合わせ、今度はも真空でアクマを切り裂く。
が、胸に感じる苦しみと何かが無くなっていく感覚に眉を潜めた。
悟られちゃ駄目だ…
アクマを破壊出来なければ、私はここに居る意味がない…
足手まといにはならない…待機なんて…絶対嫌だっ
そんな思いに駆られ、は次々にアクマを切り裂いていった。
それでも、実戦経験豊富な神田に比べ倒すアクマの数はたかが知れていた。
「ハァハァ…ハァハァ…」
最後の一体を神田が破壊した瞬間、は荒い息を必死に整えようとしていた。
唾をゴクリと飲み、大きく息を吸い深呼吸。
「終わったな お前、新人のくせにやるじゃねーか 度胸も据わってるしな」
「覚悟決めてたからね 足手まといになるなんて冗談じゃないし」
神田の言葉に気丈に返した。
構えていた真空を背へと戻すと、無くなっていた布は刃に捲かれる。
腰に手を当て、胸を張り『どうよ』と言わんばかりに神田を見つめた。
苦しい…苦しい…苦しい…苦しい…苦しい…
どうして…どうして…どうして…どうして…
けれど神田はいち早く気付いた。
の顔色が優れない事に。
けれど、その事を指摘する事も病院に連れて行く事も、教団へ帰る事も許されはしなかった。
To be continued..........................
とうとうヒロインの対アクマ武器が明らかにされました!
そして、何やら不思議な事が起きているようですね。
これ全て、ヘブちゃんの予言に関係しておりまーす♪
てことで、お楽しみに!!!(早っ)
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