擦りきれんばかりに分離する。
嘆きは決して解かれない。

エクソシストの手がなければ……決して………










S.V 第三十話











「さて……どうやったらいいのかな」


三体のアクマを睨みつけ、はそう口にした。

チャキ…

真空を構え、アクマの出方の様子を見る。
しかし、一行に動かないアクマもの出方の様子を見ていたからだ。


「ラチが明かないなー…」


軽い口調でそう言うと、はダンッと地面を踏んだ。
勢いをつけてアクマに突進し、真空を振り上げる。



駄目なら、三体を連続して切れば……



切り裂く体勢に入った。
柄を握る手に力が籠った。


「ううん、それじゃ駄目 分離出来ないくらいに切り裂いてあげるよ」


不敵に笑うと、は握った真空を薙いだ。
風切り音が鳴り響く中、三体のアクマが連続して粉々に切り裂かれた。

ここなら、普通は爆発音が鳴り響くはず。
はその音を待っていた。


「ケケケケケ」


「無理無理ィ 無理ィ」


「そうそう お前なんかが倒せるはずない、ないィ♪」


「倒せる方法が分からなきゃ意味ないもんね、ないもんねェ」


どんどん増えていく声。
それは、が先ほど切り裂いた分だけ増えていた。


「チッ ホント厄介だよ……」


いくらなんでも増えすぎたアクマの数に、は舌打ちした。
三体から粉々に分離させたものから同じアクマが生まれた。

想像しただけでも、その数は計り知れない。


「厄介厄介ィ ケケケッ」


「お前死ぬ、死ぬゥ♪」


ケタケタと楽しそうに笑い声を上げるアクマに、はムッとした表情を浮かべた。
まだ新米とはいえ、エクソシストには変わりない。

なんだか甘く見られているようで、怒りが沸々と湧き上がった。


「少し…多いし、場所も離れ過ぎ……か」


辺りを見渡し、アクマの状況を把握する。
ポリポリと頬を掻き、溜め息が零れた。


「何発……で、かたがつくかな」


ギュッ…

真空の柄を握る手に力が籠る。
は、アクマの特徴は把握した。

倒せない理由は簡単だった。
全部一気に片付けないと、残った残骸に他のアクマ達から力が注がれてしまうだけだったのだ。
なら、倒せる方法は二つ。

一つは、全部を一気に破壊する事。
全てを再起不能にすれば力を注ぐ者がいなくなるのだから、当然の事だろう。

二つ目は、の真空の技でアクマ達を吸い込む事。
吸い込んでしまえば残骸すら残らない。

選ぶのは簡単、後者だった。


「何を言っている、言っているゥ!?」


「破壊されるアクマは知らなくてもいい事だよ」


アクマの言葉に不敵な笑みが零れた。
真空の切っ先をアクマに向けると、ジャリ…と地面を踏み締めた。


「無理無理ィ!お前に倒せない、倒せないィィィ!!」


「それはどうかなっ!?」


チャキ…

真空が構えられた。
狙いはまず身近のアクマ一体。


「月花吸冥!」


ザンッ!

真空で斬り裂くと同時に、生まれた上弦の月の形をした空間。
斬られたアクマとそこから一定距離の範囲に居たアクマ達は、その空間へと吸い込まれていった。
現れた冥界へと、アクマ達が消えていく。

それは、の魂も同じことだった。


「─────っ」



倒れてられないっ
全てを……破壊しなくちゃ……



くらりと揺れる身体。
けれどは、自らの身体にムチを打ち立ち上がる。


「月花吸冥!」


ザンッ!!


「月花吸冥!」


ザンッ!

何度も響く声と、切り裂く音。
そして何度も現れる上弦の月の形をした冥界と繋がる空間。


「ゼェハァ ゼェハァ」


の息も激しく上がっていった。



これが……最後ッ



キッと最後の集団のアクマを睨み、奥歯を噛みしめると。


「月花吸冥!!」


ザンッ!

切り裂かれたアクマを中心に、また冥界と繋がる空間が現れた。
しかし、違っていたのは上弦の月の形ではなく十日月の形をした空間が現れた事だった。
それでも、変わらずアクマ達を吸い込み続ける。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


ドクン

脈打つ胸に、は手を当てる。
最後の集団のアクマはすべて消え去り、はその場に膝をついた。



形が……変わった…



それは、のアクマ化が進んだことを示していた。


「ハハ こんな危ないエクソシストが居ていいのかなぁ……」


ユラリ

立ち上がったは苦笑しながらそう口にし、一歩を踏み出した。
神田の居る場所へ向かうために、辛い身体で無理をする。











「………音?」


ちょっとした爆発音。
それを耳にして連想するのは、やはりアクマ。

職業柄なのか、爆発音=破壊音となってしまう。


「もしかしてっ」


慌てて真空の柄を握り、駆けだした。
いつでも発動出来るように、背負う真空の柄は離さない。


「ゲヘヘヘヘヘヘヘ!!無理だ!無理だ!」



やっぱりっ!!!



聞こえた声に、は確信した。
見えてくる姿は人とは違うもの。

そして、その目の前に佇む黒い姿が確定要素になった。


「くそっ、まだ遠いか」


距離的に、ようやくシルエットが見えてきた程。
到着するには、まだ遠い。


「元帥共は助からねェ!!ノアとアクマが大軍で奴らを追いかけてるんだぜ」


それはまるで勝利を確信しているかのような言葉。
けれどは知っていた。
エクソシスト達は簡単にアクマやノアに敗れるほど、弱くないという事を。


「お前等がこうしてアクマを壊してる内にも……」


ドンッ

言葉を紡いでいる途中、神田の六幻の切っ先によりアクマは破壊された。
煙を放ち、その場で姿を消す様に破壊された。


「うるせぇ」


「行くぞ、神田」


破壊したアクマを見下ろしながら、神田はその六幻を鞘へ収めた。
同時に掛かったのはマリの言葉だった。


「まったく邪魔じゃん 次から次へと襲ってきやがって、ちっとも進めやしない」


「俺達を足留めしてェんだろ」


「元帥に辿り着くだけでも一苦労だな」


歩き出した三人。
マリの隣に神田、その隣にデイシャが達もくもくと先へと進む。

が、どうやら少しだけ神田の様子がおかしかった。


「ま、待って────!!神田ァ───!!」


その声に、不機嫌極まりない視線で振り返る神田。
『あ゙?』と声を発さないだけ、まだましかもしれない。


「お、追いついた……」


「遅ェよ 何してやがった」


「うっわ、その言い方って少し酷っ」


息を整えるに、やはり不機嫌なのかキツイ物言い。
その言葉にはブーイングをした。


「あ?遅いテメェがわりィんだろ?」


「……イライラしてるの?神田」


「してねぇ!!!」


イライラして見える神田に指摘するも、否定の言葉がしっかりと上がった。
しかし、その口調を聞いている限りでは完全に不機嫌極まりない。

その様子に苦笑しながらも、肩をすくめた。


「私もアクマに足留め喰らってたんだよ 斬れば斬るだけ増殖しやがって……ハァ」


「……は?どうやって破壊したんだよ?」


溜め息をつくを見つめ、最もな問いかけをした。
その問い掛けには少しだけ視線を逸らす。



ヤバイ……口が滑った……



愚かな自分の口に溜め息が零れた。


「…技、使った」


「バッ!!!………なっ、にしてやがる……」


その事実から、神田はハァーっと大きく息を吐きだした。


「技使うくらい、別にいいんじゃん?」


「知らねェから言える言葉だな」


デイシャの言葉にそう突っ込む神田。
その言葉にデイシャもマリも顔を見合せて首を傾げた。


「あ、そっか 初対面だし…何も知らされてないんだ」


その様子から、アッと思いだしたかのように声を上げた。


「初めまして えーっと、デイシャとマリだっけ?」


「ああ」


「そうだ」


の言葉に頷く二人の様子に、ポリポリと頬を掻く。
一緒に旅をするのだから、知らせた方がいいのかと悩む。
けれど、誰もが体内にアクマが居ると知りながらも受け入れてくれるとも限らない。


「知らないんだ 言う必要はねぇ」


「…………神田」


神田の言葉に、ホッとした表情を浮かべる
少しだけ照れている様子の神田に、ちょっとだけ笑みが零れた。


「神田が照れてるなんて、珍しいじゃん!」


「うるせェ!」


指摘するデイシャに、一喝。
どうやら指摘されることすら、恥ずかしいらしい。


「しっかし、いつになったら辿り着くのかねェ
 オレ達の探すティエドール元帥は、もうこの街にゃいねェみたいじゃん」


サクサク進むデイシャは、少しだけ溜め息交じりだった。
見つけようにもなかなか見つからず、アクマが阻止してくるのだから当然だ。


「まったく足が早いっつーか、鉄砲玉っつーか」


はぁぁぁぁぁ、と大きく息が吐き出される。
その様子に、は苦笑を浮かべるだけだった。


「どうせ、どこかで絵でも描いているんだろう」


「まったく、オレらも変な師を持っちまったなあ、神田」



ああ……この三人って同じ師匠の元に居たんだ



そこで初めて知った事実に、の視線は自然と神田に向けられた。
が、もの凄い不機嫌面にちょっとだけ驚いた。


「俺はあのオヤジが大っ嫌いだ」



だから、機嫌悪いんだぁ



納得した三人。
溜め息をつく様に、少しだけ苦笑が浮かぶ。


「ま…クロス元帥よりマシじゃん」


確かに、その通りなのかもしれないと思っただった。








To be continued......................





デイシャとマリのキャラが掴めません!!!!
神田と一緒に行動させると、どうも無理が……(汗)
デイシャはとりあえず語尾に『じゃん』をと思ってるのですが……マリが、マリが分からないです……(/_;)
どどどどどどど、どうしようッ!!!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/






S.Vに戻る