何も知らずに、ただひたすら先へ先へと進むだけ─────…
S.V 第三十一話
「ったく、多いじゃん」
到着したソコはすでにアクマに占領されていた。
辺りを見渡せば、壊された家々。
地面に倒れる瓦礫達。
「……ここにはティエドール元帥はいなそうだよね」
「こんな所には居ないだろう」
の言葉に同意するように頷くマリ。
その言葉に神田は六幻の柄に手を掛けた。
「だが、このアクマ共を放っておけはしねェな」
「同感」
神田の言葉に苦笑しながら、も真空の柄に手を掛けて頷いた。
一斉にアクマ達の視線が達へと注がれる。
「こんな数、オレら相手じゃ足りないじゃーんっ!」
そう言いながら、デイシャは対アクマ武器である隣人ノ鐘(チャリティ・ベル)を蹴った。
すると、それはアクマの中を貫通した。
リンゴーン
煩い鐘の鳴る中、音波により内部から破壊された。
「災厄招来 界蟲一幻!」
続いて神田の対アクマ武器である六幻から竜の頭の様な虫が無数に現れた。
それは迷うことなくアクマを目指し、アクマを即座に破壊した。
「はぁっ!!!」
もそれに負けじと、真空でアクマをどんどん切り裂いていった。
間を置かずに響く爆発音。
「…全然数が減らないな」
「手分けして片付けるしかないんじゃーん?」
マリの言葉にデイシャは軽い口調で返事をした。
しかし、たぶんそれは当然行き当たる考えであった。
「そうだな」
「じゃ……またあとで!」
そう言葉を交わし、四人はそれぞれ背を向けて駆け出した。
この時、誰ひとりとして予想もしていなかった。
この後の惨劇を。
そして、最悪の事態を招く事になるという事を──────…
「……さてと、皆に迷惑掛けない様にチャクチャク破壊しなくちゃね」
チャキ…
真空を構え、目の前にズラリと並ぶアクマを見据えた。
「てぃやぁッ!!!」
掛け声と同時には地面を蹴り、アクマへと斬りかかった。
真空の刃がアクマを襲い、次々と切り裂いていく。
ドオオオオオオオンッ
絶え間なくあちこちから鳴り響く爆発音に、ここのアクマの爆発音が交り合った。
だから気付かなかった。
不穏な気配に、誰もが気付かなかった。
あとどれくらいかな……
次々と家々の合間から姿を現すアクマを見つめ、溜め息をついた。
すでに街は崩壊し、人の姿すら見当たらない。
「ま 人間が居ないだけ良かったかな」
当然な感想を口にし、苦笑が漏れる。
もし人がいたなら巻きこんでしまっていたかもしれない。
助けを求める人を疑わなくてはいけなかった。
何より、アクマに殺されていたかもしれない。
「…あっはは、それは今でも変わらないか
すでに、街の人達はアクマに殺されてるに決まってるか」
アクマに占領されたこの街で、生き残れるほど人間は強くはない。
エクソシストでさえ、アクマの攻撃を受けてしまう可能性は高いのだ。
ズドドドドドドドドド
「─────っ!
あっぶな─────っい 危うく攻撃受けるところだったよ」
先ほどまでが立っていた地面は、今はアクマの弾丸の攻撃により抉れていた。
「こんな所で死ぬなんて冗談じゃないよっ!?」
ザシュッ!!
そう声を上げ、アクマを切り裂いた。
けれど、数は一向に減ってくれない。
「…おかしいなぁ こんなに戦ってるのに減らないなんて」
一人での任務ならば、何となく納得はできる。
人間一人で破壊出来る数なんてたかが知れている。
ましてや、技をあまり使えないというデメリットまであるのだから。
神田にマリにデイシャも居るのに……
なんか……変
三か所で上がる爆発音と煙。
それらを見つめながらもアクマを切り裂き、はそう思った。
ダッ
地面を蹴り、なおも現れるアクマから身を隠す様に家々の隙間へと身体を滑り込ませた。
「神田達と連絡でも取ってみた方がい……」
ザザ……ザ………
そう思った矢先、誰かからの声が聞こえてきた。
ノイズに邪魔されてまだ良く分からない。
『聞こえるか?』
「神田?」
『そうだ お前ら、今どこに居る?』
ザ……ザザ…
神田の問いかけにまたノイズが交る。
『デケェ変な塔から東に三キロくらい?』
『私は西に五キロといったところだろう』
「私は……」
デイシャとマリの答えの後に、はそう言葉を紡いだ。
視線は大きな不思議な塔へと向けられていた。
「北かな 神田は?」
『俺は南だ』
その答えの直前に、かすかに舌打ちが聞こえた。
『長い夜になりそうじゃん こりゃぁ……』
溜め息交じりのデイシャの声が、ノイズに掻き消されながら聞こえてくる。
先ほどから交じって来ていたノイズは、どうやらデイシャのもののようだった。
『アクマ達の機械音(ノイズ)があちこちで聞こえる
奴らの密集区に入ってしまったな』
「だから破壊しても破壊してもワラワラ出てきたわけか…」
『そういう事だ』
の言葉に短くも相槌を打つ神田。
無線ゴーレムの向こうから、少しだけ驚くような息が二つほど聞こえたが気にしない。
『集まろう 十キロ圏内ならゴーレム同士で居場所がたどれる』
『じゃあ、オイラと神田とでマリのおっさんとこ集合って事で』
「うん 一人動かないで居てくれた方がありがたいもんね」
神田の発言に乗ずるようにデイシャが提案を口にした。
その提案に、も大きく頷き同意した。
全員が全員動き回る程、集まりの悪いことはないだろうから。
『時間は?』
『………夜明けまでだ』
マリの問いに、神田が間を空けてから真剣な口調で時間を提示した。
それに異論のあるものはおらず、全員が無言のまま頷いた。
その行動が伝わる程に、全員は緊迫した雰囲気に呑まれていた。
『オッケー』
ガラッ…
デイシャの承諾する声が聞こえた瞬間、瓦礫が崩れる音がした。
『?』
「ん ちょっとアクマに見つかったみたい んじゃ、夜明けまでにマリの所で」
そう言うと、はアクマの破壊へと集中した。
真空を構え、ゾロリと姿を現すアクマに切っ先を向ける。
「さぁ、始めようか」
それが戦い再開の合図だった。
「……」
黒の教団本部。
コムイは驚愕な表情を浮かべ、目の前のものを見つめていた。
「報告します」
その言葉にすら、返事すら出来ずに居た。
「ティエドール部隊、デイシャ・バリー ソロカ部隊、カザーナ・リド、チャーカー・ラボ
クラウド部隊、ティナ・スパーク、グエン・フレール、ソル・ガレン」
ドクン
ドクン
静かに高鳴る鼓動は、信じられないから。
棺に彫られた名前が、信じられないから。
だって、中には本体など何もありはしないのだから。
「以上七名のエクソシストが死亡
探索部隊(ファインダー)を含め、合計百四十八名の死亡を確認しました」
誰も彼もが必死に戦っても、敵う事が出来なければ待っているのは死。
辛い現実。
死亡したエクソシストや探索部隊(ファインダー)は、きっと最後まで命の灯火を燃やしたのだろう。
けれど、次の報告でコムイの心臓は一気に最高潮へと上り詰めるのだった。
「ティエドール部隊のに関しては、遺体は見つからず消息不明です
しかし、所持していた真空が死亡したデイシャ・バリーの元にあったため、アクマの攻撃を受け死亡したものとかと思われます」
To be continued......................
一体ヒロインの身に何があったというのだっ!?!?
という事で次回に続きます。
S.Vに戻る