「で、神田くん」
「なんだ」
「ちゃんのイノセンスの技って?」
「知らねぇのか?」
突如問い掛けられた言葉に神田は眉を潜めた。
コムイの事だからすでに承知済みなのかと思っていたのが原因だ。
「ちゃんと任務を共にした神田くん以外、誰も知らないのよ」
「へー」
「だから教えてもらえないかな ちょっと気になってね、ちゃんの話がさ」
リナリーの答えに相槌を打つ神田。
そんな神田に頼むコムイ。
コムイが気にしていたのは、が話していた『技を使うと苦しくて、何かが無くなる感覚がする』という部分だった。
前例がないのだから、の使うイノセンスに何らかの問題でもあるのかと。
「あいつのイノセンスの技、月の様な変な空間にアクマを吸い込んで破壊するんだ」
「変な空間かい?」
「ああ それに…その空間、嫌な雰囲気が漂ってやがる」
その言葉に、その場に居た全員が口を閉じた。
一向に開こうとしない唇。
それは、何か異様な物を感じた瞬間だった。
S.V 第五話
「イノセンス、発動」
真空の刃を覆っていた白い布が消え失せ、鈍く光る刃が現れた。
けれど、そこで技を使う事を躊躇ってしまう。
「はぁああぁぁぁああ!!」
叫び声と同時に斬り込む真空。
ザックザックと、リーチの長い真空は次々とアクマを減らした。
探索部隊(ファインダー)の結界が捕らえたアクマや、野放しにされ襲い掛かってくるアクマ達を。
神田とアレンって奴はまだなのっ!?
多すぎるっ…!
けれどは確実にアクマの数を減らしていった。
「うわああぁっぁあぁぁああ!!」
聞こえた悲鳴にの意識はそちらへ向く。
ここに居るアクマはレベル1。
結界で何とかなるだろうと判断し、ダッと駈け出した。
「その結界でここのアクマはなんとかして!!」
それだけ告げると、急くは徐々に悲鳴の場所へと向かった。
そこに広がる光景は、砂塵。
居るはずの探索部隊(ファインダー)の姿はなかった。
変わりにそこにあったのは───────
「レベル2のアクマ!?」
そこでハッとした。
早くイノセンスを見つけなくては、と。
資料を読み、状況や背景を把握していた。
すぐに人形を探す事にし、気配を消し物影に隠れその場を離れた。
アクマよりも、人形の居る場所を把握しとかないと…
アクマがあいつだけってわけじゃないんだし…
急がないとっ──────
掛ける足は徐々に早足に。
「居た!」
「エ、エクソシスト!」
見つけた人形とそれを守る探索部隊(ファインダー)達。
開けた扉を閉め、中へ入った。
「良かった これで幾分かは助かります」
「イノセンスを持つ人形は?」
探索部隊(ファインダー)の言葉にコクリと頷き返すと、シワシワの男と若い少女へと視線を向けた。
その言葉に二人同時にビクリと動く。
「私はイノセンスを回収しに来たの どちらがそうなのかも分からず、そんな大きな姿のまま守り切るなんて難しいの
私に渡して、イノセンスを」
しかし、その言葉に答えるのは誰でもなく物音だった。
ギィィィィィと響く、扉の開く音。
「みぃつけた」
「!」
聞こえた言葉と同時にハッとした。
慌てて真空を構え発動すると、アクマに斬りかかった。
油断してた…
くそっ…
そう内心、悔しく思いながらも斬り込む手は止めなかった。
アクマを真っ直ぐ見つめ、動きを見逃さない様にしながら意識は後ろに。
「逃げて!」
今は二人を探索部隊(ファインダー)達を逃がし、ここでアクマの足止めをするくらいしか出来ないのだ。
の声に反応する形で、ようやく駈け出した二人と探索部隊(ファインダー)達。
「さて…あんたの相手は、この私だよ」
カチャ、と構える真空。
刃はアクマに真っ直ぐ向かう。
「ヒャヒャヒャヒャ!無理無理!だって、お前は…ここで死ぬんだから!」
そう言うと同時にどこからともなく現れたのは大量のアクマ。
まだ居たのっ!?
下唇を噛み、アクマの弾丸を次々に掻い潜る。
けれど攻撃を仕掛ける事も出来なかった。
「それじゃ、私はあの人形ちゃん達を追わないと」
「待て!
─────くそっ!」
徐々に小さくなるアクマの姿。
けれど、レベル1のアクマの相手をしているには追う事は出来ず、もどかしい。
「できれば使いたくなかったんだけど…仕方ない」
カチャ、とは真空を構えた。
体勢を低くし、まっすぐ見つめるアクマの大軍。
「月花吸冥!!!」
銃器を向けるアクマ。
けれど地を蹴ったの方が早く、真空でアクマを斬り裂いていた。
三日月の空洞がアクマの身体に生まれ、周りのアクマごと一緒に空洞の中へと吸い込まれた。
ドオォォオオォォォン!!
聞こえた爆発音は空洞の中から。
破壊されたアクマはの前から姿を消した。
月の形が…変化、した?
以前は二日月という、三日月よりも小さな月の形をしていた空洞。
しかし、今回はそれよりも大きな三日月の形をしていたのだ。
「くっ…」
それと同時に感じる苦しさと何かが無くなる変な感覚。
喉から声を漏らし、真空を地面につき重心が掛かる。
「ここで倒れてられない…立ち止まってられない…
早く…人形の元に行かなくちゃ…」
悲鳴を上げる身体に鞭を打つように、は歩き出した。
向う先は激しい音が行き交う地上。
「ちっ トマの無線が通じなかったんで急いでみたが…殺されたか」
いち早く状況を把握した神田に白髪の今回神田と共に任務に来た少年、コムイの言っていたアレンという少年は無言のまま下を見下ろした。
崖の上からでもよくわかる戦闘状況。
「おいお前 始まる前に言っとくが、お前が敵に殺されそうになっても任務遂行の邪魔だと判断したらお前を見殺しにするからな
戦争に犠牲はつきもの 当然だからな 変な仲間意識持つなよ」
「……嫌な言い方」
神田の言葉に一瞬視線を向けたアレン。
しかし、続けられた言葉に眉間にシワを寄せ、嫌そうな表情を浮かべポツリ。
ドン!!
しかし、次の瞬間上がった音に神田もアレンも意識を奪われた。
「さーどんどん撃って────!」
そう言いながら、アクマは探索部隊(ファインダー)の顔に足を乗せた。
ぐりぐりと、力強く。
「この人間め 装置ごと人形を結界に閉じ込めるなんて…よく考えたね
こんな時間のかかる事してくれちゃって…」
「イ、イノセンスだけは…お前らアクマに渡さない……」
探索部隊(ファインダー)の言葉にアクマは表情を曇らせた。
その表情は嫌気で満ちているかのようだった。
「ギャアアア!」
「暇つぶしにお前の頭で遊んでやる」
踏みつぶし、上がる血渋輝を見つめながらアクマを言い切る。
その様子にアレンはハッとし駈け出した。
「!?」
けれど、それと同時に飛び出すもう一つの姿。
神田ではない姿にアレンは戸惑いを覚えた。
キュイイイイン…
左目に感じる感覚にそちらへと少し意識を向けると。
「アクマ!」
距離的にはそちらの方が近かった。
最初に見つけたアクマへと近寄っても、今近づいてきたアクマに攻撃されればひとたまりもない。
なにより、最初に見つけたアクマへと駆け寄っても、助けられる人間などすでに居ないのだから。
カキィィイイイイィィィン!!!
「なっ!?」
「っつぅ!」
アレンの巨大化した腕を受け止めた事に、アレンは声を上げた。
そして聞こえるは眉を顰めるような、予想もしなかった攻撃に驚くような息を呑む声だった。
そして、アレンはまた一つ盛大に驚く事があった。
「…エクソ、シス…ト?」
違うデザイン、けれど同じローズクロスを胸に持つ団服にアレンは途切れ気味の声を上げた。
けれど呪われしアクマの見える左目で見れば、アクマの姿が目に映る。
「なぜ…エクソシストがアクマに…?」
To be continued....................
微妙なところで次回に続く!
アレン登場です!神田、出番がないよぉおおおぉぉぉ。(涙)
頑張りますよ!原作沿いだけど、オリジナル要素いっぱいにしないと神田の出番が…!(汗)
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