ずっとずっと努力したの────…

あなたが任務から帰ってくるまで、ずっとずっと









apprentice









「ジェリーさぁぁあああぁぁぁんっ!」


声を上げ、長い髪を揺らしながら食堂へと駆け込む
リズミカルに地面を踏む姿は、まるで踊っているかのよう。


「あらん じゃない」


「ジェリーさん、またお菓子作り伝授して!」


フライパンを持ち、カウンターから顔を出したジェリーには明るい口調でそう声を掛けた。
もうすぐあの日がやってくる。


「もしかして、アレンくんに?」


「あ、やっぱり分かっちゃいます?」


図星を突くジェリーの言葉にはくすくすと笑みを零した。
教団の誰が見てもはアレンに思いを寄せている。

密かにに思いを寄せていた男性は、少なからずダメージを受けていた。


「しょうがないわねぇ 食堂が閉まったら、またいらっしゃいな」


「はぁ────い」


楽しそうな声を上げ、は踵を返した。
突き刺さるように見つめる男性陣の視線に気付かずに、食堂を後にした。











?」


「あ、リナリー!どうしたの?」


掛けられた声に、はピタリと足を止めた。
同じ団服に身を包んだリナリーを見つけ、首を傾げて駆け寄る。


「バレンタイン、やっぱりアレンくんにあげるの?」


「うん?何で当然な事をリナリーは聞くかな?」


そんな問い掛けが来るとは思っていなかったは、首を傾げた。
その様子に、今度はリナリーが首を傾げる番だった。


「え?だって、はアレンくんが好きなんでしょ?」


「うん、そうだよ?」


「思いを伝えるのに、躊躇ったりとかしないの?自信でもあるの?」


リナリーのその疑問は、誰もが思う事だった。
つまりは、教団に居る誰もがの片思いだと。

だから男性陣は諦めきれずを目で追っていたのだ。


「あははははは!リナリーなんの冗談?」


「え?」


「思いを伝えるもなにも、アレンには私の気持ちはすでに伝わってるよ?」


その言葉にリナリーはキョトンとした表情を浮かべた。
その割にはアレンの態度が依然と全く変わり映えがない。


「…だぁーからぁ
 アレンと私は、すでに両想い!だから思いを伝えるもなにもないの!年間行事の一つだよぉ!」


「え、ええ……ええええええぇぇぇぇ!?そうだったの!?」


の発言は、予想外過ぎるものだった。
まさか二人が既に両想いだなんて誰も考えた事がなかったのだから。


「そうだったの!?って…もしかして、私ずぅーっと片思いし続けてたと思われてた?
 しかも、アレンってば態度変わらないから…凄い惨めな片思いだと?」


「……」


その問いかけに、リナリーは躊躇いながらも静かに縦に首を振った。


「あちゃー…なるほどねぇ それなら、今のリナリーの質問の内容も納得できるわ」


「あああああ、あのっ ごめんね?ずっと誤解してて……」


クスクスと笑うに、慌てて謝るリナリー。
その言葉には肩をすくめ、横に首を振った。


「何で謝るの?だって誤解するのはアレンがいけないでしょ!
 あんな誰が見ても私が片思いっぽいシチュエーション……確かに、もう少しラブラブ感を普段でも出してくれてもいいと思うわ!」


普段は、という部分をやけに強調する
その発言に、リナリーはつい笑ってしまった。


「普段はって、二人きりの時はラブラブなの?」


「そりゃー勿論!
 もー、アレンってば私に甘えちゃって甘えちゃっ─────」


「何嘘を吹き込んでるんですかっ、!」


リナリーの問いかけに楽しげに言葉を紡ぐ
しかし、その言葉を途中で切ったのは任務から帰ってきたアレンだった。


「あちゃー…実はアレンは二人きりになると甘えん坊になるんだ説を、アレンが居ぬ間に広めようとしてたのにぃ 残念っ」


「何が残念ですかっ 嘘はいけませんよ、嘘は!
 本当はの方じゃないですか!公衆の面前でも、二人きりでも甘えん坊なのは!」


「ちょっ!アレン、声大きい!恥ずかしいじゃない!」


の発言が嘘で、そして本当はが甘えん坊だと大きな声で公言するアレン。
その声は廊下を響き渡り、あちこちに居るエクソシストや探索部隊(ファインダー)達に知れ渡った。


「まぁ、そういう僕も甘えてもらえるのは嬉しいですけどね」


「結局二人はラブラブなのね」


とアレンの言葉を聞き、リナリーはそう苦笑した。
甘えん坊なに、それが嬉しく思えるアレン。
普段は淡泊に見えても、実はラブラブだと。


「それじゃ、私はこれで失礼するわ 二人で仲良くね」


そう言い、リナリーは軽く手を振りながらその場を後にした。


「全く…もう、これから僕はいつも通りに済ました態度はしませんからね?
 やっぱり…ちゃんと恋人同士だって公言しないと敵は減らないみたいですし」


そのアレンの発言の意味を、は理解していなかった。









「アレンアレンアレン〜〜〜〜〜〜〜!」


あの後、食堂が閉まった頃にジェリーの元を訪ね、はチョコレートケーキを教えてもらいながら一人で作った。
そして、箱詰めし今に至る。


「どうしたんですか、


「ほら、今日ってバレンタインデーでしょ?
 ジェリーさんに教えてもらって一人でチョコレートケーキ作ったの!」


そう言い、アレンに箱を差し出した
受け取ってくれるだろうか、とドキドキしてしまう。


「ありがとうございます の気持ち、しっかり受け取らせて頂きましたよ」


にっこりと微笑むアレンは、今までとどこか違う雰囲気。
まるで、恋人同士になれたかのような反応の違い。

はポッカリと口を開き、アレンの反応に釘付けになっていた。


「……そんな顔して、どうしたんですか?」


「あ、アレンがいつもと違う気がして」


そんな事ないのにねーと明るく笑いながら、アレンの問いに答えた。
すると「違うと感じて当然ですよ」とアレンの声が聞こえた。



え………っと?



思考がついていかず、はアレンの瞳を真っすぐ見つめた。


「僕も、恋人のが愛しいですからね
 これからは、いつも以上に大切にしますよ」


その発言に、は顔を真っ赤に染め上げた。
本当は、チョコを渡しアレンに真っ赤な顔をして欲しかった

しかし、実際に顔を赤くしたのはだった。


「私はいつでもアレンに大事にしてもらってたと思ってたよ!」


そう言いながら、はアレンに抱き付いた。
その行動にはさすがのアレンも、顔を真っ赤に染め上げていた。









........................end




バレンタインのフリー夢です。
アレンは元から紳士的な部分があったので、傍から見ると分からなさそうだなぁ〜と思ったことがネタ。(ぁ)
でも、やっぱりアレンには大好きな相手には甘くなって欲しいなと思う。うん。

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