目がさめれば、教団の廊下をひたすら漂う甘い匂い
それがあなたを誘ってくれればいいのにな……
good smell to drift from morning
「〜♪〜〜〜♪」
楽しそうな鼻歌が、教団の食堂の奥────厨房の奥の方から聞こえてきた。
その声は、教団に居るもの全てが聞き覚えのある声色だった。
「ちゃ──ん そろそろ休憩しなさぁぁい」
「はーい!」
食堂で働く調理師の一人であるは、エクソシストや探索部隊(ファインダー)達のいわゆるオアシスだった。
ジェリーの言葉に大きく返事を返すと、漂ってきた匂いは徐々に薄れていった。
今日は非番だったはずのが食堂に居ることに、食事を取っていた誰もが首を傾げていた。
「じゃぁ、ジェリーさん フレンチトースト一つお願いします!」
「いいわよぉ」
ヒョッコリと食堂から姿を現したは、カウンターからジェリーに昼食の注文をしていた。
そして、甘い香りを漂わせながらは食堂の一席に腰を落とした。
「いい匂いがすると思ったら、が居たさー」
「ラビ、こんにちは これから食事?」
食堂へ入ってきたラビは、開口一番にに声を掛けてきた。
視線を上げ、ふわりと微笑む。
二人は、教団公認の恋人同士。
「そうさー 一緒してもいいか?」
「そりゃ、勿論」
どうぞ?と微笑むの承諾を得たラビは、椅子を引きの前の席に腰掛けた。
そして、匂いの正体がチョコだとラビは一発で分かった。
「お菓子作りか?今日も この匂いは……チョコさ?」
「さすがラビ、良く分かるね」
「当然さー」
クスクスと笑いながら、ラビの問いかけを肯定した。
ピースとブイサインを送りながら、ラビは得意気な表情を浮かべた。
「もうすぐ出来上がるんだよ タイマー掛けてあるから、あとは時間が経つのを待つだけ」
つまり、固まるのを待つだけの。
その言葉にラビは「そうなんさ?」と首を傾げた。
早く……渡したいんだけどなぁ
ラビの様子を見ていると、そう強く思い始める。
今すぐにでも渡してしまいたいほどに、はラビが愛しかった。
「バレンタインのプレゼントでも作ってるんだろ?
義理チョコ配るんさ?」
「……は?義理チョコは配らないよ?」
ラビの言葉に素っ頓狂な声を上げた。
目が幾度もパチパチと瞬かせてしまい、ラビの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「そうなんさ?」
「うん あげるのは──────」
そう、私が唯一チョコをあげるのは…
「──ラビだけだよ?」
ニッコリと微笑み、テーブルに肘をつけ手の甲に顎を乗せた。
そして、目の前に座る愛しのラビに熱い視線を向ける。
「それは、光栄なことさねー」
「でしょう? あと少しで出来上がるし……部屋で待ってて?
今日は非番でしょう?」
嬉しそうなラビに、もう少しだけどまだ時間がかかる事を告げた。
非番なら、部屋で待っていてもらえばそれでいい。
「ああ、今日はオフさー じゃぁ、部屋で待ってるから来てくれよな」
「うん」
そう挨拶をすると、二人の目の前に料理が運ばれてきた。
「あはは 部屋で待つ話の前に食事だったね」
その事にが笑い声を上げた。
すっかりバレンタインの話に火がついていた二人は、すっかり忘れていたのだ。
それでも、出来上がるのにはまだ時間はかかる。
冷えて固まったチョコの試食。
大丈夫なら、プレゼント用にラッピングだってしなくてはならないのだから。
「うん、よし!後はラビに渡すだけだわ!」
赤とオレンジのウェーブ模様の包装紙に包んだ箱を抱きかかえた。
渡した時の反応が今から楽しみだと、笑みを零さずには居られなかった。
「それじゃ、ジェリーさん!私、行ってくるね!」
元気よくそう告げると、は食堂を駆け出して行った。
恋に恋する乙女の姿。
オアシス的存在のだけど、今日は一段とオアシス的存在に磨きがかかっていた。
コンコンコン
ラビの部屋の前、は静かにドアをノックした。
「ラビ?私だけど…」
「か?入っていいさ〜」
「お邪魔しま──す」
ガチャ
ドアを開くと、ベッドの上で寛ぐラビの姿が目に留まった。
ドアを閉め、ラビの方へとは近づいていった。
「まぁ、適当に座るといいさ」
書類まみれの部屋。
どこに座ればいいのか分からないくらいに、書類は散乱していた。
「……適当に座るって言っても……
相変わらず、コムイさんに引けを取らないほどの散乱状態だね…」
苦笑を浮かべ、唯一ゆうゆうと座れるラビの寛ぐベッドへと腰を掛けた。
そして、隣に座るラビに視線を向けると。
「ハッピーバレンタインデー!これがさっき話してた、プレゼントだよ」
ラッピングされた箱をラビに差し出した。
それをラビは躊躇う事なく受け取ると、嬉しそうに微笑みを抱き締める。
「ありがとう、 俺、嬉しいさー」
「喜んでもらえたなら良かった」
「ついでに、の唇も貰えると嬉しいだけど?」
ラビの発言に、の顔は見る見るうちに真っ赤に染まりあがった。
ラビの部屋に来たことで、そういう風に言われるのは少しは考えていた。
だから。
「……キスだけだよ?」
「よっしゃ!」
燦々とラビの部屋を照らす太陽。
その日の光を浴びながら、二人は唇を重ね合わせた。
二人の間にあるのは、の愛の印。
....................end
バレンタインのフリー夢です。
ラビって、どんな風にも変わりそうだなと…でも、恋人とはラブラブで居て欲しい願望。(ぉ)
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