儚き月見草 第二話









ついにこの時がキマシタ



何が?



コレを使うときが……


何もない空間で急に声がした。
そして最後の言葉を聞いた直後に体…というか喉元に何かが入ったような気がした。


「熱い…これは……?」


イノセンス…


ぇ?と思ったときには視界いっぱいに光が溢れていて目が開けられなかった。
そして光がひいていくと同時に急に体がぐんっと落ちていった。


「きゃあぁあぁあぁあぁあぁーーーーーー!!!!!」


何が起きたんだかわからなかったけど、どうすることもできなくてただ落ちるしかなかった。
が、ぼふっと何かの上に乗った感触がした。


「こ・これは…?!」


「君は何者だね?」


現状理解ができないでいると下から声が聞こえた。
そちらに目を向けたらあのD.Gのコムイとラビとリナリー、そして見知らぬ女の子がいた。
コムイとラビは怪しげというか緊張した様子で、女の子組は驚いた様子でこちらを見ていた。


「さぁ……ただの日本人だけど…」


「コムイ…この者から、イノセンスの波動を感じる…」


その言葉が発せられたと同時に自分が乗っていたところから白い触手が出てきて、体中に纏わりついてきた。



ここ、ヘブラスカの上だったんだ…。



「ぁあ…いやぁーーー、気持ち悪っ…やめてぇーーーーー!!!」


なんなんだ、いきなりイノセンスとか言われて体の中に何かが入ってきて探られている感じがする。
それが漫画で見たときは”気持ち悪そうだなぁ”って思ってた。
でも実際やられるとそれを遙かに超えていた。
気持ち悪いのもあるけど、何をどうとは上手くいえないけど痛い。
せめて一言言うか、現状を理解してからやってほしかった。


「声帯に…イノセンスが寄生している……シンクロ率は81%だった…」


やっと触手のようなものが抜かれ、みんながいた場所に下ろされた。
あたしは立てる状態なんかじゃなく、息を荒くしながら座り込んでしまった。


「声帯にイノセンスって、くんと同じだね」


「…?」


「ぁあ、彼女だよ。君と同じで先日いきなり空から降ってきた声帯にイノセンスを持つエクソシストだよ」


コムイは端っこにいたこのメンツの中で唯一知らない女の子を指した。
が、よくよく見ると顔はなんとなく見覚えのある顔だった。


ってもしかして…」


「君の知り合いかい?」


「わからないけど……あたしはっていうんだけど、聞き覚えない?」


って…ぇ、もしかしてメル友の?!」


「そうそう、あのなんだ…。もこっちのせか    むぐぅっ」


話してる途中でに口を塞がれた。
向こうでの友達もこっちにいるって一体なんなんだと思いながらの腕をばしばし叩いた。


「みんなには異世界から来たってことは言うな」


こそこそ話すにぇ〜、と口を塞がれているから表情で言ったら睨まれたので渋々頷いた。
あたしはカミングアウト派だけど、が嫌だと言うなら合わせておこう。


「あたしたち、友達なんですよ」


「そうか、なら話は早い。彼女含め僕たちは千年伯爵と奴が作っているAKUMAというのと戦っている。
 僕は室長という立場でサポートしているけど、この3人はイノセンスというものに選ばれ直接AKUMAと戦闘していてエクソシストと呼ばれている。
 君もそれに加わってほしいんだ」


そう言ってコムイはあたしに手をすっと差し出してきた。
あたしにも”エクソシストになれ”ということなんだろう。
差し出された手にあたしも手を差し出し、握手を……しないで叩いた。


「冗談じゃない。なんであたしが戦わなきゃいけないの?」


「伯爵は人々の悲しみを利用して兵器を作り続けている。それを食い止めるためにはエクソシストの力が必要なんだ」


コムイは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔に戻り淡々と説明を始める。


「だから?
 伯爵の目的とかを知らないうちはここが正義だなんてわからないし、少なくともいきなり人の体を探って自分達の都合で戦え、仲間になれ。
 なんて言うような連中に”はい、わかりました”なんて言えないよ」


漫画で見ていた頃から思っていた。
本当に伯爵やノアは悪なのか?と…。
確かにやってることがいいことだとは言えないけど、それでも漫画の中でも彼らの意図はほとんどわからなかった。
あたしは逆に今、知っている限りの情報だと教団側のが悪にしか見えなかった。
さっきのこともあるけど、エクソシストの意思を無視して強制し逆らえば脅したりしているし、過去には適合者の血縁を使って実験もしていたし。
あたしはキャラだけを見るなら割と好きだったけど、そういうやり方はどうにも好きになれなかった。


「だがここで逆らったら君は寄生型だ。咎落ちという現象が起き、いずれ死ぬことになる」


「また、そうやって脅すの?
 今までそういうこと言って何人のエクソシストを苦しめた。あたしは戦いたくない!!!」


「…君は何を知っている?」


「さぁ? あんたたちに言う筋合いはないね」



ちょっと口を滑らせ過ぎたか。
でも気にしない。



どうにか逃げる方法はないのか、そもそも声帯に寄生していてどういう能力があるんだ。
そう考えていると頭の中に言葉がふっと出てきた。
その言葉は

”言霊”

喉が熱くなる。
さっきまで全然わからなかったのに、ふっとイノセンスのことがわかった気がした。
不思議な感じだったけど、なかなか便利な能力だ。
これを使わない手はない。


「とにかく、あたしはエクソシストにはならない。そしてここから逃げる」


「…ラビ、リナリー。彼女を取り押さえて」


辛そうだけど、それでも真剣な目でコムイはそう言った。
リナリーは戸惑いつつも、それ以上に戸惑っていたを気遣い、ラビは槌を握っていた。


「そう簡単に捕まってやるもんか。”壁よ崩れ落ちろ!!!”」


あたしがそう叫ぶと言葉通り壁が派手に崩れ落ちた。
ラビが落ちてきた壁(だったもの)を危険じゃない場所に叩き落とした。
あたしはラビの行動を見越して次の言葉を発した。


「”壁であった瓦礫たちよ、あの者達の元へと飛んで行け!!!”」


あたしはラビがみんなを庇い、瓦礫に気を取られているうちに逃げようと力を使って浮遊し、外に出ようとした。
だけど、もう1人その場にやってきて刀を向けられた。
それは神田ユウだった。


「ちっ、”こちらに向かってくるもの全てを跳ね返せ!!!”」


神田の刀はあたしのところにくる前に弾かれ、神田も後ずさった。


「……なんだてめぇは」


「寄生型、らしい」


「らしい?」


「というか、そうだけどエクソシストになんかなる気がないから逃げる気でいた」


「だったら俺を倒してから行け」


「攻撃も当たらないくせに」


そう、あたしが言霊を解除しない限り攻撃は当たらない。
現に神田は何度もこちらへ向かってくるが、当たる気配は一向になかった。


ー!! いい加減にしろー!!」


の声がし、そちらを向くと何か衝撃波のようなものがきた。
イノセンスの力のおかげでモロにくらいはしなかったものの、似たようなイノセンスだからか多少ダメージをくらった。
そして一瞬の隙を狙って神田が突っ込んできて攻撃をされ、それをなんとかかわしたが、そのかわした先にリナリーがいてかかと落としをくらい落下した。
なんとか激突は免れたものの(力を使ったから)、すぐに縛りあげられてしまった。






「兄さん、いくらなんでも可哀想よ……」


能力がバレたため、言葉を発せないよう口にも道具みたいのをつけられ喋れないようにされた。



なんだこの扱いは。
こんなことをして協力すると言うわけがないだろう。



リナリーは必死にコムイに抗議してくれているが、コムイは首を横に振る。


「僕だって本当はこんなことはしたくない。だが、彼女の能力は危険すぎる」


「だからって…!!」


「しばらくは監視付きで部屋に監禁させてもらう」



何それ。
確かに教団半壊させちゃったらしいけど、だからって監禁?
自分たちに都合のいい答えが返ってこなかったからってそれ?
ふざけんじゃない。



そういう思いをこめて、ここにいるやつら全員睨んでやった。
は悲しそうな顔をしてたけど、あたしからしたらいくら友達でもこういうことをする連中の仲間にほいほいなるんだったら信用できない。


「だったら……彼女、私と同室にして」


「リナリー…?」


「私だったら女同士だし、彼女の気持ちもわからなくない……。だから一緒にいさせて?」


他の連中に比べたら彼女の発言はありがたい。
だけど、気持ちがわかるんだったら何故エクソシストにならないという選択をくれないのか。
庇ってくれた彼女には悪いけど、あたしは彼女のそれが偽善にしか思えなかった。
でもそんなあたしの思いをよそにリナリーとコムイの話し合いは進み、あたしはリナリーと同室ということになった。











「ごめんなさい…。本当はみんなもこんなことしたくないんだけど……」


部屋に着き、リナリーは腕を縛っていたものを取ってくれた。
さすがに口のは取ってくれなかったけど(鍵がついてるみたいで取れないというのもあるみたいだけど)、さっきよりはマシだろう。


「今日は疲れたでしょう? もう寝ましょ」


なんだかんだしているうちに夜になっていた。
やることもないので、あたしは頷いて用意されたベッドに横になった。







ここは信用できない。
でも今のままじゃ監禁されっぱなしだろう。
同室なんて建前にすぎないだろうし。
だったら仲間になるフリをして逃げる機会を伺おうか…。
でもいきなり意見を変えたら口のははずされても、監視の目はなくならないかな。

だったら、いっそのこと伯爵側に寝返って助けてもらえないかな?
伯爵なら咎落ちをなんとかする薬を作れそうな気がするし、任務に出て入れば伯爵なりノアなりに会えるだろう。
よし、そうと決まれば少しの可能性にかけて向こうの人達と会うためにエクソシストになろう。

そう考えるとさっきまで落ちていた気持ちが急に浮上し、これからが楽しみになってきた。
早くこんなとこ出て自由になりたい。
そう思いながら眠りについた。









to be continued..................




うちの子は他サイトでは珍しい(?)反抗的なヒロインです☆
変わった子だけど、その分新鮮味があるんじゃないかなぁと思うので、生温かくてもいいので見守ってやって下さいな♪






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