「ラビ!」


いつもの聞きなれた声に、ラビは振り返った。
そこにいたのは、大好きでとても愛しい人だった。


「──── どうしたんさ〜?」


「あのね、今から時間ある?」


の問い掛けにラビは少しだけ悲しい表情を浮かべた。


「ごめん、今は無理さー これから任務で出かけなきゃならないんさ」


「そっか……うん、それなら仕方ないよ」


ラビの答えには文句も言わず、笑顔でそう返した。
エクソシスト同士だからこそ、分かる。
大切な人はいてもかまわない。
けれど、一番大切なのはアクマを破壊するという任務だ。


「────帰ってきたら、すぐに会いに行くさー」


「……うん、待ってる」











鶴首











任務のさなか、何度もラビは思い出していた。
の言葉を、表情を、声を。


「……また、無理させちまったさ」


ポリポリと頬を掻きながら、ラビは巨槌を振るった。
次々とアクマを破壊していっているにも関わらず、一向に減る気配が見えない。


「────……今回は長引くかもしんねーな」


肩をすくめ、現れるレベル一のアクマを見つめた。
グッと柄を握る手に力がこもる。

チャキ……


「────っ!」



しまった……!?



突如後ろから聞こえた音に、慌てて振り向くラビ。
そこに居たのは、レベル一のアクマが数対。
目の前に居たアクマに気をとられ過ぎていたのだ。

ズダダダダダダダ……

響く銃声。
響く爆音。
煙る土ぼこり。


「────……


そんな最中、かすかに声だけが響いていた。











ガシャンッ


「!?」


「どうしたんだ?」


ゾワリと背筋を走る悪寒に、は持っていた食器を落とした。
すぐそばで食事を取っていた神田に、問いかけられた。


「え、あ……うう、ん なんでも……ない うん、たぶん私の気のせいだと思う」


落とした食器を拾いながら、懸命に笑顔を浮かべる。



こんな日にこんな感覚……
お願い、無事に帰ってきて……ラビッ



拾った食器をカウンターに返しに行く
お盆を持つ手がかすかに震えた。


「…………」



せっかく、ラビの誕生日を祝おうと準備したんだから……
お願いだから、祝わせて



カシャンとお盆をカウンターに置き、きびすを返す。
向かうのは自室。
どんなに不安でも、今は独りになりたくては食堂を出るのと同時に駆け出していた。


「はぁ……はぁっ……っ……はぁはぁっ」


バタン

荒い息を整えながら、自室のドアを勢いよく閉めた。
そして、そのままフラフラとベッドの方へと向かう。

どさっ


「……ラビ」


布団に顔をうずめ、愛しい人の名前を口にする。


「ラビ ラビ ラビ」


呼んでも呼んでも、いつも来る返事はない。
どうして今日に限って任務がラビ一人だったのかと、コムイを怒鳴りたい気持ちではいっぱいだった。
それでも、エクソシストの数はたかがしれている。
アクマが頻繁に出現するようになってからは、どうしても一人で任務につく回数が増えてしまうのだ。


「ラビィ〜……早く帰ってきてよぉ」


早くラビの顔を見て、の胸に巣くった不安を取り除きたかった。
そして、はそのまま深い眠りに落ちていった。










「ん……」


ゆっくり目を開くと、薄暗い部屋。
あのまま眠ってしまったことに気づき顔を上げる。
月が昇り、教団内は静まり返っていた。


「……帰って……きてたら、来てくれたはずだよね」


来てないということは、まだ帰ってきていないということ。
その事実に、今日感じた悪寒を思い出してしまう。

ぞわり


「……ラビ」


ない返事。
はベッドの上に座り、窓の外を見つめた。
闇夜に浮かぶ月が、嫌に輝いて見える。


「……ラビ」


「どうしたんさ?」


二度目の呼び名。
次の瞬間、声とともにラビのぬくもりがを包み込んだ。
耳元で聞こえる声に、ゾクリと感じる自分が居ることには内心笑っていた。


「ラビ!!」


、ただいま」


「いつ……帰ってきてたのよ!!」


振り返り、再度からラビに抱きついた。
腕に感じる愛しい人のぬくもり、感触。
すべてが何十年も触っていないような気がして。


「ついさっき ちょっとしくじって怪我をしたから、医療班のところで治療受けてきたんさ」


「心配……心配してたんだから!!」


早く帰ってきたラビ。
治療受けてすぐに出てこれたという事実に、任務内容は楽だったのだと分かりホッと胸を撫で下ろした。


「んぅ……」


そんなを見て、ラビはいきなり唇を重ねた。
幾度も離れては重ねてを繰り返し、二人の息は上がりっぱなし。
頬を紅潮し、肩で息をし、瞳は濡れる。


「……はっ」


「よかった?」


「〜〜〜〜っ」


息を整えるの様子に、くすっと笑いながらラビが意地悪気に問いかけた。
その問い掛けに、息を呑み顔を染め上げる


「よかったんだ」


そういいながら、ラビはゆっくりとをベッドの上に押し倒した。


「ラ、ラビ?」


「こんな見てたら、抑えられないさ」


そういい、また唇を重ねる。
今度は舌を入れ、絡ませ、脳にまで響く濃厚なキス。
意識はまどろみ、視界は揺れ、胸が締め付けられるくらいに愛しくなる。


「……オレ、が欲しいさ」


それが合図だったのかもしれない。

肌を合わせ、吐息が混じり、甘い香りが部屋を満たす。
軋むベッドの音に載せて揺れる髪、飛び散る汗、しなる身体。
の掴んだシーツは形を変え、シワを増やす。
ラビの手が肌をすべるたびに、甲高い声が部屋を満たす。


「愛してる」


「私も……愛して、るっ」


荒い息に混じって、ささやきあう愛の言葉。
すべては愛ゆえの行為。











「……ラビの馬鹿っ」


ベッドに横たわり、ラビに抱きしめられながらは頬を膨らませた。


「な、何でだよ〜」


「せっかく、今日はというか……昨日はラビの誕生日だったからお祝いしようとしてたのに……」


「あ」


帰ってきてすぐに祝っていれば間に合ったかもしれない。
けれど、あの事情を開始してしまっては確実に日付は変わってしまう。


「でも、いいさ 別に祝ってくんなくても」


「え?」


「オレには、さっきまでのが誕生日プレゼントみたいなもんさ」


「〜〜〜〜〜〜っ!」


耳元でささやかれた言葉に、顔が真っ赤に染まる。
あの濃厚な時間が、霞むことなく思い出される。

恥ずかしそうにラビの胸に顔をうずめ、その赤らめた表情を隠す
そんな仕草がラビを奮い立たせるとは思ってもいなかった。


「……あ」


「あ?」


突如呟かれたラビの声に、は顔を上げた。
目に留まったのは苦笑に似た微笑を浮かべるラビ。


「……ごめん また抱きたくなった」


「は!?」


キスを一つの唇に落とし、ラビはそう囁きながら覆いかぶさる。


「料理は、ちゃんと食べるさ」


だから今は、とラビの唇が肌をすべる。
そんなラビには苦笑を零し、その両手でラビを抱きしめた。


「……うん」


そしてまた、濃厚な時間へと落ちていった。











...............end




十八禁にするには抵抗があり、こんな形に。
直前と直後くらいなら……そういう規制には引っかからないよね?
こういうのなら少女漫画にもあるし……(ぁ)

ということで、八月十日はラビの誕生日だったのでフリー夢を書きました!!o(^^o)(o^^o)(o^^)o

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