「もう知らない!」



そんな風に言われるとは思っていなかった…
いつもそばに居るのが当たり前だった…

だから…











お前に包み込まれるように










いつも一人だった
無意識に眼で追っていたから分かった事実



「ねぇ どうして、他人との間に壁を一枚隔ててるの?」


ふいに、そう問いかけた。
気になった事実。
聞かずにはいられなかった。


「お前には関係ないだろ」


「関係ないけど…気になるんだもん」


想像通り突き放される答えに、ぷぅっと頬を膨らませた。
見つめる先には長い黒髪の青年、神田がムスッと佇んでいた。


「私の名前、覚えてる?」


「は?」


唐突な問いかけに、さすがの神田も素っ頓狂な声を上げた。
早く自室に戻りたいと、急く雰囲気が流れる中の出来事だった。


「…覚えてないの?」


「…なんでそんな事を聞く」


「お前お前って、全然名前を口にした所を聞いた事も見た事もないから」


神田の言葉に、サクリと答えた。
相手を呼ぶ神田の口癖が『お前』だった。
それが続けば名前を覚えていないのではないかと、疑ってしまうのも当然のことだろう。


「……


ポツリと呟かれた名前に、ピクリと肩が揺れた。
向ける瞳には、嬉しさの色がにじみ出る。


「覚えてたの?」


「用はそれだけか?」


問いに問いで返ってきた。
だからはプゥっとまた頬を膨らませる。


「何よぅ それだけの用で声を掛けちゃ悪いっての?」


そのの言葉に、神田は噴き出す様に笑いだした。
珍しいその様子に、は瞳を見開いた。



神田の…笑い顔…
なんか…珍しい…

てか…

…………きれぇ…



笑われたことよりも、笑う神田に気を取られた
ポカンとしたまま神田を見つめていると、いつの間にかいつもの無愛想な表情に戻っていた。


「ほんと、調子狂うな…」


「どーいう意味よ!」


「そのままの意味としか言いようがないだろ」


神田にしてはいつにもましてよく喋る。
けれど、以外の者からすればと喋る普段の神田でさえよく喋るのだ。

それだけ、神田はに心を許しているという事だろう。


「お前はそのままで居ろって事だ」


「は?
 てか、またお前って言ったぁああぁぁ!!!」


神田の言葉に瞳をパチパチと瞬かせる。
けれど、すぐに『お前』という言葉に気づき、突っ込みを入れた。



雰囲気台無し…



そう神田が内心思ってるとも知らずに。


「別にいいだろ、呼び方なんて何だって」


「え?」


その言葉と同時に近づいてきた神田の顔。
一瞬反応が遅れたの耳に、神田の吐息が掛る。


「お前はいつも俺を包み込んでくれる 寂しさも辛さも孤独も悲しさも、すべてお前の温かさが」


ドクン、と脈打つの鼓動。
耳が熱く感じるのは、息がかかる所為か、高鳴る鼓動の所為か。

それとも、胸に生まれた不思議な感覚の所為か。


「包み込む相手がお前 それで十分だろ」


「で…でも…」


俺には""というお前が居れば十分だ


フッと不適な笑みを浮かべ耳元で囁かれれば、顔に募る暑さは増した。
高鳴る鼓動は言葉を紡がせてはくれず、楽しげな笑みを浮かべ立ち去る神田の背中を見つめる事しか出来なかった。



そう お前はいつも俺を包み込んでくれる
世の中に、同じ名前が沢山いようとも…俺にはという目の前のお前が居れば十分なんだ

という名前じゃなくて…というお前という存在が……









........................end




何となく一線置きそうな神田に平気で踏み込むヒロインで。(笑)
だからこそ、神田はいつも救われてたんだーみたいな…?(聞くな)

てか、神田…こんなクサイ(?)台詞言わないと思うんだよね…;
きっとヒロインをからかって遊んでたって事で!でも、本心って事で!!!w






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