破魂刀。
それは、かつて一人の男が一人の女の道を切り開く為に振るった剣。
誓った忠誠。
願った未来。
その先に待っていたものは──女にとっては、とても悲しいものだった。
雲の通ひ路 第七話
「朔、何か記述あった?」
この世界の文字は、予想通り読めなかった。
文字自体は元の世界でも使っている漢字だったのだけれど、漢文とでも言うのだろうか。
文法がよく分からず、読むのに時間が掛かりそうだった。
「そうね……それらしいものなら、たぶんここじゃないかしら」
首を傾げながら、朔はあるページを見つめていた。
「……ごめん、読めない」
覗き込むようにが活字に視線を落とした。
けれど、ずらっと並ぶ漢字に目が回るような感覚を覚えた。
「仕方ないわ あなたは、こういう文字にあまり慣れ親しんでいないのだもの」
苦笑を浮かべる朔が、凄く優しかった。
その言葉には嬉しそうに微笑んで、小さく「ありがとう」と呟いた。
そういう心遣いが、の心を軽くしてくれる。
「それで、朔 なんて書いてあったの?」
「そうだったわね ええと……」
先を促す望美に、朔は慌てて活字に視線を落とした。
すらすらと読み進めていくあたり、本当にこの世界の人なんだなとと望美は再確認せざるをえなかった。
「かつて、破魂刀を使用した人のことが書かれているわ」
「どんな人だったの?」
「男の人だったみたいね 一国の姫のための道を切り開くのに、彼は破魂刀を振るったようよ」
望美の問い掛けに、朔は文字を読み進めながら答えた。
その言葉はまさしく、今のご時世にも居る武士のような人をイメージさせた。
「とてつもない力を秘めていて、その刀は恐れられていたようだわ……あら?」
「どうかした?」
一箇所を見つめ首を傾げる朔に、が首をかしげた。
何か問題でもあったのだろうかと疑問の声を上げる。
「一度、破魂刀を使うことを止められていたようね」
「止められていた?」
「ええ 理由までは書かれていないけれど……破魂刀を使うことを禁じられていたそうだわ」
それはつまり、あの技のことだろう。
朔の話を聞いていて、はすぐにそうだと思った。
けれど、"なぜ"という疑問が残ってしまう。
「それで、その人はどうなったの?一国の姫の道を切り開いて、国を作り上げたの?」
望美の問い掛けに、朔は答えようとしなかった。
無言のまま文字を見つめ、口を開いては閉じてを繰り返していた。
「朔?」
「何か……よくない記述でもあった?」
心配そうに見つめる望美。
そして、そんな望美とは真逆に真剣な面持ちで朔を見つめる。
「え、ええ そうね……この男の人は、姫が演説を行っている際に現れた賊を倒して……亡くなられたわ」
「え!?それじゃあ、姫の為に頑張ったのに国の行く末を見られなかったの!?」
望美の驚く声に朔は静かに頷くだけだった。
本当のことは分からないし、詳しい事も分からない。
謎の多い記述だったが、一つだけ疑問を達に残していった。
「なんで……その姫は、破魂刀を使うことを禁じたんだろうね」
呟くの疑問に、朔も望美も答える言葉を持ち合わせていなかった。
理由なんて分からない。
「凄い力を秘めていたって書いてあったんだし……そういう関連じゃない?
意外に味方にも恐れられちゃったとか」
「そういう理由ならいいよね ま、分からないものは分からないんだし、気にしたって仕方ないしね!」
望美の考えに苦笑しながらも、そうだといいななんて相槌を打った。
けれど、やっぱりそれは憶測にしか過ぎない。
記述がない限りは、今の使用者であるが経験しない限りは出えない答え。
前向きな考えを見せるは、肩をすくめて苦笑していた。
「朔、ありがとね!」
「いいえ あまり役に立てなかったけれど」
「どこが!!凄いありがたかったよ」
本を閉じる朔に、は首を左右に激しく振りながら役に立っていない事はないと強く言った。
実際、朔がいなければ分からなかったことばかりだ。
「それなら良かったわ」
「さてと……それじゃ、私はそろそろ行くね」
「用事でもあったの?」
立ち上がる望美には首を傾げた。
「用っていうか、九郎さんと手合わせの約束をしてたんだ」
「望美も頑張ってるんだね」
「それはだって同じでしょ?」
望美もも、それぞれに出来る範囲で頑張っている。
望美は、今以上の高みへと上り詰めるために。
は、助けになるのなら力になりたいから。
「それぞれ、なしたい事があるのね」
朔の言葉に、微笑んだ。
理由は違えど向かう先は一緒。
頑張る方法も、進み方も、各々で違う。
「だから、頑張れるんだよね」
「うん」
の言葉に望美は力強く頷いた。
上り詰めたいから、力になりたいから、だから頑張れる。
その思いが力に、強さになる。
「それじゃあ、望美 頑張ってらっしゃい」
「うん!行ってくるね!」
軽く手を振り、望美は勢い良く部屋を出て行った。
パタパタパタと縁側を駆ける足音が、どんどん遠ざかっていく。
「それじゃ、私もお暇させてもらうわね」
「朔も用事?」
「ええ 夕餉(ゆうげ)の材料の調達に行かなくてはいけなくてね」
「そっか 足が治るまでは一緒に行けないや……ごめんね」
向こうの世界では、多少なりとも母親の夕飯作りを手伝ったりはしていた。
けれど、こちらの世界では台所の勝手も違い下手に手を出せないため、材料の調達などはも行かせて貰ったりしていた。
それすらも出来ず、申し訳なさが胸を埋めた。
「いいのよ、気にしないで」
「うん、ありがとう 気をつけてね」
の言葉に朔はやんわりと微笑み、ゆっくりと立ち上がった。
最後に「足、無理させないようにね」と気遣いの言葉を貰い、は朔が去っていく足音を聞いていた。
「あーあ……どうしようかなぁ」
その場にゴロリと横になった。
天井を見上げ、大の字に広げた片腕を真っ直ぐ天井に向けて伸ばした。
「何も出来ないって、かなり暇というかつまらないんだけど……」
大きく溜め息を吐き、伸ばした手を勢い良く床の上に下ろした。
何もすることもなく、ゴロゴロしていると徐々に襲ってくる眠気。
「……ふあぁぁぁ」
大きなアクビを噛み締め、生理的な涙が溢れた。
そして、意識は徐々に暗闇の中へと沈んでいった。
「……ん?」
丁度、の眠る部屋の前を通りすがったヒノエ。
立ち止まり、扉が開け放たれている部屋を見つめ──ヒュゥと口笛を吹いた。
「随分とぐっすり眠っているようだね」
くす、と笑いながらヒノエは部屋の中へと足を踏み入れた。
の洋服の上から着ている着物が緩み、中に着ているシャツがあらわになっていたから。
「ぅ……んん……」
ごろんと寝返りを打つと、しゃがみ込んだヒノエの方へと向いた。
長い髪が床に乱れ、スヤスヤと寝息を立てれば胸が上下に動く。
「女性の部屋で何をしているんですか?ヒノエ」
「ああ、が眠っているみたいだったからね そういうあんたは何をしに?」
視線を後ろへと向けると、の部屋の前に佇む弁慶の姿があった。
その姿を確認すると、ヒノエは肩をすくめ答え──逆に問いかけた。
「丁度通りかかっただけですよ」
別段、何か理由があったわけじゃないと弁慶は答えた。
そんな話をしている間も、のくぐもった声が零れ。
「う……ん?あ、れ……?弁慶さんに、ヒノエくん?」
目を覚ましたは、軽く目を擦りながら身体を起こした。
視界に入り込んだ茶と赤の毛に視線が留まり、姿を確認すると首をかしげた。
なぜ、二人が望美との相部屋のこの部屋にいるのだろうかと幾度も瞳を瞬かせた。
「おはよう、」
「おはようございます、さん」
「おは、よう……の時間帯ではないと思うけど、おはよう」
二人の言葉にとりあえずそんな突っ込みを入れてから、笑顔で同じ挨拶を返した。
それから肌蹴た着物を簡単に着て、紐で結ぶ。
もともと着崩れさせた着方だから、あまり代わり映えはしないのだが。
「寝不足かい?」
「ううん、そうじゃないよ ただ、する事なくて暇で……ボーっとしてたら寝ちゃってただけ」
問いかけるヒノエに軽く首を左右に振った。
この世界は向こうの世界とは違い夜はすぐに暗くなり、規則正しく早く眠りにつけてしまう。
遅くなればする事もなく、どちらかというと朝早く起きがちになるから。
「無理をしなければ、出歩いても大丈夫ですよ?さん」
「うん、それは分かってるんだけど……この足じゃどうせ遠出も出来ないし、大人しくしてた方が治りは早いかなって思って」
無理して出歩いてもいいことはないかもしれない。
途中で痛くなるかもしれないし、出歩いても目ぼしいものは何もないかもしれない。
ならば、とは苦笑を浮かべ出歩かない理由を口にした。
「まぁ、そうですね 薬師としては、大人しくしていてもらった方がありがたくはありますね」
薬師として、どちらかといえば出歩くよりも大人しくしていてもらった方が嬉しいものだ。
早く完治してしまえばいいのだから、長引かせるよりも。
「なら、どこか出掛けたくなったらオレに声を掛けなよ」
「ヒノエくん?」
「オレでよければ、いつでもを連れ出してやるからさ」
ウインクを一つ送りながら、ヒノエは明るく言い切った。
それはにとって、とても嬉しい申し出だった。
誰かと一緒ならば、何かと安心ではあるから。
「ヒノエでは不安なら、僕でも構いませんよ」
「ええ!?弁慶さんまで……」
ヒノエに便乗して名乗りを上げる弁慶に、は目を丸くした。
けれど、そうして気遣ってくれる事は、心配してくれる事は、この上ないほどに嬉しい。
「……ありがとう、弁慶さん、ヒノエくん」
ふわりと微笑んで、お礼の言葉だけを送った。
もし、頼むとしたらどちらに頼むかなんて、まだには分からない。
それでも、嬉しさだけは伝えたかったから。
to be continued......................
それは、かつて一人の男が一人の女の道を切り開く為に振るった剣。
誓った忠誠。
願った未来。
その先に待っていたものは──女にとっては、とても悲しいものだった。
雲の通ひ路 第七話
「朔、何か記述あった?」
この世界の文字は、予想通り読めなかった。
文字自体は元の世界でも使っている漢字だったのだけれど、漢文とでも言うのだろうか。
文法がよく分からず、読むのに時間が掛かりそうだった。
「そうね……それらしいものなら、たぶんここじゃないかしら」
首を傾げながら、朔はあるページを見つめていた。
「……ごめん、読めない」
覗き込むようにが活字に視線を落とした。
けれど、ずらっと並ぶ漢字に目が回るような感覚を覚えた。
「仕方ないわ あなたは、こういう文字にあまり慣れ親しんでいないのだもの」
苦笑を浮かべる朔が、凄く優しかった。
その言葉には嬉しそうに微笑んで、小さく「ありがとう」と呟いた。
そういう心遣いが、の心を軽くしてくれる。
「それで、朔 なんて書いてあったの?」
「そうだったわね ええと……」
先を促す望美に、朔は慌てて活字に視線を落とした。
すらすらと読み進めていくあたり、本当にこの世界の人なんだなとと望美は再確認せざるをえなかった。
「かつて、破魂刀を使用した人のことが書かれているわ」
「どんな人だったの?」
「男の人だったみたいね 一国の姫のための道を切り開くのに、彼は破魂刀を振るったようよ」
望美の問い掛けに、朔は文字を読み進めながら答えた。
その言葉はまさしく、今のご時世にも居る武士のような人をイメージさせた。
「とてつもない力を秘めていて、その刀は恐れられていたようだわ……あら?」
「どうかした?」
一箇所を見つめ首を傾げる朔に、が首をかしげた。
何か問題でもあったのだろうかと疑問の声を上げる。
「一度、破魂刀を使うことを止められていたようね」
「止められていた?」
「ええ 理由までは書かれていないけれど……破魂刀を使うことを禁じられていたそうだわ」
それはつまり、あの技のことだろう。
朔の話を聞いていて、はすぐにそうだと思った。
けれど、"なぜ"という疑問が残ってしまう。
「それで、その人はどうなったの?一国の姫の道を切り開いて、国を作り上げたの?」
望美の問い掛けに、朔は答えようとしなかった。
無言のまま文字を見つめ、口を開いては閉じてを繰り返していた。
「朔?」
「何か……よくない記述でもあった?」
心配そうに見つめる望美。
そして、そんな望美とは真逆に真剣な面持ちで朔を見つめる。
「え、ええ そうね……この男の人は、姫が演説を行っている際に現れた賊を倒して……亡くなられたわ」
「え!?それじゃあ、姫の為に頑張ったのに国の行く末を見られなかったの!?」
望美の驚く声に朔は静かに頷くだけだった。
本当のことは分からないし、詳しい事も分からない。
謎の多い記述だったが、一つだけ疑問を達に残していった。
「なんで……その姫は、破魂刀を使うことを禁じたんだろうね」
呟くの疑問に、朔も望美も答える言葉を持ち合わせていなかった。
理由なんて分からない。
「凄い力を秘めていたって書いてあったんだし……そういう関連じゃない?
意外に味方にも恐れられちゃったとか」
「そういう理由ならいいよね ま、分からないものは分からないんだし、気にしたって仕方ないしね!」
望美の考えに苦笑しながらも、そうだといいななんて相槌を打った。
けれど、やっぱりそれは憶測にしか過ぎない。
記述がない限りは、今の使用者であるが経験しない限りは出えない答え。
前向きな考えを見せるは、肩をすくめて苦笑していた。
「朔、ありがとね!」
「いいえ あまり役に立てなかったけれど」
「どこが!!凄いありがたかったよ」
本を閉じる朔に、は首を左右に激しく振りながら役に立っていない事はないと強く言った。
実際、朔がいなければ分からなかったことばかりだ。
「それなら良かったわ」
「さてと……それじゃ、私はそろそろ行くね」
「用事でもあったの?」
立ち上がる望美には首を傾げた。
「用っていうか、九郎さんと手合わせの約束をしてたんだ」
「望美も頑張ってるんだね」
「それはだって同じでしょ?」
望美もも、それぞれに出来る範囲で頑張っている。
望美は、今以上の高みへと上り詰めるために。
は、助けになるのなら力になりたいから。
「それぞれ、なしたい事があるのね」
朔の言葉に、微笑んだ。
理由は違えど向かう先は一緒。
頑張る方法も、進み方も、各々で違う。
「だから、頑張れるんだよね」
「うん」
の言葉に望美は力強く頷いた。
上り詰めたいから、力になりたいから、だから頑張れる。
その思いが力に、強さになる。
「それじゃあ、望美 頑張ってらっしゃい」
「うん!行ってくるね!」
軽く手を振り、望美は勢い良く部屋を出て行った。
パタパタパタと縁側を駆ける足音が、どんどん遠ざかっていく。
「それじゃ、私もお暇させてもらうわね」
「朔も用事?」
「ええ 夕餉(ゆうげ)の材料の調達に行かなくてはいけなくてね」
「そっか 足が治るまでは一緒に行けないや……ごめんね」
向こうの世界では、多少なりとも母親の夕飯作りを手伝ったりはしていた。
けれど、こちらの世界では台所の勝手も違い下手に手を出せないため、材料の調達などはも行かせて貰ったりしていた。
それすらも出来ず、申し訳なさが胸を埋めた。
「いいのよ、気にしないで」
「うん、ありがとう 気をつけてね」
の言葉に朔はやんわりと微笑み、ゆっくりと立ち上がった。
最後に「足、無理させないようにね」と気遣いの言葉を貰い、は朔が去っていく足音を聞いていた。
「あーあ……どうしようかなぁ」
その場にゴロリと横になった。
天井を見上げ、大の字に広げた片腕を真っ直ぐ天井に向けて伸ばした。
「何も出来ないって、かなり暇というかつまらないんだけど……」
大きく溜め息を吐き、伸ばした手を勢い良く床の上に下ろした。
何もすることもなく、ゴロゴロしていると徐々に襲ってくる眠気。
「……ふあぁぁぁ」
大きなアクビを噛み締め、生理的な涙が溢れた。
そして、意識は徐々に暗闇の中へと沈んでいった。
「……ん?」
丁度、の眠る部屋の前を通りすがったヒノエ。
立ち止まり、扉が開け放たれている部屋を見つめ──ヒュゥと口笛を吹いた。
「随分とぐっすり眠っているようだね」
くす、と笑いながらヒノエは部屋の中へと足を踏み入れた。
の洋服の上から着ている着物が緩み、中に着ているシャツがあらわになっていたから。
「ぅ……んん……」
ごろんと寝返りを打つと、しゃがみ込んだヒノエの方へと向いた。
長い髪が床に乱れ、スヤスヤと寝息を立てれば胸が上下に動く。
「女性の部屋で何をしているんですか?ヒノエ」
「ああ、が眠っているみたいだったからね そういうあんたは何をしに?」
視線を後ろへと向けると、の部屋の前に佇む弁慶の姿があった。
その姿を確認すると、ヒノエは肩をすくめ答え──逆に問いかけた。
「丁度通りかかっただけですよ」
別段、何か理由があったわけじゃないと弁慶は答えた。
そんな話をしている間も、のくぐもった声が零れ。
「う……ん?あ、れ……?弁慶さんに、ヒノエくん?」
目を覚ましたは、軽く目を擦りながら身体を起こした。
視界に入り込んだ茶と赤の毛に視線が留まり、姿を確認すると首をかしげた。
なぜ、二人が望美との相部屋のこの部屋にいるのだろうかと幾度も瞳を瞬かせた。
「おはよう、」
「おはようございます、さん」
「おは、よう……の時間帯ではないと思うけど、おはよう」
二人の言葉にとりあえずそんな突っ込みを入れてから、笑顔で同じ挨拶を返した。
それから肌蹴た着物を簡単に着て、紐で結ぶ。
もともと着崩れさせた着方だから、あまり代わり映えはしないのだが。
「寝不足かい?」
「ううん、そうじゃないよ ただ、する事なくて暇で……ボーっとしてたら寝ちゃってただけ」
問いかけるヒノエに軽く首を左右に振った。
この世界は向こうの世界とは違い夜はすぐに暗くなり、規則正しく早く眠りにつけてしまう。
遅くなればする事もなく、どちらかというと朝早く起きがちになるから。
「無理をしなければ、出歩いても大丈夫ですよ?さん」
「うん、それは分かってるんだけど……この足じゃどうせ遠出も出来ないし、大人しくしてた方が治りは早いかなって思って」
無理して出歩いてもいいことはないかもしれない。
途中で痛くなるかもしれないし、出歩いても目ぼしいものは何もないかもしれない。
ならば、とは苦笑を浮かべ出歩かない理由を口にした。
「まぁ、そうですね 薬師としては、大人しくしていてもらった方がありがたくはありますね」
薬師として、どちらかといえば出歩くよりも大人しくしていてもらった方が嬉しいものだ。
早く完治してしまえばいいのだから、長引かせるよりも。
「なら、どこか出掛けたくなったらオレに声を掛けなよ」
「ヒノエくん?」
「オレでよければ、いつでもを連れ出してやるからさ」
ウインクを一つ送りながら、ヒノエは明るく言い切った。
それはにとって、とても嬉しい申し出だった。
誰かと一緒ならば、何かと安心ではあるから。
「ヒノエでは不安なら、僕でも構いませんよ」
「ええ!?弁慶さんまで……」
ヒノエに便乗して名乗りを上げる弁慶に、は目を丸くした。
けれど、そうして気遣ってくれる事は、心配してくれる事は、この上ないほどに嬉しい。
「……ありがとう、弁慶さん、ヒノエくん」
ふわりと微笑んで、お礼の言葉だけを送った。
もし、頼むとしたらどちらに頼むかなんて、まだには分からない。
それでも、嬉しさだけは伝えたかったから。
to be continued......................
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弁慶とヒノエのフラグが立った気がするw 何だろ、ヒノエに思われる感じになるのかな…… |
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