「環様、環様は……なぜそんなにもお美しいの……?」
「一秒でも長く、君の瞳に留まりたいからだよ……」
「なぜそんなにも、艶のあるお声なの……?」
「僕の想いが、君の心にまで届くように────……」
「環様……なぜ、そんな濡れた瞳で私を……?」
頬は火照り、うっとりとした眼差しの女生徒達。
そんな客を相手に、環は前髪をかき上げた。
「瑞々しい君の笑顔が、僕の心の泉を溢れさせるからさ」
潤んだ瞳。
艶のある声。
ナルシーだからこそ分かる、自分が美しく移る角度。
そして決め台詞。
女生徒達は、環の言葉でノックアウトだった。
「キャ────────!!」
黄色い声が、高らかに上がった。
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第十話
「やっぱり二人はおそろいの着物なのねv」
「今日のは全員、うちの母がデザインしたやつだよ」
「着付けたのは祖母だけどねー」
同じく他の席では、常陸院兄弟が仲良さ気に営業をしていた。
「良かったらオーダー承ります」という、本当の営業も忘れずに。
「ああ、もちろん脱がせるのは俺の役目だよな?馨……?」
「ひ、光……!!恥ずかしいよ、みんなの前で……っ」
馨の方に手を置き、耳元で甘く囁く光。
そんな光の声に涙目になり、頬を染め上げ恥らう馨。
その様子を見て、またもここの席でも黄色い声が上がった。
「どこの席もすっげぇな」
「本当ですわね ですが、やはり皆様素敵ですわ」
部員の接客の様子を、も席に座り眺めていた。
肩を竦め呟く言葉に、の席に居る<女生徒達は頷き同意していた。
「────……何?まさか、俺にもあんな芸当しろとか言うんじゃねーよな?」
足を組み、じろりと女生徒達へと視線を向ける。
あんな甘い言葉とかは御免だ、と向けるの視線が語っていた。
「くん……そんな怖い目で見ないでください……」
「は?別に普通に見てるだけだけど?怖いと思うのは、罪悪感があるからなんじゃねーの?」
相変わらずの辛口、毒舌。
見る見るうちに女生徒達の表情が暗くなっていく。
「ま、俺はただ単に人前でするのが嫌だって言ってるだけだぜ?」
「え?」
このまま泣かせてしまえば、鏡夜に後で何を言われるか分かったものではない。
本当は、甘い囁きとかをする趣味はないのだけれどは"ホスト部員としての役目"を全うするために言葉をつむぎ始めた。
「あんたと二人きりのときなら、話は別────って事だ」
分からないと言った表情の女生徒の耳に口を近づけ、は囁いた。
こうしておけば、鏡夜に何か言われることもないだろう。
そんなことを考えた直後、目の前で黄色い歓声が上がった。
「ん?悪い、ちょっと席外すぜ」
「え?くん?」
光と馨がハルヒに絡んでいるのを見て、は席を立った。
そして、ギャイギャイと楽しそうな三人の下へと向かうと、他の部員も集まり始めていたことに気付いた。
「へえ ハルヒって和菓子好きだったんだ?」
下駄を鳴らし、着物の袖に腕を差し込みはハルヒに近づきながら問いかけた。
「母の仏前に供えたらいいかなって……」
「……ふぅーん いい母親だったんだな」
愛しそうに瞳を細め、和菓子を見つめるハルヒ。
そんな様子を見れば、きっと仲が良かっただろうと予想はたやすくつく。
「家族はやっぱり、そういうものじゃないとな」
肩をすくめた。
お金持ちともなれば、親子でも距離は出てくるけれどそれでも最悪なほど仲は悪くないはず。
例外もあるけれど、一般的に見れば────だ。
「あれ?」
「ん?どうかしたのか?」
何かに気付いた馨に、は首を傾げた。
「いや、入り口にさ……
お客さん新顔だね どしたの?入っといでよ」
疑問そうなに簡単に説明し、即座に馨は入り口に居る女生徒に声を掛けた。
その言葉に呼応するように、光邦も可愛らしく「ねーv」と呟いていた。
「こおらっ!初めてのお客様には、もっとソフトに!!」
腰に手を当て、なっていないと勧誘する馨に指導。
そして、ゆっくりと右手をさし伸ばした。
「怖がらないで、お姫様 ようこそ桜蘭ホスト────……」
「触らないで、ニセモノォ!!」
環の顔に平手打ちがクリティカルヒットした。
叩かれた顔を抑えながら、環の表情はショックを見せ始める。
「ニ、ニセ……?」
「あなたがこの部の王子的存在だなんて……信じられませんわ!!」
叫ぶ女生徒に、は「おー」と驚きつつも感嘆の声を漏らしていた。
環にここまで言える女を、はハルヒ以外に見たことがなかった。
「王子キャラたるもの、そう易々と愛を振りまいたりしないもの!!
ちょっぴり憂いを含んだ悲しげな笑顔が、乙女のハートを震わすものなのに!!」
鼻から全否定する女生徒。
頭部につけた大きなリボンが印象的な女生徒だった。
「どうしてそんなに『馬鹿みたい』なの!?まるで『頭の軽いナルシスト』じゃない!!
無能!!凡人!!最────っ低」
その言葉に、環は白目になるほどにショックを受けた。
スローモーションで、そのショックの度合いを示すという新技を披露するほどだった。
「君は……」
何かに気付いた鏡夜は、あごに手を沿え女生徒を見つめていた。
その視線に気付いた女生徒は、パァァァっと明るい表情を見せた。
「鏡夜様!!お会いしたかった……私だけの王子様っ」
背後にバラが散る程の、乙女な抱きつき方。
女生徒は、鏡夜の胸に飛び込んでいた。
「────……お?」
その出来事に、は面白いものを見たといわんばかりの表情を浮かべた。
to be continued..................
名前は出てきてないけど、れんげ姫登場!!(笑)
れんげちゃん登場の話の中で、ヒロインの過去が明らかに。(うわ)
そんでもって、馨との関係が急接近したらいいな……(と思うが、果たしてそうなるかどうか……(苦笑)
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