「光!馨!」


怒りの形相で部室の扉を開いたのは、環だった。


「部のホームページ管理は真面目にやると言う条件で任せたんだったんだがなあ……」


「はあ?やってますぅー」


「だから昨日だって明け方までかけて、ハルヒとの合成写真作ってたんじゃん」


環の怒りの一言に、光は唇をへの字に尖らせた。
まるで、環の言葉が偽りだと言わんばかりに。
そして、馨はパソコンに表示されたハルヒとの写真を指差して言い切った。
その画面には、男性の身体の写真と合成された二人の顔があった。










NotxxxPersist-ence 第十六話










「ハルちゃんかっこいいー!!」


「技術の無駄遣いだ!!恥を知れ!」


パソコンの画面に食いつく光邦と、驚き見入るハルヒ。
に至っては、呆れたような表情を浮かべていた。
そんな二人とは裏腹に、環は光と馨に怒りの声を上げる。
が……


「やるなら、このアイドル写真集と合成しなさい ピンクのフリフリな服が所望じゃ」


「こんなの本人に着せたほうが早いよ」


ハルヒ命な所のある環は、一冊の写真集を手に光と馨に指示を出す。
しかし、光の言うとおり合成するよりも手っ取り早いだろう。


「やめて下さい」


「ハルヒも大変だなぁ」


環の発言の被害がには向いていなかった。
だからこそ、怒りを込めてストップを掛けるハルヒに他人事のように言えたのだ。


「しかし……何とも、阿呆なことをするよな、あの二人は」


別に男だと偽っているわけでもない。
けれど女だと公に公開するつもりもない。
男と間違えるのならそれでいいとは思っていたからこそ、そんな風に呆れ気味に呟けた。


「嫌じゃないの?は」


「うん?まあ、出来るならやらないで欲しいけどよ……」


そこまで嫌がっていない、という印象をハルヒに与えていた。


「はー……なんか最近暇なんだよなー ハルヒ、おまえん家行っていい?」


「駄目 どうせ馬鹿にするから」


椅子にすわり、膝を折る。
光はつまらなさそうな表情を浮かべながらハルヒに提案をした。
が、即座に切り捨てるようにハルヒの却下が下った。


「あはは 当然の反応だよなー」


「へぇ〜 んじゃ、の女疑惑タレ流していい?暇だから」


「は?別に隠してるわけじゃねぇんだからタレ流すも何も、俺は困らねぇぜ?」


の発言に馨が企み顔をしながら呟いた。
しかし、女であることを隠しているわけじゃないはそれを軽く受け流す。
肩を竦め、馬鹿にするような視線を向けて。


「いや、そしたら男の格好をしている他に男言葉を使ってることが家族にしれるんじゃない?」


「げ!」


そこまで計算していなかった
ハルヒの指摘で、その可能性が高くなることに気付き声を上げた。
折角、家族にバレずに済んでいて、そして鏡夜やホスト部の協力あってバレない確率が上がっていたというのに、女疑惑をタレ流されたらバレるかもしれないのだ。


「お前ら……人をいったいなんだと思ってんだよ……」


じと目を向けるに、光も馨もにやりと笑みを浮かべる。
その表情に、は少しドキリとするも。


「「決まってんじゃん 『おもちゃ』」」


二人の発言に、は唖然とした。
兄である常陸院光と、弟である常陸院馨は部内一の快楽主義人間だった。
二人にとって世の中は『僕ら』と『僕ら以外』に分類され、言動のすべては『彼らにとって』面白いか面白くないかに基づかれているのだった。


「おもちゃがお好きなら、ぜひ我が部へ〜」


重い音を立てて扉を開いたのは、三年生である黒魔術部部長の猫澤梅人だった。
黒い外套を被った暗い感じの人だった。


「世界の古魔道具市開催中〜 今なら、もれなく素敵な呪い人形プレゼント〜」


「く……暗い……」


扉の向こうから入ってこない猫澤を見つめ、はポツリと呟いた。
唖然とせずには居られない、そんな雰囲気を醸し出していた。


「なんであんな隙間から……」


「ほんと……謎過ぎるぜ」


「猫澤先輩は、明るい所がお嫌いだからな 寿命が縮むそうだ」


ハルヒとの独り言に、鏡夜は腕を組みながら解説した。
そんなハルヒとの背後に、気配を消して環が近づいてきていた。


「あの人に関わってはいけない……関われば必ず呪われ……」


「呪い人形って何?」


「このくらいの光は?駄目?」


環の発言を聞かない光と馨は問い掛けながら、持っていたハンドライトを猫澤に向けた。
眩しい光に、顔の前に手を持ってきて涙を流しながら『人殺し』と叫んでいた。



そ、そんなに嫌いなのかよ……



明かりなんて、誰もが平気なものだと思っていた。
明るい場所と暗い場所なら、どちらかと言えば暗い場所の方が苦手だという人が多いはず。
だからこそ、猫澤の反応は不思議に見えた。


「光!!馨!!」


そんな二人に、環は慌てたように声を上げた。
これ以上光を当てていれば、猫澤がどうなってしまうかしれない。


「なんて事を……お前らには真の恐怖が分かっていない……!!
 俺が誤ってベルゼネフの端っこを踏んでしまったあの日……」


あわあわと慌てながら、手を口元に持っていく環は何かを思い出しながら話し始めた。


「直後受けた試験では、わけの分からぬ呪詛のごとき文字が羅列され
 不振に思いあたりを見渡せば、見知らぬ人間ばかりの異空間と化していたのだ!!」


「……なぁ、それって……もしかして……」


「ああ 動揺した環が勝手にギリシャ語講座の試験を受けてただけだ」


の問い掛けに鏡夜は頷き、溜め息交じりに真相を口にした。
けれど、環はどうやらその真相を信じてはいなかったようだ。


「違う!呪いだ!その三日後の朝は、なぜか足が鉛のような重い物体と化し──」


「前日がマラソン大会だっただろう?」


呟く環の発言をことごとく真相で暴いていく鏡夜。
環は、瞳に涙を溜めてなんとしても『呪いである』という事実を信じさせたいようだった。


「「そういえば……」」


そこで何かを思いついたように、光と馨は声を合わせて呟いた。


「「猫澤先輩の悪口を言った人はピ──がピ──に……」」


「わぁぁぁ──!!!」


「タマちゃん、ここで脱いじゃ駄目ぇぇ〜!!」


光と馨の発言に慌てる環。
そんな環は衣服に手を書け脱ごうとしていて、光邦はその行動に慌てて声を張り上げていた。


「ハルヒ!!ハルヒ、おとーさんのピ──を見てくれェェェ──!!死んじゃうよぉ〜!!」


「絶対いやだぁぁぁ───!!」


泣きながらハルヒを追い回す環と、必死に逃げるハルヒ。
そんな二人をは大きな溜め息を吐いて見つめてから、光と馨へと視線を向けた。


「あんた等やり過ぎ……環先輩は馬鹿なんだから、絶対真に受けるって分かってんだろうに……」


「「分かっててやってたんだもんね」」



確信犯ほど厄介なことはない……



の発言に笑いながら言い切る二人に、は肩を落とした。


「なんか面白いことないかねー」


「ハルヒもも部に馴染んできちゃったしねー」


窓際に置かれた椅子に腰掛けて、外の風景を見つめながら光と馨は溜め息を吐いた。
そんな二人の背後に佇む環の姿に、二人は気付いていなかった。











to be continued.....................




環って、からかわれ易いキャラだよなぁ〜と書いてて改めて思った。(笑)
そしてその被害が向かうハルヒが可哀相。(苦笑)






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