本当に、とんでもないことになんなきゃいいけど……
まぁ、そんな心配しても……悪くなるときは悪くなるわけだし……



溜め息ばかり、零れ落ちる。
双子が仲違いなんて、似合わないとは思った。
あの二人は仲がいいからこそ、常陸院ブラザーズで。



……悪巧み、って線はねぇかな?



あの二人の性格の悪さ(?)を考えると、どうしても思いつく選択肢。
けれど、あれだけの悪口やけなし合いを果たして双子が演技で出来るのだろうか。



……演技だったとしても、最終的には本当の喧嘩に発展する可能性の方が高いよな



もう一つ、大きな溜め息を吐き。
もぞもぞもぞ……
は大きなベッドの中へ──温かい布団の中へと身体を滑り込ませた。
明るい部屋。
眠る準備。
それは、普通の一般的な眠る条件とは程遠い──なりの眠り方だった。











NotxxxPersist-ence 第十八話











「おはよ、ハルヒ」


教室の中へ入り、すでに登校していたハルヒには声を掛けた。
そのまま、ハルヒの前の席へと腰を下ろす。
手に持っていた鞄を、席の横の引っ掛け部分に掛けると後ろに振り返った。


「おはよう、


顔を合わせ、ハルヒは微笑み挨拶を返した。
その笑みを見つめ、も微笑むと──


「いったい、どうなるんだろうな……あの二人は」


「ああ……昨日の喧嘩のこと?」


の言葉に思い出したようにハルヒが相槌を打った。
コクコクと頷きながら、昨日の出来事を思い出す。
演技のようにも見えて、本気のようにも見えた二人の喧嘩。


「どうせ、また暇だから遊んでたんじゃ……」


ハルヒがそこまで呟いた瞬間、教室のドアがガラリと開いた。
視線を向けると、そこにはピンク色に髪を染めた光の姿があった。
ハルヒとは顔を見合わせ、あんぐりと口を開け放ってしまう。
言う言葉も、ない。


「ひ、光?」


「オハヨ」


引きつった表情で声を掛けたのはだった。
光は片手を挨拶するように掲げ、ハルヒの隣の席に腰掛けながら挨拶をした。
ジッと、そんな光を見つめるハルヒの視線。


「何?」


「派手だね」


不思議そうに首をかしげた光に、ハルヒは率直に言った。


「可愛いだろ──♪今日からピンクが僕だから♪」


「……男が可愛いって……」


つい、は光から視線を逸らした。
笑顔を浮かべながらハルヒの「何でピンク?」という質問に「似合うから♪」と答える光の声を聞き、もやもやする
可愛げのないと、平然と喋り光の気を引き続けるハルヒ。



……嫉妬、してる?



ようやくそこで、そのモヤモヤが何なのかに気付いた。
は普通に光と話せない。
なのに、ハルヒは平然と光と楽しそうに話すから。



……うわ、嫌なやつじゃん……



友達に、嫌なほど嫉妬している自分に気付いた
大きく溜め息が零れ落ちる。


?」


「なんだなんだ?どうかしたのか?」


首をかしげ顔を覗き込むハルヒ。
そして、面白そうに同じくの顔を覗き込む光。
その二人の顔に、ドキリと言葉を詰まらせる。


「べっ、べべ、別に!何でもねぇよ!」


慌てて言う言葉は、どこか嘘くさく感じさせてしまう。


「てか、何で髪の色変えたんだよ?」



あんなに、早く仲直りしろって言ったのに……
これじゃ、悪化してるみたいじゃん……



の問い掛けに光は笑顔を浮かべた。
そして、すぐにその笑みは消えてしらっと答える。


「だって、いつまでもさ『馨なんか』と間違われんの冗談じゃないしー?」


まるで見計らっていたかのように光がそう呟いた瞬間、馨が教室へと入ってきた。
そして、そのまま出入り口でピシリと立ち止まる。
その顔には怒りの表情を浮かべて。



うわぁ……タイミング悪っ



あちゃー、とは溜め息を小さく吐いた。
馨はすぐさま笑顔をその顔に貼り付けると、何事もなかったかのようにハルヒの隣──光とは反対側の席へ腰掛けた。


「ハルヒ、、オハヨ」


「ああ、おはよ」


「おはよう」


「昨夜はせっかく優雅なひとり寝だったのに、夢見悪くてさー」


そんな馨の言葉を聴きながら、はハラハラしていた。
いつ、昨日のような大喧嘩が始まるか……と。


「なんと、僕が髪をピンクに染める夢ー」



あ……ヤバイ、かも……



馨の言葉に、即座にそう思ったはチラリと光へと視線を向けた。
隣で無言のまま、けれど怒りを醸し出し始めている光が目に留まる。



あちゃー……
なんか、すげぇこじれてねぇか?



仲直りを、と昨日言ったはずだった。
それなのに、二人の仲は悪化しているようで。


「アッタマ悪そうな事するわけないよなあ〜?」


馨のその言葉を合図に、光が馨の椅子を思い切り引いた。
それに合わせて馨はバランスを崩し椅子から転げ落ちる。
ぶつけた頭を片手で押さえ、けれど馨もやられたままで居るほど大人しくもない。
即座に、光の座る椅子の足を掴み揺らした。


「っで!」


窓際に座る光は、そのまま壁(窓?)に頭を強打。
どちらもぶつけた箇所を手で押さえ、般若のような鋭い視線をぶつけ合っていた。












「「Aランチ」」


昼食時、学食に足を運んだハルヒとと光と馨。
ハルヒは弁当を持参し、はすでに注文が済んでいたのかお盆を持っていた。
そして、光と馨が同時に同じメニューを頼んだ。


「「やっぱ、BのパスタとDのサラダとコーラ」」



……なあ、裏で打ち合わせしてんじゃねぇよな?



二人の息のピッタリさに、は内心そう思った。
そうじゃなければ、本当に好きなものも考えることも一緒な双子ということになる。


「喧嘩りょーせーば──い!」


突如、今にも喧嘩を始めそうな双子の間に光邦が姿を現した。
可愛らしい姿で、仲裁にでも入るつもりだったようだ。


「ヒカちゃんもカオちゃんも、ケーキを半分こで仲直り〜♪」


そう言った光邦だが、やはり甘いものが、スイーツが好きな光邦。
半分こではなく、自分も食べたいからと三分の一にすると意見を変えたり、いろいろと悩んだり。
喧嘩勃発しそうな双子にとって、それはただのイライラの元にしかならなかった。



げ……や、やばい……
ハニー先輩に火の粉が降り注ぐじゃんか!



あんぐりと、その光景を見つめは思った。
けれど、決して光邦を助けに手を出すこともせず傍観者を決め込んでいたのだが。


「「Dのカッペリーニにバルバリー鴨とフォアグラのポワレパリグーソース添え!!」」


結局、イライラを爆発させた光と馨。
怒り任せに頼み、また同じメニューという事に気付きにらみ合う。



あー……いい加減にしてくれ、ほんとに



ここまで盛大に喧嘩が出来るのは凄いと思うが、回りの迷惑も少しは考えてほしい。
だからこそ、喧嘩を見つめため息ばかりが零れ落ちるのだった。













to be continued...................



結果を知ってると、このシーンは見てても読んでても書いてても楽しいw
なんというか、双子らしいというか……ハルヒも主人公も巻き添えで可哀相;






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