「なぁ……今思ったんだけどさ────……」


渡された衣装に着替えながら、カーテン越しには問い掛けた。


「いったい、これはなんなんだ?コスプレか?あ?」


シャッ……

カーテンを開き、着替えた姿をハルヒ以外の部員メンバーにお披露目。
本日の衣装は南国風だった。











NotxxxPersist-ence 第二話











「なんつーかさ……この部活、疲れる……」


ゲンナリとした表情を浮かべる
あれから、遅刻してきたハルヒも合流し部活が再開した。
そして、すべての接客を終え今に至る。


「まぁ、には向かなそうだもんね」


「それもあるけどよ……なんつーの?部員の対処にも疲れるぜ?」


「……同感」


ちゃきちゃきと南国衣装から制服に着替えなおすハルヒと
大きく溜め息を吐きあった。


「────納得いかん」


着替えが完了し、音楽準備室から第三音楽室へ扉を開いた途端に聞こえてきた環の呟き。
ハルヒとは互いを見つめ、眉を顰めた。



プランの最終調整をしてたんじゃないのか?



何をしているんだ、と幾度も瞳を瞬かせた。
そして大きく溜め息を吐き、はパタンと扉をしめた。


「殿ー 庶民ラーメン食べてないでプランの最終調整手伝ってよ」


ずるずるとラーメンを食べ続ける環に光が声を掛けた。
パーティまで一週間という猶予しかない今、出来るだけ迅速に行いたいのだ。


「ハルヒが春日姫に気に入られたのがそんなに気にくわんかねぇ」


「彼女の病気は今に始まった事ではないだろう?」


馨の言葉に鏡夜が溜め息混じりに告げた。
肩をすくめ、環に冷たい視線を送る。


「「病気?」」


そんな言葉に、疑問の声を上げたのはまだ入部して間もないハルヒとだった。
互いの顔を見つめ、首を傾げ光と馨へと視線を向けた。


「「いわゆる『男とっかえひっかえ病』って事ネ」」


「さすらいのホスト巡りとも言うよぉー」


分かりやすい解説をした光と馨。
その二人の言葉のあとに、光邦が可愛い声色で告げた。

確かに、そうとも言うであろう言葉だった。


「普通、常連客は決めた相手を永久指名するものなんだが……
 彼女は定期的にお気に入りを変える傾向があってね すでに全員二回は当たっているんだ」


スチャ……

メガネを指で軽く直しながら説明をする鏡夜。
その言葉で、は納得した。


「てことは、この前ハルヒが指名されるまでは環先輩が指名されてたってわけか?」


「そうなるねぇ」


の問い掛けに、光邦がうんうんと頷いた。
その肯定の言葉と行動に、は肩を竦めた。



やっぱりな……予想通りだな……



分かりやすさに苦笑が零れた。


「ああ……自分のお客を取られたから……」


「違うっ!!そんな事じゃないいいいっ!!」


ハルヒの冷たい視線と言葉に、環は悲鳴を上げた。
顔を真っ赤に染め上げて。


「もう我慢の限界だ、ハルヒ!ちゃんと女の格好をしろ!」


ビシッ

環はハルヒを指差して言いきった。
そんな環の言葉に、ハルヒは「は?」と素っ頓狂な声を上げる事しか出来なかった。



俺はいいんだ、女の格好しなくても



環の言葉を聞き、ふとはそう思った。
と言っても、ハルヒと違いは女の格好時の姿を誰にも見せたことがないのだから仕方がないのだが。


「女でありながら何が悲しくて女にモテモテにならねばならんのだ!!
 はっきり言って、お前が女だと知っているのは部員だけだぞ!?」


「確かにそうなるなぁ」


頭を抱え、叫ぶ環の言葉には相槌を打った。


「体育は選択制で取ってないし」


「出席番号も男女混合なのでバレないのであります!」


ビシッ

敬礼をし、報告をするかのように光と馨は一気に告げた。
しかし、そんな報告など誰も聞いていないのだが。


「お父さんは……お父さんはなあ……」


しくしくとしゃがみ込み、ごそごそと籠をあさり始める環。
さすがにその行動には意味を読み取れなくて、は首を傾げる。


「この頃のお前が見たいんだよおおお────!!!」


「人の写真を勝手に引き伸ばさないで下さい!!」


豪華な額縁に飾られた、髪の長い女の子なハルヒ。
それをズズイとハルヒに突き出し、環は叫んだ。
腹の底から、叫んだ。


「へぇ ハルヒって結構可愛かったんじゃん 勿体ねぇなぁ」


まじまじとその写真を見て呟いた。


までそんな事言ってー……」


「しっかしまぁ、見れば見るほど不思議だよねー
 なんでコレがああなっちゃうわけ?」


ちらっちらっと光は写真のハルヒと実物のハルヒを見比べて呟いた。
本当に、豹変したと言っても過言ではないくらいの変わりようだ。


「髪は……入学前日、近所の子にガムをひっつけられて……手間暇掛けて取るのも面倒で、切っちゃったんです
 コンタクトは失くしましたし その後、父が踏んで割ってしまいましたしね」


淡泊に話すハルヒに、その場に居る全員が唖然とした表情を浮かべた。
ずさんな理由に、何とも驚きな行動力。


「"俺"としては男に見られても別にいいんですけどね どっちでもいいし
 むしろその方が、千人のノルマを達成して八百万円を返すのに都合いいわけですし」


呟くハルヒの言葉に、環とは似たような表情を浮かべていた。
「だから……」と続けるハルヒの言葉が二人には聞こえていなかった。


「ハルヒが一人称を変えたあああ────!!!」


「女の子が『俺』なんていけません!!」


「俺は『女の子』じゃねぇっつーのかあああ────!!」


ハルヒに叫ぶ環に、突っ込む
確かに、も『俺』と言っている。


は昔からだろう?いまさら変わるはずもないぞ!」



ああ、もう……



環の言葉に、は呆れた。
なんかもう、すべてに関して肩を落とすほどに。


「意外と女の子に夢見てんだなー、殿って」


「本当だよね みたいな女の子だって居るのにねー」


光と馨がくすくすと笑いながら、ハルヒとの肩を押した。
発狂する環から引き離すかのように。


「ところで、お前ら社交ダンスの経験は?」


「光、光 いくらなんでも、は経験者じゃない?」


問い掛ける光にストップを掛けた馨。
男の格好をしたり、口が悪くても、いい所のお嬢さんなのだ。


「パーティーじゃ必須なものだろ?当然経験者だぜ?」


馬鹿にすんなよ?とジロリと光と馨を睨む。
そしてゆっくりとハルヒには視線を向けた。
ハルヒは?と問い掛けるように。


「いや……まさか
 でも、パーティーはノルマに関係ないでしょう?」


冷や汗を掻きながら、必死に逃げ道を探すハルヒ。
嫌な予感をヒシヒシと感じているようだ。


「イベント事にも興味はないし、出来れば欠席────」


しかし、その言葉もすべては紡げなかった。


「よかろう!そこまで男の道を歩みたいのなら、是非協力させて頂こう!
 社交ダンスは紳士の常識!」


ビシッ

カメラ目線を忘れずに、環はポーズを決めて強い口調で呟いた。
瞳がキラリと輝き、環の本気さを示しているようだった。


「一週間で見事ワルツをマスターし、パーティーで披露できたなら借金を半減してやろ────う!」


「嫌だあああああああ────────!!!」


環の意を決した叫びに、ハルヒの悲痛な悲鳴が上がった。









to be continued................




環たちのヒロインの扱いが酷いような気がします。(今更)
どこかで、ちゃんと女の子だと認めてもらえればいいなと……くっ!(>へ<;)






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