夜、明かりをつけて眠る
でも、どうしても私は夜中に何度も目覚めてしまうんだ
光と馨の喧嘩ののち……感化してしまった心はなかなか静まらなくて──……

ただ、ひたすら布団を被って夜を堪えてた

救いなのは、光や馨、ハルヒ達のいる学校があることくらい……











NotxxxPersist-ence 第二十一話











「あ?海だ?」


「「イエース!海!」」


の疑問の声、そしてハルヒの驚く表情ににんまりと楽しげな笑みを浮かべ、光と馨は顔を合わせた。
なぜいきなり海なのかと問いたいくらいだった。


「本日で、学期末テストも無事終了!あとは夏休みを待つばかり!」


「てなわけで、カリブがいい?フィジーがいい?」


光と馨の言葉には溜め息をついた。
また、突拍子もない話をしだす。
けれど、一番問題なのはハルヒがいけるかどうかだ。


「そんなお金ないよ」


思ったとおりのハルヒの反応に、は苦笑した。



やっぱりそうだよなー



何で分からないかな、とくすくすと内心笑った。


「ちなみに、パスポートも持ってないんじゃねーの?」


「うん」


の問い掛けに大きく頷くハルヒに、全員が大きく溜め息をつく。


「じゃあ、行かないのか?」


「誰が行かないと言った」


の問い掛けに環はフッと不敵な笑みを浮かべた。


「「じゃ、いーじゃん?」」


光と馨は両手を合わせ、にまっと楽しげな笑みを浮かべる。


「うさちゃんも一緒ぉ〜?」


「異論はないな」


「ああ」


光邦、鏡夜、崇も、それぞれの反応を示し承諾の意を示す。
その反応に、戸惑うのはハルヒただ一人だった。


「それでは、いざ!海へ行こう!」


ノリノリに環は人差し指で天を指し示した。
楽しげに歯を見せて笑って、背景にはキラキラと星が散る。



ああ……思いっきり乗り気だ、環先輩
ま、面白そうだからいいけど……バレなきゃいいな



環の様子に呆れたような、楽しみなような、微妙な苦笑が漏れた。
そして、同時に心配するのはハルヒとの正体がバレないかという事。
海ともなれば、危ういことは多いだろう。













「あーあ、やっぱりな」


目の前に広がる光景に、大きく溜め息をつく



ただ単に海に遊びにいくはずがないとは思ってたんだ



それが当たったことが、なんだか虚しくて笑ってしまう。


「どうしたの?くん、泳がないの?」


かかった声に、は視線を向け詰まらなさそうな表情を浮かべた。


「泳ぐ?嫌だね、んなの」


「……え?」


「泳ぐのつまらねぇだろ?」


本当のところは違った。
背中の傷が気になるからだった。
水着になれば否応なしに傷が見えてしまう。
もちろん、女だからこそ男として水着になれないというのもあるけれど。


「そ、そんなっ」


「だって泳いじまったら、あんたらの水着姿見れねぇじゃねーか」


ハッと鼻で笑ってから、そんな風に囁いた。
こうしてしまえば、女生徒達がいちころなのは知っていたから。


「だから、俺のことは気にしないで遊んできな」


「は、はいっ」


の言葉に瞳をハートにさせて、頷くとに背を向けキャァキャァと黄色い声を上げながら海辺へと掛けていった。
そんな女生徒の姿を見て、難関潜り抜けた……とは溜め息を吐き、環と一緒にいる光と馨の下へと歩みを向けた。


「まさか、客まで呼んでるとはね これじゃ、ハルヒにもにも水着着せられないじゃん」


椅子に座りハーッと大きく溜め息を吐くのは光だった。
その言葉に同調するように、馨もうんうんと頷いていて。


「殿が簡単にオッケーした時点で気付くべきだったよなー
 浮かれてソンした……」


近くのテーブルに置かれた飲み物を手に取り、馨も大きく溜め息を吐き、ズズズと中身を飲んだ。
その様子に環はただ喜ぶだけだ。



そんなに双子を騙せたのが嬉しいのか?



そう苦笑しながら近づいていく。


「どーせ、環先輩の計算通りなんだろ?」


「おお!はよく分かってるではないか!」


グッと親指を立てて、胸を張ってえばる。
えばるようなことじゃないと思うのだけれど、双子が騙されたのだからえばっても仕方あるまい。


「誰が可愛い娘の水着姿など世間の目にさらすものか!」



そこっ!?



つい、環の発言に内心突っ込みを入れてしまった。
環自身だって、ハルヒの水着姿なんて見たことないだろうに。


「「夏に限らず年中お馬鹿って憐れだよね」」


「ああ……それには俺も同意だな」


環の様子にどうしたのかと集まってきた女生徒達を、それ以上先へ行かせないようにしながら呟き合った。
双子の発言には確かに同意できるものがあり、大きく頷き強く肯定した。
あれほどハルヒ馬鹿なのはいないと、は思った。


「まったく……一度妄想始まったら、なかなか戻ってきやしない」


ようやく女生徒達を、また海へと返すことに成功した達。
いまだ妄想の世界に浸っている環を見て、溜め息を吐きながらまた椅子にドカッと腰掛けた。
こうなってしまうと、妄想の世界から帰還するまで結構時間がかかってしまう。


「「つーかさ、なんでカリブ海じゃなくて日本海で、その上猫澤先輩のプライベートビーチなワケ?」」


光と馨の言葉と同時に、「あれ?」と何かに気付いた環の背後に猫澤梅人が現れた。
黒いマントに身を包み、左手にはベルゼネフを装着して「皆様、お楽しみですかぁ〜?」と暗い声で声を掛ける。
当然、環が盛大にビビッたのは言うまでもない。
そんな環が逃げるのは──当然、鏡夜のもとだった。


「鏡夜!俺はお前のビーチを貸せと!!」


悪寒が背筋を昇りあがりながらも、必死に耐える環の声は裏返っていた。


「あいにく、父の客人が使用中でね 急な計画の上、ハルヒは国内近場希望だったしな
 まぁ、パスポートがないのだから国内になるのは必然だったわけだが……」


他に適した場所を提供することが出来た者がいなかったのだから、仕方ないのだ。
猫澤にこうやってプライベートビーチを借りれただけでも、めっけもんだ。


「俺の家ならこの近くにプライベートビーチがあったはずだけどな
 ま、親が親だ 悪いな、貸せなくて」


「あ、いや……は悪くないって!!な、光!」


「ああ!」


慌てて香るがそう言葉を紡ぎ、同意を光に求めた。
その二人の気遣いに、苦笑が零れた。



こうして気に掛けてくれるのは嬉しいもんだな
たとえ、言い出しっぺが馨だったとしても



二人の心遣いは、凄く心に染み入る。
暗い闇に、の心が落ちかけている今は──特に。


「フフフ……猫ヶ岩は猫澤家の守り神が代々祭られているところで……
 あそこから飛び込めば、二度とは上がってこれないという神秘的な伝説もありまして……」


とことん聞きたくない解説を始める猫澤に、環は盛大に怖がった。
もちろん、双子や光邦、鏡夜や崇やが信じるわけもないのだが、それでも信じていなくても、あまりいい気分のするものじゃない。
が、その直後猫澤が訝しげな表情を浮かべ猫ヶ岩を見るのもだからその場の全員の表情も訝しげなものへと変わっていった。


「おや?あそこに勇気ある挑戦者が……」


「「「ギャ──!!ハルヒ!!」」」


見つめると、どんどん崖っぷちに向かうハルヒが目に留まった。
双子と環は大きな悲鳴を上げると、とんでもない速さで猫ヶ岩の崖っぷちからハルヒを引き離した。



……うわぁ……すげぇ、条件反射



ズキズキと胸も痛む。
けれど、猫澤からあんな話を聞いていた直後だったからだろうか?
そこまでの胸は痛むことなく、むしろ感嘆していた。
あの三人の行動力の速さに。


「しっかし危なかったな、ハルヒ 伝説はどうであれ、足滑らせてたら危なかったぜ?」


助け出されたハルヒの肩に手を置いて、は苦笑した。
そう、何はともあれ足を滑らせ転落──という可能性だってあったのだ。
それを考えれば、何事もなくてよかったというわけだ。


「ほ、本当だぞ、ハルヒ あやうく我が子を失うかと……」


の言葉に同意し呟く環。
けれど、その言葉は途中で途切れ──目の前にある物、いや環の手が置かれた物を見て固まっていた。


「頭蓋骨?」


それをひょいっと持ち上げ、は首をかしげた。


「フフフ……皆様のために、よりアーティスティックに仕上げてみました……
 お役に立てれば光栄です……」


言われて初めて気がついた。



うわぁ……周り、すっげぇ
つーか、よく見るとここのビーチって怪奇ビーチじゃねーかよ



あちこちにある骸骨に、は苦笑した。
よくここまで集めたものだと、ある意味関心してしまう。


「須王君とは、以前より親睦を深めたいと思っておりましたのでね……」


ベルゼネフも、猫澤も、ニヤリと笑ったように見えた。
その表情に環は『なんで?』と顔に出していた。



凄い奴に好かれたもんだな、環先輩も



肩をすくめ、その様子を他人事のように見つめていた。









to be continued.................




どうしても、主人公が上手く動いてくれない……(涙)
頑張れ、主人公!もうすぐ出番が待っている!
↑の言葉通り、活動シーンが後の方?に転がってますので、お楽しみに!(?)






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