なんでそんなに……あいつらはハルヒを構う?
好きだから?

そんな事を考える自分が、俺は凄く嫌いだ

ハルヒは友達だ
大切な……
家の詳しい事情なんて話せてないけど、それでもあいつは大切な友達だ

だから、そんなハルヒに嫉妬する俺自身が嫌だ

醜くて

気持ち悪くて

馬鹿馬鹿しくて……

俺という人間性が小さく見える

それでも、一度芽生えた感情は消し去れなくて
どんどん膨らんで、成長して、俺のすべてを飲み込んでいく

純粋な"好き"も

醜い"好き"も


            すべて











NotxxxPersist-ence 第二十三話











「……これは……」


恐怖スポットとされている洞窟の中。
ライトで照らされているため暗くはないが、それでも明るいとは言えない。


「……?」


「あ?」


心配そうにハルヒがを見つめた。
その声に反応し、ようやくはハルヒを見つめ首をかしげた。


「大丈夫?」


「何が 何ともねーんだから、大丈夫だって」


ははは、と明るく笑いハルヒの肩を叩いた。



バレちゃいけない……



弱みは見せたくなかった。
だから、必死に平気なフリをした。


「地図によると、猫ヶ岩の洞窟は一般道に通じているんだってさ」


「まあ、地元の人は滅多に通らないって話だけど
 なんでも、ここの内壁には猫澤家に呪われた人々が葬られてあって……」


「夜ごと血塗れた骨だらけの手が通行人を壁の中に……」


光と馨は、その場に居る人を驚かせようと、そんな話をした。
雰囲気を出しながら、ドロドロといやな音が鳴りそうなくらい暗い声色で。

ひた……


「…………」


「あれ?おまえ、話聞いてた?」


ハルヒの背後から骨の手で肩を叩いた光。
けれどハルヒの反応はいまいちで──というよりは、呆れた表情を浮かべていた。
隣に佇むさえも、あきれ返った様子で光を見つめため息を吐いた。


「聞いてたけど、実際見ないと信じない方だし」


「どうせ、こんな事だろうって思ってたってのもあるよな」


「うん」


互いに顔を見合わせ、ハルヒとは頷きあった。
小さく舌打ちして、つまらなさそうな馨に肩を竦める。



ったく……ハルヒにこんなのが通用するわけねーって、分からないのかな



ハルヒの性格を考えれば、こういう反応が返ってくるのは予想できる。
もちろん、苦手だったらどんな性格だったとしても怯えるのかもしれないが。



……俺は例外だな



瞳を伏せ、隠し通そうとする自分の性格を見直して溜め息を吐いた。


「俺、待ってるからさっさと弱点探して来い」


逃げるが勝ち。
どんな場所へ行っても平気だが、暗い場所にまた行くとしたら避けてしまいたいと考えていた。
もちろん、暗い場所へ行っても先ほどのように隠し通す自信はあるようだが。



……それでも、出来れば避けたいよなぁ



ボロが出ないとも限らないからだろうか。


「なんだよ、はやっぱり参加しないのかよ」


「んなつまらん事、興味ねーよ」


背を向けて、ひらひらと手を振りながらは海岸の方へと歩いていった。
そこに置かれた白い椅子に腰掛けて足を組み、海面を見つめる。



真っ暗な洞窟の方にも行ったみたいだし……
待機に回って正解だったかもな



先ほど、猫ヶ岩の洞窟よりも暗い洞窟の方へと歩いていった一行を見かけた
それを見つめ、安堵の息を吐いていた。
それを思い出し、苦笑を浮かべ。

正しい道を選んだのだと、笑った。


「……何だ?なんか、騒がしいような……」


いろいろな考えに没頭していたのか。
それとも、海面の動きに心を静めすぎていたのか。
結構な時間が経っていたらしい。
環達はすでにハルヒと一緒に行動はしていないようで。



なんだ……あんな崖っぷちで



猫ヶ岩の崖っぷちに佇む人だかりが目に留まった。
目を細め、その姿を見つめ──思い出す。



そういや、ここってプライベートビーチ!!



そこで慌てては立ち上がり駆け出していた。
ただ、遊んでいるだけならあんなに騒がないはず。
何より、女生徒達と一緒に居る男の姿が部員とは明らかに違って見えたから。


「ヤバイだろっ」


いくらなんでも、女が男に敵うはずもない。
まして、お嬢様ともなれば余計だ。

それを考えると、だってお嬢様に当てはまるけれど性格的に除外される。


「ははっ なんじゃ、この細っこい腕は」


「女みてーなくせして、カッコつけてんじゃねーよ」


二人の男がハルヒの腕を掴み、文句を言っていた。
その表情には、余裕が見える。


「ハルヒ!!」


っ!?」


慌てて駆け寄り名前を呼んだ。
その声にがいち早く駆けつけたことに安堵したハルヒも声をあげ、手を伸ばす。


「てめーら……ハルヒやみんなに何しようとした……?」


伸ばされたハルヒの手を取り、男達から引き剥がした。
女生徒やハルヒを後ろに引かせながらも、は睨みを効かす。
視線を反らさない。


「別に?遊ぼうって誘っただけだろ、俺達は」


「のわりに、みんな怯えきってんじゃねーかよ」


の言葉にカチンときたのか、男はの腕をガシッと掴んだ。
けれど、動揺一つ見せず頑としては睨むことをやめない。


「お前も、そいつ同様女みてーだな」


「せめて『中性的』だと言ってみたらどうだ?ああ、そういう言葉があるって事も知らなかったんなら仕方ないな」


神経を逆なですると分かっていた。
分かっていて、はそんな言葉を選んだ。



こいつらの意識を全部、俺に向かせねーと……



中途半端なままキレさせて、被害が拡大したら意味がない。
こういう事は、自分が一番適職だとは分かっていたから。
否。
そう思っていたから。


「言わせておけば……」


「黙らせようとしないのはあんた等だろ?」


っ!?駄目だよ、それ以上はっ」


ギリ、と奥歯を噛みイラつきを見せる男に、とどめの一言。
ハルヒが慌ててを止めようと声を上げるけれど、一足遅かった。
の腕を掴んでいた男は、一気にの胸倉を掴んだ。


「ハルヒ 俺のことはいいから、彼女達を安全な場所に」


「で、でも……」


「無視か?いい度胸じゃねーか」


男を無視して話を進めるに、イライラは募る。
胸倉をグッと引き寄せ、顔を近づける。
整ったの顔をマジマジと男は見つめた。


くん!!」


「女にいいとこ見せようってか?」


悲鳴を上げる女生徒。
そして、そんな女生徒を見て卑しく笑う男。


「俺のこと、女みたいだと言っていたくせに、今度は立派な男扱いか?」


フッと、小ばかにするような笑みを浮かべは男を真っ直ぐ睨んだ。


「──っ!!」


「図星で何も言えないみたいだな この薄汚い手、離せよ」


「……貴様、いい度胸だな」


の言葉に完全にキレた男は、ドスの聞いた声で呟きの髪を掴んだ。


「痛っ」


「お前が男か女か、確認してやるよ!」


そういうと、シャツに手を伸ばす。


「あんた、そういう趣味があったのか」


ここで脱がされてはバレてしまう。
それを避けるために、キツイ一言を呟いた。
その時だった。


「「!!」」


光と馨の声が聞こえた。
丁度、猫ヶ岩の先端に駆け寄ってくるところだった。
それを見て、安堵して微笑みを浮かべた。



ハルヒ達の安全は確保、だな



そう思うと。


「……気持ち悪い」


それがきっと、とどめの一言になったのだろう。
頭に血が上りかけていた男は、完全に我を失い。


「言わせておけば、このやろう!!」


掴んでいたシャツを乱すように引いた瞬間、ボタンが千切れるように数箇所外れ、隠していた身体が露になった。
男にしては華奢でふくらみのある、女にしては小振りな隠せてしまう胸を持つ身体。

男は思い切りの腹に蹴りを加えた。


「──っ」


崖の方へ、海の方へ。
よろめき、傾き、滑り──


「「「!!!」」」


の身体が宙に浮いた。
耳に、双子とハルヒの悲痛な声が響く。
岩でみんなの姿が見えなくなる中、環が駆けつけてきたのが見えた。
どんどん、崖に近づくように姿が大きくなっていく。


!」


「きゃああ!環様!くん!!」


大きく聞こえる環の声。
遠くに聞こえる甲高い声。

そして、すべての音を掻き消すように。

ザバンッ!!!

大きな音がして、身体を、強い衝撃が襲った。










to be continued................






バレた──!?Σ(笑)
原作とは打って変わって、ハルヒじゃなくて主人公が落ちてみたw






NotxxxPersist-enceに戻る