俺の存在理由
俺の存在価値

俺は……自分を犠牲にして誰かを守ることでしか……いる理由を見出せない

だから……俺の存在理由を否定しないでくれっ
じゃないと……俺はいても意味がないっ
生きてる理由が……なくなってしまうんだっ












NotxxxPersist-ence 第二十五話












「あんな風に言わなくてもいいじゃねーか」


宛がわれた部屋のベッドに横になり、明るい部屋の天井を見上げた。
外は暗く、そして暗い雲が空を覆っていた。


「心配してくれんのはありがたいけど……それでも、あんな風に……」



俺の存在価値を存在理由を……否定しなくたって……



嬉しい反面、凄く嫌だった。



でも、謝ったほうがいいのかな……
んで、心配してくれた事にお礼……言ってなかったしな



謝るのは癪だけれど"言い過ぎた"という事に対し謝るならば、も心は楽だった。
そして、心配してくれたのに酷いことをいった事には変わりなくて。
お礼を、言いたかった。

ゴロゴロゴロゴロ……


「雷か……」


窓の外を見つめ呟いたときだった。
ドアを叩く音が耳に入った。


「……?いるんだろ?」


返事をしなかった
けれど中にいることはわかっていた馨は、ドアの外から声を掛けた。


「……何だよ 一人にしてくれ」


「……ごめん」


「は?」


突き放すの言葉に、馨は謝った。
その言葉に、は目を丸くしドアを見つめた。



なんで……馨が?



謝られる理由が分からなかった。


のこと、分かってなかったし、考えてなかった
 ああ言うって事は、にだって何か考えがあったわけだし……それを聞かずに否定ばっかりして」


その言葉に、喧嘩した時に呟いた言葉を聞かれていたことが分かった。
罰の悪そうには「あ゛──……」と声を漏らした。


「殿達にも話したんだ……殿も、ごめんって言ってた」


その言葉を聞き、はようやくドアを開けた。
ガチャリと音を立て、隔たりが消え、馨の姿が目に止まる。


「入れば?」


そういい馨を部屋へ招きいれた。
ゆっくりとドアは閉まり、部屋に二人きり。


「いずれ話さなきゃならなくなりそーだとは思ってたんだけどな……」


笑って呟いただったが、馨には笑っているようには見えなかった。
無理に笑っているような、何かを堪えているような。
凄く胸が締め付けられる感じを覚えた。


「俺さ……こうやって生きることしか分からないんだ 必要ない子、無駄な子、いらない子って言われ続けてきたから
 だから……こうやって身体張って誰かを助けられることが……俺が唯一必要とされる理由で、俺の存在理由だったんだ」


なぜそう思うようになったのか、それはの家でのことを話さなければならない。
でも、今はそれを話す必要はなかった。
だから省略し、それだけを伝えた。
そんな言葉を聞いたら、馨は無意識にを抱きしめていた。


「か、馨!?」


素っ頓狂な声をあげ、固まる
温もりをそばで感じ、ソコにがいることを確認すると胸が撫で下ろされた。
そして、馨は気付いた。

"が好きなんだ"と。


「ごめん……そんな辛い話をさせて」


「……構わねーよ さっきも言っただろ?どうせ、いつかは話さなきゃいけねぇ時が来るとは思ってたって」


それが少し、早く来てしまっただけ。
は光が好きで、光はハルヒが気になって、馨はが好きで。
凄く辛い片思いの関係。
それでも、少しでもの考えが分かることが馨は嬉しかった。


「後でみんなにも言い過ぎたって謝って、心配してくれた事にお礼言って……ああ」


苦笑を浮かべ呟いた。
そして思い出したように声を漏らすと。


「馨、ごめんな……それから、ありがとな」


そんな風に微笑み、謝罪と感謝の言葉を口にした。

ゴロゴロゴロゴ……──カッ!!!

バチバチっ!!


「──っ!!」


雷が鳴り、光り。
同時にブレーカーが落ちたようで、明るかった部屋は一気に暗くなった。
それと同時にの肩が跳ね、両手で頭を抱えた。


?」


「い……」


「い?」


「いやあああああああああああああっ!!!」


そんな大きな悲鳴に、馨は目を見開き驚いた。
その声を他の部員も聞きつけたのか、廊下に数多の足音が集いドアが勢い良く開かれた。


!?馨に何かされ──……!?」


ハルヒが一番に部屋に入り声を掛け、けれどガクガクと震えるを見て立ち止まってしまった。


「何があったんだ?」


冷静な環が部屋へと入り、怯えるを抱きしめる馨へ問いかけた。


「分からない 真っ暗になったらいきなりでさ……僕にもよく……」


ふるふると首を振り、分からないと答えた。
それでも尚、は振るえ涙を流し「やめて」と「出して」と繰り返していた。
時折、そんな言葉に混じって「戻りたくない」とも。


ちゃん?」


首をかしげ、の腕を触った光邦。
その手にはビクリと反応すると、パシンとその手を弾いた。


「いやっ……触るなっ……俺は……あんな場所には二度とっ……」


パニックに陥るに、全員が驚いた。
けれど、そんな中で一人だけ冷静に行動する人間がいた。


「鏡夜先輩?」


に近づく鏡夜に、ハルヒが首をかしげた。
手には注射器が持たれ──の腕に突き刺した。


「──ぅっ」


小さくうめき、はそのまま馨の腕の中で眠りについた。


「鎮静剤と、睡眠薬だ」


そう答え、針を抜き消毒液のついた綿を針をさした場所に当てテープで貼り付けた。


「馨、何があった」


「……全部、話すよ」


他のみんなにも話さなくちゃと、は言っていた。
同じ内容をの口から話させたくなかった思いもあった馨は、自ら語ろうと口を開いた。










「……というわけなんだよ」


から聞いた内容を言葉にした。
そして、その直後の停電でのの悲鳴へ移り──そこで話は終わる。

の境遇に、誰もが息を呑み言葉を詰まらせた。
何があったら、そういう事になるのだろうかと。
何があったら、そういう考えに至るのだろうかと。
馨達の知らない
いったい過去に、何があったのかと……の家族の事を考えてしまう。


「そういう事情に加え、暗所恐怖症、か……過去に相当なことがあったのかもしれんな」


考えるように呟く環。
なかなか踏み入ることの出来ないの暗い領域。


「そういえば、今日の猫ヶ岩の洞窟以降……ずっと待機してましたよね」


ハルヒの言葉を聞き、納得した。
暗所恐怖症だからこそ、待機していたかったのかもしれないと。


「ぅ……」


?」


「……馨?みん、な……」


小さく声を漏らし、はようやく目を開いた。
いつの間にかブレーカーの上がった屋敷は明るく、はホッと安堵した。

霞んだ視界に見える姿の名前を呼び、開けてきた視界が部員全員を確認した。


「大丈夫?」


「心配掛けてごめんな、ハルヒ」


力なく、は微笑んだ。
ベッドに横になったまま全員に視線を向けると。


「それから、ごめん いくら、俺にも言い分があるからって言いすぎた
 好意で心配してくれたってのに……あんな風に突っぱねて……ごめん それから……ありがとう」


素直なの言葉に全員が一瞬固まった。
その様子に、話を聞いていた馨は苦笑を浮かべた。


「で、その様子だと……馨が全部バラしたようだな」


「あはは……ごめん、勝手に喋って」


「別に構いやしねーよ どーせ話すつもりだったし……この状況じゃ、暗所恐怖症のこともバレただろうしな」


肩をすくめ、笑って馨を許した。
どうせバレる事なら、誰がバラしても変わりはしない。


「つーか……ごめん、俺が女だってバレちまったな」


「僕たちは全然構わないけどぉ、ちゃんは大丈夫ぅ?」


心配なのはのほうだと、光邦は大きなつぶらな瞳でを見つめて呟いた。


「……たぶん、な」


言葉ではそういうのに、嫌な予感は胸をよぎる。
何かが待っているような、雑然とした感覚だけが押し寄せる。



少し、家に帰るのが心配……だな



苦笑を浮かべ、天井を仰いだ。
徐々に、瞼が重くなってくる。


「そろそろ戻るとしよう」


「そうですね 、少し寝たほうがいいよ」


立ち上がる鏡夜に、ハルヒも同意だったらしく頷いた。
に近づき、眠そうなその表情を見て笑いながら言った。
その言葉に甘えるように頷き、は再度夢の中へと──意識を落とした。










to be continued.....................






部員全員にバレたぁぁぁぁっ!!Σ
最初に考えていた以上に、主人公の心の傷は深かった……(^ ^ ;)






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