嫌だ

           ごめんなさいっ

戻りたくないっ

           ごめんなさいっ

許してっ

           ごめんなさいっ





      俺を解放して──……














NotxxxPersist-ence 第二十六話














、本当に大丈夫?」


「心配すんなって!」


心配するハルヒをよそに、は明るく答えた。
海への旅行は終わり、帰ってきたホスト部一行はそれぞれ帰宅を始めた所だった。


「ただ……ホスト部には居られなくなるかもしれねぇな」


肩をすくめた。
女生徒達にバレてしまったのだ、が女だと。
だからこそ、部員として参加し続けることは出来ないだろうと心を決めた。


「それは……まぁ、時期を見て検討するとしよう」


環は言葉を濁した。
きっと、送られてくる声はそれぞれなのだろう。


くんをやめさせないで


女性がホストをやって、女性を持て成すなんておかしいですわ


二つの声。
予想はしていたからこそ、驚きはしなかった。


「じゃあな また……明日」


そういうとは背を向け、自宅へ帰宅した。
迎えの車に乗り、家へと向かうが──



なんか、様子が変じゃねーか?



運転手の様子がいつもと違っているように感じて、少しだけ眉を顰めた。


「どうかしましたか?」


「あ、いえ……何でもありません、お嬢様」


「そうですか……ならいいのです」


ふわりと、女性特有の柔らかい笑みを浮かべは言った。
その口調に、内心ヘドが出そうになる。













「ただいま戻りました」


の自宅へと戻り、門を潜り、玄関へと入った。
いつもの決まり文句を口にし──そこで視線が一箇所で止まった。

いつもはない、けれど見覚えのある靴。
女性らしく足元を飾るハイヒールに、黒いピカピカに磨かれた革靴。


「お嬢様、旦那様と奥様がいらっしゃっております」


「分かりました 着替え次第、向かうと伝えてください」


「はい」


靴を脱ぎ、そのままは自室へと向かった。
いつもの様に、ボーイッシュな服に身を包み──けれどおしとやかな動きでの両親の待つ応接間へと向かった。



あー……なんか、すっげぇ嫌な予感がするんだけど……



いくらなんでも情報が早すぎる感はあるけれど、家ならばやりかねない。
少しの情報が漏れれば、探偵事務所を営む家に伝わらないはずがない。



今までの鏡夜先輩の……
いや、鳳家の影響力があったから免れてたのかもしれないな……



肩を竦め、意を決しながら。

ガチャリ……

静かに扉を開いた。


「お待たせいたしました、お父様、お母様 お久しゅうございます」


ぺこりと頭を下げて挨拶を口にした
ゆっくりと顔を挙げ、そしてやんわりと笑顔を浮かべた。


「ああ、久しぶりだな」


「わたくし達が今日ここへ参ったのは……どういう理由か、お分かりですね?」


相変わらず硬い口調の父親。
そして、冷たい視線を向けてを真っ直ぐ見つめる母親。
姉がいない事が、少しだけ胸を撫で下ろさせた。


「……私には、分かりかねます」


母親の言葉にピクリと反応を示したものの、はしらばっくれる事にした。
軽く首を振り、分からないと言いながら応接間のソファーへと腰を下ろす。

真っ直ぐ見つめてくる二人の視線が、少しばかり痛かった。


「しらばっくれる気か?」


「わたくし達の情報網を甘く見ないことですわよ、


ゴクリと息を呑み、身体が震えてしまう。
自分の本当の親なのに、はどうしても恐怖を感じずにはいられなかった。


「約束を、守ってはいなかったようですわね」


「──っ」


母親の言葉に下唇を噛んだ。
やはり、あの海での出来事が家へと情報を漏らしてしまっていたようだ。
鏡夜もいろいろと手を尽くしてくれてはいたが、やはり人の口を止めることは出来なかったようだ。


「いかが致しますか、あなた」


「お、お願いですっ!!家には戻りたくはありません!服も、女性らしいものを着るのだけはっ」


母親の言葉に、は悲鳴のごとく声を上げていた。
『それだけは』と。


「……図々しいにも程がありますわよ、


「まぁ、待て」


母親の冷たい言葉に、父親が待ったをかけた。
けれど、その視線は母親同様に冷たいもので背筋が凍りついてしまう。



お願い……頼むから、家には戻りたくないっ
服だって……



ギリ、と奥歯を噛み締めた。


「服はいいとしよう ただし、以前の約束通り女言葉を使うことだ」


「は、はいっ」


「それから……しばらくの間、お前にはこの家に滞在してもらう」


父親の言葉に息を呑んだ。
女言葉を使うのは少し癪だが、男物の服を着れることは救いだった。
もともと、家に泥を塗るために使っていた男口調だったから、女口調に戻ることはあまり抵抗はないのだが。



お母様が……この家に……?



母親が家に滞在するという条件に、心臓が早鐘を打ち始めた。


「それは、監視……ということですわね?」


「ああ、そうだ」


母親の問い掛けに、父親はコクリと頷き肯定した。



あの日々が……また、始まる?



そう思うと、身体は震えずにはいられなかった。

嫌な毎日。
怖い毎日。
憂鬱な毎日。


「異は聞かない これは決定事項だ」


「分かりましたわね?」


冷たい声。
有無を言わさない、強い口調には口ごもってしまった。





母親の、その声にビクリと肩が揺れる。


「は……い……」


声は沈み、の顔から表情が消えうせる。
紡がれた言葉は、無理矢理吐き出させられた同意の言葉だった。











to be continued.......................






急展開、と思いきや……展開的にはありえる展開だったと思う。(笑)
けど、恋愛の方も新展開迎えていきたいなぁ……('-'*)






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