数日ぶりの学校……
あれからずっと休んでて……きっと、みんなに心配掛けたんだろうな……

だけど……ごめん
何も言えない
何も伝えられない

俺……私は……また、籠の鳥











NotxxxPersist-ence 第二十七話











「あ、 おはよーさん」


「……おはようございます」


教室へと足を運んだ
机に鞄を掛けていると、気付いた光が声を掛けてきた。
しかし、の返した口調に訝しげに眉を顰めた。


?」


「なんですか?」


「……なんで敬語なんだよ?」


「……女だとばれたわけですから、わざわざ男口調で喋る必要もないかと思いまして」


光の言葉には少しだけ間を空けた。
それからニコリと微笑み、明らかに嘘だと分かる理由を並べた。
だって、前には言っていたのだから。
家に泥を塗るために男口調を使っている』と。


「何かあったの?」


「……いいえ」


ハルヒの問い掛けには首を左右に振った。
そう、別段何もない。



昔の生活に、戻っただけ……



ずっと使っていた男口調。
それがなんだか自身も板についていたらしく、少しだけ違和感を感じ苦笑を浮かべていた。


「ですが、ずっと男口調で喋っていたせいでしょうか……少しだけ、しっくり来ませんわね」


肩をすくめ呟き、ゆっくりと椅子に腰掛けた。


「そんなん、じゃないだろ」


ムッとした表情で光がの腕を掴んだ。
ぐん、と強く引き顔を見ようとした。


「痛っ」


ズキンと身体に走った痛みに、が声を上げた。


「ご、ごめんっ」


の声に驚き、慌てて手を離す光。
けれど、はやんわりと首を左右に振って「いいですよ」と言うだけだ。










その日一日、は全く別人のように大人しかった。
気味が悪いほどに、凄くおしとやかで。


「なぁ 絶対、の様子おかしいよな」


「うん、自分もそう思う」


「だよな やっぱ、誰が見てもそう思うよなぁ」


光とハルヒの言葉に、馨も頷き同意した。
何もないと言っていても、その行動が態度が、何かあったと言っている。


「それに、光がの腕掴んだときの反応……」


「ああ、凄く痛がってたね」


「うん それが少し気になって……」


腕を組み、思考をめぐらせる三人。
の家の事情なんて何も知らない。
けれど、普通じゃないのはなんとなくでも分かった。


「でも、が自分から言ってくれると思うか?」


「いや、だんまりだと思うな、僕は」


光の問い掛けに馨はハッキリと答えた。
けれど、その答えは誰もが思ったことだったから否定はせずに頷き肯定するだけだった。


「それでも、自分たちには何も出来ないと思うよ」


「「やっぱ、が言ってきてくれるの待つしかないのかな」」


ハルヒの言葉に、光も馨も肩をすくめて溜め息を吐いた。











ごめん……ハルヒ、光、馨
心配掛けてるのは凄く分かる……
分かるのに、何も言えない

これ以上、心配掛けさせたくない
迷惑を掛けたくない
これは……俺の問題だから……



学校に再度通い始めるようになって数日。
は感じていた、三人が心配していることを。
けれど、あえて何も言わなかった。
一人で乗り越えて、一人で何とかしなくちゃいけないと思っていたから。



だけど、不思議だな
最初は本当に家に泥を塗るつもりで使ってたのに……
いつの間にか、こっちが地になってるとはな……



男のような口調が、いつの間にか地になっていた。
そのことが不思議で苦笑が漏れてしまう。
そんな事を思いながら、は廊下の窓から空を見上げていた。





「……何ですか?光」


掛けられた声に振り返り、姿を確認すると首をかしげた。


「大丈夫か?」


「何が?」


「いや……その……」


光の問い掛けに、問いで返した
けれど光は口ごもるだけで、一向に言葉を続けない。


「大丈夫ですよ、光 私は、そんなに柔じゃないですから」


だから、そんな風にふわりと笑って微笑んだ。
無理はしてる。
でも、無理をしないと崩れ落ちてしまいそうだった、この虚勢が。


「……何でそんなに無理すんだよ」


「え?」


呟く光が、凄く苦しそうに見えた。
なぜ光が苦しそうな表情を浮かべるのか、には分からなくて。


「俺らがいるじゃんか!何で相談してくれないんだよ!?」


「……相談するような事じゃ、ありませんから」


無理に、微笑み、突き放す。
大好きな人だからこそ、踏み込ませたくない、心の闇。
心が自分に向いていない事が分かっているからこそ、これ以上踏み込ませられない。
踏み込まれても、傷つくだけだから、傷つけるだけだから。


「どうしてっ……何でっ 俺らじゃ頼りになんないのかよっ」


「……そうじゃありませんわ」


光の言葉に苦笑を浮かべ否定した。
そうじゃない。



でも、言えない



「光 本当に、そこまで心配することじゃありませんよ 大丈夫、ですから」


そう呟くことしか、今のには出来なかった。
たとえ、それが心と裏腹な言葉だったとしても。














「ただいま帰りました」


玄関を開き、ゆっくりと閉める。


「遅いわ!もっと早く帰ってこなければ駄目ですわよ!」


開口一番に吐き出されたのは、母親の叱咤だった。
ビクリと肩を揺らして「ごめんなさい」と謝るしかできない。


「こんな場所居たくなんてありませんのに……あなたがいらない手間を掛けさせているのよ!」


怒りの声に肩が揺れる。
ゆっくりと母親を見つめると、ツカツカと近づいてくる姿。



ああ……また、始まる



どんどん、落ちていく。
心が、思考が、全てが、闇の中へ。


「あなたは必要のなかった子なのよ!それをちゃんと育て上げて、いい学校にも通わせているのよ!?」


身体に感じる痛みは、もう慣れたもの。
コツを知っている母親は、上手い具合に隠れる場所に痣を残す。
それも、数日で消えるくらい綺麗に。


「感謝されこそ、こんな仕打ちをされるいわれはありませんわ!」


これに耐える方法を、は知っている。
心を無にして、闇へ落として。

人事のように見ていればいい。


「あなたなんて、生まれてこなければよかったのですわ!!」










to be continued......................






とりあえず、馨ルート?に向かわせるためにも光を攻略みたいなw(ぉぃ)
暗い中、恋愛関係を加速させていきたい……んで、失恋すりゃいい。(待て待て待て待て)






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