絶えなきゃいけない
堪えなきゃいけない
嘆いちゃいられない
弱音を……吐けない

だから、心を落とすんだ
だから、心を闇に満たす
だから、心を無にする
だから、心を……殺す

たとえ、どんなに心配を掛けることとなろうとも……
今は、こうすることしか……出来ないから











NotxxxPersist-ence 第二十八話











、おはよう」


あれから数週間。
は完全に言葉を失った。
微笑んだり、頷いたり、首を左右に振ったりと、アクションはする。
けれど、まるで何も考えていないように、心を消し去ってしまったように、何も言わなくなった。


「見てらんねーよ」


「うん、僕も限界 本当に僕らは何もできないの?」


光の言葉に馨も頷いた。
ここまでが落ちてしまうまで何も出来なかったことが、馨は悔しかった。
光も、ここまで放っておいて締まった事を凄く後悔していた。
あの時、何が何でも聞き出しておけばよかったと。


さんはいらっしゃいますか?」


その声に、はピクリと反応を示した。
ゆっくりと立ち上がり、居るということをアピールした。


「至急帰宅するようにと、ご連絡がありました」


本当に伝言だけと承ったように、女生徒は告げると立ち去っていった。

伝言を聞き、少しの間は放心状態だった。
どんなに心を無にしても、奥底にある心はひょんなことで浮き上がってくる。
それを再度奥底へ落とすのに、時間を要するのだろう。


「……、行くの?」


ハルヒの問い掛けに、は力なく微笑み頷いた。
机に掛けておいた鞄に手を伸ばし、教室の出入り口へと歩いていった。


「僕、ちょっとを追ってくる!」


「あ、光!」


いつもハルヒハルヒとはしゃぐ光が、を気に掛けることに少し心がズキリと痛む馨。
けれどの気持ちを知っているからこそ、止めることも出来ず。

立ち去る背中を、見守ることしか出来なかった。












!」


校門へ向かうために通る中庭。
その最中、光がを呼び止め、は足を止めるとゆっくりと振り返った。



光?
なんで……ここに?



凄く疑問だった。
言葉にはしなかったものの、表情には出てしまっていたようだ。


が心配だからに決まってんだろ?」


そういいながら、立ち止まるに光は近づいていった。
近づく姿を視線で追っていると、徐々に首が上がっていく。


「……行くなよ」



心配してくれるのは嬉しいよ
嬉しいけど……



「……無理」


ようやく発したの言葉。
久々に聞いたような錯覚さえ起こす声。


「なんでだよ!?」



光が止めてくれるんなら、俺は行きたくない
ここに留まってしまいたい
でもな……



「……逆らえない」


完結的に答えるの声は、今までのような覇気がない。
感情の見えない、淡々とした口調だった。


「どうして……そこまで私を気にするのですか?」


呟く言葉は、変わってしまった日のままの口調。
光の良く知るは、今、目の前にいない。


「友達だからに決まってんじゃん!」


その言葉に、少しだけ寂しそうに微笑んだ。



知ってるよ……友達だって思ってくれてることくらい
でも、俺は──……



は友達だって思ってくれてんじゃないのかよ!?」


光の問い掛けに、間が空いた。

そうだと言いたい。
そうじゃないと言いたい。


「……だから、言えないんです 心配掛けたくなかったんです
 だからこそ、私の心の闇に踏み込ませたくなかったんです」


友達だけど、友達じゃない。
その思いは口に出来なかったけれど、結果は同じだった。
ラブでもライクでも、は絶対に話さない、話せない。


「……さようなら、また……明日」


呟き、光に背を向け歩き出した。



そんな風に気に掛けてくれると……俺、勘違いしちゃう
もしかして……なんて考えちまう



光には、その背中が小さく見えた。
あの毒を吐きまくる、強いにはどうしても見えなかった。











!帰ってきなさいと言ったら、すぐに帰ってこなければ駄目でしょう!?」


玄関を入り、すぐに母親の叫び声が耳に入った。


「ご、ごめんなさい……」


ビクリと肩を揺らし、反射的に謝ってしまう。
謝っておけば、怒りの炎がより燃え上がることはないと知っているから。


「いつもそう」


「え?」


「何か言えば謝ってばかり 謝っていながら、進歩がない」


母親から発されるイライラには気付いていた。
だからこそ、なるべく触発しないようにと気をつけていたのに。


「痛っ」


「文句を言わないで頂戴!こっちへ来なさい!!」


強くの腕を掴み、母親は怒りの声を上げながらを引っ張り歩き始めた。


「行きます 行きますから、そんなに引っ張らないで下さいっ」


「逃げるつもりでしょう!?そうはいきませんわよ!」


の言葉を信じるつもりのない母親は、真っ向から言葉を否定した。
絶対に離さないと、より腕を掴む力を強めた。
その痛みに、の眉はより一層顰められた。


「きゃっ」


勢い良く放り出されたのは、大きなお風呂場だった。


「いつもいつもそう 生意気で、無駄な子なのに苦労ばかり掛けて……歯向かって……」


シャワーを掴みに向け、蛇口を捻った。
瞬間、シャァァァァッと音が漏れに強く降りかかる。


「あ、熱いっ!!」


かかるのは、水ではなく熱湯だった。
それも、軽度の火傷ですみそうな温度。
それでも人の肌には熱く、ヒリヒリとする。



やめて……やめろ……
やめてくれっ……



心の中では悲鳴が上がるのに、表面では無表情を決め込む。
心を殺し、何も感じないフリをする。
そうすれば、少しはマシになるのを知っているから。

ピンポーン

その時、不意に家のチャイムが鳴った。


「助かったわね 少しここに居なさい!」


そういうと、母親はお風呂場を後にし玄関の方へと歩いていった。









to be continued...................







虐待反対!
そう思いつつも、話の内容や主人公の設定的に書かねばならず……うぅ、心が痛いです(><、)
主人公に救いは来るのかっ!?(ぁ)






NotxxxPersist-enceに戻る