この傷を、俺はいつになったら癒せるんだろう?
長年負い続けた、心と身体の傷も
淡く砕けた、傷心も
いつになったら──……
NotxxxPersist-ence
第三十話
「か、馨!?」
戻ってくる馨の姿に、は閉じかけた扉を開き声を上げた。
「みんなと帰ったんじゃなかったのか!?」
光と似ているけれど、違う馨。
今は、そんな馨の顔でさえ見るのは辛い。
「そのつもりだったんだけど……、何かあった?」
「え?」
「なんか、辛そうだったから」
馨の鋭い問い掛けに、はギュッと心臓を掴まれた気がした。
泣きたくなる。
目頭が熱くなり、鼻がツンとする。
駄目だ……泣くなっ
下唇を噛み、俯いてしまう。
「やっぱりあったんだ」
その表情で、馨に確信を与えてしまった。
近づいてくる姿にビクリと肩を竦め、俯いたまま上目遣いで見上げてしまう。
「……俺……告白、しちまったんだ」
「──え?」
まさかの言葉に、馨は掠れた声を漏らした。
の好きな人──つまり、光に。
「つい……勢いで 全く気持ちが向いてないの知ってたから、言うつもりなんて全然なかったんだぜ?」
なのに……と、はまた俯き言葉を飲み込んでしまった。
「なのに、あいつ……期待させるような事ばっかりしやがる」
「光の行動に、勘違いしちゃった?」
「──っ!?」
は名前を言っていなかった。
けれど、馨は躊躇することなく名前を口にした。
知られているとは思わず、は顔を上げ目を丸くさせた。
な、なんで知ってんだ!?
幾度も瞳を瞬かせて、口をポカンと開けてしまう。
「ごめんね、 光……考えなしな所あるから」
「いや……振られるの分かってて言ったんだ 自業自得だよ」
何で馨が謝るんだ?と肩を竦めて呟いた。
分かってたんだから仕方がない。
馨に謝られる理由なんて、全くない。
「そっか……それで、辛そうだったんだ」
「……顔に、出てないと思ってたんだけどな」
必死に我慢をしていた。
だからこそ、バレるはずがないと思っていた。
「……みんなは、騙されていたみたいだよ?」
「つまり、気付いたのは馨だけってことか?」
「そうだね」
なんで?
馨の答えに、浮かび上がった疑問。
何で馨は、そんなに俺の反応一つ一つに敏感なんだ?
見抜かれているように錯覚することもある。
それほどまでに、馨はの反応一つ一つに過敏に反応していたのだ。
「泣きたいんじゃないの?」
「──ぇ」
馨の指摘に、かすれた声が上がる。
また……見透かされた
そう思った瞬間、馨の手がの頭を優しく撫でた。
いつも見ていた馨とは似ても似つかない行動に、少しだけ驚く。
けれど、凄く心が救われるようで──
「ぅ……」
小さく嗚咽が漏れた。
下唇を噛み、俯き、肩を揺らす。
「誰にも言わないから、泣いていいよ、 泣き止むまで、僕がそばにいるから」
ゆっくりと抱き寄せ、背中を摩る。
いつもは強気なも、今は凄く女の子らしく馨の腕の中で泣いていた。
「ひ、ぅ……くっ……ぅっ……ぅぅっ……」
堪えた泣き声はくぐもって。
けれど馨の温もりに、心は洗われていく。
俺、こんなにも光が好きだったんだ
母さんの、父さんの……姉さんの、今までの仕打ちよりも……凄く心が傷つくほど……
俺、本当に好きだったんだ……どうしようもないくらいに
そう確認すると、余計に悲しくなった。
好きなのに、伝わったのに──叶わない。
虚しいほどに行き場のない思いは、の中を駆け巡るばかり。
悲しい気持ちを湧き立たせ、奮い起こさせ、悲しみの水を撒く。
「は、本当に光が好きだったんだね」
「……ぅっ、ひぅっ 馨……あり、がとう……」
すがるように、泣いた。
同じ双子なのに、光を好きになった。
こんなにもを気に掛け、気づいて、慰めてくれる優しさを持つのに──光だった。
胸を貸してくれることに、泣き止むまでそばにいてくれる馨に、は凄く感謝した。
きっと、一人だったら俺……泣きやめなかったかもしれない
いや……
もしかしたら、俺は泣けなかったかもしれないな
馨が居たからこそ、悲しい心をさらけ出せた。
誰かが居て、悲しい心を聞いてくれて、それでいて泣かせてくれる。
だからこそ、泣けるのかもしれない。
泣けたのかも──しれない。
「、負けるな 悲しい気持ちに、負けるな」
何度も背中を摩り、優しく声を掛けた。
その言葉に、は何度も頷きながら涙をポロポロと零し続けた。
なぁ、馨
あんたはホント……凄く、優しいな
心が暖かくなるほど……心が軽くなるほど……
馨は、本当に……
to be continued.....................
まずは失恋。
で、それに気付いた?馨が慰めると……(ぅわ)
鈍感な光が、海の話以降凄い鋭い観察力を出したなぁ……
まぁ、この話が書きたくて今回は馨じゃなくて"光が珍しく"鋭い観察力を出したんだけど。(待て)
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