なんでそんなに、馨は俺のことが分かるんだ?
見透かすんだ……?
どうして……










NotxxxPersist-ence 第三十二話










見透かすように呟く馨を、は目を丸くして見つめた。
本当は大丈夫じゃなかった。
凄く苦しくて、辛くて、悲しくて、心が押しつぶされそうだった。
たとえ、それが光らしい挑発の仕方だったとしても。


「何をどうしたら、俺が無理してるって思うんだよ」


「何をどうしたらって……普通に見ても無理してたじゃん」


むすっとした表情を浮かべるに馨は苦笑した。
馨からすれば、一目瞭然だったからこそ隠し通そうとするが可愛かった。


「……バレバレ?」


「僕にはね」


「馨には?」


「そう、僕には」


答える馨の言葉の意味が分からなく、は首を傾げてしまった。
なぜ馨にはバレバレなのかと、眉間にシワを寄せてしまう。


「……意味わかんねぇ」


「分からなくていいよ、今はね」


「今は?」


問いかけるに馨は静かに頷いた。
今はわからなくていい。
いつか分かってくれれば、馨の気持ちと共に。
今はまだ、言うべき時ではないから。


「で、はこれからどうするつもり?」


「え?」


「だって、戻りにくいだろ?」


「そりゃ、まぁ……」


あの空間に戻ることも戻りにくい。
だが、あの二人を見ることの方が、たぶん今のには辛いことだろう。


「じゃ、僕らは二人で学園内回る?」


その言葉に、パッと馨を見つめた。
驚いたように瞳を丸く見開いて。


「ほらほら、行くよ!」


「ちょ、馨!?」


「はいはい 文句は聞かないからね〜」


の返事なんて聞かず、馨はぐいぐいとの腕を掴んだまま歩き始めた。
強引に、こうしてどこかへ連れ出してくれるのは嬉しいものだった。
その時だけでも忘れられるから。










いろいろな教室を見に行った。
仮装している人を見て笑ったり、出し物を見たり、食べたり。
笑いあって、凄く楽しい時間は──すぐに去っていく。


「やっぱりハロウィンパーティーは楽しいもんだな」


「僕らは、去年はこういう風に参加はしていなかったから、凄く楽しいよ」


「……ああ、そういえばそうだったよな」


言われて初めて、ふとそうだったなと思い出した。
去年の光と馨は、環にはちょっかいを出したりはしていたけれどそれっきり。
今のようにクラスのみんなと馴染んで話したりなんてしていなかった。


「あの頃は、あまり喋ったことなかったけどさ……、僕らの見分けついてただろ」


「……やっぱり気付いてたか?」


馨の言葉に、一瞬目を丸くしてきょとんとした。
不思議なことに、あの頃はまだ何となくの領域を出なかったけれど馨と光の見分けがついていた。
纏っている雰囲気が違うというか、なんと言うか、本当に第六感のような感じだ。


「そりゃ、毎回話すときにちゃんと僕らのこと見分けつけてたわけだし」


「……てことは、やっぱり合ってたんだな」


「もしかして勘だったとか?」


安堵したように息を吐くに馨が首をかしげた。
その様子に、は苦笑した。
頷くことも、首を左右に振ることもしなかった。


「勘ってのもあったけど、何となく雰囲気が違ってたしな」


「へぇ はちゃんと分かってくれてたんだ」


「まあな」


言葉に表すことの出来ない感覚。
けれど、確実に違う雰囲気を感じてはいた。


「あれだな……もっと早くにと喋ってればって思うよ」


「今更だな」


「まーね でも、本当にそう思うんだ」


そう思ってくれることが、には嬉しいことだ。
だからつい、微笑んでしまう。
嬉しそうに、頬を緩めてしまう。



なんで俺は、馨じゃなかったんだろ



こんなに優しくしてくれるのに、なぜ馨じゃなかったのかとは思ってしまう。
振り向いてくれない、いつもを傷つけてばかりの光なのかと。


「馨は、ほんと優しいよな」


喋ってみて初めて分かることが多かった。
馨の優しさだって、関わりだすようになって強く感じるようになったことの一つだ。


「な、何言ってんだよ」


「何って……思ったことをそのまま言っただけだぜ?」


ドギマギする馨に、きょとんとした。
はただ"優しい"と感じたまでに言っただけだったから。


「いや、まぁ……だからそうだろうけどさ」


「は?」


言っている意味が分からないと眉間にシワを寄せ、は首を傾げた。
なぜ、優しいという一言にソコまでしどろもどろになるのか、には想像すら出来なかった。


「そ、それより!!ほら、、あれ!」


「あ?」


指差された先にあったのは。


「……お化け屋敷って、馨……何考えてやがる?」


にこやかな笑顔を浮かべながら、は馨を見上げた。
しかし、その笑顔は全く笑っていなかった。


「あ、ごめっ」


「入りたいなら入ってくればいいだろ 待ってるからさ」


しまったというような表情を浮かべた馨に、は肩をすくめた。
苦笑を浮かべ、行けばと顎でお化け屋敷を指し示す。
どこかのクラスの出し物だから、たぶん退屈しのぎには丁度いいのだろう。


「いいよ が入れないんだから、他のところに行こう」


「は?入りたかったんじゃなかったのかよ?」


「べっつに ただ目に入ったから言っただけだよ」


ドライな口調に唖然として、けれどすぐにプッと笑った。
そう、凄く馨らしい。


「馨はそういう奴だったな」


「そーそー」


クスクスと笑いあいながら、馨とは廊下をまた歩き出した。
いろいろな出し物があちらこちらにある。
シンプルな物からこっている物まで、各クラスで様々だ。


、入りたいとことかないわけ?」


「あ?別に?馨こそどうなんだよ?」


歩きながら、ちらちらと各クラスの出し物には目を通す。
けれど、これといって興味を引くものがなかった。


「僕も全然きょーみないね」


「なんだよ じゃあ、一緒に見て回ってる意味ねぇじゃねぇかよ」


肩を竦め、苦笑を浮かべた。
興味がないのでは、見て回る必要なんてないはずだ。


「だから、光とハルヒのところに居たくないだろうと」


言葉を紡ぐ馨の言葉に、は大きく溜め息を吐いた。


「あんた、分かってて言ってる?それとも分かってないで言ってる?」


「は?」


「もしも、俺をハルヒと光のところに居させたくなくて連れ出してくれたんだとしてもだな……
 こういう出し物に興味がねぇなら見て回る必要なんてなかっただろ?」


「……そ、それは」


「どこか他の場所で暇を潰すだけでも、全然オッケーだったんじゃねぇの?」


感じた疑問をそのまま馨にぶつけた。
なぜ、一緒に回ろうと言い出したのか。
なぜ、そんなにものことを気に掛けてくれるのか。


「あ〜、もう、別に何だっていいじゃん!理由なんて!」


「はぐらかす気かよ!?」


「そうじゃないって!!」


気にするに対し、馨はこの話題はどうしても避けたいものだった。
視線を逸らしながらも、の指摘に声を荒げる。


「そうじゃ、ないって……?は?」


眉間にシワを寄せ、疑問そうに馨を見つめた。
視線は逸らしているし、どことなく顔が赤い。
それが、意味不明で。


「馨?」


「な、なんでもない!」


「は?顔真っ赤にして、何がなんでもないだよ!?」


手のひらで口元を覆うように押さえ、顔を背けた。
なんでもない、というには少し無理のある表情と行動だった。


「いや、ほんとーに何でもないから!」


「馬鹿言え!ちょ、顔貸せ!熱あんじゃねーのか!?」


近付くに後ずさりしながら、手首から先を振った。
しかし、そんな馨の行動など気にせずは馨の肩を掴み。


「──っ」


額と額を合わせた。
間近にあるの顔に、息を呑む馨。
宙を掻いていた馨の手が、の肩を掴んだ。










to be continued...................





そろそろ、この夢の正規カプでもある馨×主人公に移行し始めないとなと思います。
ということで、ちょっと馨に照れさせてみた。(笑)
もうちょい先だけど、ハルヒ×光のデート時に光は照れてたし、馨もありかなと。(笑)






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