あのキスの意味
それは、やっぱりアレなのか?
何の思いもなく、出来るものじゃないと思う
だけど……









NotxxxPersist-ence 第三十四話









?」


「あ?」


それは、授業の間の休憩時間のことだった。
一人になりたくて教室を抜け出し、屋上近くの階段の踊場にきていたのにハルヒには見つかった。


「どうしたの?何かあったの?」



どうしてこうも、ホスト部の奴らは勘の鋭い奴が多いんだ?



の異変に、やはりハルヒも気付いたようだった。
光の時には気付かなかったのは、きっと馨が心を軽くしてくれていたから。
今回ばかりは、そういう事もなく明らかに態度に出ていたようだった。


「何でもねーよ、ハルヒ」


「何でもないって顔してないよ」


そう言われてしまえばどうしようもない。
崇や光邦だけでなく、ハルヒにまで心配をかけてしまっている事には申し訳なく思っていた。


「本当に平気だから 駄目なら、ちゃんとハルヒに相談してるって」


「まぁ……そうだとは思うけど でも、自分にも相談できない内容だったら、一人で抱え込んでるでしょ?」


的を射ている発言に、は言葉を詰まらせた。



言う?



そう心の中で突っ込み、けれど無理だと内心笑った。
言えるはずもなかった。
言う事など"ありえない"のだ。


「……大丈夫だって、ハルヒ ほんとーにな」


軽く手をパタパタと振りながらは立ち上がった。
そして教室に戻ろうと階段を折り始めた時──はピタリと足を止めた。


「……馨」


……」


階段の下に馨が、そしてそんな馨を見下ろす
二人の様子から、ハルヒはこの二人の間に何かあったのではないかと勘付いた。


「馨と何かあったの?」


「……っ」


ハルヒの指摘には息を呑み、階段を駆け下りていった。
馨の隣を勢い良く通り過ぎ、そのまま教室に戻るわけでもなく校舎の外に向かって駆け出していた。


!?」


ハルヒの声が聞こえるけれど、は立ち止まれなかった。
後ろから追いかけてくる二つの足音も聞こえてきて、余計に止まれなかった。



どういう顔をして会えって言うんだ!?



馨を見れば、あのハロウィンの日のことを思い出してしまう。



嫌じゃなかったなんて……
俺、おかしいだろっ



光が好きなはずなのに、馨にキスされても嫌ではなかった。
そういうのが光も馨も嫌いだって知ってるはずなのに、そう感じてしまったことがに嫌悪感を感じさせていた。



俺は、どっちでもいいわけじゃない!!
俺はっ……俺はっ



掴みどころのないの気持ち。
そんな気持ちに、自身も戸惑っていた。


?」


そんなの目の前に、光が現れた。
何でこのタイミングに、とは思ったけれど止まれない。



俺は……俺が好きなのは……



完全に思考はそちらへと向かっていた。


「俺が好きなのは光なんだ!!」


言って、は光の腕を掴んだ。



そうだ、俺は光が好きで……
振られたけど、好きで……



そう思うのに、どこか違う感じを覚えた。
この少しの間に、何がを変えていた。


っ?」


いきなりの発言に光は驚きを見つめ──


「んっ」


「「!!」」


突如、は光に口付けた。
軽く触れる程度の──リップ音を鳴らすようなキス。
そんなキスを目の前で見せ付けられ、ハルヒと馨は目を見開いた。



おおおおお俺、何してんだっ!?



キスをし終えて、三人の反応を見ては顔を真っ赤にさせた。
冷静に今の言動を見直すと、顔から火が吹きそうな勢いだった。


「わ、悪い、光!!俺っ」


顔を真っ赤にさせて、おろおろとし始めた。
振られているのに、キスをするなんてとんでもない事だと慌てた。
消そうにも消せない事実に、どうしようもない。


「あ、いや……」


「振られてんのに、俺……何してんだろうな」


戸惑う光に、は苦笑いを浮かべた。
未練たらたらしくも見えるの行動。
だけど、それだけじゃないことがは分かっているからこそ余計に申し訳ない。


「え?」


「ハルヒは知らなかったもんな……隠してて悪かったな」


驚くハルヒに、はさらりと打ち明けた。
好きだったこと、振られていたことを。


……」


呟く声は、今度は馨のものだった。
悲しげな、そして嫉妬のような色を見せる馨の瞳に、ビクリとは肩を揺らした。



なんで?
なんで、んな目で見るんだよ……っ



理由が分からなくて立ちすくんでしまう
ジッと見つめてくる馨を見つめ返したまま、近付くことも遠のくことも出来ずにいた。


「わっ!?」


急に腕を掴まれ、引っ張られた。
驚きの声をあげ視線を向けると、そこにはの腕をしっかりと掴んだ馨の姿があった。


「ちょ、馨!?」


「いいから、来て」


「「!?」」


「ごめん ちょっと借りてくよ」


驚くとハルヒと光に対し、馨は平然としたままを連れて歩き始めた。


「嫌だ!!どこに行く気だ!?」


「いいから!ちょっと二人で話したいだけだって」


抵抗を見せるだが、それでも馨には効果のない抵抗だった。
男と女となれば、力の差は歴然だ。


「ちょっと、馨!!が嫌がってるでしょ!?」


ハルヒがの腕を掴む馨の腕を掴んだ。
ジッと馨を見つめ、ハッキリとそう言い切った。


「本当に、ただ話すだけだから大丈夫だって」


「でも……」


馨の言葉は信じたかったハルヒ。
けれど、必要以上に嫌がるの反応が凄く気がかりで止めずにいられなかった。


「授業だってもうすぐ始まるんだから、すぐに戻るって」


そう言われてしまえばハルヒも何も言えなくて、連れて行かれるを見ていることしか出来なかった。











「痛いって!!馨、離せよ!!」


掴まれていた腕を強く振り払ったのは、学院の中庭だった。
今は授業の合間の休み時間という事もある所為か、あまり人は居なかった。


「あ、ごめん」


の言葉に慌てて謝る馨。
振り払われた手を、もう片方の手で触りながら。


「で、いったい何なんだよ?」


「あ、いや……その……ごめん つい、カッとなって」


「……は?話があったわけじゃねぇのかよ?」


馨の言葉にきょとんとした。
話があったと思っていたから、だから嫌がりながらもここまで着いてきた。
連れてこられて、逃げ出さなかった。
なのに。


「光とキスしたのが、凄く嫌だったんだ」


「は!?」


素っ頓狂な声を上げながらも、あのシーンを思い出して顔が熱くなる。


「そういう顔をして欲しくないんだよっ」


「ちょっ、馨!?」


気がつけば、は馨の腕の中にいた。
ギュッと抱きしめられ、息が耳に掛かるほど近くて胸の鼓動が伝わってしまいそうだった。


「僕は、が好きなんだ が光を好きでも……諦められないほどに好きだ」


強く強く、馨はを抱きしめた。
耳元で聞こえる囁きが、顔を熱くさせ鼓動を高鳴らせる。



好き?
馨が俺を……?



頭の回転が鈍かった。
理解できる言葉なのに、どこかでそれを拒否しているようで。


「俺は……」









to be continued.....................




ここに来て、ようやくこの夢のカップリングに向かっていきそうな予感。
てか、遅すぎですよね……馨夢なのに、馨ルートに行き始めるのが。






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