俺、言わなきゃいけない事があるっ
好きにならないなんて嘘なんだっ
俺がずっと好きなのは光だっていうのも、違うんだっ

俺が、俺が一番好きなのは──









NotxxxPersist-ence 第三十九話









必死に、は走っていた。
やっと気付いた気持ち。
やっと動いてくれた気持ち。

最低だと思っていた、心の変化。

けれど、それは最低なんかじゃないとハルヒが教えてくれた。
"あの"ハルヒが。


「馨!」


声を上げ、勢いよくは二人部屋を開けた。
そこにはソファーに腰掛け、驚いた瞳でドアの前に立つを見つめる光と馨の姿があった。


「ああ、じゃん 何々、全然無反応かと思ったらそうでもなかったわけ?」


くすくすと笑いながら、馨は冗談交じりにに声をかけた。
けれど、の反応が全くない。
俯いたまま両手をギュッと握りしめて。


?」


「……っざけんな!!」


不思議そうな色を含んだ馨の声のすぐ後に、の怒声が響いた。
光も馨も慌てて両手で耳を塞ぎ、丸く見開いた瞳でを見つめる。


「な、なんだよ そんなに怒鳴る事ないじゃん
 別に、僕は無傷なんだからさ」


「無傷!?頬に怪我した奴がか!?」


俯いたまま、ドアを閉めてズカズカと近づいてくる。
徐々に見えてくるの表情。


「「……ぁ」」


見えた表情に、双子は小さく声を漏らし何も言えなくなった。

今にも泣きそうな顔。


「頼むから……心臓に悪いこと、すんじゃねーよ……」


双子の前に座り、コテンと馨の膝には額をくっつけた。
見えなくなる表情。

けれど、声は震えていた。

なんで、こんな気持ちになるのか。
どうして、こんなにも心配になるのか。

もう、分かる。
もう、嘘はつかない。

もう、認める。


「えっとー……僕、ちょっと用事思いだしたー」


棒読みで、光は立ち上がり部屋のドアの方へと歩いて行った。
その様子に馨は顔を上げ、『待て』と声を上げそうになる。


「……馨」


小さな、震えるの声。
その声と同時に、光の唇が『ごゆっくり』と動く。
そして、小さくパタンと音を立ててドアは閉まった。

小さな沈黙。
流れる空気。


「俺、嫌だ 馨が怪我するのも、ハルヒと仲良くするのも……なんか、凄い嫌だ」


素直なの気持ちだった。
ハルヒが馨に思いを寄せてないのは分かっている。
分かっているけれど……それでも、やっぱりジェラシーを感じずにはいられない。


?」


「馨に好かれたくなかったとか、好きになるんじゃねーとか……言って悪かった」


馨の膝に額を当てたまま、視線を上げない
それでも、言葉はポツリポツリと唇から零れ落ちて行く。

好かれたくないはずなかった。
好きにならないはずなかった。

あんなにも優しくしてくれたんだから。
この思いも、移ろいも、すべては──


「必然だったんだ」


「え?」


小さく呟いたの言葉に、馨は首を傾げた。
の頭を撫でるように手を乗せれば、やわらかな髪が指の間をすり抜けていく。



……こうして触れられるのが、凄く心地いい



ずっと、こうしていたくなる衝動を抑えながらは顔を上げた。
涙でぬれた瞳で、は馨をじっと見つめる。


「ごめん、俺……馨が好きだ」


ハッキリと言い切った。

気付いた思い。
もう、きっとずっと前から移ろい始めていた心。
蓋をして、見ないふりをして、自分に言い聞かせてきた

ようやく素直になれた思いは、すんなりと音となった。


「──っ」


のそんな言葉を聞く事はないだろうと、かすかに頭の隅で考えていた馨。
だからこそ、『好き』という発言に息をのみ目を丸くした。


「なんだよ、その信じられねぇって顔!一世一代の告白なんだからなっ!?」


本当は凄く恥ずかしいのだ。
あんなに好かれたくなかったとか言ってきたのに、結局ドツボにはまったのは自身。


「いや……だって、あんなに頑なだったじゃん?」


「まあ、確かにそーだけどよ……」


馨の指摘には肯定するしか出来なかった。
ひたすらに『光を好きな自分』であろうとし続けていたのだから、頑なだったと言われても当然だ。


「夢じゃ、ないんだよね?


「あ、当たり前だろ!?」


確認するように問い掛けて、馨はの髪に手を伸ばした。
ゆっくりと触れる髪。
頬を真っ赤に染め上げながら、は馨の問い掛けに肯定を返した。


「うわ、なんかすっごい嬉しいんだけど」


「嫌がられたらショックだっつーの」


嬉しそうに微笑む馨に抱きしめられた
ゆっくりと背中に手を回して、抱きしめ返しながら苦笑した。

好かれていたのに、振り向かないから好きじゃなくなっていた──なんて事があったら悲しすぎる。


「──んっ」


身体を離して見つめあった瞬間、の唇に馨の唇が重なり合っていた。

柔らかい感触。
甘いしびれ。

触れ合う事が、なんだか嬉しかった。


「やっと僕を見てくれた」


「……馨がしつこかったからな」


「……それが理由じゃないよね?」


見つめる馨の視線から逃れるように、は視線を逸らし呟いた。
その言葉に、行動に、馨は心配げに問いかけた。


「バーカ んな理由で『好き』なんて言うかよ」


真っ赤な顔をするに、馨は一瞬きょとんとして。


「……そっか 良かった」


それから、すこぶる嬉しそうに微笑んだ。
その笑みに、の心臓はトクンと脈を打つ。


、大好きだよ」


「俺も」


ぎゅっと、また抱きしめ合う。
欲しかった温もりが今、腕の中にある事実に馨は嬉しそうに微笑んだ。



凄い嬉しそうに笑うよな、馨って



その笑みを見て、も幸せを感じる。
愛されていると実感出来て、そして愛していると実感する。


「大好きだからな」


その言葉に、馨は心臓を締め付けられるような愛しさを感じた。
むさぼるように、勢いよくの唇に吸いつく。
何度も角度を変えながら、啄ばむように何度も口付ける。


「ん、んっ」


時折離れる唇。
そのすきを狙うように、は息を肺へと送り込み口付けに没頭する。

しびれるような甘い感覚。
頭がぼーっとするような、幸せ。


「ん……ふ、あ……」


ようやく離れた二人の唇を繋ぐように、透明な糸が引いた。
深く息を吸い込み、吐き出すと同時に糸も切れ──は恥ずかしそうに俯いた。

好きな人との口付けは嬉しいものなのは当然だ。
けれど、思いが通じたばかりでこの口付け。
少しだけ恥ずかしさを覚えてしまうのは、初めて濃厚なキスをしたのだから致し方ない事。


、可愛いじゃん」


「は?バッ馬鹿言うな!」


照れる表情に馨はフッと不敵に笑った。
可愛いなんて言われなれいない言葉だったため、は真っ赤な顔をしてキッと馨を睨む。
けれど、うるんだ瞳は全く睨みの効果を見せない。


……それ、逆効果だから」


「は?」


言われて、ぐるりと視界が回転した。
気付けば、馨の顔の向こうに天上が見えた。
そして背中には柔らかな布団の感触。

そこで理解するのは──


「ちょ、馨!たんま!待て!!」


「生殺しにするつもり?」


「でも、いきなりこれは!!!」


「何?この先の事でも想像しちゃった?」


止めるににやにや笑いながら問いかける馨。
その言葉に真っ赤な顔を隠すように、は両手で顔を覆った。

いくらなんでも、展開が早すぎると思うのが常だろう。
思いが通じたばかりなのだ。

もちろん、触れられたいと思う気持ちだってあるけれど。


「するだろ、普通!!!」


「じゃ、のご要望にお答えしようか」


「せんでいい!!!」


必死に待てと言っているのに馨は笑うばかりで、唇をの首筋に落としていく。
チュッと吸えば、そこには赤い華が咲く。
ピリリとする痛みを感じれば、痕を付けられた事は容易に想像出来て。


「ちょ、おま!!!今、痕付けただろ!?」


「そりゃ、僕のものになったって証をつけないと」


「俺はお前のものじゃねー!!!」


そんなの言葉もよそに、馨は首筋から鎖骨付近、胸元の近くへと赤い華を散らしていった。
吸われるたびに、チリっとした痛みを感じるたびに、身体はビクンと揺れ動く。

官能な、甘さ。


「待てって言うわりに、反応してくれるよね?


「バッ……それは、馨が……」


言って、は顔を背けた。
手で顔を覆いながら、口を閉じる。


「何?僕が何?


その言葉の続きを促す馨は、の耳の下からスルリと鎖骨の方へラインをなぞる様に手を下した。
その行動に、ゾワリとしたものをは感じた。


「〜〜〜〜っ」


「言わなきゃ続けるからね?」


ニヤリと笑い、はそのまま服の襟元から中へと手を滑り込ませる。
滑らかな肌が馨の手に吸いつくようだ。


「──っ!!!」


「いいんだ?」


息をのむに、意地悪気に問いかける馨。
身体を震わせながら、唇を噛みしめてキッと馨を睨んだ。

上気した頬、うるんだ瞳で睨んでも効果がないというのに。


「も、何言っても遅いから」


馨のそんな言葉が開始を切って落とした。

甘美な刺激には甘い悲鳴を上げ、徐々に昇り詰めていく熱情。
媚薬の如く迸る快感に、は成す術もなく甘い悲鳴を上げながら馨に初めてを捧げた。












初めては、思いのほか痛く身を切り裂かれるようなものだった。
それは同時に、腰への負担も予想以上のもので。

は事情後、他のメンバーに気づかれないために宛がわれた自室に戻りすぐに寝入ったそうな。








to be continued......................






と馨がようやくくっ付きましたー!!!
そして、にムラムラっとなった馨はくっ付いた初日にの初体験を奪うという暴挙に(笑)
とりあえず、二人は幸せいっぱい……ということで、次の日が大変だぞ!!(爆笑)






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